アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
これまでの調査では、現地調査を経て、鉄道の将来需要予測、線路容量の検証、コストに基づく代替案比較、輸送システムの比較、及び、鉄道と船舶やトラック等他の輸送機関間の結節の効率化を総合的に図るインターモーダル輸送(複合一貫輸送)の観点からの課題の検討等を行った。これらの中間的な検討結果の概要は以下のとおり。
事業の投資効果について試算を行った結果、事業実施に見合う効果の発生が期待できる。
2021年から2022年及び2031年から2032年の貨物及び旅客の輸送需要を予測した。西回廊(主体区間はムンバイ~デリー間)は、西部沿岸の国際港と内陸部需要地との間のコンテナ輸送需要が急増し、2031年から2032年のコンテナ輸送需要は、2004年から2005年の実績値の約11~12倍に達すると予測される。東回廊(主体区間はハウラー~ルディアナ間)は、石炭、鉄鉱石、セメント、肥料、穀物等の品目ごとの専用貨物輸送がほとんどであり、2031年から2032年のこれら貨物の輸送需要も、2004年から2005年の実績値の約3倍に達すると予測される。
上記2.の予測をもとに、実際の路線及び列車計画を策定するため、新線及び改良後の既存線の線路容量を設定した。鉄道施設の現状に関する現地調査を分析した結果、信号の全面自動化等を前提として、新線においては140本/日(片道)、改良後の既存線においては110本/日(片道)の線路容量が設定可能である。(現状の既存線の線路容量は最大で概ね85本/日(片道)である。)
貨物新線案、既存線改良案、旅客新線案(既存線を貨物に使用)の3案について、比較検討を行った。概算建設費を比較すると、旅客新線案は貨物新線案に比べて各回廊とも40~50%程度高くなる。これは、旅客新線の場合、極力市街地に駅を設ける必要があり、用地費、土木工事費等が嵩むことが主たる理由である。このため、旅客新線案の優位性はないと判断し、今後は、貨物新線案を中心として、区間によっては在来線改良案を組み合わせた整備案も併せて検討を進めることとする。
○電化・非電化の比較
本プロジェクトの需要予測レベルの輸送量を擁する路線の場合、環境へ与える影響、経済性から定性的に電化案が有利であることは明らかであるが、コンテナ輸送と品目別の専用貨物輸送が混在し、最も高密度輸送となることが想定される西回廊について、向こう30年間のライフサイクルコスト経済計算を行った。その結果、電化案は非電化案に対して、電化工事費が初期投資として必要となるが、機関車の製作費、維持管理費、耐用年数、輸送トンキロ当たりの動力費等の増減要素を考慮した場合、電化案のほうがライフサイクルコストで低廉であり、経済的に有利な結果となった。したがって、西回廊も含め電化案を推奨する。
現在、ムンバイ港にコンテナ船が到着してからデリー近郊のコンテナヤード間経由で荷主へ荷渡しされるまでの日数は13日から16日を要しているが、そのうち、鉄道輸送に要する日数は3日であり、港湾・ヤードでの手続き・荷扱いに10日から13日間を要している。今後、港湾・ヤードでの通関にかかる書類手続きの合理化、コンテナ置き場の整備、構内レイアウト、移動設備等の改良、顧客への情報提供サービスの充実等を図ることが極めて重要であり、鉄道の改良と合わせることにより、13日から16日を5日程度にまで短縮可能と想定される。