
II.事前評価
政府開発援助(ODA)
(1)無償資金協力案件
サン・ファンデル・スル漁業施設整備計画
評価年月日平成17年5月30日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生
1.案件名
1-1.被供与国名
ニカラグア共和国
1-2.案件名
「サン・ファンデル・スル漁業施設整備計画」
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
1935年に外交関係樹立。ニカラグアは、これまでにわが国との間で良好な関係を構築している。これまでのわが国の援助は、ハリケーン・ミッチ災害にも耐えた橋梁等に代表されるように、ニカラグアにおいて高く評価されており、わが国ODAプロジェクトを図柄とした友好記念切手も発行されている。
2-2.対象国の経済状況
(1)所得水準(1人あたりのGNI)は730ドル(2003年)
(2)主要産業は、農業を中心とする第一次産業。
(3)1996年、ニカラグアは重債務貧困国(HIPC)に認定。その後、債務削減措置であるHIPC拡大イニシアチブの適用条件である「暫定貧困削減ペーパー(Interim-PRSP)」を2000年8月に作成し、同年12月に世銀及びIMFのそれぞれの理事会において決定時点への到達が承認された。2004年1月には完了時点に到達し、その結果、ODA債務の大幅削減、非ODA債務原則90%削減(G7各国は自主的に100%削減を実施)、国際機関の債務返済免除等、債務持続可能となる範囲までの救済措置が実施され、わが国も129億円の債権放棄を行った。
2-3.対象国の開発ニーズ
(1)ニカラグア政府は、水産業を外貨獲得と自国民への食料供給を担う重要な産業として位置づけており、同国家開発計画においても水産業の開発を重要施策として掲げている。これを受け、同国水産管理局は水産開発計画を策定し、サン・ファン・デル・スルの零細漁民の支援を主要目標として掲げている。
(2)サン・ファン・デル・スルはニカラグアの太平洋側に位置し、沿岸漁業の中心であるともに漁獲物輸出の拠点となっているが、水揚げ場所が不足しているため水揚げ効率が悪く、漁獲物の鮮度保持の面で問題が生じている。また、同漁港は元来商用港であったため岸壁しか無く、鮮魚流通に必要な施設(荷捌き場、冷蔵・冷凍庫等)は整備されていない。現在、漁獲物はトラックで近隣の鮮魚取引所に運ばれているが、選別や積込みは炎天下で行われており、鮮度保持のみならず国民への安全な食料供給といった点でも問題を抱えている。
(3)同漁港を拠点とする零細漁業者は、1)鮮度低下により漁獲物の価格が下がるため収入が少ない、2)製氷施設は100キロメートル以上離れた首都マナグアしかないため、氷の値段は輸送コストが含まれ高くなり、鮮度を保持するのに十分な量を確保できない、3)干満差が激しいため、干潮時に水揚げする場合は人力で漁獲物を水揚げせざるを得ず多大な労力を強いられる等の問題を抱えている。
(4)このような状況のもと、ニカラグア政府は、サン・ファン・デル・スルの零細漁民支援を目的とする水産基盤施設の建設を内容とした「サン・ファン・デル・スル漁業施設改善計画」を策定し、わが国に対し無償資金協力を要請したものである。
2-4.わが国の基本政策との関係
わが国は、政府開発援助の一環として、開発途上国の水産業の振興を通じ、わが国との友好関係の維持強化を図るとともに、長期的展望の下にわが国漁船の漁場確保等に資するため、水産無償資金協力を通じて、水産関係施設の建設等を推進しており、本件支援はこれに合致すると考えられる。
2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
ニカラグアは低所得国であり、本件の実施を先方政府は高い優先順位を付して要請してきている。また、国際捕鯨委員会においても、科学的な調査に基づく海洋生物資源の持続的利用の観点からわが国を支持する等、水産分野で良好な関係にある。
3.案件概要
3-1.本プロジェクトの目的
本計画は、ニカラグア沿岸漁業の中心、漁獲物輸出の拠点であるサン・ファン・デル・スルにおいて零細漁民支援のために水産基盤施設を建設することを目的としている。
3-2.実施内容
供与限度額は11億9,600万円。
(1)岸壁、防波護岸、管理棟(荷捌き場、製氷場等に使用)の施設建設
(2)機材(製氷器、クレーン付きトラック、魚箱等)の供与
3-3.環境社会配慮など留意すべき点
以下の事項がニカラグア政府により実施される必要がある。
(1)本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
(2)活動に必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと
3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1)水揚げ岸壁が延長されることにより、これまで2時間以上要した水揚げ時間が30分程度に短縮され、鮮度がより保持された漁獲物を水揚げすることが可能となる。
(2)水揚げから荷捌きまでの行程を港内で行うため、漁獲物の鮮度が保持されるとともに、一般消費者への衛生的な魚介類の供給が図られる。
(3)製氷施設から廉価な氷を購入できること、また鮮度を保った魚介類を高値で販売できることから、零細漁業者の経営状況の改善が図られる。
(4)本計画の実施により、わが国とニカラグアの友好関係が促進される。
4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
(1)ニカラグア政府からの要請書
(2)JICAの基本設計調査報告書(平成16年11月)(JICAを通じて入手可能)