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日豪共同ステートメント
「包括的かつ戦略的な安全保障・経済パートナーシップ」
(仮訳)
(英文はこちら)
- 2008年6月12日、福田康夫日本国内閣総理大臣とケビン・ラッド・オーストラリア首相は日豪関係の特別な重要性を再確認するとともに、両国間の包括的かつ戦略的な安全保障・経済パートナーシップを更に強化していくこととした。
- 両首脳は、日豪関係が、長い歴史を有する協力関係、引き続き両国にとって重要である貿易・投資関係、共通の戦略的利益及び民主的価値観を基礎として拡大しつつある戦略的関係、及び緊密な人的関係に基づくものであるとの認識を共有した。両首脳はこれらの二国間関係の重要な柱を強化するとともに、新たな協力の分野を探求する決意を表明した。
- 両首脳は、この文脈で、次回日豪会議に対し、将来の日豪関係のために前向きな提言を提示するよう要請した。
(安全保障協力)
- 両首脳は、防衛交流覚書の改定や税関協力会議の開催を含め、安全保障協力に関する日豪共同宣言及び行動計画の実施を通じて二国間安全保障協力を促進していくことを確認した。右は、P-3Cといった航空機及び艦艇の訪問を通じた部隊間交流を含む防衛交流の拡充の継続を含む。両首脳は、アジア太平洋地域及びそれを越える地域における平和と安定に貢献するために協力していくことを確認した。
- この文脈で、両首脳は、行動計画の着実な実施を歓迎するとともに、行動計画をレビューするために、二国間安全保障協力の現状をレビューし、協力を更に拡充していくための方途を検討することの重要性を確認した。
- 日本側は、次回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を11月上旬にキャンベラにおいて開催するとのオーストラリアの提案を歓迎した。両首脳は同協議を本年開催するとのコミットメントを確認するとともに、右提案を実現するため引き続き調整していくこととした。
- 両首脳は、日本とオーストラリアそれぞれが米国と同盟関係を有していることに留意し、日豪二国間の安全保障・防衛協力を促進していくことの戦略的意義を強調した。
- 両首脳は、米国のアジア太平洋地域における継続的なプレゼンスと関与の重要性を強調し、強化された日豪二国間の協力が、高級事務レベルでの協議における安全保障・防衛協力等を通じた日米豪三国間の協力の拡充に資するとの認識を共有した。
- 両首脳は、日米豪3か国の対話と協力を拡充していくことを確認した。両首脳は、6月下旬に開催される第3回日米豪閣僚級戦略対話が、災害救援協力等を通じた実際的な三国間協力の促進のための更なるモメンタムとなるとの認識を共有した。この文脈で、日本側はオーストラリアが第1回TSD災害救援専門家会合を主催する提案を行ったことを歓迎した。
- 両首脳は、大量破壊兵器、その運搬手段の拡散の問題に取り組んでいく決意を新たにした。両首脳は、拡散に対する安全保障構想(PSI)が5周年を迎えたことを歓迎し、効果的なPSIの実施及びアウトリーチ活動について引き続き協力していく決意を表明した。
- 両首脳は、APECの緊急事態への備えタスクフォース(TFEP)等を通じて、災害救援に関する地域の能力を拡充する必要性について強調するとともに、地域の災害シュミレーション・ファシリティーを設立するとの国連世界食糧計画(WFP)の計画を歓迎した。この文脈で、オーストラリア側は、日本が、その他の地域メカニズムを補完するような形でアジアにおける既存の緊急援助機関間のネットワークを創設していく考えであることに留意した。日本側は、オーストラリアが、地域の災害救援のメカニズムの向上に関するフィージビリティー・スタディーを行い、右に関して日本と緊密に協議していく考えであることに留意した。
(経済関係)
- 両首脳は、経済関係の重要性及び相互補完性の高さを再確認し、先進的な両国経済の関係を更に強化していく決意を表明した。オーストラリア側は、日本の投資がオーストラリア経済の発展に果たしてきた重要な役割について留意した。
- 両首脳は、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)が経済関係を強化し、深化するためのよい機会を与えるとの認識で一致した。両首脳は、包括的で相互に利益となるような合意に向け作業していくことにコミットした。両首脳は、双方のセンシティビティを踏まえ、かかる成果を得るためには交渉において柔軟かつ建設的なアプローチが重要である旨強調した。
- 両首脳は、両国が安定供給から利益を得ていることに留意し、オーストラリアから日本への食料、エネルギー・鉱物資源の安定供給の重要性を強調した。両首脳は、EPA/FTAの文脈において、この課題を検討していくこととした。
- 両首脳は、サービス貿易が両国間の貿易において、比較的発展しておらず、強化されるべきであることを認識し、両国のサービスセクターを結びつける努力を強化すべきとの認識で一致した。
- オーストラリア側は、21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)の下で日本がビジネス上の関係を強化することを目的として実施する社会人招聘計画を歓迎した。
