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1.ASEM第9回外務大臣会合は、2009年5月25-26日ベトナム・ハノイにて開催された。ASEMの45パートナーが初めて集結した今次外相会合は、グエン・タン・ズン・ベトナム社会主義共和国首相により開会され、ファム・ザー・キエム副首相兼外務大臣が議長を務めた。
2.「金融・経済危機及びその他グローバルの諸課題に対応するためのより緊密なアジア欧州パートナーシップの形成」との全体テーマの下、外相は幅広い共通関心事項について、特に2010年10月のブリュッセル首脳会合に向けてASEM対話の機運を維持するために2008年10月の北京ASEM7首脳会合の主要諸テーマについて、実りの多い協議を行い、グローバルの諸課題に取り組むためにASEMの枠内でアジア欧州パートナーシップを強化し深化させることを決意した。
3.外相は、有吉章IMFアジア太平洋地域事務所長によるプレゼンテーションの後に、世界的な金融・経済危機状況及びその影響について、詳細な議論を行った。外相は、現在の世界的な金融・経済危機及び景気後退は世界大恐慌以来最悪であり、特に開発途上諸国における経済発展、雇用及び社会的な結束に悪影響を与えたことに留意した。深刻な世界的危機とその結果である資本移動の急激な減少は、アジア欧州諸国の地域内及び地域間の貿易並びに投資に有害な影響を与え、全ての加盟国の金融の安定及び経済発展は危機に瀕した。他方で、外相は、危機の影響を抑制するための国際社会の努力に留意し、G20によって提案されたような各種イニシアティブに対し謝意を表明した。外相は特に、G20の枠組みを利用し、多くの開発途上諸国の関与を促した北京ASEM7首脳会合の積極的な役割に留意した。外相は、提案された諸措置の実施に向けた努力を完全に支持し、世界経済が回復基調に戻るように、更なる積極的な政策の実施に関する必要性を強調した。外相は、2009年における先進諸国及び開発途上諸国の成長見通しはともに悪化し、国及び地域の中には現在の危機がより深刻になる可能性があるものの、世界経済は、緊密な協力と協調を通じ、一致努力によって、2010年には回復を始める可能性があることについて一致した。この観点から、外相は、2009年6月にニューヨークにて開催される予定の世界金融・経済危機と開発への影響に関する国連ハイレベル会合への支持を表明した。来るラクイラG8首脳会議及びそのアウトリーチの考えも、世界的に共通の目標に向けた手段となるだろう。
4.外相は、国際社会がオープンかつ公正な多国間貿易及び金融システムを強化し、ミレニアム開発目標の完全かつ速やかな達成に向けて、国際協力を強化することを必要としていることで一致した。就中、
- 保護主義を拒否し、開発途上諸国の輸出市場へのアクセスを、特にその関心分野において、強化し、地域内及び地域間の統合を促進することによる。外相は、保護主義が対抗措置を惹起する可能性があり、世界経済をさらに害し、回復を遅延させることにつき一致した。外相は、全ての国に対し、貿易及び投資への障壁を導入したり強化したりすることを控え、もしそのような措置があれば速やかに取り除くこと、また、金融が不透明なこの時期に内向きにならないよう促した。これらにより、外相は、より開かれ、公正かつルールに基く、非差別的な国際貿易体制へのコミットメントを再確認し、全ての国に対し、これまでに得られた進展に基づき、現在の危機により一層必要性が高まっている、ドーハ開発アジェンダの野心的で包括的かつバランスのとれた妥結に向けて、一層努力を強化することを要請した。外相は、また、WTOへの万国加盟の重要性を再確認し、ラオスのWTO早期加盟を強く支持した。外相は、輸出信用、投資機関及び多国間開発銀行を通じた貿易金融を支援するため、今後2年間に少なくとも2500億ドルを融通させるとのG20指導者によるコミットメントも歓迎した。
