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平成21年11月7日
(英文はこちら)
第1回日本・メコン地域諸国首脳会議東京宣言を踏まえ、日本及びメコン地域諸国は63の行動・措置を以下のとおり採択する。
日本及びメコン地域諸国は、本件行動計画に含まれるいくつかの行動の具体化及び見直しのため、2010年前半に高級実務者会合(SOM)を開催する。
総合的なメコン地域の発展
1.ハード及びソフト面のインフラ整備
- 1.1 日本は、東西経済回廊及び南部経済回廊の残余部分を完成させるため、橋梁や道路を含むインフラ建設を一層支援する。日本は、メコン地域諸国との間で、カンボジアのネアックルンにおけるメコン河をわたる橋梁の重要性について認識を共有する。
- 1.2 日本は、カンボジア、ラオス及びベトナム(CLV諸国)の国境地帯にある開発の三角地帯におけるプロジェクトを支援するとのコミットメントを再確認する。メコン地域諸国は、日本が2008年1月の第1回日メコン外相会議において表明した2000万米ドルの支援における22のプロジェクトについて、効率的で迅速な実施を約束する。
- 1.3 日本は、カンボジアのシハヌークビル港など、地域の物流、流通、及び人の移動にとって鍵となる主要港湾や空港の開発を促進する。
- 1.4 日本は、CLV諸国のメコン河流域及びメコンデルタにおける送電・配電に関するプロジェクトなど、送電線や情報網の建設への支援を促進する。
- 1.5 タイは、同国の憲法及び法律に従い、近隣諸国とつながる道路及び橋梁の建設、改良及び維持に対する更なる支援を実施する。
- 1.6 日本及びメコン地域諸国は、2009年10月24日に開催された第1回日メコン経済大臣会合において首脳へ報告することが決定された日メコン経済産業協力イニシアティブ(MJ-CI)に基づく協力を促進する。
- 1.7 日本は、メコン地域諸国が税関においてより効率的で効果的な手続きを行うことを支援する。日本は、メコン地域の税関におけるリスク管理に関する地域協力プロジェクトを、政府開発援助(ODA)(技術協力)を通じて、また、エックス線検査機材等の提供や税関職員の訓練などを、日本が2008年1月の第1回日メコン外相会議で表明した2000万米ドルの東西及び南部経済回廊における物流効率化支援を通じて実施する。
- 1.8 日本は、物流サービス業者や荷主に対して物流ワークショップを開催する。
- 1.9 日本は、カンボジア、ラオス、ミャンマー及びベトナム(CLMV諸国)の各国において経済特区(SEZ)に関する研修プログラムを実施する。
- 1.10 日本は、メコン地域の開発における主要拠点(産業及び物流のハブ)である地区の開発のため、専門家を派遣し、セミナーを開催する。日本は、メコン地域内の開発を促進するため、ハード・インフラの開発と整備に向けたフィージビリティ・スタディを実施する。
- 1.11 日本は、CLV諸国にある既存の日本センターをネットワーク化し、メコン地域における起業家育成のための共通研修プログラムを開始する。
- 1.12 タイは、タイ国際開発庁(TICA)及び近隣諸国経済開発協力庁(NEDA)を通じた、CLMV諸国における人材育成への経済・技術支援を継続する。
- 1.13 メコン地域諸国は、必要な腐敗防止措置をとり、日本のODAを効率的に実施することを決意する。日本は、こうした措置や実施を歓迎する。
- 1.14 日本及びメコン地域諸国は、地域の効率的な発展を促進するため、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)がアジア開発銀行(ADB)及びASEAN事務局とともに、アジア総合開発計画の一部として、メコン地域における協力案件リストを策定することを歓迎する。
- 1.15 日本及びメコン地域諸国は、日本貿易振興機構(JETRO)による、日本からの投資促進、物流分野での人材育成、裾野産業育成支援、輸出産業の強化、一村一品展覧会などの、日本とメコン地域諸国間の貿易・投資の拡大に向けた様々な活動を歓迎する。
2.官民の協力・連携の促進
- 2.1 日本及びメコン地域諸国は、貿易投資促進のための既存の官民合同対話の参加者を拡充する努力を行う。日本及びメコン地域諸国は、メコン地域諸国の日本企業が、その企業が活動を行っていない国において官民合同対話が開催される際に参加することを歓迎する。
- 2.2 日本は、ハード及びソフト面のインフラ整備、物流及び産業開発を含む官民がともに関心を有する課題に関して議論するため、日本及びメコン地域諸国の官民学の参加者により構成される官民協力促進のための新たなフォーラムを立ち上げる。
