省庁共通公開情報

II.事前評価

政府開発援助(ODA)

(1)無償資金協力案件

ビエンチャン1号線整備計画(第1期)

評価年月日:平成17年7月20日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生

1.案件名

1-1.供与国名
 ラオス人民民主共和国
1-2.案件名
 「ビエンチャン1号線整備計画(第1期)」

2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1)ラオスは1951年8月に対日平和条約に調印し、1955年3月5日に国交樹立。仏教、稲作等の文化・習慣面での共通の背景を有していることから来る親近感及び明治維新、第二次世界大戦後の日本の発展に対する強い関心等に基づき、両国関係は極めて良好である。
(2)人民革命党を指導党とするラオス政権は1975年の成立以来一貫してカイソーン党議長を中心とする指導体制が維持されたが、1992年11月カイソーン党議長の死去に伴い、カムタイ党議長(1998年大統領に就任)、ヌーハック前大統領等を中心とする指導体制になった。現指導部は、引き続き第4回党大会(1986年)の決議に沿った経済面を主とする諸改革の方針を踏襲している。また1989年総選挙後の最高人民議会は1991年8月の新憲法制定を含む法体系の整備に専念。2002年2月に、同憲法制定後3回目となる国民議会選挙を実施。2003年5月、第5期第3回国民議会において同憲法が改正され、同7月公布された。
(3)我が国は1991年以降ラオスへの最大のバイの援助国であり、BHN、農業・農村開発、インフラ、人造り分野を中心に経済協力を実施してきている。
(4)近年ハイレベルの人物往来が活発化している。(我が国要人の訪「ラ」:1999年秋篠宮同妃殿下、2000年故小渕総理大臣、2002年塩川財務大臣、2003年川口外務大臣外相、2004年小泉総理大臣、町村外務大臣。ラオス要人の訪日:2001年ソムサワート副首相兼外相、2002年ブンニャン首相、2003年及び2005年ソムサワート副首相兼外相。)

2-2.対象国の経済状況
(1)人当たりGDPは365ドル(2002年)であり後発開発途上国(LDC)の一つ。
(2)1975年以来の計画経済が行き詰まり、1986年に「新経済メカニズム」とよばれる経済改革に着手した。同改革では、銀行制度、税制、外国投資法の制定、国営企業の民営化等幅広い分野での措置を通じ、市場経済の導入、開放経済政策を推進している。同国は、日用品から機械・燃料に至るまで輸入に依存しており、その約50%がタイからであること、アジア経済危機の際、高率のインフレ及び為替レートの下落に直面したが、現在は緩やかな回復基調を辿っている。また、第7回党大会(2001年)において2020年までのLDC脱却、国民生活水準3倍増、経済成長率7%以上等を目指した長期目標を策定している。
(3)ラオス国政府は「2010年・2020年社会経済開発戦略」と「第5次社会・経済5ヶ年計画(2001年~2005年)」で1)市場経済の促進および産業全部門における経済発展の推進、2)地域経済構造の改善と発展、3)農村開発の推進、4)経済協力の拡充と外国からの投資推進、を掲げている。
(4)主要産業は農林水産業、木材加工、水力発電事業であるが、うち農林水産業がGDPの約5割、労働人口の約8割を占める。主要輸出品は木材、縫製品、コーヒー、電力(タイ向け)であるが、貿易は恒常的に輸入超過になっており、2002年は輸出323百万ドル、輸入534百万ドルで、約2億ドルの赤字であった。主要な貿易相手国は、タイ・ベトナム・中国・日本である。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1)ビエンチャン1号線は、ビエンチャン市における都市内道路網の骨格幹線であるばかりでなく、市中心部とラオスの2大玄関口であるワッタイ国際空港及びタイ国境のメコン河に架かる橋を結ぶ道路である(ラオス来訪者の6割は右のメコン架橋から、1割強はワッタイ国際空港から入国する)。
(2)しかし、ビエンチャン1号線の道路状況は極めて悪く、路面の劣化進行と各種車両の混在とが相まって、現在安全かつ円滑な交通、社会経済活動や日常生活行動等に支障を来している。加えて道路排水施設が不十分であるため、雨期には道路上および沿線において頻繁に洪水被害が発生し、舗装をさらに劣化させる原因となっており、道路整備が緊急課題となっている。このような状況に対応すべく、ラオス政府は本件を最重要プロジェクトとして位置づけ、我が国無償資金協力による早期実施を要請してきたもの。

2-4.わが国の基本政策との関係
 1998年に派遣した経済協力調査団等によるラオス側との政策対話を踏まえ、1)人造り、2)基礎生活分野(BHN)支援、3)農林業、4)インフラ整備を重点分野としている。本案件は対ラオス支援の基本政策に合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 対象道路は、同国における最重要幹線道路であり、同国政府より最優先順位を付して要請されている。本案件の実施により安全な交通が確保され、生活道路としての機能が向上する。

3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 ラオスの最重要幹線道路であるビエンチャン1号線は、老朽化が進んで舗装状況が悪く、また排水設備の不備により都市部区間を中心に雨期に道路冠水が発生する。これにより、安全な交通に支障を来しており、また周辺地域の衛生環境悪化の原因となっていることから、当該道路及び道路排水設備の改修を行うもの。

3-2.実施内容
 本計画の供与限度額は、20億9,200万円(ビエンチャン1号線シカイ交差点~タナレン保税 倉庫間(約28.9キロメートル)の道路改良及び道路排水施設整備のうち本件は第1期15.7キロメートル分)。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(1)沿道家屋の移転を回避する。
(2)工事中の周辺家屋、文化財への影響を最小限に抑える工法を用いる。(3)以下の事項がラオス政府により実施される必要がある。
1)本計画により整備された道路の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
2)本件道路の維持管理のための運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと。

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1)走行性が改善され、また低速車線又は混合車線を設置し、交通整流を図ることにより、都心部(シカイ~チナイモ間12.3キロメートル)の通過所要時間が短縮され(約30分→21分)、幹線道路としての機能が向上する。
(2)歩道、バス停、駐車帯、横断歩道、信号機、街路灯、標識等の附帯設備が整備されることにより、安全な交通が確保され、生活道路としての機能が向上する。
(3)冠水日数・時間が減少することにより、人および物の流通が改善される(現状冠水回数 平均73回/年、平均3時間/回)。
(4)幹線道路として機能が向上することにより、物的・人的交通が促進され、社会・経済活動が活性化する。
(5)冠水が減少することにより、沿道の保健・衛生環境が改善される。
(6)上記協力により、二国間関係が促進される。

4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)先方政府からの要請書
(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)
(3)第21回無償資金協力実施適正会議(同会議の内容については外務省ODAホームページ参照
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