- IMF、世銀のような国際機関及びG20のような国際的枠組みにおける協力を強化し、良い統治や透明性を促進すること。外相は、市場の信認を回復するため、金融規制と監視を強化するために合意された措置と政策協調の履行を完全に支持した。外相は、世界経済の変化を反映した、国際金融機関の権限、活動範囲、及びガバナンス改革の必要性と、新興及び開発途上諸国がより大きな発言権と代表権を有さなければならないことを強調した。外相は、IMFクォータの次回見直しを2011年1月までに完了すること、及び世銀の発言権・代表権を2010年春の会合までに改革することについてのG20のコミットメントを支持した。外相は、金融保護主義、特に世界的な資本の移動を抑制するような措置、中でも開発途上諸国に対する措置の実施、を控えるとのG20のコミットメントも歓迎した。外相は、危機よって影響を受けた国々を効果的に支援するため、より柔軟な貸付政策とともに、更なる貸付能力創出に向け、国際金融機関を完全かつ例外的に活用することを支持し、開発途上諸国からの資本の逃避を防ぐための各国及び国際的に一致した協力を慫慂した。
- 二国間及び多国間枠組みにおいて、ODAのみならず新たな追加的財源による開発協力、就中、開発途上諸国の社会面の開発強化による。この観点から、外相は、先進諸国に対し、GNIの0.7%をODAに費やすとの誓約を達成することを要求した。
5.外相は、ASEMの枠組みで経済協力を強化することをパートナー諸国に慫慂した。この強化は、就中、
- 「より緊密なASEM経済パートナーシップに関するハノイ宣言」及び「国際金融情勢に関する北京声明」の実施の加速による。外相は、貿易及び投資を拡大するための実際的な協力イニシアティブの必要性、及び、相互に利益のある分野、就中、金融、運輸、エネルギー、科学技術、農業、林業及び水産業、教育、持続可能な都市開発、及び観光について、パートナーシップと協力を促進することの必要性について、特に留意した。外相は、運輸に関するASEM対話を立ち上げる第1回ASEM運輸大臣会合を2009年10月リトアニアで開催するとのイニシアティブを評価した。外相は、2009年4月にマニラで成功裡に開催されたASEM開発会合について留意し、ブリュッセルの第8回ASEM首脳会合へ繋がるものとしてASEM開発フォローアップ・ハイレベル会合が2010年前半に開催されるべきであるとのその提言を歓迎した。加えて、外相は、危機の社会的影響を緩和させるための支援強化を目的としたASEM対話の設置の必要性について留意した。外相は、2010年前半にブカレストで開催される非正規移民に関する第1回ASEM内務大臣会合も歓迎した。
- ASEM貿易、投資及び金融協力の深化による。この観点から、外相は、それぞれ2009年、2010年に開催予定のASEM財務大臣代理会合と第9回ASEM財務大臣会合に向けたスペインの準備に感謝した。外相は、ASEM経済大臣会合(EMM)のできるだけ早期の再開の必要性について合意し、同会合への全てのパートナーによる最高レベルでの全員参加を慫慂した。外相は、2009年末までにアジアでEMMを開催することへの強い希望を表明し、インドが同会合の開催を検討する用意があることを歓迎した。外相は、アジア欧州間の貿易及び投資関係を高めるために、貿易円滑化行動計画(TFAP)及び投資促進行動計画(IPAP)を迅速に実施することの重要性も強調した。
- ASEM経済協力において起業家がより積極的な役割を担うことを慫慂し、官民パートナーシップを強化し、中小企業を促進することによる。外相は、ASEM7に並行して開催された第11回アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)の良い機運を基礎に、2010年にブリュッセルにて開催されるASEM8首脳会合と並行してダイナミックなAEBFを開催するとのベルギーの意向を歓迎した。
6.世界が厳しいグローバルな諸課題に直面していることに留意し、外相は、A型インフルエンザ(H1N1)の発生に対処するため、特に世界保健機関(WHO)、その他国際機関及びASEMによる、グローバルな連帯と協調行動を要請した。外相は、影響及び脅威を受けた諸国による最近の行動を讃え、人型パンデミッックに透明かつ効果的に対応し抑止するための新たなイニシアティブを慫慂した。外相は、非伝統的安全保障、特に国境を越え大陸を横断する病気感染に対応するための地域及び国際協力へのコミットメントを新たにしたことを強調した。この関連で、外相は、中国のASEM鳥インフルエンザ管理ワークショップ、及び備蓄フェーズが第9回ASEM外相会合において成功裡に立ち上げられた日本の新型インフルエンザ早期封じ込めに関するASEMイニシアティブを歓迎した。外相は、2009年11月にベトナムにおいて開催される気候変動及び新興感染症への準備と対応の経験を共有するためのASEMワークショップの成功を期待した。
