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第2回 日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム共同報告書(仮訳)
平成20年10月22日
(英文はこちら)
はじめに
- 資源・エネルギー・食料価格の高騰や地球環境問題への対応、最近においては特に国際金融不安と世界経済の減速など、グローバルな課題が山積し、各国の経済界を取り巻く環境は、厳しさを増している。
- 日印両国のビジネス・リーダーは、厳しい世界経済の現状に関する認識を共有するとともに、両国の経済連携の拡大・深化を通じて、互恵的かつ持続可能な経済成長を目指していく必要があることに合意した。これこそ、両国にとっての利益にとどまらず、今日の世界経済の安定化に資するものである。
- また、アジアおよび世界において、最も可能性を秘めた日印経済関係のさらなる発展のために、日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)が果たす役割は大きい。
- そこで、日印のビジネス・リーダーは、昨年8月の第1回会合に引き続き、日印経済関係の緊密化に向け忌憚のない意見交換を行い、本日、両国首脳に以下のとおり共同報告書を提出する。
1.日印経済関係の展望
(1)日印EPA締結を見据えた今後の機会と課題
- 日印の経済関係は急速に緊密化しており、2007年の貿易総額は対前年比約20%増、日本からインドへの直接投資は2005年から2007年にかけて約6倍に増大した。こうしたビジネスの活性化を磐石なものとするため、制度的なインフラとしての経済連携協定(EPA)が重要である。
- 日印のビジネス・リーダーは、日印EPA締結に向けた着実な進展を歓迎するとともに、EPAの利用度を高める観点から、互恵的で質の高いEPA実現に向け、両国政府が引き続き真摯に努力することを期待する。
- 日印経済界は、包括的な経済連携の枠組み活用を通じて、両国経済関係のさらなる緊密化に期待する。併せて、投資先としてのインドの競争力を高める観点から、EPA発効後も引き続き、土地収用制度や税制の簡素化、小売業への外資規制緩和、就労ビザの簡素化など、投資・ビジネス環境の継続的な改善の重要性を確認した。
- また、両国のビジネス・リーダーは、日印人材交流の拡大という観点から、日印間の旅客便数の倍増や新設インド工科大学への協力など、目に見える形で成果が現れていることを歓迎した。他方、安価なホテルの確保など、インドでビジネスを展開する際の課題を克服することが人の往来の増加につながるとの認識を共有した。
(2)インドにおけるインフラ整備への協力
- 日印のビジネス・リーダーは、インドの経済・産業がさらに発展する上で不可欠なインフラであるデリー・ムンバイ間産業大動脈構想について、プロジェクト開発ファンド(PDF)設立および先行プロジェクト実施を歓迎した。
- 双方は、ジェトロとCIIが、日印企業間のビジネス・マッチングを促進するとともに、DMICに関する情報を提供するためのウェブサイトを開設したことを歓迎した。
- 日本側は「インド幹線貨物鉄道輸送力強化計画」にも資する、日本のODAと民間投資との効果的な官民連携(PPP)を通じた協力継続の重要性を確認した。とりわけインドには、電力供給の拡大をはじめ、膨大かつ迅速なインフラ整備のニーズが存在する。こうしたインフラ整備にPPPが有効に機能するよう、民間が参加しやすい環境づくりが求められる。
2.グローバルな課題に対応する日印経済界の役割
(1)温暖化・省エネルギーへの対応
- 人類の生存基盤に関わる気候変動問題への対応は、緊急を要する課題である。気候変動問題への対応にあたっては、衡平性の原則の下、共通だが差異ある責任と能力に従って、経済発展と環境保全との両立を確保しつつ、全ての主要経済国が意義ある形で協力して取り組むことが重要である。
- このような観点から、ポスト京都議定書の国際枠組みを実効あるものとすべきである。両国のビジネス・リーダーは、経団連、日商、CIIの間で、気候変動問題に関する覚書締結に向けた取組みが進展していることを歓迎するとともに、政策対話を行うことに合意した。
- 経済発展と環境保全を両立させつつ気候変動問題を解決するためには、技術(技術開発・移転)が重要である。両国経済界は、日印エネルギー対話の着実な進展を望むとともに、国際連携の下で技術開発を推進するという日本政府提案を歓迎する。
(2)食料供給問題への対応
- 日印のビジネス・リーダーは、現下の資源・食料価格高騰が世界経済に及ぼす影響を憂慮するとともに、日本の技術を活用した食料増産など、インドを含む途上国への支援のあり方などにつき議論することに合意した。
総括
- 日印経済界は、貿易・投資の自由化とグローバルな法的枠組み構築を通じて、世界経済の足腰を強化するための努力がこれまで以上に求められているとの認識を共有した。
- 併せて、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定や印ASEAN・FTAが進展する中、これらを包含する東アジアEPA(ASEAN+6)の構築に向け、両国が共同でイニシアティブを発揮し、アジアならびに世界の持続可能な経済成長に貢献していくことに合意した。