中南米

世界地図 アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ

「日本とカリブ共同体(カリコム)諸国との間の
平和・開発・繁栄のためのパートナーシップ」
(仮訳)

東京,2010年9月2日
英語版はこちら


 日本の外相並びにカリブ共同体(以下「カリコム」という。)諸国の外相及びその他の代表(以下「外相」という。)は,2010年9月2日に東京で会合し,2000年に採択された「21世紀における日・カリコム協力のための新たな枠組み」に基づき,日・カリコム関係が着実に進展していることを確認した。これを踏まえ,外相は,新たな国際環境の下で協力関係を更に深化させるための方途について議論し,今後の日・カリコム関係の方向性を示す「日本とカリブ共同体(カリコム)諸国との間の平和・開発・繁栄のためのパートナーシップ」を作成した。

1.脆弱性の克服と人間の安全保障の推進

 経済のグローバリゼーションが進展し,地球温暖化に伴う影響が深刻化する中で,カリコム諸国がその脆弱性に起因する様々な課題に直面していることを考慮し,外相は,カリコム諸国による持続可能な開発を促進するための努力を支援するため,人間の安全保障の視点から,次の分野に重点を置いた協力の重要性を認識した。

1-1 防災

 カリコム諸国における頻繁なハリケーンの襲来は,基礎的生活やインフラに大きな被害を与えており,カリコム諸国の脆弱性の最大の要因の一つになっている。さらに,本年1月にハイチで発生した大地震は,多くの犠牲者を出し,国内の最も人口の多い地域のインフラに甚大な損害を与え,ハイチ人の生活を脅かす深刻な被害をもたらした。自然災害の危険性を減少させることは国民生活の安定及び持続可能な開発にとって死活的に重要であるとの共通認識に基づき,また,日本がこの分野で豊富な知見と経験を有していることを踏まえ,外相は,防災分野での協力を推進することを確認した。

1-2 教育・人材開発

 外相は,教育関連のミレニアム開発目標(MDGs)の2015年までの達成に向け,教育分野で協力することへの支持を繰り返し表明した。経済の自由化は,グローバリゼーションの鍵となる要素であり,経済成長を促進し,様々な機会を提供する一方,国内及び国家間の所得格差拡大を表面化させ,社会の不安定化を招いている。カリコム諸国の社会的安定が持続可能な開発にとって不可欠であることを認識し,外相は,貧困抑制を目的として,若者,女性,児童を含む社会的弱者の基礎教育の充実のためにキャパシティー・ビルディングにおいて協力する意図を確認した。

1-3 保健・医療

 所得格差の拡大や貧困人口の増大は,保健・医療サービスの提供及び基礎保健サービスへの国民のアクセスを阻害している。このため,外相は,カリコム諸国における基礎保健サービスへのアクセス改善並びに感染症の予防,保健教育及び治療に対する能力の強化のために協力する意思を確認した。これに関連して,外相は,カリコムにとっての重大な課題であるHIV/AIDS撲滅のために協力を継続することの重要性を再確認した。また,外相は,2011年に開催される非感染症に関する国連ハイレベル会合への幅広い支持を呼びかけた。

2.グローバル経済への統合

 カリコム経済の持続可能な成長とグローバル経済への統合を確保するためには,とりわけ今般の世界経済危機を踏まえ,カリコム諸国における基幹産業の育成,貿易・投資の拡大及び情報通信技術の効果的な活用が重要であることを考慮し,外相は,民間セクターを含めた日・カリコム諸国間の交流を促進し,特に次の分野で協力を強化する必要性を確認した。

2-1 基幹産業の発展(観光業,水産業及び農業)

 観光業はカリコム諸国の主要産業であることを認識し,外相は,観光業の継続的な発展を確保するため,民間セクターを含め,各国間の交流を促進することを確認した。
 カリコム側は,カリコム諸国の水産業を強化するための日本の協力への謝意を表明した。外相は,経済社会開発に資するよう,地域の水産業及び水産資源の持続可能な開発,保存及び管理の分野において,緊密な協力を継続することを確認した。また,外相は,水産業及び海洋生態系への気候変動の影響について理解を深めるとともに,食料の安全保障及びカリコム諸国の沿岸地域住民の生活を保護するための適応・緩和対策を実施する必要性を強調した。
 カリコム諸国における食料自給率向上のため農業生産を改善することの重要性を認識し,外相は,農業分野での協力を継続する意図を確認した。

2-2 貿易・投資促進(地場産業振興)

 地場産業の振興は,産業構造の多様化,地方開発の促進及び所得格差の緩和に資することを認識し,外相は,カリコム諸国におけるマーケティング,生産技能開発,規格及び品質管理,起業等の分野における職業訓練及びその他の人材育成プログラムで協力を継続していくことを確認した。外相は,「一村一品運動」がカリコムにおいて模索し得る新たな機会とイニシアティブの実例となる可能性があることに留意した。

2-3 情報通信技術活用の促進

 カリコム経済の発展にとって情報通信技術が重要であることにかんがみ,外相は,カリコム諸国における情報通信技術に関する効果的なリテラシー,アクセス及び活用のために協力することを確認した。このために,ブロードバンド接続への普遍的アクセス目標が強調された。

