省庁共通公開情報

II.事前評価

政府開発援助(ODA)

(1)無償資金協力案件

地方都市上水施設改善計画

評価年月日:平成17年10月14日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木 秀生

1.案件名

1-1.被供与国名
 ネパール王国
1-2.案件名
 「地方都市上水施設改善計画」

2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1)1956年に国交を樹立して以降、両国関係は伝統的に極めて友好裡に推移しており、我が国皇室とネパール王室との間の往来も盛んである。2006年には日・ネパール国交樹立50周年を迎えることとなっている。また、要人往来も活発。文化関係では、青年の相互交流等を実施している。
(2)1990年代に民主化を実現。治安問題(マオイストの活動に対する治安維持)と不安定な政局が課題となっている。2002年5月に下院が解散された後、首相の解任、辞任が続き、2005年2月に国王が内閣を解散し、自らを議長とする内閣を発足させるなど、内政が不安定になっている。
(3)我が国は、農業(食糧援助、食糧増産援助を含む)、保健・医療、上水道等の基礎生活分野に加え、運輸・交通、電力等の基礎インフラを中心に援助の対象とし、1970年から2004年までの支援累計は約1,654億円とドナー国中最大である。

2-2.対象国の経済状況
(1)所得水準(1人当たりGNI)は、260ドル(2004年)。
(2)1956年以来、9次にわたる5カ年計画により経済開発を推進してきた。2003年2月に貧困削減戦略文書として第10次5カ年計画を策定し、5年間で貧困層人口を38%から30%まで削減する等を目標としている。
(3)1996年に始まったマオイストの武装闘争により、特に、2001年以降の治安情勢悪化に伴い、ネパールの主幹産業である観光産業が低迷、投資や輸出も停滞するなど、依然として危機的状況が続いている。
(4)経済面では、農業のほか、観光業と繊維加工業を主たる産業としており、農業部門がGDPの約4割、就業人口の約7割を占めているため、農作物収穫高にその年の経済成長率が左右される構造を有している。国家財政は慢性的な赤字状態を呈しており、赤字を外国援助が補う構造となっている。加えて最近は治安維持活動費の増加が財政悪化要因となっている。
 また、貿易赤字は財政赤字と並びネパール経済の最大の懸案で、2003年度の貿易赤字額は11億ドルとなり、対GDP比17%となっている。主要な貿易産品としては、輸出は既製服、カーペット、銀器、宝石類、パシュミナなど、輸入は石油製品、糸、化学肥料、輸送用機械及び部品等が挙げられる。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1)ネパール政府は「第10次5ヵ年計画(2002年~2007年)」において、安全な飲料水確保のための水質改善等、飲料水供給に関する政策目標を掲げている。
(2)ネパール東部に位置する地方3都市(ドゥラバリ、ガウラダ、マンガドゥ)の上水道には、浄水場・消毒施設がないため、供給される水が雨期時に高濁度となる、鉄分含有率が高いなど水質が悪く、飲料水としては不適格である。また、衛生面でも、水因性の疾病が発生している。
(3)このような状況の下、ネパール政府は、住民に安全な飲料水を供給するため、水質を改善するとともに、給水量の向上を図るための上水施設の改善に必要な資金につき、わ が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.わが国の基本政策との関係
 我が国の対ネパール経済協力は、「貧困削減に資する経済成長」のアプローチを基本として、ネパール側との政策協議等を踏まえ、社会セクター改善、農業開発、経済基盤整備、人的資源開発及び環境保全を重点分野としており、本案件は、対ネパール支援の基本政策に合致している。
 また、当該分野はODA大綱にも規定している「貧困削減」という我が国ODAの重点課題と合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 ネパール王国は、後発開発途上国(LDC)であり、先方政府は本案件の実施を高い優先順 位を付して要請してきている。本案件により、雨期時の高濁度や鉄分含有などの水質を改善することにより、住民に対し安全な飲料水を供給することが可能となることから実施する効果が高い。なお、本案件により、ネパールにおけるマオイスト問題の根底にある貧困問題・社会不平等などの軽減に大きく貢献するものとなることが期待される。

3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 本計画は、地方3都市(ドゥラバリ、ガウラダ、マンガドゥ)の飲料水が、雨期時に高濁度となる、鉄分含有率が高いことなどにより水質が悪くなり、水因性の疾病も発生していること、また、給水量も不足しているため、給水時間が少ないなどの状況を改善し、住民が安全で安定的な給水を受けられるように上水施設の改善を図るものである。

3-2.実施内容
 本計画の供与限度額は、11億2,400万円。浄水場・除鉄施設や導水管・配水管等を整備するほか、施設運転管理、水道事業運営組織の強化についての技術的支援。

3-3.環境社会配慮など留意すべき点

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1)地方3都市の住民約5万7千人による安全な飲料水の利用が可能となる。(2014年時の目標)
(2)水系を起因とする病気の減少が促進される。
(3)安全な飲料水を供給する上水施設運営に関する技術移転がなされる。
(4)本計画の実施によって、我が国とネパールとの間の二国間関係が増進される。

4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)先方政府からの要請書。
(2)JICAの基本設計調査報告書。(JICAを通じて入手可能。)
(3)第22回無償資金協力実施適正会議。(同会議の内容については外務省ODAホームページ
このページのトップへ戻る
目次へ戻る