7.外相は、ベトナムのファム・コイ・グエン天然資源環境大臣を歓迎し、気候変動の厳しい課題及び同分野における国際的な及びASEMによる協力の強化の緊急の必要性についての同大臣の見解に留意した。外相は、気候変動の悪影響、特に氷河溶解及び海抜上昇の危険、極端な気象現象の頻度と強度について留意し、適応措置の緊急性を強調した。外相はまた、生物多様性と森林保全が、社会、経済、生態系のバランスのとれた存在にとって重要であり、気候保護のための根本的貢献となること、そして生物多様性の保全及び持続可能な利用並びに森林保護が貧困との闘い及びMDGsの達成への鍵であることを強調した。
8.外相は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及びその京都議定書への支持を再確認し、2007年のバリ会合において実質的な進展があったことを歓迎し、2008年のポズナン会合における取組を評価し、こうしたモメンタムを維持することの必要性を強調した。さらに外相は、2009年12月のコペンハーゲンでのCOP15において、UNFCCC及び京都議定書の現在、2012年まで及び2013年以降の実施についてバリ・ロードマップに沿って改善し、グローバルな気候の課題に力強い回答を与える、野心的、効果的かつ包括的な合意された結果に達することができるよう、ASEMが協力・共同行動を強化することを確認した。外相は、先進諸国が主導し、排出削減の長期目標及び野心的でエコノミーワイドの中期目標を設定しなければならないことを強調し、コペンハーゲン会合の十分前にそのような中期目標を提案することを促した。外相は、開発途上国が、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則に則り、経済をグリーン成長の軌道に乗せるため、技術、資金及び能力構築によって支援され及び可能とされる持続可能な開発の文脈において、国別にこのような適切な緩和行動をとることが必要であることを認識した。外相は、炭素市場等マーケットベースのメカニズムの重要性を強調し、京都議定書の下の柔軟性メカニズム及びその他のアプローチの改善を支持した。外相はまた、UNFCCCの目的を支援し上述の結果の実施を可能にする、公正性、実効性及び説明責任に基づく資金メカニズムの強化を確保するための協力を促進するとのコミットメントを強調した。
9.外相は、気候変動に関するより緊密なASEMによる協力への支持を強調し、「持続可能な開発に関する北京宣言」及び「気候変動に関するヘルシンキ宣言」の整合的かつ迅速な実施を要請した。この観点から、外相は、財政及び技術支援、能力構築、並びに開発政策と適応行動の統合を含む、開発途上国が気候変動に適応するための能力の強化へ向けた各国別のUNFCCCにおけるコミットメントにしたがって、ASEMパートナーが協力することの必要性を強調した。外相は、2007年のコペンハーゲンにおける第3回ASEM環境大臣会合の結果及び日本とEUの共催による2008年10月東京で開催されたASEM気候変動への適応セミナーの議長サマリーを歓迎した。外相は、グローバルな気候変動及び新興感染症への対応の経験を共有するASEMワークショップ、及びベトナム、デンマーク、英国、インドネシア及びECの共催による気候変動及び適応措置に関するASEMフォーラムを含む、気候変動に関するASEMの幅広い新たなイニシアティブを賞賛した。
10.「より緊密なASEM経済パートナーシップに関するハノイ宣言」及び「持続可能な開発に関する北京宣言」において認識されたエネルギー安全保障の重要性を認識しつつ、外相は、安定的かつ効果的で透明なグローバルなエネルギー市場の設立に加え、ASEMエネルギー協力の強化、特にエネルギーの持続可能な利用、再生可能及び代替エネルギーの開発と利用の促進への支持を確認した。外相は、2009年6月にベルギーにて開催される第1回ASEMエネルギー安全保障大臣会合を歓迎した。
