省庁共通公開情報

II.事前評価

政府開発援助(ODA)

(1)無償資金協力案件

第三次幹線道路改修計画

評価年月日:平成17年4月22日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木 秀生

1.案件名

1-1.被供与国名
 エチオピア連邦民主共和国
1-2.案件名
 「第三次幹線道路改修計画」

2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1)我が国とエチオピアの関係は1955年に国交が回復、1958年4月には双方国に大使館が開設され、経済・文化を通じた交流も伝統的に良好。
(2)1991年に軍事社会主義政権が崩壊し、同政権打倒の主力であったEPRDF(「エチオピア人民革命民主戦線」)を主体に現政権が発足する。外交面では善隣友好政策をとっているが、1998年5月国境確定問題を巡ってエリトリアと武力衝突が発生。アフリカ統一機構の調停等により2000年6月に「休戦合意」、同年12月に「和平同意」が成立した。しかしながら、一部の地域の帰属を巡って両国の意見が対立し、国境問題は現在のところ未解決のままである。
(3)我が国は、同国の穀倉地帯と首都を結ぶ幹線道路の改修、食料援助、保険・医療及び教育等の分野で協力を実施し、2003年度までの我が国の援助実績は無償資金協力650.36億円(交換公文ベース)である。
(4)1960年11月に皇太子同妃両殿下(当時)が訪問。ハイレ・セラシエ皇帝(当時)が1956年及び1970年(大阪万博出席)に訪日。メレス首相は、1996年9月(公式実務訪問賓客)、1998年10月(TICAD II)及び2003年9月(TICAD III)と3度の訪日歴あり。2002年8月に川口外務大臣(2002年当時)がエチオピアを訪問し、2003年2月にはセイヨム外相が訪日する等、現在、二国間の要人往来が活発。

2-2.対象国の経済状況
(1)所得水準(1人当たりGNI)は90ドル(世界銀行, 2003)で最貧国の一つ。
(2)1991年11月に民間セクター重視、政府管理縮小及び統制撤廃、重点的再建分野策定等を原則とする新経済政策「農業開発主導の産業化政策(ADLI)」を、1995年1月には「開発、平和及び民主主義のための計画(略称「国家開発5カ年計画」)」を策定し、農業生産性拡大、教育、道路、公衆衛生等を最重点目標に据えてきた。しかし旱魃による農業生産の低下、コーヒーの世界的な価格低やエリトリアとの紛争後の経済課題に取り組むべく、2000年に国家開発5カ年計画の反省に基づき見直しをした「第2次国家開発5カ年計画」。2001年には、同計画に基づき作成された暫定版貧困削減戦略ペーパー(I-PRSP)を世銀が承認している。
(3)同国は、石油や稀少金属等の天然資源に恵まれているといわれながら、その殆どが未開発であり、潜在的な発展の可能性は高いと言える。農業部門は労働人口の約85%(2004年)、GNIの約45%(2004年)を占めているが、1998年に入り、旱魃による農業生産の落ち込みや、主要輸出品目であるコーヒーの世界的な価格低迷により、GDP成長率がマイナスを記録し、加えてエリトリアとの国境紛争による難民・避難民が大量発生し、エチオピア経済に打撃を加えた。
(4)GDP成長率は2.7%(世界銀行,2002年)。

2-3.対象国の開発ニーズ
 内陸国であるエチオピアでは、国内流通の大部分を道路交通に依存しているにも拘わらず、道路整備状況が極めて低水準にある。そのため、道路セクター開発は、同国経済の活性化に対して緊急の課題となっている。
 また、本件の対象となる北西幹線道路は、首都アディスアベバから放射状に伸びる5つの幹線道路の一つであり、「エ」国最大の農業地帯(穀物生産と家畜飼育)であるオロミア州、アムハラ州とを結んでいる。同幹線道路沿線地域では、全国農業生産量と家畜頭数はそれぞれ国全体の80%を占めており、農産物輸送力強化による食糧安全保障上の観点からも、同道路改修が緊急に必要となっている。
 このような状況のもと、エチオピア政府は、上記北西幹線道路におけるゴハチオン=デジェン間(41キロメートル)の改修と、同区間で青ナイル川に架かる新アバイ橋(303メートル)の新設に必要な資金につき、我が国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 我が国は、エチオピアの北西幹線道路整備計画を支援するために、アディスアベバからの約182キロメートルについて、第一次計画(平成10年度から平成13年度)及び第二次計画(平成13年度から平成16年度)において、それぞれ約91キロメートルづつ(アディスアベバ=カシム、カシム=ゴハチオン)分割して実施している。

2-4.我が国の基本政策との関係
 我が国が想定している無償重点分野の一つ「インフラ整備」に合致している。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 エチオピアは後発開発途上国であり、本件の実施を先方政府は高い優先順位を付して要請してきている。

3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、同国最大の農業地帯(穀物生産と家畜飼育)であるオロミヤ州、アムハラ州を起点とする、食糧流通事情を改善することを目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は48億3,200万円(国庫債務負担行為。平成17年度:9億1,000万円、平成18年度:16億1,700万円、平成19年度:16億2,900万円、平成20年度:6億7,600万円)。
 北西幹線道路(コバチオンからデジェンまで約41キロメートル)を改修し、同区間内で青ナイル川に架かる新アバイ橋(約303メートル)を新設するもの。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 エチオピア政府により、次の事項が確保される必要がある。
(1)事業用地・資材採掘場所・工事用道路を確保する。
(2)沿線(デジェン市内)の電柱・電話柱・家屋の塀を確実に撤去する。
(3)本件実施後、整備される施設等を適切かつ有効に維持管理し、その利用および維持管理状況を定期的に確認する。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1)同国最大の穀倉・畜産地帯への信頼できるアクセスが確保されることによって、農業開発を促進するとともに、農産物流通を活性化する。
(2)輸送コスト低減(走行費用の低減、交通事故の減少等)により物流が円滑化され、エチオピア国内の主要農産物の80%が生産されている対象地域の経済活動が活性化される。

4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1)エチオピア政府からの要請書
(2)予備調査(平成15年2~3月)基本設計調査(平成15年10~12月)及び基本設計概要説明調査(平成16年5~6月)
(3)第19回無償資金協力実施適正会議にて検討
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