アジア

世界地図 アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ

第二回日中ハイレベル経済対話の概要と成果

平成21年6月7日

(写真)


 2009年6月7日、東京において、第二回日中ハイレベル経済対話を開催。

 日本側出席者は中曽根弘文外務大臣(議長)、与謝野馨財務大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策・金融)、二階俊博経済産業大臣、金子一義国土交通大臣、斉藤鉄夫環境大臣、石田祝稔農林水産副大臣の合計6名の大臣及び副大臣。更に、総務省及び文部科学省からも幹部が出席。

 中国側出席者は王岐山国務院副総理(議長)、楊 潔チ(よう・けつち)外交部長、張平(ちょう・へい)国家発展改革委員会主任、陳徳銘(ちん・とくめい)商務部長、崔天凱(さい・てんがい)在京中国大使、畢井泉(ひつ・いせん)国務院副秘書長、曹健林(そう・けんりん)科学技術部副部長、丁学東(ちょう・がくとう)財政部副部長、李干傑(り・かんけつ)環境保護部副部長、牛盾(ぎゅう・じゅん)農業部副部長、陳健(ちん・けん)商務部副部長、蒲長城(ほ・ちょうじょう)国家質量検験検疫総局副局長、郭慶平(かく・けいへい)人民銀行行長助理、印紅(いん・こう)国家林業局副局長の合計14名の部長及び副部長クラス。更に、工業情報化部、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会等からも幹部が出席。

 本件対話の概要と主な成果は以下のとおり。

1.総論

(1)日中経済の相互依存関係がますます高まり、地域及び国際社会においてますます重要な責任を担いつつある現状を踏まえ、世界経済金融危機への対応、貿易・投資、気候変動を含む環境・省エネルギー及び地域及び国際経済に関して、双方の経済担当閣僚による率直な意見交換が行われ、相互理解が促進された。

(2)日中ハイレベル経済対話が、日中経済関係を進展させ日中間の「戦略的互恵関係」を推進するための最も重要な枠組みであること、また、多くの課題に直面し、不透明感の増しつつある現下の国際社会において、日中両国の果たすべき使命は極めて重大であることを確認し、第三回の日中ハイレベル経済対話を2010年末までに中国において開催することで一致した。

2.世界経済金融情勢と対応

 世界経済金融危機への対応について、世界経済に重要な位置を占める日中両国が、4月2日のロンドン・サミットで合意された具体的施策を迅速かつ着実に実施しつつ、世界経済をできるだけ早く回復させるために協力していくことを確認。

 とりわけ、それぞれの国内経済対策に全力を挙げること、対アジア支援や、新興国・途上国への資金フローを確保するためのIMFや国際開発金融機関による積極的な支援をサポートすること、貿易・投資の保護主義を抑制することについての重要性を認識。

 更に、アジアが「世界の成長センター」として開かれた形で発展し、世界経済を牽引していくことが重要であり、日中が協力して、アジアの成長力強化に取り組み、アジアの経済成長をリードしていくことを確認。

3.貿易・投資

(1)貿易投資政策

 2008年5月の胡錦濤主席訪日の際に策定した『日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表』その他の決定に基づき、科学技術協力、技術貿易ワーキンググループの開催、中小企業協力の検討の進展が報告され貿易投資関連法制度に関する共同研究開催の報告と企業間のロイヤリティ契約に関する課題等の解決に向けた協力を推進していく。また、国際産業連関表に関する統計支援に関して、協力を推進していく。

 日本側より、両国の貿易投資政策を開放的で透明性のあるものとすることの重要性に言及した。また、中国のITセキュリティ製品の強制認証制度を導入しないよう再考を求めるとともに、国際的に導入されている任意のITセキュリティ評価認証制度導入を慫慂し、そのための協力を提案。また、鉱物資源の輸出規制の改善を求め、対話継続の必要性について認識を共有した。更に、経済産業省と中国工業信息化部との間での次官級協議を2009年5月に開催し、この重要性を確認。

(2)物流政策対話

 日中双方の関係機関の局長レベルの対話メカニズムを設置し、両国間のサプライチェーン全体の円滑化に向けて、物流分野の協力と交流を強化する。

(3)金融分野の互恵協力

 金融市場の発展と投資環境の整備を行っていく上で、オープンで透明性の高い金融市場の構築と金融当局間の連携の強化が重要であることを認識し、両国の金融当局間の対話を強化、両国の金融機関の相互参入を推進、双方の証券取引所の関係を強化していく。邦銀の中国での業務拡大の障害となっている預金・貸出比率規制について柔軟な対応を要請し、また、中国の証券取引所における日本の金融商品の上場に関する検討の進展を歓迎。

(4)知的財産権協力

 知的財産権に係る日中間の交流と協力を強化するため、知的財産権ワーキング・グループを設置する経済産業省と中国商務部との間で覚書が作成されたこと、及び知財ミッションの相互派遣を継続することを歓迎。

(5)情報通信協力

 情報通信分野に関し、以下のとおり新たな協力が進展しつつあることを確認。

(6)農業協力

 農業分野における様々な事項でのこれまでの日中間の協力を踏まえ、既存の協力メカニズムによる交流と協力を強化しつつ、植物新品種の保護、日本の農産物の対中輸出の促進、食料供給と両立するバイオ燃料の促進に係る協力を促進していく。そのために農林水産省と中国農業部との間で新たに「日中農業協力の議事録」が作成されたことを歓迎。

