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日本とカンボジアの間の新たなパートナーシップに関する共同声明
(和文仮訳)
(英文はこちら)
フン・セン・カンボジア王国首相は、2007年6月13日から16日まで、日本政府の招待で日本を公式訪問した。訪問中、安倍晋三内閣総理大臣とフン・セン首相は、2007年6月14日、首脳会談を行い、この声明を発表した。
- 我々は、協力の歴史を通して日本とカンボジアの間で育まれてきた、強い絆と相互の信頼を再確認する。カンボジアは、世界の平和と繁栄を実現する上での日本の積極的な役割を称賛する。カンボジアは、また、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)平和維持活動への支援を含む、カンボジアの和平プロセス及び紛争後の復興への多大な貢献に対して、日本政府及び日本国民への深い感謝を表明する。日本は、カンボジアが和平を実現し、国家再建を進め、急速な経済成長を達成し、国際社会においてより幅広い役割を果たし始めていることを称賛する。カンボジアの平和構築と国家再建における我々の協力は、成功のモデルを世界に示すものであり、我々はこの協力を誇りに思う。
- 両国の間のパートナーシップは新たな段階に入った。我々は、二国間関係を更に強化し、共同して地域的及びグローバルな課題に取り組んでいくことを決意する。
基本的価値の実現
- 我々は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値の重要性を再確認し、これらの価値の実現に向けたカンボジアの確固とした進展を歓迎する。カンボジアにおける選挙はより公正かつ自由に行われるようになってきている。日本は、カンボジアにおける民主主義の強化に対する支援を継続する。
- 我々は、民主カンプチアの時期におけるカンボジア法及び国際人道法に対する犯罪及び深刻な違反を訴追するための、カンボジア特別法廷の正式な設置を歓迎する。カンボジアは、日本が2100万ドル以上の供与や上級審への判事の派遣によりこの裁判に貢献していることに感謝する。我々は、カンボジアにおける正義と国民和解を達成するため、裁判が迅速かつ厳正に進められることを希望する。
- カンボジアは、民法及び民事訴訟法の起草における日本の支援に感謝し、その法制度の発展に更に努める。日本は、カンボジアの人間の安全保障を支えるための前提条件である法の支配に関連する分野において、カンボジアを引き続き支援する。
経済関係の強化
- カンボジアは、同国の持続可能な開発と貧困削減における、日本の政府開発援助の重要な役割を評価する。日本は、「四辺形戦略」の下での国家開発のためのカンボジアの努力を高く評価し、このような努力への支援を継続する。カンボジアは、支援の効果的かつ効率的な活用にコミットしている。我々は、第二次プノンペン市洪水防御及び排水改善計画並びに人材育成奨学計画に係る交換公文の署名を歓迎する。
- 貿易及び投資はカンボジアの持続可能な経済成長のために重要である。我々は、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とカンボジア王国との間の協定の署名を歓迎し、日本のカンボジアにおける投資がこの協定により促進されることを希望する。日本は、カンボジアに政府及び民間セクターの代表から構成されるビジネス・ミッションを派遣する。カンボジアは、経済特区の整備を含むより良好な投資環境の実現のため最大限の努力を払う。
- 我々は、一層統合された地域経済がカンボジアにおける持続可能な開発に資すると信じる。カンボジアは、「開発の三角地帯」への支援を含む、メコン地域開発に対する日本の支援を高く評価し、日本・メコン地域パートナーシップ・プログラムを歓迎する。「第2東西経済回廊」及び「カンボジア成長回廊」に関連する日本の支援は、地域ネットワークを整備してきた。我々は、ネアックルーンの第二メコン架橋建設に向け、最優先で迅速に進める。カンボジアは、通関手続の調和や越境運送のための車両の相互認証といった改革を推進することにより、日本の援助で建設されたインフラを効果的に活用する。
相互理解の促進