11.外相は、地球規模課題及び国際の平和と安全の維持に対応するために多国間アプローチと集団行動を執ることの必要を強調した。2004年にアイルランドにおいて外相により採択された「多国間主義に関するASEM宣言」を想起し、外相は、国際紛争の処理、国際の平和と安全の維持、人権の促進、国連憲章及び国際法の諸原則に基づいた各国間協力において中心にある国連とともに多国間主義及び多国間国際システムの重要な役割を強化することへのASEMのコミットメントを再確認した。この文脈において、外相は、国連改革の重要性、特に、代表性、効率性及び透明性を高める観点からの安保理改革の重要性を強調した。
12.外相は、ASEM第4回首脳会合の「国際テロリズムに関する協力のための宣言」において表明された決意を想起しつつ、国際社会の平和と安全、持続可能な開発及び政治的安定に対する深刻な脅威であり続けている、あらゆる形態のテロに対処することへの強いコミットメントを再確認した。外相は、国連憲章及び人権法、難民法、国際人道法を含む国際法を最大限尊重しつつ、主要な国連テロ防止関連条約及び議定書を遵守することの必要性を強調し、国連グローバルテロ対策戦略及び関連安保理決議に沿って国際的なテロとの闘いにおける実効的なステップをとることへのASEMのコミットメントを再確認した。外相は、包括テロ防止条約の交渉の早期妥結の重要性を再確認した。外相は、この分野における継続した努力を歓迎し、2009年6月にマニラにて開催されるASEM第7回テロ対策会議及び海上における税関、移民、検疫及び警備に関するその準備活動に期待した。
13.外相は、軍縮、大量破壊兵器(WMD)及びその運搬手段の不拡散の強化に向けた多国間努力の重要性を強調し、平和的目的のための原子力の開発、生産、利用についての国家の奪い得ない権利を再確認した。外相は、2010年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の成功を確保するための協力の重要性を強調した。
14.ソマリア沖の海賊事案の増加への深刻な懸念、及び、特にアジア欧州間を結ぶ主要海上交通路への脅威を緩和することの重要性を念頭におきつつ、外相は、ASEMパートナーが、国際法及び関連国連決議にしたがい適切な措置をとり、財産と人のスムーズな移動を確保しつつ、海賊対策やより良い海上安全保障のための能力構築支援を含む協力を強化することに合意した。
15.外相は、一次産品、特に石油と食料の世界的な価格変動が、多くの国で安定成長への深刻な問題と人々の生活への大きな困難をもたらしているとして、懸念を表明した。外相は、ミレニアム首脳会議でコミットされたとおり2015年までに飢餓人口を半減させることを目的に、生産性及び労働能力を改善し食料安全保障を確保するための農業革新を促進するための国際協力の強化を含む、中長期的な危機に対応する合同かつ包括的な措置をとるとのコミットメントを再確認した。外相は、グローバル経済・金融危機の文脈において、特に食料価格安定のために、食糧支援活動、社会保護を含む、全ての努力を高めることを要請した。外相は、この点に関し、国連が指導的及び調整の役割を担うことへの支持を確認した。
16.外相は、アジアと欧州の間の政治対話を強化するという共通の希望を再確認し、ASEMの枠組みにおける強化は、共通の土壌を強調及び拡張するのを助け、相互理解と友好を増進することから、必要であり有益であるとの点で一致した。外相は、1998年以来毎年行われている非公式のASEM人権セミナーを通じASEMパートナーにより行われている対話に対する評価を表明した。外相は、平等と相互尊重に基づく人権の促進と保護に関するコミットメントを強調した。
17.外相は、ASEAN共同体の構築、東アジア及び南アジアの地域統合における進展に対する支持を改めて表明し、特に、ASEAN憲章の発効とASEAN共同体のためのロードマップ(2009-2015)に関するチャアム・フアヒン宣言の署名を歓迎した。外相は、東南アジア友好協力条約(TAC)を改正するための関連の法的手続が完了後にEUが同条約に加入する用意のあることを歓迎した。外相は、EUの統合における進展を満足の意をもって留意し、欧州の平和、安定、繁栄を促進する上でのこのプロセスの重要な役割を確認した。
