
II.事前評価
政府開発援助(ODA)
(1)無償資金協力案件
カブール国際空港ターミナル建設計画
評価年月日:平成17年4月11日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木 秀生
1.案件名
1-1.供与国名
アフガニスタン
1-2.案件名
「カブール国際空港ターミナル建設計画」
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
(1)我が国とアフガニスタンは1979年の旧ソ連の侵攻以来、外交関係を断絶した。2001年9月11日の米同時多発テロ事件を受け、米軍等に支援を受けた北部同盟がタリバーン政権を崩壊させた。我が国は、2001年12月のボン合意を受けて発足した暫定政権を政府承認した。その後、同国は2002年6月の緊急ロヤ・ジェルガを経て政権を移行している。
(2)我が国は、2002年1月、東京において「アフガニスタン復興支援国際会議」を開催し、向こう2.5年で5億ドルの支援を表明、「平和の定着」構想の下、和平プロセス、治安の改善、復興の全ての分野において支援を実施している。さらに、2003年2月には、「アフガニスタン「平和の定着」東京会議」を開催し、我が国がDDR(元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰)という困難な取り組みのイニシアティブをとるものとしてアフガニスタン側からも強い支持を得ている。なお、2004年3月にベルリンで開催された国際会議において、我が国は2004年3月から2006年3月末までの2年間に総額約4億ドルの支援を実施することを表明した。現在までに約8億7千万ドルの支援を実施している。
2-2.対象国の経済状況
旧ソ連の侵攻以降、20年間は戦時経済が続き、経済・社会インフラが欠如・破壊されてきた。タリバン政権以降、深刻な干魃の影響もあり、経済は著しく衰退し、国民経済は最悪の状況に陥っており、国民全体の約36%が貧困層である。農村部人口は全体の約76%を占め(2000年)、人口の多くが自給自足の農業に従事しており、政府機関や民間企業で従事する者は労働者全体の10%に満たない。農村の大部分(81%)には電気が通っておらず、また農村の約41%は主要道路から6キロ以上離れたところに位置している等インフラも未整備である。
2-3.対象国の開発ニーズ
アフガニスタンは、長年の紛争を経て、ボン合意に基づく和平及び復興プロセスを推進しているところであり、内陸国である同国において、航空分野の復興は同国とドナー国との間の人・物の円滑な流れを確保し、復興支援を着実に実施するために不可欠である。なかでも同国唯一のカブール国際空港の施設は紛争で破壊され、ISAF、世銀等による応急手当のみで運用されている状況にある。既存のターミナルは、我が国が平成15年度「カブール国際空港機材整備計画」を実施し、機材の整備が図られているが、旅客ターミナル・ビルは現在のピーク時旅客を取り扱うには床面積が絶対的に不足し、必要な設備が欠けている。また、現状では、国際線と国内線の旅客が混在し、対テロ対策として厳重な安全対策ができないという問題が発生している。このような状況の下、アフガニスタン移行政権は、カブール国際空港の既存のターミナルの西側に国際線専用のターミナルを建設し、既存ターミナルを国内線専用にする「カブール国際空港ターミナル建設計画」を策定し、その計画の実施に必要な資金につきわが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
2-4.我が国の基本政策との関係
アフガニスタンの復興支援を着実に実施する上で、人・物の流通は不可欠であり、この観点から我が国の対アフガニスタン支援の基本政策に合致している。
2-5.無償資金協力を実施する理由
アフガニスタンは低所得国であり、本件の実施について、同国より高い優先順位で要請が行われている。内陸国であるアフガニスタンにおいて、航空分野の復興は同国とドナー国との間の人・物の円滑な流れを確保し、復興支援を着実に実施するために不可欠であり、無償資金協力の必要性が高い。
3.案件概要
3-1.目的
本計画は、カブール空港の国際線ターミナル及びこれに付随する施設を建設するとともに航空機牽引車等の機材調達により、同空港の旅客・手荷物の移動・運搬の流れの改善と旅客サービスの向上を図ることを目的としている。
3-2.案件内容
供与限度額は30億円(国庫債務負担行為。平成17年度8億6,200万円、平成18年度19億8,900万円、平成19年度1億4,900万円)。カブール国際空港ターミナルビルの建設の他、手荷物用X線検査機、金属探知機、航空機牽引車等の調達。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がアフガニスタンにより実施される必要がある。
(1)本計画により整備された施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
(2)活動に必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと
(3)本計画の実施前に用地内の保税倉庫の撤去・整地を行うこと
3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1)人の往来・物流が促進されることでアフガニスタンの復興支援が着実に実施される。
(2)本計画によるターミナルが国際線専用、既存のターミナルが国内線専用となることで、対テロ対策として出入国管理等の安全対策を講じることが可能となる。
(3)本計画により搭乗手続き、出入国手続きの時間が大幅に短縮され、人や物の往来が促進される。
(4)上記の貢献によって、二国間関係が増進される。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等
(1)アフガニスタンからの要請書。
(2)JICA基本設計調査報告書。
(3)第19回無償資金協力実施適正会議にて検討。