- 2.3 日本は、官民協力の開発モデルとして、ベトナムのラックフェン港の整備を支援する。同地の国際深海港及び関連インフラは日本の借款で建設され、バース設備の管理及び整備は複数の日本企業及びベトナム企業の合弁企業が実施する。
- 2.4 日本は、アジアにおけるインフラ整備のため日本貿易保険(NEXI)の特別支援枠を活用し、日本の円借款とともに、メコン地域の市場への民間企業の進出を促進する。
- 2.5 日本は、ツーステップローンを含む国際協力銀行(JBIC)による金融面での措置を通じ、個別案件ベースで日本企業のメコン地域諸国への投資を支援する。
- 2.6 日本は、ODAや他のスキームを通じ、日本企業がメコン地域の市場に参入することを促すため、主要な鉱物埋蔵地に関連するインフラの改善を支援する。メコン地域諸国は、互いの利益を促進し地域の開発を確保する日本企業の活動を歓迎する。
- 2.7 日本及びメコン地域諸国は、投資に関するセミナーの開催やメコン地域各国への投資ミッションの派遣などの、日本アセアンセンターの努力を歓迎する。
- 2.8 日本及びメコン地域諸国は、タイのメコン・インスティテュートや他の機関による、互いに関心を有する課題である観光、人身取引、気候変動、大メコン圏経済協力プログラム(GMS)越境交通協定(CBTA)、貧困削減、公的セクター改革、移民、環境、中小企業振興、メコン河流域開発といった分野での人材育成における協力を歓迎する。
3.地域横断的な経済面での制度整備支援
- 3.1 日本は、国際協力機構(JICA)、JETRO、海外技術者研修協会(AOTS)他関連機関による、セミナー開催、研修生受入、専門家派遣を通じた知的財産制度の向上における人材育成を促進する。メコン地域諸国は、これら分野において適切な保護を、各国の法律及び関連する国際協定に従って提供する。
- 3.2 日本は、経済関連法制度整備のため、関税政策行政アドバイザーの派遣など、経済関連法制度整備を支援する(セミナー、研修生受入、専門家派遣)。
- 3.3 メコン地域諸国は、CBTAの実施促進のため、関係国間で必要な覚書を締結する。この関連で、日本及びメコン地域諸国は、JETROが、物流に関するワークショップにおいて、行政官及び物流業者に対し、CBTAに関する他者の知見や経験を学ぶ機会を与えることを歓迎する。
- 3.4 日本は、トラック運転を含む資格・研修システムに関する調査を引き続き実施する。
人間の尊厳を重んじる社会の構築
4.環境・気候変動~「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年」イニシアティブ
- 4.1 2010年前半に開催するSOMにおいて、日本及びメコン地域諸国は、「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年」の下で実施される具体的目標及び行動の実質化に関する課題を協議する。SOMにおいて協議される主要課題は以下のとおり:
- (1)日本による、沿岸・乾燥地帯の森林再生計画を含む、持続可能な森林管理及び関連する人材育成の推進への支援。
- (2)2010年10月に生物多様性条約第10回締約国会合が日本で開催されることを考慮し、コミュニティ・レベルでの生活改善のためのマングローブ湿地帯管理プログラムを含む生物多様性の保存に向けた貢献に関する日本のプロジェクト。
- (3)メコン河の水資源管理促進に向けた日本とメコン地域諸国との協力。
- (4)光電池の科学技術戦略分野における技術供与や人材育成、バイオマス分野における研修員受入及び共同研究の促進など、省エネルギーやクリーン・エネルギーに関する日本の協力。
- (5)下水施設の統合や排水システムの改善など、洪水に強い都市計画への日本の支援。
- (6)天気・洪水予報システムの改善、メコン河の洪水・渇水管理及び緩和、地域住民の自然災害の被害への対処、防御と早期回復に関する能力強化に対する支援を通じた、自然災害に強い社会づくりへの日本の支援。
- (7)メコン地域諸国政府の、環境・気候変動分野における政策策定能力向上に関するプロジェクト。
- (8)気候変動への対処に関し、すべての主要経済国が野心的な目標と2013年以降の公正で効率的な国際枠組みに合意するための、日本とメコン地域諸国との協力。
- (9)持続可能な森林の管理、保全、生物多様性の持続可能な利用及び水資源管理等の分野におけるメコン地域諸国の努力。
- 4.2 日本及びメコン地域諸国は、情報提供や人材育成を通じ、アジアにおける水環境パートナーシップ(WEPA)の下で水環境管理における協力を一層促進する。この関連で、日本は、メコン地域諸国における水資源管理を支援するとともに、アジアにおける水関連災害による被害の減少を目指しセミナーを開催する。