18.外相は、アフガニスタンの平和、安定、発展の促進に関するコミットメントを強調し、アフガニスタンの国民和解、一体性及び領土保全に対する支持を強調した。外相は、近く行われる大統領選挙及び地方選挙を含む、既にアフガニスタンでなされた著しい進展を歓迎し、ガバナンス及び人権問題に関して改善を継続することの必要性を強調した。外相は、包括的アプローチのための地域的視点から問題に対処し、アフガニスタン・コンパクト及び国家開発計画の目的を達成するため、テロ対策、麻薬の栽培と違法薬物の密輸への対策、法の支配の強化、政府のすべてのレベルにおける汚職対策に関するアフガニスタン政府の取組を支援するために国際社会が参画することの必要性を承認した。外相は、国連の中心的かつ公平な役割及びアフガニスタンと周辺国の間の協力の増進を歓迎し、この関連で、2009年5月13・14日にイスラマバードで行われた第3回アフガニスタン地域経済協力会議における進展に留意した。
19.外相は、アウンサン・スー・チー氏に関する最近の情勢に関する懸念に鑑み、ミャンマーの状況につき意見交換した。外相は、拘束下にある者の早期の解放を求め、政党に課された制限を解除するよう求めた。外相は、ミャンマーが最近の進展と見通しについて説明したことに留意し、2010年の複数政党制の総選挙が自由かつ公正な方法で行われるよう準備し、実施することをミャンマー政府に求めた。外相は、相互理解のための更なる措置となるEUトロイカとミャンマーの間の閣僚レベルでの対話を歓迎した。外相は、国連事務総長の周旋の役割と計画されている訪問に対する支持を再確認し、国民和解と経済社会開発を達成すべく、すべての関係者を包括的プロセスに関与させるようミャンマー政府に促した。外相は、三者コア・グループ会合の期限の延長を歓迎し、人道支援の効果的な実施を進めるために国連とASEANとの協力を継続するようミャンマー政府に促した。外相は、ミャンマーの人々に対する人道支援を増加するよう国際社会に求めた。外相は、ミャンマーの主権と領土保全に対するコミットメントを確認し、この関連で、ミャンマーの未来は同国の国民の手に委ねられていることを改めて表明した。
20.外相は、イランの核問題の交渉による平和的な解決の追求に関するコミットメントを確認した。外相は、イランが国連安保理決議を完全に遵守し、IAEA理事会の要求を満たすよう求めた。外相は、2008年6月に交渉再開のためのロードマップ及び強化されたインセンティブのパッケージに関する提案を行った中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国による努力を歓迎した。外相はまた、イランとの直接的な外交に関与する米国政府の最近のコミットメントを歓迎した。外相は、この機会を交渉再開のために用いることを関係当事者に求めた。
21.外相は、最近の北東アジア情勢、特に北朝鮮により行われた核実験につき議論し、「2009年5月25日に行われた北朝鮮の核実験に関する第9回ASEM外相会合声明」を発出した。
22.外相は、国連文明間の対話年(2001年)以来、国家間においてグローバル化が経済的・金融的・技術的側面、人間的・文化的・精神的次元、人類の相互依存と豊かな多様性を包含するものであるとの共通理解があったことに留意した。故に文化・文明間の対話は必要である。この文脈において外相は、2010年に第4回ASEM文化大臣会合を主催するとのポーランドのイニシアティブを歓迎し、これらの事項、特に文化遺産に重点を置いて議論することの重要性を強調した。外相は、また、2009年9月にASEM文化・芸術フェステバルを主催するとの中国の提案を歓迎した。
23.外相は、文明間の同盟(AoC)への支持を表明し、各国・地域においてAoCの原則と目標を増進させるための開かれた包括的かつグローバルな対話の場を提供した、2009年4月のイスタンブールでの第2回年次フォーラムの成果を歓迎した。そしてAoCメンバーによる新たな国家戦略及び新たなパートナーシップ協定・地域的戦略の発表も歓迎した。外相は、教育、青少年、移民、及びメディアの各分野における具体的プロジェクトの実施及びAoCの多くの利害関係主体による新たなイニシアティブの立ち上げが、対話と文化理解への支持に対する高いレベルでのコミットメントを促す一助となったこと、並びに、新たな諸課題に適応する国連の能力を強化したことに、満足をもって留意した。
