中東

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アフガニスタンに関する東京会合
附属書(仮訳)
相互責任に関する東京フレームワーク

平成24年7月8日

英語版

  1. アフガニスタン政府と国際社会は,この相互責任に関する東京フレームワーク(以下,「東京フレームワーク」という。)に定める相互に決定した目標を達成するに当たり,相互責任のプロセスを通じて,アフガニスタンの経済成長と発展におけるパートナーシップを再確認する。国際社会がアフガニスタンへの支援を継続していくためには,アフガニスタン政府が,東京フレームワークに明記されたコミットメントについて成果を出すことにかかっている。この文書は,アフガニスタンが,東京フレームワークにおける国際社会のコミットメントに基づき,自国の開発及びガバナンスの目標を達成することを支援するため,アフガニスタン政府と国際社会の相互がそのコミットメントに基づく取組を構築する。東京フレームワークは,定期的に,コミットメントのモニタリングを行い,レビューするためのメカニズムを構築する。
  2. 良い統治は,強固で持続可能な経済発展とアフガニスタンの人々の生活改善のために不可欠である。この事実を認識し,この東京フレームワークは,共有された開発及びガバナンスの目標,及びこの文書において示されるようにこれらの目標を達成する責任を参加者に負わせるためのメカニズムを明記することにより,カブール・プロセスで決定され,ボン会議で再確認した相互のコミットメントを具体化するものである。これらの目標は,「自立に向けて」に示されるアフガニスタン政府の経済・開発戦略と一致している。
  3. 2011年のボン会議において,国際社会は,権限移譲期間から「変革の10年」を通じて,似たような状況にある他の国々よりも多くの援助を受けるというアフガニスタンの特別な地位を確認した。また,アフガニスタン政府と国際社会は,資金が効果的で透明性をもって運営されていることについて,自国民の期待に応えなければならない。
  4. アフガニスタン政府は,人権,法の支配及びアフガニスタン憲法の尊重に基づいたガバナンス強化に対する厳粛なコミットメントを再確認し,また,それを持続的な経済成長と発展に不可欠なものとして考える。
  5. 国際社会とのパートナーシップに取り組むに当たり,アフガニスタン政府は,「自立に向けて」に示されるように,援助依存を軽減しつつ,持続的な発展,経済成長及び国家財政の持続可能性を模索する。このビジョンを実現するため,アフガニスタン政府は,国家優先プログラム(NPPs)をまとめた。また,アフガニスタン政府は,国家優先事項と一致した援助の最適な実施と効果を確保するため,国際社会と協議して2012年12月までに共同調整モニタリングボード(JCMB)の承認を得るべく援助調整政策を策定している。
  6. アフガニスタンは,「変革の10年」の期間に移行するに当たり,人権の更なる尊重のほか,教育,保健及びその他の基礎的なサービスを始めとする特に女性と女児に資するような,持続可能な経済成長及び開発を支える分野における過去10年間からの進展は継続されなければならない。自然災害に対する脆弱性や人道的なニーズへの取組は,権限移譲期間及び「変革の10年」の期間においても,効果的で適切な方法で共同で取り組まなければならない。
  7. 権限移譲を成功裡に進めることは,「変革の10年」にアフガニスタンがその国家の優先事項に基づき,効果的に統治され,経済・社会面で進歩的な国になるために,権限移譲の恩恵を基に前進していくことにつながる。そのためには,アフガニスタン政府と国際社会との間のパートナーシップの性質を,被援助国とドナーの関係からオーナーとパートナーの関係に変革(a paradigm shift)させることが必要である。この変革を実現するためには,東京フレームワークの目的であるパートナーシップの原則,相互コミットメント及びモダリティを再定義する必要がある。東京会合は,正にこのパートナーシップを再定義する転換点である。

原則

  1. 東京フレームワークは,広く受け入れられている持続可能で開かれた経済成長及び発展の原則に基づく。
    • ガバナンスは,開発パフォーマンスに直接影響を及ぼす。
    • 国家優先プログラムと整合性のある国際援助は,開発援助の効率性及び持続可能性を高める。
    • 国家予算を通じた国際援助は,国家機関の能力,開発パフォーマンス及び国民に対する説明責任を改善することができる。
    • 透明性のある方法で開発及びガバナンスのベンチマークのモニタリングを実施することは,アフガニスタンの人々に対する説明責任を可能にし,及び開発パフォーマンスの改善に向けたドナーとアフガニスタン政府の相互のコミットメントを強化するための有力な手段である。
    • 国内外双方における民間投資は,持続的な経済成長の鍵である。
    • 地域協力は,地域経済との統合を促進し,それゆえ,アフガニスタンの持続可能な発展への努力に資する。

