5月22日(日曜日)午前8時15分から約1時間15分間,菅総理大臣は温家宝・中国国務院総理との間で日中首脳会談を行ったところ,概要は以下のとおり (中国側:
1 東日本大震災に際する中国からの支援
菅総理から,東日本大震災に際する中国からの物心両面の支援と共に,昨日の温総理の被災地訪問に対し,深く感謝する旨述べた。温総理から,改めて見舞いの意が表されると共に,被災地を訪問し,日本国民が,災害を目の前にした冷静さ,忍耐力をもってすれば,必ずやこの困難を乗り越え,復興することを強く確信した旨述べた。
2 ハイレベル往来
双方は,戦略的互恵関係の更なる深化のため協力を強化することで一致した。温総理から,本年中の菅総理の訪中の招請があり,菅総理からは,本年の都合の良い時期に訪中したい旨述べた。また,菅総理から,松本外務大臣を出来るだけ早い時期に訪中させたい旨述べたのに対し,温総理から,大臣訪中を歓迎する旨述べた。さらに,菅総理から,本年夏に東京での開催を予定している第4回日中ハイレベル経済対話の際,王岐山副総理等の来日を歓迎する旨述べた。
3 東日本大震災を受けた日中協力
(1)原子力安全
菅総理から,福島第一原子力発電所事故の経緯,現状等について詳細に説明した上で事故発生について遺憾である旨述べたのに対し,温総理から,日本が早期に放射能の漏出を阻止することを希望する,引き続きタイムリー,全面的かつ正確に情報提供をお願いしたい,中国も必要な協力を惜しまない旨の発言があった。
(2)防災・災害救援
双方は,災害発生時の日中間での意思疎通,人的・物的支援の提供及び受入れの円滑化・迅速化のために協力を強化すること,また,共に地震災害の多い国として,地震防災分野に関する意見交換を進めていくことで一致した。
(3)環境・省エネルギー
双方は,再生可能エネルギーの導入,省エネルギーの推進,スマートコミュニティに関する協力を重点的に進め,それらの分野での官民での具体的な協力について,日中省エネ・環境総合フォーラムなどの各種フォーラムを活用して,検討を加速化させることで一致した。
(4)復興支援・観光促進
双方は,東日本大震災後の復興支援及び観光促進に関し,協力を進めていくことで一致した(具体的な協力として双方が紹介した内容については,別紙「復興支援・観光促進に関する日中協力(ファクト・シート)」(PDF)参照)。
4 日中経済関係
(1)日本産農水産品に対する輸入規制措置
菅総理から,日本産農水産品に対する中国による輸入規制措置について,科学的根拠に基づいた対応を要請した。これに対し,温総理から,中国国民の安全を確保するとの前提で,食品の12都県の輸入禁止措置の中から山梨県及び山形県を外し10都県とすること,乳製品,野菜,水産物など放射能リスクが高い産品 を除く食品については,放射能検査証明書を不要とする旨述べた。
(2)レアアース
菅総理から,中国からの輸出されるレアアース価格の最近の価格高騰について善処を要請した。これに対し,温総理から,WTOに基づいて,レアアースの輸出を適切に管理する旨述べた。
5 東シナ海資源開発
菅総理から,東シナ海を「平和,協力,友好の海」にするとの両国間の合意を実質化すべく,前向きかつ未来志向の姿勢で,東シナ海資源開発に関する国際約束締結交渉の再開させたい旨述べた。これに対し,温総理から,2008年の合意を実施に移すとの中国側の立場に変わりはない,国際約束締結交渉の再開に向け意思疎通を図りたい旨述べた。
6 文化・人的交流
(1)「映画,テレビ週間」「アニメ・フェスティバル」
双方は,来月の北京及び上海での「映画,テレビ週間」「アニメ・フェスティバル」開幕行事の成功に向け協力していくことで一致した。
(2)辛亥革命100周年
菅総理から,本年の辛亥革命100周年の機会を利用して,日中関係を強化していきたい旨述べた。
7 北朝鮮
- (1)菅総理から,今後速やかに北朝鮮が南北対話で前向きな姿勢を示した上で,非核化等に向けた意思を具体的行動で示す必要があり,引き続き,中国から北朝鮮に対する働きかけに期待する旨述べた。また,北朝鮮のウラン濃縮活動は安保理決議及び六者会合共同声明の明らかな違反であり,これについて北朝鮮からより真剣な姿勢が示されなければならない,六者会合の再開のためにも,国際社会のメッセージが重要であり,中国の積極的な対応を期待する旨述べた。
- (2)拉致問題について,菅総理から,引き続き,中国の理解と協力を得たいと述べた上,中国から北朝鮮に対する働きかけを要請した。
8 人権
菅総理から,国際社会の基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のため,日中人権対話の場などを活用し,緊密に協力していきたい旨述べた。