24.外相は、この対話が、価値と倫理の重要性を強調し、現代性とグローバル化という課題に適応することに前向きでありつつ、良心並びに歴史、遺産及び伝統に根付いている人類にとっての共通基盤を醸成することにより、共通の価値に対する認識をもたらし、敬意と寛容を育む建設的な議論と意見交換を促進するべきであるとの見解を示した。この観点から、外相は、2010年を文化の和解のための国際年とすることを宣言した2007年12月17日の国連決議62/90を歓迎した。
25.外相は、教育と訓練が、平和の文化と文明間の対話にとって重要であるのと同様に、社会的安定と経済福祉にとっても不可欠な基盤であることを強調した。外相は、教育における質の確保、単位の認定及び移籍の強化のため、また、HRD、特に職業訓練及び高等教育を促進するための持続可能な人的資源開発及び雇用の向上のため、複数のASEMの専門家グループを立ち上げることで一致した、2009年5月15日にハノイで開かれた第2回ASEM教育大臣会合の成果を歓迎した。
26.外相は、ASEMの枠組みにおいて、連帯、寛容、全ての人にとっての人権及び基本的自由の認識といった、全ての文明に普遍的な価値の尊重を唱道する、多くの宗教間対話がなされてきたことに留意した。この関連で外相は、韓国とフィンランドが本年9月にソウルで新たなASEM宗教間対話の会合を共催する準備をしていること、2009年後半にインドネシアで開催される宗教指導者のためのASEM宗教・文化間リトリート会合、及び2010年にスペインで開催される次期ASEM宗教間対話会合を象徴する活動の継続を、歓迎した。外相は、知的・文化的・人的交流を通じアジアと欧州の人々との間の対話と協力を促進するアジア欧州財団(ASEF)の活発な貢献に対する支持を再確認した。外相は、ASEFの活動をより一層ASEMの優先課題に準拠させ、またASEMの可視性を高めるための、ASEFの主要プログラムの重要性を強調した。
27.ベルギーが、2010年10月にブリュッセルにて開催されるASEM第8回首脳会合の準備について説明した。外相は、ベルギーによる首脳会合準備の努力への謝意と支持を表明した。
28.外相は、アジア欧州間の対話と協力のユニークな牽引車としてASEMの戦略的な重要性を再確認し、平和と安定を維持し、両地域の人々の恩恵のための持続可能経済及び社会開発に資する条件の促進のために、この対等な立場でのパートナーシップにさらに能動的に関与していくことにコミットした。
29.外相は、豪州とロシアのASEM参加申請を歓迎し、2010年にブリュッセルで開催される第8回ASEM首脳会合(ASEM8)で両国が正式にASEMに参加することを可能とするために、参加の態様を策定すべきとのマンデートを高級事務レベルに与えた。また、ASEMへの参加に関する他の諸国の関心の高まりにかんがみ、外相は、将来のASEMの拡大に関連して、アジア欧州協力枠組(AECF)2000に基づき、基準、原則及び手続きに関し議論し提言を行うよう高級事務レベルに対してマンデートを与えた。
30.外相は、アジア欧州関係のより広い文脈における媒介としての役割に加えて、アジア欧州間の主要収束点として機能する、対話と協力の枠組みとして引き続いているASEMの重要な役割を強調した。外相は、課題別リーダーシップのイニシアティブの実施に伴う特別な目的並びに結果重視のプログラム及び事業によって高められるASEM協力、及びその性格と発展に整合的なASEMの調整と管理のメカニズムの改善に向けたさらなる進展を、慫慂した。この観点から、外相は、ASEM8を準備し、調整し、支援するための1年限りの暫定的なイニシアティブとして"ASEM8調整事務所"の提案を歓迎した。外相は、パートナーにより提出された多様な協力イニシアティブ(別添1)及びASEM作業プログラム2008-2010(別添2)を採択した。
31.外相は、2011年に第10回ASEM外相会合を主催するとのハンガリーの申し出を歓迎した。