相互コミットメント

  1. 参加者は,ドナーからの援助が援助効果の原則に従って,実施されることが重要であること,すなわち,「これまでどおりのやり方」を継続するのではなく,今や約束を実行に移さなければならないことを強調する。東京フレームワークは,アフガニスタン政府と国際社会との間の,再活性化された新たな発展パートナーシップを定めるものである。
  2. アフガニスタン政府と国際社会は,信頼性があり,開かれた選挙,専門的で効率的な公共サービス,司法へのアクセス及び法の支配に基づく機能的な民主主義が,安全で,公正で,安定し,繁栄したアフガニスタンにとって不可欠であることを確認する。特に女性の権利に焦点を当てたガバナンス及び制度の強化は,強固で持続可能な経済成長,雇用創出及びアフガニスタン国民の繁栄のための前提条件である。

アフガニスタンのガバナンス及び開発コミットメント

  1. アフガニスタン政府と国際社会は,以下に示すモダリティに従って,開発及びガバナンスの5つの主要分野について,パフォーマンスをモニタリングする予定である。これらの指標のスケジュールは,アフガニスタン政府が次回のJCMB会合のために策定する予定である。各分野で求められる目標と初期指標は,次のとおり。

代表制民主主義と衡平な選挙

目標:
2014年及び2015年に,アフガニスタン憲法に従って,権利を有するアフガニスタン国民が,男女共に,法律に基づき,国内外の干渉を受けることなく自由に参加の機会を与えられ,信頼性があり,開かれた,透明性のある大統領選挙及び議会選挙を実施する。
指標:
  • 2013年の早期に選挙準備と投票日について,2015年の1年間を通じた包括的な選挙スケジュールを策定すること。
  • 成功裡でタイムリーな選挙の実施を可能とするため,確固とした選挙制度が,安全で,参加型で透明性のある方法で構築されるよう確保すること。

ガバナンス,法の支配及び人権

目標:
アフガニスタン憲法及びその他基本的な法律を,迅速,公平及び透明性のある形で執行されることを確保することにより,全ての国民,特に女性の司法へのアクセスを改善する。女性の経済的,社会的,市民的,政治的及び文化的権利の十分な享受を確保する。麻薬対策の強化を含む腐敗と闘う。国家機関の能力を向上する。
指標:
  • 全ての国民,特に女性と子どもの人権を尊重し,アフガニスタン独立人権委員会と市民社会組織が,それぞれの適切な機能を果たすことを確保すること。
  • 市民社会の参画を得て,法の執行及び被害者に対する支援も含め,女性に対する暴力の根絶に関する法律(EVAW),及び年間を通じた女性のための年次国家行動計画(NAPWA)の双方の実施を示すこと。
  • 行政府,立法府及び司法府の上級公務員の年間の資産報告を含む腐敗対策のための法的枠組みを制定し,及び施行すること。

健全な公共財政と民間銀行

目標:
公共財政管理及び民間銀行セクターの健全性一体性を向上改善する。
指標:
  • 計画どおりに,国際通貨基金が支援する政府プログラムを実施すること。カブール銀行問題に責任を有する者が,引き続き,財産の回復と説明責任を実施すること。アフガニスタン中央銀行を通じた銀行の監督と改革を強化すること。
  • 公共財政管理行動計画を実施し,財政支出及び財政責任(PEFA)評価によって判断された公的資金の管理を20%まで改善すること。また,オープン・バジェット・イニシアティブ(OBI)により判断された公的資金の透明性を40%以上にまで引き上げること。
  • 資金洗浄対策及びテロリストへの資金供与対策に関する金融活動作業部会アジア太平洋グループからの提言を実施すること。

政府歳入,予算執行及び地方ガバナンス

目標:
アフガニスタン政府の徴税制度を改善し,地方のニーズと優先事項を組み込んだ予算を策定し,執行するための関係省庁の能力を改善する。
指標:
  • より効率的で,透明性があり,信頼性のある関税及び税制を通じて,歳入を2016年までにGDPの11%から15%,2025年までに19%まで引き上げること。
  • 2017年までに予算の執行率を75%まで改善すること。
  • 2010年の地方ガバナンス政策に沿って,国,県及び郡レベルの政府関係機関の役割及び責任を明確化するための法的枠組みを制定すること。
  • 県議会が諮問的な役割を担う県レベルの計画プロセスと関連させて,県レベルのインプットを関係省庁の予算要求の立案に盛り込む県レベルの予算プロセスを構築すること。