- 両首脳は、両国の金融規制監督当局に対し、必要に応じてビジネス界等の参加を得つつ、金融サービス分野における経験の共有のための定期協議を含め、協力の範囲を拡大するよう促すことを決定した。
(気候変動)
- 両首脳は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、特にアンブレラ・グループにおいて、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)、APEC、EASを通じて両国の間に生まれつつある緊密な二国間の協力関係を認識し、気候変動問題において協力し、温室効果ガスの排出を削減することにコミットすることを確認した。
- 福田総理は、オーストラリアによる京都議定書の批准を歓迎した。ラッド首相は、本年のG8議長国としての日本のリーダーシップの重要性を強調し、気候変動問題を推し進めていく中での日本との緊密な協力を歓迎した。
- 両首脳は、UNFCCCプロセスの下での交渉を通じて、全ての主要経済国が責任ある形で参加する、気候変動に関する実効的な国際枠組みを2009年末までに構築する決意を表明した。
- 両首脳は、先進国が引き続きリードすべきであるとともに、全ての主要経済国がそれぞれの責任と能力に応じて、意味のある貢献をすべきであることを強調した。
- 両首脳は、国連の枠組みの下での交渉を加速化するために、7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいて前向きな成果を達成する必要がある旨強調した。両首脳は、主要経済国プロセスにおいて、グローバルな排出削減の長期目標やその他重要な要素のために共有されるビジョンについて、他国とともに取り組むことにコミットすることを確認した。
- オーストラリア側は、日本のクールアース推進構想の貢献を、グローバルな気候変動問題を解決するための重要なインプットとして高く評価した。両首脳は、セクター別アプローチについて、グローバルなセクター別の行動を促すために有用であるとの見解を示した。両首脳は、ボトムアップのセクター別アプローチを、経済全体の削減目標を補完するものであり、技術的に可能な削減ポテンシャルを特定するために有用な方法であると認識した。両首脳は、引き続きこの問題や他の種々の問題につき協力していくこととした。
- 両首脳は、APPにおけるエネルギー効率の改善やベストプラクティス共有のための、官民協働を通じたセクター毎の作業への支持を改めて表明した。両首脳は、先進国と発展途上国との間のかかる協力は更に強化されるべきとの点で一致した。
- 両首脳は、二酸化炭素の貯留を備えた酸素燃焼石炭火力として世界初の実例となるカライドAプロジェクトの開始を歓迎するとともに、同プロジェクトが、石炭火力発電所から排出される温室効果ガスを回収・隔離する技術の開発に対して、重要な貢献をするとの認識で一致した。APPのフラッグシッププロジェクトとして、カライドAプロジェクトは、日本とオーストラリアの産業界及び研究者が、気候変動問題を解決するために協力する共同実証プロジェクトの好例である。
- 両首脳は、長期的な排出削減を達成するために、革新的技術を開発し、また、低炭素社会に移行する必要がある旨強調した。両首脳は、国際エネルギー機関(IEA)と協力して技術ロードマップを共有すること、また、国際協力のためのフレームワークを作ることが重要であるとの点で一致した。両首脳は、低炭素社会に関する研究を行っている研究機関間の国際的なネットワークに関するG8環境大臣会合の結果を支持した。
- 両首脳は、森林の減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出削減(REDD)の重要性について認識した。両首脳は、両国の関連機関が、REDDの政策を進めるために、地球規模の炭素監視システムに向け、統合された森林・炭素モニタリングシステムの開発において引き続き協力していくことを歓迎した。両国の協力には、オーストラリアの連邦科学産業研究機構や空間情報研究センター、日本の国立環境研究所や宇宙航空研究開発機構による研究協力が含まれる。
- 両首脳は、生物多様性の保全及び気候変動の緩和のために森林が重要な役割を果たすことに留意し、アジア太平洋地域において、持続可能な森林経営、違法伐採対策に引き続き協力していくことを決意した。
- 両首脳は、太平洋島嶼国を含めた発展途上国による気候変動への適応努力を支援していくことにコミットした。この文脈で、両首脳は、開発と気候変動問題を同時に解決するコベネフィットアプローチについて支持を表明した。
- 両首脳は、世界銀行における気候変動投資基金の設立に向けた進展を歓迎した。
(科学技術)
- 両首脳は、世界レベルの研究センターとしての日豪両国の強みを認識し、双方が関心を有する新たな分野を特定するために、関係省庁に既存の科学技術協力を新たな視野で見直すよう指示した。両首脳は、日本とオーストラリアの研究者、特に若い研究者の間でのより緊密な協力を奨励した。両首脳は、クエスタコン(オーストラリア国立科学技術センター)の20周年を歓迎した。
- 両首脳は、科学技術に対する若い世代の関心を生み出すことの重要性について強調するとともに、学生交流等を通じてこの分野での協力関係を構築していく意志を表明した。