 また、世界の食料安全保障の問題について建設的な意見交換を実施。

(7)食品・製品の安全

 食品・製品の安全を確保することが日中両国国民の生活に極めて重要であることを確認し、日本側より、中国製冷凍ギョウザ問題の早期解決を要請。

(8)防災協力

 2008年5月に起こった中国の四川・ブン川大地震の悲痛な経験と勇気ある協力を想起し、防災及び災害復興面での協力を強化していく。かかる観点から、文部科学省と中国科学技術部との間で「日中地震科学技術協力の覚書(2009年5月)」が署名されたこと、また、外務省JICA及び国土交通省と中国住宅都市農村建設部との間の耐震建築人材育成プロジェクトの推進を歓迎。

4.環境・エネルギー

(1)気候変動

「日本国政府と中華人民共和国政府との気候変動に関する共同声明」に基づき緊密に協力し、2009年末にコペンハーゲンで行われる気候変動枠組条約第15回締約国会議における合意に向けて、中国の次期枠組みにおける参加の在り方を含め、広範かつ建設的に意見交換。

(2)森林保全

 日中民間緑化協力委員会の活動を含め、森林保全・緑化、さらに木材の違法伐採及びその関連する貿易への対策についても協力を深めていく。

(3)省エネルギー

 過去3回の日中省エネルギー・環境総合フォーラムが顕著な成果を達成したことを確認し、第4回同フォーラムの、中国の地方政府・企業とのビジネスベースでの協力を進めることを含めた成功裡の開催と中国での省エネルギー目標を達成するために、トップランナー制度を始めとした我が国の省エネ制度や経験の紹介、エネルギー管理士などの人材育成面で、協力を深めていく。

(4)環境協力

「環境・エネルギー分野における協力推進に関する共同コミュニケ」を踏まえ、日中双方の自治体間の協力が進展しつつあることを確認し、特に、環境省と中国環境保護部の間で「川崎市及び瀋陽市の環境にやさしい都市の構築に係る協力に関する覚書」及び「環境に関する普及啓発・教育及び技術の分野における協力の一層の深化に関する覚書」の内容が新たに合意されたこと及び日中循環型都市協力が進展するとともに、水処理分野も含めた「資源循環政策対話」の開催、湖沼浄化等のため雲南省のてん池、安徽省の巣湖、河北省唐山市の下水再利用(工業用水)の事前調査を実施することを歓迎。

「環境保護協力の一層の推進に関する共同声明」を始めとする環境分野におけるこれまでの協力を基礎に、循環型社会の構築と廃棄物対策、黄砂・二酸化硫黄等の大気汚染対策、漂流・漂着ゴミ問題、持続可能な開発のための教育、農村地域等における分散型排水処理モデルプロジェクト、コベネフィット・アプローチの共同研究・モデル事業、環境汚染損害賠償制度の構築等に関し、更に協力を深化させることを確認。また、2010年に愛知県名古屋市で行われる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向けて協力していく。

5.地域・国際経済問題

(1)WTO交渉と保護主義の抑止

 世界経済の持続的成長を回復し、国際社会の安定と繁栄を確保するために、保護主義的な動きを抑止し、WTOドーハ・ラウンド交渉が意欲的でバランスのとれた形で早期に妥結することが極めて重要であることを確認し、そのために具体的な協力を行っていく。

(2)アジア太平洋地域協力

 アジアが現在の金融危機に適切に対応するとともに、日中両国が主導的役割を果たしていくべきことを確認。

 このため、チェンマイ・イニシアティブのマルチ化とアジア債券市場育成イニシアティブについて、5月3日にインドネシア・バリで行われた第12回ASEAN+3財務大臣会議における合意事項の早期実現に向けて建設的に貢献するとともに、貿易金融支援、ADBの一般増資の早期実施などについて、引き続き緊密な協力を行うことを確認。

 また、この地域における協力を更に促進するために、APECにおける日中間の協力を促進することを確認し、特に、日本が議長国となる2010年APECにおいて積極的に協力していく。

(3)第三国における協力

 国際社会の重要な課題である途上国の開発問題に関し、経験を共有して交流を強化するために、アフリカ問題等に関する日中間の対話を継続していく。

 第三国への経済協力分野において、国際協力銀行と中国輸出入銀行との間で「日中両国企業の第三国向け共同輸出案件を中国輸出入銀行と国際協力銀行が協調融資にて支援することに関する覚書が作成されたことを歓迎。

(4)新型インフルエンザへの対応

 新型インフルエンザの拡大が世界経済に影響を及ぼす可能性があるとの懸念に留意し、情報共有等の協力を行っていく。

6.その他の成果等

(1)胡錦濤主席訪日時の共同プレス発表経済部分のレビュー

 2008年5月に胡錦濤中華人民共和国主席が訪日した際に作成した『日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表』の70項目のうち半数以上を占める経済関連部分(PDF)PDFについて具体的にレビューを行った結果、現在、そのほとんどに着実な進展が見られることを歓迎し、今後も関連する業務を協力して推進していくことで一致。

(2)当局者間協力の進展

 日中の経済関係が幅広い分野において進展し、相互依存関係がますます深まっている結果、第二回日中ハイレベル経済対話の機会に、別紙の合意・協力文書(PDF)PDFが署名ないし作成されたことを歓迎。

(3)日中次世代への協力

 2009年4月に麻生日本国総理が訪中した際、総理より、日中友好関係を将来の世代にわたって更に発展させ永続的な日中友好関係の礎を築くために、日中の次世代のビジネスリーダーによる対話の枠組みを立ち上げることを提案されたことを受け、日本青年会議所と中華全国青年連合会が『日中次世代リーダー対話』を立ち上げることを決定したことを歓迎。

 人材育成支援無償資金協力「人材育成奨学計画」の交換公文が締結されたことを歓迎し、本計画が中国の市場経済化の促進、法制度整備や環境問題への対応等の解決に資することへの期待を表明。

Adobe Acrobat Readerダウンロード Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータのOS用のソフトウェアを入手してください。

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る | 目次へ戻る