省庁共通公開情報

II.事前評価

政府開発援助(ODA)

(2)有償資金協力案件

サンホセ首都圏環境改善計画

評価年月日:平成18年3月28日
評価責任者:有償資金協力課長 相星孝一

1.案件名等

1-1.供与国名
 コスタリカ共和国
1-2.案件名
 「サンホセ首都圏環境改善計画」

2.有償資金協力の必要性

2-1.二国間関係等
(1)コスタリカは中米地峡の南端近くに位置し、人口約430万人の小国であるが、50年間に及ぶ民主主義の歴史を有しており、紛争が頻発した中米諸国にあって最も政治的に安定している。また、平和主義、社会保障の充実、教育の重視、人権尊重等の価値観が十分に浸透しており、軍隊も存在しないことから、クーデター等による政情不安に陥る可能性は極めて低い。このように、コスタリカは、いわば「中米の優等生」として、中米各国をリードしていく中心国と位置付けられる。したがって、同国の発展を支援していくことは、我が国の対中南米外交の基本方針である「民主化」及び「発展」を支援していくモデルケースとして位置付けられ、中米全体への民主化・経済発展効果の波及が期待される。
(2)我が国との関係では、同国は、伝統的に平和善隣外交及び国連中心の外交を基本方針としており、我が国と基本的な理念・価値観を共有する。同国との友好関係を維持発展させていくことは、中米のみならず中南米における我が国の外交の幅を広げ強化していくことができる重要な意義を有する。
(3)さらに、中米地域はメキシコと並び北米市場の生産拠点として重要な地域であり、質の高い労働力を有するコスタリカには既にインテル等の米主要企業が生産拠点を設ける等、同国は我が国企業の北米市場への供給基地となり得る。また、米国と中米との自由貿易協定(CAFTA)は署名済であり、今後右協定の発効に伴い、米・中米間の貿易・投資活動が益々活発化することが予想される。
 コスタリカの我が国に対する貿易・投資促進に対する期待は根強く、過去10年間の両国の貿易関係を見ても、コスタリカの対日輸出、対日輸入ともに5.3倍に増加し、特に、コーヒー及び電子回路等、輸出品の増加が顕著となっている。
(4)以上のような伝統的友好関係及び緊密な経済関係、中南米地域におけるコスタリカの政治・経済面での重要性等にかんがみ、外交手段の一つとして我が国の政府開発援助を有効に活用し、更に強固な両国関係を構築していくことは有益であると考えられる。

2-2.対象国の経済状況
(1)所得水準(一人あたりGNI)は、4280ドル(2003年:世銀)であり、コスタリカは円借款供与対象国の中進国に位置付けられる。
(2)コスタリカは1980年代の累積債務問題、これに続く1990年代の経済のグローバリゼーションの中で、IMF及び世銀の主導による中米初の構造改革を実施。同国が伝統的に標榜してきた社会民主主義路線は、大きな転換期を迎えた。2002年5月に発足したパチェコ政権は、貧困撲滅及び国民の生活水準の向上を最優先課題として掲げ、そのために経済成長、インフレに応じた実質賃金引き上げ、雇用創出等を図ることを目的として、「経済活性化4カ年計画」、「緊急財政対策案」、「貧困撲滅4カ年計画」等を発表した。「経済活性化4カ年計画」においては、財政再建、金融為替政策の慎重な運営、生産性と競争力の向上、国際経済との連携強化、競争促進・消費者保護の強化を中心に取り組んでいる。
(3)こうした経済政策を背景に、実質経済成長率は、2002年から2004年の平均で4.1%となった。2005年、2006年はそれぞれ3.5%、3.0%と予測されている(IMF、2005年4月)。
(4)中央政府財政収支(対GDP比)は、2002年の-5.0%をピークとした後、2003年-3.9%(暫定)、2004年-4.0%(予測)と改善している。また、公的部門収支(対GDP比)は2000年-4.4%、2001年-3.8%、2002年-5.7%、2003年-5.2%(暫定)、2004年-5.3%(予測)となっている。
(5)DSR(債務返済比率)は2001年から2003年の平均で9.4%、対外債務残高(GDP比)は2002年から2004年の平均で33.0%(うち対外公的債務は同20.7%)、また、外貨準備高(輸入月数)は2002年から2004年の平均で2.3ヶ月となっている。
 IMFは、対外公的債務については債務/GDP比率が20%程度、債務輸出比率70%程度と2008年まで比較的低水準で安定して推移すると見ている。ただし、公的債務(対外債務+国内債務)は高め(2003年で54.5%程度)で、短期債務への借り換えや国内市場での調達による外貨建債務の増加等、債務の質が悪化しているため、GDP成長の減速や為替レートの変動等のショックに対して脆弱と見ている。大幅な財政赤字を削減し、経済の脆弱性を改善するために近年政府は歳出抑制及び徴税対策強化等の財政改革努力を進めているが(2004年のプライマリーバランスは0.3%の黒字(予測))、今後も税制改革法案の成立を含めたより一層の財政改革が必要。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1)コスタリカは、自然保護区拡大、エコツーリズム推進等により環境立国を謳っている。もとより、環境保護の推進はコスタリカ政府の最優先政策のひとつとして位置づけられているものの、国内のインフラ整備は予算の不足等の問題もあり、全般的に劣悪な状況にある。
(2)このような事情を背景に、同国の「国家開発計画」(2002年-2006年)においては「環境と調和」を提唱し、国民の生活環境改善を図るため水資源の確保及び下水道整備を行うことにより、2029年までに都市部の下水道普及率を95%、下水処理率を100%にまで押し上げることを目標に掲げており、本計画は「国家開発計画」における優先プロジェクトとして位置付けられている。本計画に対する協力は、コスタリカ政府の最優先課題である環境保護の推進のニーズに応えるものである。