3.環境・気候変動

 環境問題はあらゆるレベルで共同して取り組むべき喫緊の課題であることを認識し,外相は,特に次の分野において協力することを確認した。

3-1 気候変動

 外相は,カリコム諸国が気候変動の影響に特に脆弱であること,また,同諸国が気候変動及びその悪影響によりもたらされる課題に対処するため,開発パートナーからの支援を求めたことを再確認した。外相は,現在行われている国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での交渉を妥結させる必要があることを強調し,すべての国に対し,COP15で達成された成果に基づき同交渉に建設的に関与するよう呼びかけた。その関連で,外相は,気候変動に対処するための公平かつ実効的な国際枠組を構築するため,新しい一つの野心的かつ包括的な法的文書を採択すべく,2010年11~12月にメキシコのカンクンで開催されるCOP16において,合意に基づく成果が得られるよう取り組んでいく意図を確認した。
 カリコム諸国が直面している気候変動に起因する深刻な脅威に対し早急に対策を講じる必要性を認識し,外相は,カリコム諸国による迅速かつ効果的な適応・緩和対策を実施するための努力に対し,日本が協力を強化することを確認するとともに,この関連で,カリコム諸国が短期資金にアクセスすることの必要性を認識した。

3-2 生物多様性の保全

 外相は,豊かな動植物系に恵まれたカリコム諸国における生物多様性の保全,その構成要素の持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分の重要性を強調するとともに,2010年に愛知・名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議に向けて協力することを確認した。

3-3 再生可能エネルギー、省エネ技術

 気候変動問題に取り組み持続可能な開発を確保するため,外相は,環境への負荷を減らすべく,再生可能エネルギー及び省エネ技術の導入のために協力する意図を確認した。

3-4 循環型社会の実現

 天然資源の利用や経済活動と自然のサイクルが調和した循環型社会の実現が不可欠であることを認識し,外相は,廃棄物管理の分野における3R(reduce, reuse, recycle)の促進のために協力する意思を確認した。
 さらに,きれいな水の確保は,経済活動や生態系の保全ばかりでなく,人間の健康にとって重要であることを認識し,外相は,安全な飲料水へのアクセス改善や水質汚染への対処について協力する意図を確認した。

4.ハイチ復興支援

 外相は,2010年1月12日に壊滅的な地震災害を被ったハイチに対する連帯を表明するとともに,日本及びカリコム諸国がハイチにおける緊急救援努力,緊急ニーズへの継続的支援並びにハイチ政府及び国民が設定した優先順位に基づく中長期的な復興へのコミットメントにおいて果たした貢献を評価した。カリコム側は,緊急の復旧,復興,安定化支援のための国連PKOへの参加を含む日本の対応を賞賛した。また,外相は,ハイチの復興支援のため日本とカリコム諸国が最大限の協力を行うことを確認した。ハイチの代表は,これらの支援を高く評価し,ハイチが復興に向けて最大限の努力を行うことを約束した。

5.国際場裡における協力

 日本とカリコム諸国が国際場裡において相互理解を増進し,また,協力を強化することの重要性を改めて認識し,外相は,共通の関心を有する現下の国際問題について議論した。

5-1 核軍縮,不拡散及び原子力の平和的利用

 2010年5月3~28日に開催された核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の成果を歓迎し,外相は,核兵器のない世界の実現,核軍縮の一層の進展,核不拡散及び原子力の平和的利用の観点から,同会議で採択された行動計画を実施に移すことへの決意及び支持を再確認した。

5-2 国連安保理改革

 外相は,国連を中心に据えた多国間主義に対する強い信頼を再確認した。外相は,国連をより効果的で,説明責任を有し,効率的で,透明性のあるものとするため,包括的な国連改革の必要性を強調するとともに,ニューヨークに所在する各国の国連代表部間で本件に関する取組を調整する意図を共有した。これに関連して,外相は,常任及び非常任理事国双方の拡大を通じた国連安保理改革の早期実現の必要性に特別な注意を払った。

5-3 北朝鮮問題

 外相は,北朝鮮の核・弾道ミサイル開発について懸念を共有することを確認した。カリコム諸国は,拉致を含む人権・人道問題について日本が懸念を有していることを認めた。外相は,2005年9月の共同声明の完全な実施及びすべての国連加盟国による関連安保理決議の着実な実施の重要性を再確認した。

6.日・カリコム間の対話と交流

 日・カリコム間の対話と交流を促進し,日・カリコム関係を一層堅固なものとするため,外相は,外相会合の開催,定期的な日・カリコム協議の継続及びカリコム事務局を通じた円滑な情報交換の重要性を確認した。また,外相は,民間セクター,市民社会及び青年層を含む幅広い交流を通じたコミュニケーションの促進や文化交流活動を通じた相互理解の強化の重要性を再確認した。カリコム諸国は,日・カリコム友好協力基金を通じたこれまでの日本の支援に対し謝意を表明するとともに,同基金を通じたより効果的な支援を促進するため,引き続き協力する意図を確認した。

このページのトップへ戻る
第2回日・カリコム外相会議 | 目次へ戻る