- 4.3 日本は、気候変動への影響調査に関するパートナーシップ・プロジェクトの実施を継続し、メコン地域における気候変動への適応について関係機関の能力強化を図るアジア太平洋気候変動適応ネットワークを支援する。メコン地域諸国は、適応手段に関する情報・知識の共有の重要性を確認し、同ネットワークへの感謝と支持を表明する。
- 4.4 メコン地域諸国は、国連食糧農業機関(FAO)との協力を通じた持続可能な森林管理に関するモニタリング、アセスメント及び報告の強化、森林の減少・劣化による温室効果ガスの排出の抑制(REDD)の実施枠組みについての方法論・技術的アプローチの強化に関する研究、及び自然災害緩和に関する森林管理の研究プロジェクトに係る日本のイニシアティブを歓迎する。
- 4.5 日本は、バイオマスの生産、回収、変化及び使用のための包括的なシステムを実現する「バイオマス・タウン」の構築を通じ、また、社会と地元の関係者を結びつける地域のシステムを最大限利用することを通じ、バイオマスの広範な利用を引き続き支援する。
5.脆弱性の克服
- 5.1 日本は、メコン地域諸国がミレニアム開発目標を達成できるよう引き続き支援する。
- 5.2 日本は、貧困地域における病院建設のための支援やメコン地域における保健システムを強化する医学的知見の普及を引き続き行う。
- 5.3 日本は、ラオスの南部三州、ベトナム北部の山岳地帯、サイクロン「ナルギス」の影響を受けたミャンマーのエーヤワディ川デルタ地域などの貧困地域における学校建設を引き続き支援する。
- 5.4 日本及びメコン地域諸国は、2011年にインドネシアで行われる次回ASEAN地域フォーラム(ARF)実動演習を含む、災害救援分野における協力を引き続き行う。
- 5.5 日本は、河川浸食や洪水などの水関連災害への対処能力を向上させるため専門家を引き続き派遣する。メコン地域諸国は、災害への脆弱性を減少させ災害の被害を極小化するための措置やシステムの構築における日本の貢献に感謝した。
- 5.6 日本は、CLV諸国及びその国境地帯における地雷除去への支援を強化するプロジェクトをはじめ、地雷やクラスター爆弾を含む不発弾処理活動を引き続き積極的に支援する。
- 5.7 日本は、NGOと協力し、2009年のケッツアーナ台風により甚大な被害を受けた、開発の三角地帯のラオス側における不発弾処理を支援する。
- 5.8 日本は、景気減速により影響を受けやすい人々に対する支援を、以下の分野において実施する。
- (1)国境地帯における貧困層への支援(ライフラインの確保、教育水準の向上、職業訓練の実施等)
- (2)国境を越えた懸念事項への対処(急速に拡大する感染症対策の能力強化等)
- (3)自然災害の影響を受けやすい地域への支援(台風・サイクロンや豪雨により影響を受けた生活環境の回復・向上の支援、自然災害に対する対応能力の向上等)
- 5.9 日本は、専門家の派遣等を通じ、メコン地域における農業や農村コミュニティの発展、食料安全保障の向上、食品の品質・安全性の向上を引き続き支援する。
- 5.10 日本及びメコン地域諸国は、流行するH1N1インフルエンザ及びH5N1鳥インフルエンザという共通の脅威に対処するため協力する。日本は、世界保健機構(WHO)及びASEANと協力しつつ、メコン地域における感染症拡大への備え及び対応を強化するための努力に対し、技術協力の拡充など様々な措置を通じた支援を継続する。
- 5.11 日本は、鳥インフルエンザやH1N1インフルエンザ等の感染症対策のため、日本の大学とASEAN及びアジアにおけるカウンターパートとの間で共同研究のイニシアティブを促進する。
- 5.12 日本は、環境やエネルギー、災害リスク軽減、感染症等の地域の共通課題の分野において、メコン地域との間で共同研究を通じた科学技術協力を引き続き促進する。
- 5.13 日本及びメコン地域諸国は、人身取引の撲滅に向けた協力を行う。
- 5.14 日本は、農村地域における青少年の能力向上プロジェクトや小規模の村における生活改善のための橋の建設などを通じNGOとの連携を強化する。
6.地域安定のための協力強化
- 6.1 日本及びメコン地域諸国は、ミャンマーで2010年に行われる総選挙が、透明性を有し、民主的かつすべての関係者が参加する包含的なものとなることを信じる。日本及びメコン地域諸国は、ミャンマー政府が民主化プロセスにおいてより前向きな措置を講じることを期待する。日本国及びメコン地域諸国は、また、ミャンマーの民主化が前進するにつれて、ミャンマーを含むメコン地域の発展が一層進展することを信じる。
