日中韓外相会議出席のために中国・寧波を訪問中の玄葉外務大臣は,4月7日(土曜日)17時50分(日本時間18時50分)から約1時間25分,楊潔篪(よう・けつち)中国外交部長との間で日中外相会談を行ったところ,概要は以下のとおりです(日本側:丹羽駐中国大使,杉山外務省アジア大洋州局長他,中国側:羅照輝外交部アジア司長他が同席)。
1. 日中関係総論
- (1)双方は,日中関係は全体として良好な発展をとげており,昨年12月の野田総理訪中時に一致した具体的な取組を着実に実施し,本年の日中国交正常化40周年を一層盛り上げ,「戦略的互恵関係」の更なる深化を図るべく,外交当局として尽力していくことで一致した。
- (2)双方は,政治的相互信頼の増進のためにハイレベルの交流を活発に行うことを確認し,その中で,日中ハイレベル経済対話を早期に開催することで一致した。この中で,玄葉大臣から,中国首脳の訪日を改めて招請し,また,5月の日中韓サミット出席のための野田総理訪中は重要な機会である旨述べた。これに対し楊部長から,野田総理の5月の訪中を歓迎する,それに向けしっかり準備したい,また,中国首脳に対する改めての訪日招請に感謝する旨述べた。
- (3)双方は,議会,政党間交流の重要性についても一致した。
2. 北朝鮮
- (1)双方は,事態の進展を注視しており,憂慮を共有しており,事態が悪化しないよう北朝鮮の自制を求める努力を最後まで行う,いずれにしても,日中間で緊密な連絡と協力をしていくことで一致した。
- (2)この中で,玄葉大臣から,北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイルの発射が仮に強行された場合には,関連の国連安保理決議の明白な違反であり,国連安保理を含む国際社会が適切な対応をとるべきである旨述べた。また,拉致問題に対する中国の理解と協力を改めて要請した。
3. 日中関係各論
(1)海洋に関する協力
- (ア)昨年12月の野田総理訪中時に達成された首脳レベルの合意に基づき調整を行ってきた結果,双方は,日中高級事務レベル海洋協議第1回全体会議を5月中旬に中国で開催することで一致した。
- (イ)玄葉大臣から,東シナ海資源開発に関する国際約束締結交渉の早期再開を改めて要請した。これに対し,楊部長から,交渉の早期再開のため緊密な接触と意思疎通を一層行い,積極的進展を図っていきたい旨述べた。
(2)経済,震災を受けた協力
- (ア)双方は,来たるべき日中韓サミットにおいて,日中韓投資協定の署名を成果とすべく協力していくことで一致した。また,日中韓FTAについても,双方は,早期の交渉開始に向け日中韓三国間の意思疎通を一層緊密にしていくことで一致した。
- (イ)双方は,具体的な大型プロジェクトを含む環境・省エネ分野,金融・財政分野など,幅広い分野で協力を深めていくことで一致した。
- (ウ)玄葉大臣から,日本産食品等に対する中国の輸入規制措置の早期緩和,解除,中国政府による福島等の重度被災地への渡航自粛措置の早期緩和,解除,福島等被災地と中国との間の直行便の早期復航を改めて強く要請した。これに対し,楊部長から,科学的レビュー及び国民の安全を確保するとの観点から,関連の措置を引き続き真剣に検討していきたい旨述べた。更に,直行便の早期復航に関しては,担当部門が市場の需要に基づき,仙台,福島への直行便の復航を奨励している旨述べた。
- (エ)玄葉大臣から,被災三県を訪問する中国人個人観光客に対して,一定の試行期間という前提での数次ビザの発給を,7月を目処に開始するべく準備を進めている旨述べた。これに対し,楊部長から,多くの中国の観光客により多くのビザを発給されることを歓迎する旨述べた。
(3)文化・人的交流
双方は,4月10日に東京にて行われる「日中国民交流友好年」中国側主催開幕式など,関連行事の成功に向け協力を一層強化することで一致した。
(4)遺棄化学兵器処理事業
双方は,日中両国間で先般一致した廃棄計画に基づき,遺棄化学兵器処理事業を推進していくことで一致した。
4. 日米中対話
玄葉大臣から,日米中対話を早期に開始したい旨述べた。これに対し,楊部長から,現在中国側で真剣に検討している旨述べた。