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(1)現在、中南米諸国には約150万人の日系人が居住している。これら諸国の日系人は、政治・経済をはじめとする様々な分野で重要な役割を担うとともに、日本と中南米の友好関係に重要な役割を果たしており、日本と中南米諸国の「架け橋」的存在となっている。
(2)一方で、日系一世は高齢化し、現地で生まれ育った二世、三世の中には日本語を含め、日本に対する関心が薄れつつあるとの状況もあり、日本との関係で重要な役割を果たしうる日系人の現状は懸念されるところである。
(3)右を踏まえ、本件招聘では、中南米諸国の日系人で、将来、居住国・社会において指導的地位に就くべき者を日本へ招聘し、自らのルーツとしての日本に対する理解の増進を図ると共に、中南米諸国の日系人間のネットワークの構築を促進することを目的とした。
アルゼンチン、ドミニカ共和国、メキシコ、パラグアイ、ペルーより各1名、ブラジルより計3名
(1)講義
横山総三氏(元国際交流サービス協会専務理事)による「日本の文化」の講義、遅野井茂雄・筑波大教授による「日・中南米関係」の講義、恒川恵市・東京大教授による「日本の政治経済」の講義及び田島久歳・城西国際大助教授による「日系人問題」の講義を実施した。講義中は質疑・意見交換が活発に行われた。
(2)表敬・意見交換会
海外日系人協会の塚田千裕理事長、国際協力機構・横浜国際センターの沢地真所長をそれぞれ表敬訪問した。また、上智大学において幡谷則子助教授の協力のもと、学生の質問に答える形で参加者が中南米の日系人の現状や問題について報告し、西語と萄語で意見交換も行われた。
海外日系人協会における懇談風景
(3)施設訪問・視察
海外移住資料館、衆議院、玉ノ井部屋の相撲稽古、横浜市立潮田小学校、広島平和記念資料館を訪問・視察した。また、横浜市立潮田小学校の訪問では榎本校長に在日外国人教育の工夫や苦労についてお話し頂き、外国人児童の特別授業や一般授業を見学し、児童と交流の時間も持つことができた。
潮田小学校の児童と参加者
(4)企業見学
松下電器のパナソニック・センターを視察。
(5)地方視察
広島及び京都視察を実施(京都にて1泊2日のホームステイを実施した)。
(6)秋篠宮同妃両殿下御接見
これまでに何度か中南米を訪問されている秋篠宮同妃両殿下への御接見を実施した。
(1)最も興味深かったプログラムとして以下が挙げられた(複数回答可、複数名の回答があったもの)。
秋篠宮同妃両殿下への御接見、横浜市立潮田小学校訪問、日本文化の講義、海外日系人協会・JICA横浜の訪問・移住資料館の見学、日本の政治経済の講義、日・中南米関係の講義、ラテンアメリカの日系人についての講義、学生との意見交換会、平和記念資料館見学、相撲稽古見学
(2)日程に含まれていれば良かったと思うプログラムとして、「日本社会の現状に関するより詳細な講義」が挙げられた。
(3)すべての参加者から本研修により、日本についての知識が増え、理解が深まったことを歓迎するコメントが寄せられた。特に各分野の第一線で活躍する教授陣による講義ではそれまでの疑問が解決され、日本の文化やデカセギ問題について正しい理解が得られたとの感想があった。
(4)横浜市立潮田小学校の訪問により、参加者は日本の児童と交流できたのみならず、それまで具体的なイメージのなかった在日中南米人の生活について理解することができたと述べていた。在日中南米人子弟の教育問題は近年様々な場で取り上げられるテーマであるが、日本に適応できていない生徒が多いのではないかというネガティヴ・イメージを訪日前に持っていた参加者が多かったところ、同学校が在日中南米人を含む外国人子弟の教育に問題意識を持ち、特別な学級を運営する等の取り組みを行っている現場を見学して、日・中南米関係の今後に期待が持てたとのコメントがあった。
(5)参加者は海外日系人協会、JICA横浜事務所および外務省等各所での表敬と懇談において日本の日系人政策や対中南米政策についての理解を深めることができたと述べた。また、自らの役割に対する期待の大きさを実感し、日系人の役割の重要性について再認識したことが帰国後の活動への意欲を高めたとの感想があった。
(1)アンケート結果から参加者の対日理解が肯定的な方向へ深まったことが伺える。
(2)研修プログラムを終えたすべての参加者から今次研修で得た知識と経験を、今後の各々の活動と日・中南米関係の強化、日系人社会の発展のために生かせるよう、力を尽くしたいとのコメントがあった。
(3)今回は少人数のプログラムであったが、すでに中南米諸国間の日系人ネットワークの発展のための活動をしている者もおり、他の参加者からもネットワーク強化・形成への意欲が示された。今後、毎年参加者の帰国後のネットワーク作りを中・長期的に支援していくことが重要。
(4)今次プログラムでは有識者、学生、その他ラテンアメリカ関係の仕事に携わる関係者との交流の機会を可能な限り多く設けたところ、参加者からは今回知り合った関係者と今後も連絡をとっていきたいとの感想が寄せられた。双方の相互理解の増進と新たな交流のチャンネルが開かれることが期待できる。