- 6.2 日本とメコン地域諸国は、北朝鮮が関連するすべての国連安全保障理事会決議を完全に遵守し、六者会合における義務を完全に実施するよう求める。日本とメコン地域諸国は、北朝鮮に対し、依然として北朝鮮をめぐる諸懸案を協議するための最も有効な枠組みである六者会合に即時かつ無条件に復帰するよう求める。また、日本とメコン地域諸国は、北朝鮮が拉致問題を含む国際社会の人道上の懸念に取り組む必要があることを強調する。
- 6.3 日本及びメコン地域諸国は、関連する国連総会決議及び決定に示された国連改革、特に常任・非常任理事国双方の拡大を通じた安全保障理事会改革が緊急に必要であることを再確認する。日本は、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることに対するメコン地域諸国による引き続いての支持に対して、高く評価した。
7.メコン地域諸国に対する日本のODA政策
- 7.1 日本は、メコン地域を重点地域とし、メコン地域全体およびカンボジア、ラオス、ベトナム(CLV)の各国への政府開発援助(ODA)を拡充するとの政策を継続する。日本は、メコン地域の更なる繁栄のため、今後3年間で5000億円以上のODAによる支援を行う。この支援が民間投資の呼び水ともなり、日本の知見・資産を総動員し、東京宣言にある措置をより効果的な形で促進することにつながることが期待される。これに関し、メコン地域諸国の首脳は、日本のODAを効率的・効果的かつ適正に活用するとのコミットメントを再確認した。
協力と交流の拡大
8.国民間の交流の推進
- 8.1 日本は、メコン地域諸国から、青少年を含め、2010年からの3年間で3万人をめどに日本に招待するとの新しいイニシアティブを開始する。
- 8.2 日本は、2008年1月の第1回日メコン外相会議議長声明に述べられたとおり、5年間で1万人以上の青少年を受け入れるとの方針を達成すべく、日本及びメコン地域諸国との青少年交流事業の促進を継続する。
- 8.3 日本は、日本の大学及び教育機関によるメコン地域諸国の学生の受入、及びより多くの日本の学生のメコン地域諸国への派遣を引き続き歓迎する。メコン地域諸国は、日本のこの努力を歓迎する。
- 8.4 メコン地域諸国は、日本が実施している21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム)が、メコン地域と日本の間の相互理解を引き続き促進するものとして、この計画への感謝を表明した。
- 8.5 日本及びメコン地域諸国は、国会議員間及び政党間の交流を活性化する。この関連で、日本及びメコン地域諸国は、ラオスが2009年12月21日及び22日に「日メコン女性議員会議」を主催し、日本及び他のメコン地域諸国から代表団を招待することを評価する。
- 8.6 日本及びメコン地域諸国は、非正規教育分野における交流を強化するため、日本の公民館とメコン地域のコミュニティ学習センター(CLC)との交流と協力を推進する。
9.観光の促進
- 9.1 日本及びメコン地域諸国は、ベトナムが2009年12月1日から5日まで、カントー市で「日メコン観光文化フェスティバル」を主催し、日本及びメコン地域諸国から代表団を招待することを評価する。
- 9.2 日本及びメコン地域諸国は、日本アセアンセンターがメコン地域における観光活動を促進することを奨励する(観光フェア開催、観光分野における人材育成、ウェブサイト掲載内容の改善等)。
- 9.3 メコン地域諸国は、「安全で安心なメコン地域」のイメージの確立に向けて観光客の安全を確保するための取組を行い、日本は、そうした取組に対して関連する支援を行う。特に、日本及びメコン地域諸国は、研修プログラムの実施など、メコン地域諸国の「ツーリスト・ポリス」の能力向上を支援する方策を探求する。
- 9.4 日本及びメコン地域諸国は、日本旅行業協会(JATA)のメコン地域観光促進委員会による、観光促進プログラム、交流プログラム、情報・仲介者サービスプログラム等を含む「行動計画」の促進を歓迎する。
10.文化遺産の保護
- 10.1 日本は、奈良市において日本及びメコン地域諸国の古都の代表が出席するシンポジウムを開催し、文化遺産保護の重要性を再確認するとともに、日本及びメコン地域諸国における文化遺産を経済発展及び観光のためにどのように利用できるかについて意見交換を行う。
- 10.2 日本は、カンボジアのアンコール遺跡やベトナムのタンロン遺跡における修復や能力向上プログラムなど、メコン地域諸国による有形・無形文化遺産の保存及び修復活動を引き続き支援する。
- 10.3 日本及びメコン地域諸国は、民間、NGO、学術機関による文化遺産の発掘、保護、修復活動を評価する。