開かれた持続的な成長及び開発

目標:
人的資源開発,食料安全保障,民間投資及びより良い雇用機会の創出に焦点を当てることを通じて,開かれた持続的な成長を達成し,人間開発指数の順位付けを改善する。
指標:
  • 保健,ジェンダー,教育,環境及び食料安全保障のためのミレニアム開発目標(MDGs)のターゲットを達成するための適切な資金配分を確保すること。また,これらの進展を判断するためのMDGs指標の活用を確保すること。
  • 国際的なベスト・プラクティスに基づいて,説明できる,効率的で透明性のあるメカニズムを通じて,アフガニスタンの自然財産を管理する採取産業開発フレームワークの策定を含め,世界銀行のビジネス環境指標で測定できるように,民間セクターが活動することができる環境を強化すること。
  • 成長の主たる原動力として,農業セクターと資源回廊における投資をてこ入れすることにより,地域経済イニシアティブを奨励し,支援すること。また,道路,鉄道及び民間航空に関する機関を設立すること。
  • 2014年末までに,世界貿易機関(WTO)への加盟を実現するための必要な措置を採ること。

援助効果向上のための国際的なコミットメント

  1. 参加者は,アフガニスタン政府が,権限移譲後の期間,東京会合の準備において世界銀行とアフガニスタン政府により推測されたような,国内歳入では埋めることのできない,特別で,相当な,継続するが減少していく財政需要を抱えることを改めて表明する。この財政不足への対応を支援するため,国際社会は,「変革の10年」を通して,アフガニスタンの経済発展に向けて,資金的支援を振り向けることをコミットする。この関連で,「変革の10年」の初期において,国際社会は,世界銀行とアフガニスタン政府により推測された財政ギャップに対応するために,2015年まで160億米ドルを超える規模の支援を供与し,また,2017年まで,過去10年と同等又はそれに近い水準の支援を維持することをコミットする。国際社会は,アフガニスタンの戦略を歓迎し,また,ロンドン会議及びカブール会議の両コミュニケに従って,各国からの開発援助のうち80%を国家優先プログラム(NPPs)に則ったものとし,開発援助のうち少なくとも50%をアフガニスタン政府の国家予算を通して実施するというコミットメントを再確認する。
  2. 参加するドナーについては, 2014年までに援助の10%までを,また目標として「変革の10年」の終わりまでに援助の20%までを,アフガニスタン復興信託基金(ARTF)のインセンティブ・プログラム又はアフガニスタン政府が要請する若しくは合意するその他のメカニズムを通じて実施することを目指す。インセンティブ・プログラムは,特定の経済発展の進捗に関連して,より柔軟性のあるオンバジェット支援をアフガニスタン政府に提供することを追求する。
  3. 国際社会は,パートナーシップ及び国際的な援助効率性の原則に従った形で援助実施を改善するための具体的な措置を採ること,及びアフガニスタン政府の援助調整政策が2012年12月までに完成しJCMBにより承認され次第,その政策に則ることにコミットする。援助をアフガニスタンの国家優先事項に則らせることについては,アフガニスタン政府が既に承認された国家優先プログラム(NPPs)の中で示す特別な成果と関連して決定される。アフガニスタンの国家優先事項を実施するための適切な資金モダリティを特定するため,ドナーは,アフガニスタン政府と協議する。アフガニスタン政府は,アフガニスタン政府の優先事項と十分合致していないか,投資の効果が低いか又は取引費用が高い場合は,いかなる援助資金も断りうる。
  4. 国際社会は,オーバーヘッドコストを削減し,また透明性を向上するため,専門的で労働集約型の全てのプロジェクトにおいて,下請契約を一段階に抑制することを目指す。

モダリティ

  1. アフガニスタン政府と国際社会は,JCMBプロセスを基に構築されたレビュー・プロセスを通じてアフガニスタン政府の指標及び作業計画のパフォーマンスをモニタリングするためのメカニズムを構築することを決定する。アフガニスタン財務省及び関係省庁が中心になって,アフガニスタン政府は,東京フレームワークで特定されたガバナンス及び開発指標を達成する責任を負う。開発パートナーは,東京宣言及び東京フレームワークに明記されている援助コミットメントの実施に責任を負う。
  2. アフガニスタン政府と国際社会は,以下に示すモダリティに従って,東京フレームワークを実施する。アフガニスタン政府と国際社会は,相互のコミットメントにそれぞれが責任を負うために,再活性化されたカブール・プロセス及びJCMBを基にした透明で定期的なモニタリング・プロセスを構築する。
  3. メカニズムの3つの要素は次のとおり。
    • 定期的に進展をレビューするための,常設委員会と共同調整モニタリングボード(JCMB),
    • 進展をレビューし,必要に応じて指標をアップデートするための,2013年及びその後2年毎に開催される高級事務レベル会合,
    • 進展をレビューし,指標をアップデートし,資金需要を評価し,また国際社会のコミットメントを再確認するための,2014年及びその後2年毎に開催される閣僚級会合。
  4. 第1回閣僚級会合は,アフガニスタンと英国の共同議長とする。

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