省庁共通公開情報

II.事前評価

政府開発援助(ODA)

(1)無償資金協力案件

学校建設計画(第2期)

評価年月日:平成17年5月24日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木 秀生

1.案件名

1-1.被供与国名
 アフガニスタン
1-2.案件名
 「学校建設計画」(第2期)

2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1)我が国とアフガニスタンは1979年の旧ソ連の侵攻以来、外交関係を断絶した。2001年9月11日の米同時多発テロ事件を受け、米軍等に支援を受けた北部同盟がタリバーン政権を崩壊させた。我が国は、2001年12月のボン合意を受けて発足した暫定政権を政府承認した。その後、同国の政権は2002年6月の緊急ロヤ・ジェルガにより移行政権となっている。
(2)我が国は、2002年1月、東京において「アフガニスタン復興支援国際会議」を開催し、向こう2.5年で5億ドルの支援を表明、「平和の定着」構想の下、和平プロセス、治安の改善、復興の全ての分野において支援を実施している。さらに、2003年2月には、「アフガニスタン「平和の定着」東京会議」を開催し、我が国がDDR(元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰)という困難な取り組みのイニシアティブをとるものとしてアフガニスタン側からも高い評価を得ている。なお、2004年3月にベルリンで開催された国際会議において、我が国は2004年3月から2006年3月末までの2年間に総額約4億ドルの支援を実施することを表明した。現在までに約8億7千万ドルの支援を実施している。

2-2.対象国の経済状況
 主要な経済指標は不明である。旧ソ連の侵攻以降、20年間は紛争下での経済状態が続き、経済・社会インフラが欠如・破壊されてきた。タリバーン政権以降、深刻な干魃の影響もあり、経済は著しく衰退し、国民経済は最悪の状況に陥っており、国民全体の約36%が貧困層である。農村部人口は全体の約76%を占め(2000年)、人口の多くが自給自足の農業に従事しており、政府機関や民間企業で従事する者は労働者全体の10%に満たない。農村の大部分(81%)には電気が通っておらず、また農村の約41%は主要道路から6キロ以上離れたところに位置している等インフラも未整備である。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1)アフガニスタンの初等教育就学者は、暫定政権成立後、予想を上回るペースで増加を続けている。国連の統計によれば、2002年3月の新学期開始時には約150万人が就学するとの予想を立てていたが、2003年4月に策定された「国家開発計画」における教育セクターへの重点及びユニセフの「Back to School」キャンペーンの成功もあり、ユニセフ等の推定によると全国の初等教育就学者は310万人に達したと言われる。1999年のユニセフの統計では、就学人口が73万人だったことと比較すると既に4倍を越す人数となっている。
(2)しかしながら、潜在的な学齢人口は450万人と見込まれており、アフガニスタン全土における教育施設の不足から、残りの約140万人弱がまだ就学できずにいる。この様に、アフガニスタンにおいては教育需要に対して教育施設が圧倒的に不足しているため、教育アクセスの量的拡大が大きな課題となっている。こうした状況に対応するため、殆どの学校では2部・3部制で対応しているものの、各学校は極めて過密状態である。また、近くに学校がないために青空教室や輸送コンテナーを改造して教室としたり、民家を借りて授業を行っているケースや、タリバーン時代に子女への教育提供のために開設されたホームスクールを現在も継続しているケースもあり、校舎のニーズは高いと考えられる。特に戸外での授業は炎天下や砂埃の中での授業であり、健康面での子供たちへの影響も懸念される。
(3)このような状況下、アフガニスタン政府は、学校の新築又は増築を行うために必要な資金につき、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 アフガニスタンの復興支援の重点分野の「教育」に合致する。また、アフガニスタンでは2002年に「国家開発計画」が策定されており、その中の重要分野として初等教育へのアクセスの拡大につき述べられている。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 アフガニスタンは低所得国であり、本件の実施について、同国より高い優先順位で要請が行われている。復興段階にあるアフガニスタンにおいて、教育アクセス拡大のための学校建設は極めて重要であり、無償資金協力の必要性が高い。

3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、カブール県、カブール市、カンダハール市において21校の学校建設を行い、教育アクセスを拡大するとともに、児童に良好な学習環境を提供することを目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は10.22億円。21校の小中学校の建設の他、便所及び井戸の整備を行う。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 以下の事項がアフガニスタンにより実施される必要がある。
(1)本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1)対象21校において児童に新たに良好な学習環境が提供される他、2部ないしは3部授業が解消され、1教室当たりの児童数も減少して学習環境が改善される。
(2)対象校の全てに計31棟の便所が設置され、衛生的な学習環境が整備される。
(3)職員室・教材倉庫等の施設、机・椅子・戸棚等の備品の充実により効率的な学校運営、ひいては教員の能力向上が図られるとともに、付属教材の調達によって学習効果が向上する。
(4)上記の貢献によって、我が国とアフガニスタンとの間の二国間関係が増進される。

4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1)アフガニスタンからの要請書
(2)JICA基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)
(3)第20回無償資金協力実施適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
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