- 人と人との交流を通じて促進された相互理解は、両国の緊密な関係の基礎である。日本は、青年海外協力隊(JOCV)を含む専門家を派遣し、カンボジア人の学生及び研修生を受け入れることにより、カンボジアの人材育成を支援してきた。日本のNGOは、1991年のパリ和平協定以前から、カンボジアにおいて人道支援を行っていた。このような経験に基づき、我々は、ハイレベルの相互訪問をより頻繁に行うとともに、人と人との交流を促進する。
- 日本は、21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)を含む様々な計画の下、今後5年間で1,000人を超えるカンボジア人青少年を日本に招聘することを目指す。我々は、日本において学び、又は日本語を習得したカンボジア人学生が、カンボジアにおいて様々な分野で一層積極的な役割を果たすことを希望する。
- 我々は、日本からカンボジアへの観光客の増加が、相互理解を向上させ、カンボジアの発展を促進すると信じる。我々は、アンコール遺跡の保存のため積極的に協力する。日本は、アンコール歴史地域の保存と開発のための国際調整委員会の共同議長として、保存修復作業への支援を継続する。カンボジアは、観光の増加の影響を考慮することにより、シェムリアップ州における調和のとれた開発を進める。
地域的及びグローバルな課題への取組
- ASEANは、東アジアの地域協力において重要な役割を果たしている。カンボジアは、ASEAN統合への日本の継続的な支援、及び東アジア首脳会議その他の地域協力の枠組における日本のイニシアティブに感謝する。我々は、日ASEAN包括的経済連携協定交渉の最近の進捗、特に、ASEAN及び日本の経済担当大臣が、ASEAN・日本双方が相互に物品貿易自由化の方式を原則として受け入れることを確認したことを歓迎する。
- 朝鮮半島情勢に関し、我々は、六者会合、及び、2005年9月19日の共同声明の完全な実施に向けた最初の一歩として、2007年2月13日の六者会合において達成された合意の誠意ある迅速な実施を完全に支持する。我々は、国連安保理決議第1695号及び第1718号を着実に実施することの重要性を強調する。我々は、日朝間の問題に関する日本と北朝鮮との間の協議において進展が得られることを希望する。我々は、拉致問題をできる限り速やかに解決することの重要性を強調し、この問題に関して協力する。カンボジアは、次回の北朝鮮の人権状況に関する国連総会決議を支持することとし、日本は、この決定を高く評価する。
- 我々は、常任・非常任双方の議席拡大を通じ国連安保理の早期改革を実現するため、積極的に協力する。日本は、国連及びその他の国際会議、また2004年にビエンチャンで開催された日CLV(カンボジア・ラオス・ベトナム)首脳会談において繰り返し述べられてきた、日本の国連安保理常任理事国入りに対するカンボジアの継続的な支持に感謝する。この関連で、カンボジアは、国際機関における日本のより幅広く積極的な役割への強い支持を改めて表明する。
- カンボジアは、日本が、貧困、感染症、環境、平和構築、軍縮、不拡散、人身取引、不法麻薬といった様々な国境を越える問題に取り組む上でリーダーシップを示すことにより、人間の安全保障を促進する上でイニシアティブを発揮していることを称賛する。日本は、カンボジアが、自らの経験を踏まえて、スーダン平和維持活動に参加し、アフガニスタン等の他の紛争国における地雷や小型武器の問題への対処をするころにより、世界平和を促進するため貢献していることを高く評価する。日本は、最近打ち出した平和構築分野における人材開発のためのイニシアティブを通じて、カンボジアの努力を支援する。我々は、これらのグローバルな課題に関する協力を更に強化する。
- 我々は、地球環境問題、特に気候変動の重要性を再確認する。カンボジアは、気候変動に関する日本の新提案「美しい星50」を評価し、世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減するとの長期目標を世界共通目標とする考えを支持する。我々は、この提案に沿って、主要排出国がすべて参加する2013年以降の温暖化対策の効果的な国際枠組みを構築するため、積極的に協力する。
2007年6月14日 東京
安倍晋三
日本国内閣総理大臣
フン・セン
カンボジア王国首相