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平成21年9月28日
9月28日、午後4時15分より約2時間、中国・上海市において日中韓外相会議が開催された(出席者:・中国外交部長(議長)、岡田大臣、柳明桓・韓国外交通商部長官)。外相会議では、第2回日中韓サミットを10月10日に北京で開催することが合意され、その準備のための実質的協議を行った他、共に関心を有する国際・地域情勢について率直な意見交換を行った。
(1)三カ国協力の評価
三カ国の外相は、日中韓を合わせた経済規模の大きさに鑑みれば三カ国の協力の推進は東アジアひいては世界の繁栄と安定に貢献するという認識を共有し、貿易投資、環境、社会・文化などの多くの分野で具体的な協力が進展していることを評価し、引き続き協力を推進していくことで一致した。岡田大臣から、新政権は日米関係を基軸にしながら、長期的には、開かれた地域主義の原則に立って「東アジア共同体」を構築することを視野に入れ、積極的にアジア外交を推進していく考えであり、そのためにも中国、韓国と連携していきたい旨述べた。
(2)第2回日中韓サミットの準備
三カ国外相は、10月10日に北京にて第2回日中韓サミットを開催することに合意した。議長国中国より、サミットでは、これまで10年の三国協力関係を回顧するとともに未来志向で三国協力を進めていくというメッセージを力強く発信したい、また、環境保護と経済成長の両立を目指す持続可能な開発を主要な議題の1つとしたいという考えが披露され、日韓はこれに賛同した。岡田大臣から、三国協力の分野として、環境、大学間交流を含む人の交流、貿易・投資の促進、新型インフルエンザ対策等が重要である旨指摘し、特に気候変動問題について年末のCOP15の成功は将来の人類の生存に関わることであり、日中韓で連携してその成功のために努力したい旨指摘した。また、岡田大臣から前回サミットの合意を踏まえ、防災担当閣僚級会合を年内に日本で開催したい旨述べた。中国及び韓国からも第2回サミットの成果について幾つかの提案が行われた。
(1)北東アジア情勢
三カ国外相は、北朝鮮の六者会合への速やかな復帰を求める必要があることで一致した。岡田大臣から、北朝鮮の核開発及び弾道ミサイル開発は北東アジアの平和と安定への重大な脅威である、国際社会が当面は安保理決議を実施しつつ北朝鮮による六者会合への速やかな復帰と共同声明の完全実施へのコミットメント、拉致問題等の人権状況への対応を含め前向きかつ具体的な対応を求めることが重要である旨指摘し、中国による北朝鮮への働きかけを期待する旨述べた。また、日本として、平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を図るという立場は不変である旨説明した。中国より、六者協議は現実的かつ効果的な枠組みであり、中国としても北朝鮮に対しその復帰を働きかけている旨説明があった。韓国から、北朝鮮にはいまだ根本的な変化がみられないので安保理決議による制裁を維持しながら対話を追及するという方針である等説明があった。
(2)東アジア地域協力
岡田大臣から、「東アジア共同体」という長期的構想を掲げ、開かれた地域主義の原則に立って、地域協力を一歩一歩進めていく考えであり、東アジア首脳会議、ASEAN+3、APEC等で日中韓の連携を強化していきたい、ASEAN統合を支持し、年内に日メコン首脳会議を開催する旨説明した。中国から、10月末のASEAN関連首脳会議では金融や経済について意見交換をしたいというASEAN側の提案を支持する、貿易分野やチェンマイ・イニシアチブ等の金融分野、あるいは環境分野で東アジアの地域協力を実務的に進めていきたい等指摘があった。韓国より、三カ国が軸となり、地域における経済協力、金融協力を強化していく必要がある旨述べた。
(3)気候変動
岡田大臣から、すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組の構築と意欲的な目標の合意を前提として、我が国は2020年までに排出量の25%削減を目指すことを表明しており、また「鳩山イニシアティブ」として途上国支援のあり方を総理から表明した旨を説明した。これに対し、中韓は気候変動について日中韓の協力を強化すべきことを指摘しつつ、中国からは、共通だか差異のある責任の考えに基づいて取り組む必要があること、途上国による対策を支援するために資源や技術を援助する必要があること、韓国からは、先進国によるリーダーシップと途上国による自発的取り組みが重要であること、韓国は途上国支援を行う用意があること等説明があった。
(4)軍縮・不拡散
岡田大臣から、核軍縮に関するオバマ米大統領のプラハ演説、先の安保理サミットの決議がもたらした気運を評価し、来年のNPT運用検討会議に向けて三国が協力すべきこと、中国が包括的核実験禁止条約の早期批准に向けた努力を表明しカットオフ条約交渉の早期開催を支持したことを評価すること、米露の核削減協議が進展しており中国にも自らの核軍縮に努力して欲しいこと等を指摘した。これに対し中国より、米露の核削減交渉の進展を期待しており中国としても核軍縮に積極的であること、中国は核の先制不使用、及び非核国・地域への核による威嚇や使用は行わないことを表明しており、1964年に核開発を行って以来、核の廃絶を主張してきたこと等の説明があった。
(5)国際金融・経済情勢
三カ国の大臣は、世界経済は最悪期を脱しつつあるが、回復は依然として強固ではなく、アジア経済の回復と強化に向けて三カ国が協力する必要があることで一致した。岡田大臣より、WTOドーハラウンドの2010年妥結に向けた努力の必要を述べ、中韓は早期妥結の重要性を指摘した。
(6)国連改革
岡田大臣から、日中韓はアジア地域の過小代表性の改善など共通の利益を有しており常任理事国拡大による本質的な安保理改革のために協議していきたい旨発言。中国より、中国の立場は本年国連総会で始まった協議において表明しているものから変わりはないとしてその概要について説明があった。