- 日本側は、統合国際深海掘削計画(IODP)にオーストラリアが参加する関心を有していることを歓迎した。
- 両首脳は、気候変動のグローバルな影響についての理解を促進する上で、南極での科学調査における継続的な協力が重要な役割を果たしていることを認識するとともに、この分野における協力の更なる強化にコミットすることを確認した。
(太平洋島嶼国)
- 両首脳は、太平洋島嶼国による平和と繁栄のための努力を支援していくことにコミットした。オーストラリア側は、日本がこの地域において平和協力国家としての取り組みを強化する意図を有していることを歓迎した。日本側は、太平洋島嶼国との協力についてのアプローチについて記述した3月6日のオーストラリアによるポートモレスビー宣言を歓迎した。
- 両首脳は、二国間のみならず、米国、ニュージーランドといった地域における主要なプレーヤーとの対話及び協力を強化していく意図を表明した。両首脳は、第5回太平洋・島サミットに向けて緊密に協力していくこととした。
(エネルギー・鉱物資源安全保障)
- 両首脳は、鉄鉱石、石炭、天然ガス、ウランといったエネルギー・鉱物資源の分野における貿易・投資関係の戦略的重要性及び高い相互補完性を認識し、エネルギー・鉱物資源の安定的な供給の重要性を強調した。両首脳は、オーストラリア連邦政府及び州政府がエネルギー・鉱物資源の輸出を促進するためにインフラを強化すべく努力していることに留意した。
- 両首脳は、石油価格の高騰について強い懸念をもって留意した。両首脳は、世界経済の成長を維持し、石油価格の高騰に取り組むために、エネルギー及び資源関連の事業に対する投資が増加することの重要性について留意した。
(世界食料安全保障)
- 両首脳は、世界の食料安全保障の重要性について強調した。両首脳は、特に途上国による貧困克服及びミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた努力に対して深刻な影響を与えるとの観点から、食料価格の高騰傾向について強い懸念を持って留意した。両首脳は、ローマで開催されたFAOの世界の食料安全保障に関するハイレベル会合等の関連する国際フォーラムの成果に沿って、協力してこの問題に取り組んでいくことの必要性を確認した。
(東アジアサミット(EAS))
- 両首脳は、東アジアにおける長期的な安定と繁栄を実現するために、エネルギー安全保障、金融、環境、防災、気候変動、教育及び青少年交流といった分野で具体的な協力を進めることによって、東アジアサミット(EAS)を開放性の原則と普遍的な価値観に基づいて発展させていくことにコミットした。
(地域経済統合)
- 両首脳は、東アジア包括的経済連携(CEPEA)の民間研究、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の設立、地域の金融協力に関するイニシアティブ、長期的な目標としてアジア太平洋地域の自由貿易圏(FTAAP)に向けた選択肢や展望を検討することを含め、地域経済統合を強化するためのAPECのイニシアティブといった地域経済統合に向けたイニシアティブを歓迎した。
(APEC)
- 両首脳は、両国がAPECの創立に関与したことに留意し、APECを地域における主要な地域機関の一つとして強化していくことにコミットするとともに、APECが地域経済統合に果たしうる役割について留意した。
(アジア太平洋地域の将来)
- 両首脳は、アジア太平洋地域の将来についての福田総理のイニシアティブ及び地域のアーキテクチャを含む地域の将来像について意見交換を行うとのラッド首相の提言に言及しつつ、地域における共通の課題により適切に対応する方途を探求するために、アジア太平洋地域の将来について地域で議論を継続することの重要性を強調した。
(WTO)
- 両首脳は、多国間のフォーラムにおいて経済問題について協力することの利益を認識し、WTO交渉の本年中の妥結を追求する強い意志を確認し、野心的で、バランスが取れ、かつ包括的な成果を達成することの重要性を強調した。両首脳は、交渉の成功は世界経済、国際的な貿易システム、及び発展途上国のニーズにとって極めて重要である旨強調した。
(知的財産権)
- 両首脳は、知識基盤経済における知的財産権の重要性について強調し、実体特許法の調和に向けた国際的な取り組みも含め、知的財産権に関する問題について協力していくことを確認した。また、両首脳は、模倣品・海賊版対策の必要性を認識し、知的財産保護の新たな基準を設定するために、模倣品・海賊版拡散防止条約交渉の早期妥結に向け協力していくことを確認した。
(軍縮・不拡散)
- 両首脳は国際的な軍縮・核不拡散体制を強化する決意を新たにした。両首脳は、2010年NPT運用検討会議の成功を達成するために、核軍縮・不拡散に関するハイレベル専門家対話の立ち上げに向けた二国間のイニシアティブの開始等を通じて、引き続き緊密に連携していくこととした。この文脈で、日本側は、6月9日に京都においてラッド首相が提案した核不拡散及び軍縮に関する国際委員会の設立について歓迎した。
- 両首脳は、ロシア連邦の極東地域における退役原潜解体も含め、ロシア連邦の非核化の分野において協力していくことの重要性を確認した。