
II.事前評価
政府開発援助(ODA)
(1)無償資金協力案件
マナンピティア新幹線道路橋梁建設計画
評価年月日:平成17年 4月22日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生
1.案件名
1-1.供与国名
スリランカ民主社会主義共和国
1-2.案件名
「マナンピティア新幹線道路橋梁建設計画」
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
スリランカは伝統的な親日国であり、両国間においては特に大きな政治的懸案もなく良好な関係が続いている。1996年5月にはクマーラトゥンガ大統領が元首として17年ぶりに公式訪日し、2000年及び2004年にはカディルガマール外相が訪日し、伝統的友好関係を再確認した。また、2002年の停戦合意、同年9月の和平交渉の開始を受け、同国が本格的な紛争解決に向かう中で、2003年1月には川口外相が外務大臣としては16年ぶりにスリランカを訪問し、停戦中の北・東部地域の視察も行った。また、明石康元UN次長を政府代表に任命し和平に向けた働きかけを行ってきている。
2003年6月には我が国が「スリランカ復興開発に関する東京会議」を主催し、51カ国、22国際機関が参加し「東京宣言」が採択され、総額45億ドルに上る支援の意図表明のうち、我が国よりは今後3年間に最大10億ドルの支援を行うことを表明した。
2-2.対象国の経済状況
伝統的に米と3大プランテーション作物(紅茶、ゴム、ココナッツ)を中心とする農業に依存していたが、近年工業化による経済多角化に努力している。内戦の激化により経済がダメージを受けたことは否めないが、1990年~1999年には年平均5%台の成長を維持している。輸出の主な分野としては、繊維・衣料、紅茶等があげられ、輸出先は米国、英国、ロシア、中東等である。2002年度の一人あたりの名目GNPは836ドルであり、失業率は低下傾向で推移している。
2-3.対象国の開発ニーズ
(1)スリランカの交通は、プランテーション農業の発展とともに、農産物の輸送を行うための内陸交通網が発達してきており、特に道路輸送は同国の全旅客輸送量の94%、全貨物輸送量の98%を占めている。幹線道路上には、英領時代に建設された古い橋梁が数多く存在しているが、これらは老朽化や幅員不足、取付道路の線形不良等の問題を抱えているだけでなく、現交通量への対応も困難になっているものも多い。こうした現状は市民生活や経済活動の妨げになっており、道路交通の安全性の確保及び輸送力の増強が課題となっている。
(2)このような状況に鑑み、1995年から1996年にかけて開発調査「全国橋梁改修計画」をスリランカの国道上の100橋に対し実施し、そのうち35橋につき改修の優先度が高いものとして1996年7月にM/Pをとりまとめた。今次支援については、その中から、改善の緊急性、社会経済的寄与を基準として対象橋梁の選定を行た結果、マナンピティヤ橋を対象とすることとしたものである。
(3)本橋梁は、地域経済発展の拠点都市としてスリランカ政府により早期開発促進都市(9都市)に位置づけられているポロンナルワとバティカロアを結ぶ基線道路(国道11号線)に位置している。現在本橋梁は、鉄道・車両の併用橋となっており、道路通行車両の衝突による局部的な損傷や道路との併用によって列車通過時には道路車両通行規制を余儀なくされている。このことは周辺地域、特にポロンナルワとバティカロアの経済発展における大きな制限要素となっている。これら2都市の物理的な繋がりを改善することは、地域経済振興を活性化させ、ひいてはスリランカの国家経済発展の達成に大きく貢献する。
2-4.わが国の基本政策との関係
我が国は、「平和の定着」のためのODA活用を提唱しており、本件橋梁建設による地域経済開発はこれに合致する。また、対スリランカ援助の重点分野の一つとして「経済基盤の整備・改善」が掲げられており、本件はこの主旨に合致する。
2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
スリランカは低中所得国であり、本案件の実施について、スリランカ政府より高い優先順位を付して要請が行われている。
3.案件概要
3-1.本プロジェクトの目的
北中部州ポロンナルワのマハヴェリ河を横断する国道11号線上の現マナンピティア橋の上流側に、新たに道路橋を建設することにより、安全で円滑な交通を確保し、沿線地域の社会経済の維持と発展に寄与するものである。
3-2.実施内容
本計画の供与限度額は、10億4,300万円(国庫債務負担行為。平成17年度1億3,000万円、平成18年度6億5,900万円、平成19年度2億5,400万円)。道路専用橋の建設(302メートル)、取付道路の建設(左岸側:246メートル、右岸側182メートル)の整備を行う。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がスリランカにより実施される必要がある。
(1)本計画により整備された道路・橋梁の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
(2)活動に必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと
(3)高圧線等の公共施設の移転を行うこと
3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1)道路専門橋の建設によりボトルネックが解消され、ポロンナルワ~バティカロア間の通年交通の確保と人の移動・物流が改善され、交通量が増加する。
(2)対面交通が可能になり滞留時間が解消されるとともに、鉄道橋と分離することで道路交通の安全性が確保される。
(列車通過時の車輌の滞留時間(80分/日)、交互通行による車輌の滞留時間(180分/日)の解消。車輛走行速度の高速化(10~15キロメートル/時間→40~50キロメートル/時間)
(3)スリランカ有数の穀倉地帯であるシステムC地区から西部地域への輸送ルートが改善されることで、同地域の社会経済の発展に寄与するとともに、スリランカ東部(バティカロア県:人口50万人)に至る交通の要衝であることから同地域の経済開発にも資する。
(4)上記の貢献によって、二国間関係が増進される。
4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
(1)先方政府からの要請書を参照。
(2)JICAの基本設計調査報告書を参照。
(3)第19回無償資金協力実施適正会議にて検討。