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(小泉内閣メールマガジン第219号[特別寄稿]平成18年1月26日)
サマーワ外務省連絡事務所長 小林弘裕
一昨年4月、サマーワ外務省連絡事務所長として着任して以来、一年半以上が経ちました。外務省事務所は陸上自衛隊サマーワ宿営地内にあり、10名のメンバーが1カ月ごとに交替する形で5名の外務省職員が常勤して、陸自とともに人道復興支援に当たっています。
日本は、自衛隊による人的貢献とODAによる支援を「車の両輪」として、水・衛生、保健・医療、公共施設の復旧・整備等の分野を中心にムサンナー県民の生活基盤再建に重点を置いた復興支援を行っています。
これにより雇用も拡大しており、街全体に活気が出てきた気がします。日本の貢献が実を結んでいるのを目の当たりにすると、日本人として、とても誇らしい気持ちになります。
私はサマーワに入るとき、楽しみにしていることが二つあります。
一つ目はサマーワの街が発展する様子を見ることです。
サマーワは人口約25万人、中心をユーフラテス川が流れ、アーケード付きの中東風商店街や市場のある親しみの持てる街です。治安が比較的安定していることもあって、経済活動が回復しつつあり、街のところどころで家や商店が新築されています。
コンクリートで柱や梁を作り、焼き煉瓦を積み上げていき、表面をコンクリートでならすだけの簡単な造りですが、出来てしまうとなかなか立派で、そのような家が数軒並ぶと通りの様子が一変します。街はずれにそのような新築が多く見られ、一年半前と比べ街が大きくなった感じがします。
また街のセメント工場は以前動いていませんでしたが、今は煙突からモクモクと煙が出ています。市場に出回る野菜、果物、雑貨等なども以前より充実してきています。そういえば日中は市内中心部の渋滞も前より激しくなりました。
楽しみの二つ目はサマーワの宗教指導者に会うことです。
宗教指導者はイスラムの教えを説くばかりでなく、人々に生活一般の指導をし相談も受ける、いわば権威ある世話役のような存在で、私も有力な宗教指導者を毎回訪れています。
話を聞くとよく分かるのは、日本の人道復興支援が人々に歓迎されていること、日本の事業が確実に生活向上に繋がっていることです。また陸自の派遣期間の延長には感謝していました。
一方で、注文や忠告もあります。やはり経済大国日本の企業が一日も早くイラクで活動を再開してほしいとよく言われます。私は治安が良くなれば来られるようになりますよと説明することにしています。
昨年12月15日の国民議会選挙はサマーワでも平穏に終わり、1月20日には結果も発表されたところですが、人々は将来への希望を大きくしたようです。
サマーワが復興に成功してイラク全体のお手本となり、イラク全体の治安も改善し、日本が官民挙げてイラク人による国づくりに協力できる日が一日も早く来ることを私は期待しています。