
II.事前評価
政府開発援助(ODA)
(1)無償資金協力案件
ケツァルテナンゴ飲料水供給計画(2分の2期)
評価年月日:平成17年5月24日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀雄
1.案件名
1-1.被供与国名
グアテマラ共和国
1-2.案件名
「ケツァルテナンゴ飲料水供給計画(2分の2期)」
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
1996年のグアテマラ国内の和平合意以降、グアテマラにおける平和の定着は中米全体にとっても重要との観点より、わが国は「先住民族に配慮した農村生活の改善」「環境に配慮した経済開発」「民主化定着」を重点分野として支援を行ってきた。また、日本・中米フォーラム等を通じて、同国を含む中米との関係は緊密化してきており、外交関係70周年にあたる本年8月には日本・中米首脳会談が開催されることとなっている。
2-2.対象国の経済状況
(1)所得水準(1人あたりのGNI)は1,910ドル(2003年)
(2)コーヒー、砂糖、バナナ等の農産品が経済の根幹となっており、経済が国際市場価格に依存するために不安定な構造である。こうした経済構造を改善するべく、政府は野菜類や繊維加工品など非伝統品を振興している。2001年以降2003年までは2.0%を越える経済成長を続けている。
2-3.対象国の開発ニーズ
グアテマラ政府は、政策として貧富の格差及び首都と地方の経済格差是正、生活の最低基盤の保障を目指しており、その中で上下水道及び衛生関連施設の充実に高い優先度を与えている。首都圏に次ぐ第二の主要都市であり本案件の対象地域であるケツァルテナンゴ市では、給水施設は1950年代から整備され始めたが、市の発展に伴って無計画に拡張されたため、都市部の給水率は95%と高いにもかかわらず、配水区画とそれに対応すべき給水施設が適切なものとなっていない。このため、多くの問題が発生している。具体的には、断水、給水時間の不安定、給水量・圧力の不足という問題を慢性的に抱える地区が多く、上水の安定的供給サービスが行えない状況にある。
かかる状況において、ケツァルテナンゴ市はオーストリアの支援の下、2018年を目標とした「飲料水供給計画マスタープラン」を1999年に策定し、2000年には本件実施機関であるケツァルテナンゴ市営水道公団(EMAX)を設立し、組織強化に努めてきた。同市は、マスタープランに沿って水源、配水池、送配水管等の給水施設の整備を進めることとしているが、資金不足から進捗は停滞している。このため、グアテマラ政府は日本政府に対し、ケツァルテナンゴ市都市部の上水道整備に係わる無償資金協力を要請してきたものである。
2-4.我が国の基本政策との関係
案件のサイトとなっているケツァルテナンゴ市は先住民系住民が多く居住する都市であり、先住民に配慮した案件であることから、2-1に記載した対グアテマラODA重点分野に合致すると考えられる。
2-5.無償資金協力を実施する理由
本件を実施することにより、首都と地方の格差、貧富の格差、先住民系住民への基礎サービスの提供の改善に寄与し、もってグアテマラの平和の定着に貢献することが可能となるため。
3.案件概要
3-1.目的
(1)ケツァルテナンゴ市における安全な飲料水の安定供給
(2)水道公社の能力向上
3-2.案件内容
供与限度額は、10億4800万円。
(1)既存の給水施設(水源、配水池、送配水施設)の改修
(2)機材(漏水制御用機材、給水メーター関連機材等)の供与
(3)漏水防止、水道経営改善についての技術指導の実施
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(1)グアテマラ側の負担部分(送電線引き込み、アクセス道路の整備、フェンス等場内整備)の適切な実施。
(2)事業実施に必要なカウンターパート技術者の配置。
3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1)慢性化している給水時間制限、給水量不足、給水圧不足等の問題が改善される。裨益人口は8万人。
(2)機材調達とソフトコンポーネントの実施によって実施機関の経営改善のための体制が整う。
(3)本計画の実施を通じた地方の開発への貢献により、わが国とグアテマラの二国間関係が促進される。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等
(1)グアテマラ政府からの要請書
(2)JICA基本設計調査報告書(平成16年1月~2月)(JICAを通じて入手可能)
(3)第20回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。