2-4.わが国の基本政策との関係
 我が国は、環境問題を地球的規模の極めて重大な問題であるとの認識のもと、「政府開発援助大網」においても環境保全を我が国援助の基本理念と位置付け、途上国の持続可能な開発の実現に向けた努力を積極的に支援している。
 かかる我が国の積極支援の反映として、環境保全が人類共通の課題であること並びに採算性に乏しい環境事業には依然として譲許的な融資が必要であることにかんがみ、環境案件については、中進国も含め、積極的な支援を行うこととしている。

2-5.コスタリカに対して有償資金協力を実施する理由
 コスタリカは自然保護区の維持拡大、エコツーリズムの推進等により環境立国を謳っており、「国家開発計画(2002年~2006年)」においても「環境と調和」を重要な柱として掲げている。特に上下水道整備は国民の生活環境改善を図るための重要セクターと位置付けられている。
 コスタリカにおける上水道普及率は全国平均で89%(都市部98%)に達しているが、下水道普及率は全国平均で21%(都市部34%)に止まっている。現在、サンホセ首都圏(人口約127万人)の下水道普及率は45%となっているものの、下水管網の多くは老朽化等により随所で破損して汚水が市街地を流れる河川・水路に漏れ出ている他、下水幹線にて集められた汚水は未処理のまま河川に放流されており、深刻な環境汚染をもたらしていることから、本事業は首都圏市民の生活・衛生環境の改善に有効であると考えられる。
 こうした状況にかんがみ、コスタリカ共和国政府は、2003年4月及び2004年12月の二度に亘り、我が国に対し国家開発計画の重要案件である本計画への円借款要請を行っている。
 以上から本計画を有償資金協力で支援する意義は大きい。

3.案件概要

3-1.目的(アウトプット)
 コスタリカ共和国サンホセ首都圏において、下水処理場の新設及び下水管網の整備を行うもの。

3-2.実施内容
 供与限度額:15,001百万円
 (円借款を供与する対象は、サンホセ首都圏における下水処理場の新設、下水管網の整備に必要な資機材調達・土木工事:1)下水幹線・支線リハビリ・拡張(下水管建設を含む)、2)下水管網リハビリ・拡張、3)下水処理場建設、4)送水トンネルの建設、5)コンサルティングサービス(詳細設計、調達支援、施工監理、技術研修等))
〔供与条件〕
 金利:年1.20%(優先条件(基準))
 償還(据置)期間:25(7)年
 調達条件:一般アンタイド
〔実施機関〕
 コスタリカ上下水道庁(AyA: Instituto Costarricense de Acueductos y Alcantarillados

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(1)環境社会配慮
1)本計画には、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(2002年4月制定)」が適用され、同ガイドライン上、環境への望ましくない影響は重大なものでないと判断される「B種」に該当する。本計画のEIAは事業の段階的実施(一次処理場建設の先行着手)に係る補足説明を付して、承認済み。
2)社会環境面で、7世帯(不法占拠者)の住民移転が必要。住宅・住民移転省が住民移転計画を策定済みであり、同省が対象世帯に対し代替住宅等を斡旋中。
3)下水処理場建設用地(13ヘクタール)は取得済み。下水管網整備対象地域においては合計約50ヘクタールの用地取得が必要であり、詳細設計により対象地権者が確定次第、コスタリカの国内手続きに沿って用地取得を進める予定。
(2)外部要因リスク
 自然災害による工事の遅延等。

3-4.有償資金協力の成果の目標(アウトカム)
 コスタリカ共和国サンホセ首都圏において下水管網及び下水処理施設が整備されることにより、汚染が著しい都市河川・水路の水質改善が図られ、もって首都圏住民の生活・衛生環境の改善に寄与するものである。また、本プロジェクトへの協力を通じ、日・コスタリカ経済関係が強化され、二国間関係の増進がはかられる。

4.事前評価に用いた資料等及び有識者の知見の活用

 要請書、F/S、国際協力銀行より提出された資料等。(環境社会配慮に関する情報はhttp://www.jbic.go.jp/japanese/environ/guide/kankyou/index.php他のサイトヘを参照)
(注)本件プロジェクトに関する事後評価は実施機関が行う予定。
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