I.実施計画に基づく事後評価
2. 政府開発援助(ODA)
(1)政府開発援助における政策
対カンボジア国別援助計画(2002年2月~)
経済協力局開発計画課長 岡庭健
平成18年5月
目標
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カンボジアの復興と経済社会開発努力を支援し、カンボジア及びアジア地域の安定と繁栄に寄与する。
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施策の背景・概要及び必要性
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(1)1970年代以降約30年に亘る内戦と政治的混乱を経て、現在、国家再建に取り組むカンボジアを支援することは、同国が再び政治的に不安定な状況へ逆戻りすることを阻止するものであり、また、我が国外交上最も重要な地域の一つであるアジアの平和と安定に大きく寄与することにも繋がる。
(2)さらに、同国の開発と復興を支援することは、同国一国への支援に止まるものではなく、長期的なASEAN全体の経済活性化、或いはASEANの優先課題であるメコン地域開発にも大きく貢献するものであり、ひいては、我が国経済にとっても有益な結果をもたらすものである。
(3)かかる観点より、我が国は、ODAの実施を通じ、カンボジアの復興及び経済社会開発を広範に支援してきている。カンボジアは、2004年の我が国二国間ODA供与額(支出純額ベース)第13位(2003年は第10位)の受け取り国であり、我が国は、同国に対する最大のODA供与国となっている。
(4)2002年2月に策定された「対カンボジア国別援助計画」では、我が国の対カンボジア援助重点分野は以下のように定められている。
(イ)持続的な経済成長と安定した社会の実現
(a)5つの改革(行政改革、財政改革、兵員削減、自然資源管理、社会分野)支援と良き統治
(b)社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備
(c)農業・農村開発と農業生産性向上
(d)対人地雷問題への包括的支援
(ロ)社会的弱者支援(教育、医療分野等)
(ハ)地球規模問題に対する対応(環境保全、薬物対策等)
(ニ)ASEAN諸国との格差是正のための支援
(a)メコン地域開発
(b)IT支援
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投入資源
(コスト)
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平成12年度:無償79.14億円、技術協力30.61億円
平成13年度:無償76.45億円、技術協力50.32億円
平成14年度:無償103.05億円、技術協力47.80億円
平成15年度:無償62.49億円、技術協力44.58億円
平成16年度:無償66.93億円、技術協力40.82億円、円借款73.42億円
(円借款・無償年度E/Nベース、技術協力年度経費ベース)
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施策の効果の把握方法
(枠組み)
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第三者評価「カンボジア国別評価」(要約のみ別添)を踏まえ、当該政策を以下の視点から評価した。
(1)目標の妥当性
(イ)わが国の上位政策である新旧ODA大綱、新旧ODA中期政策との整合性
(ロ)カンボジアのニーズ、政策の優先度との整合性
(ハ)国際的な優先課題、他ドナーの援助政策などの内容との整合性
(ニ)カンボジアを取り巻く地域協力との整合性
(2)成果の有効性
(イ)マクロ目標レベル
(ロ)各重要分野レベル
(ハ)カンボジアの開発に対する日本の貢献
(3)プロセスの適切性
(イ)援助政策策定過程の適切性
(ロ)援助政策実施過程の適切性
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評価の結果
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(1)目標の妥当性
2002年2月に策定された対カンボジア国別援助計画は、ODAの上位政策(ODA大綱、ODA中期政策等)と基本的に合致しており妥当と考えられる。また、援助計画で対応しているカンボジアの開発ニーズに関しては、同国の国家戦略開発計画(NSDP)上の重点分野とも概ね整合性がとれており、妥当といえる。
(2)成果の有効性
わが国の支援は、経済成長および貧困削減(生活・社会面の格差是正)の双方で、バランスのとれた支援に努めてきている。特に、インフラ整備では、成長の足かせの一つといわれているインフラへのアクセス欠如・高コストという阻害要因を取り除くことに貢献していると思われ、カンボジア政府や他ドナーからもカンボジアの開発にインパクトを与えていると評価され、対カンボジア国別援助計画の成果は有効であったといえる。
(3)プロセスの適切性
策定過程で様々な利害関係者との対話が持たれており、プロセスの透明性が確保されている。案件形成・実施プロセスにおいては、大使館・実施機関とカンボジア側との協議は密に行なわれており、カンボジア側の案件形成能力の促進を図りつつ、適切なプロセスが取られている。
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評価結果を踏まえた今後の取組
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(1)NSDPはその後新たに改定されているため、次の国別援助計画改定においては新たなNSDPとの整合性をとることが必要である。新たなNSDPでは、最大の課題を「貧困削減」に据え、カンボジアのMDGsであるCMDGsの達成を目標としている。我が国は、NSDPへの策定過程にも参加しており、次の国別援助計画では、NSDPの目標、具体的には「CMDGs達成への貢献」を上位目標とする体系図の策定の可能性も検討すべきであろう。
(2)カンボジアの国別援助計画では、重点課題が上位目標に対し4つの分野横断的な課題として設定されているが、援助の効果をより明確にするためには、次の計画改定の際には、目的と手段の論理関係の整理をより明確にすることが望ましい。
(3)今後、よりメリハリのある援助を実施するためには、支援分野の間、または支援分野におけるサブセクター(保健分野であれば感染症対策など)の間での優先順位づけの検討も念頭に入れる必要がある。優先順位づけの基準は、例えば、外交上の必要性、経験や知識面での日本の比較優位性、他ドナーとの連携による相乗効果の余地等を勘案して、優先分野を確定することが有効である。
(4)プノンペンーシハヌークヴィル間は、観光地として成長するシアムリアップや、産業拠点としての開発が期待されるポイペト等の国境地域と並び、現在カンボジア経済成長の原動力となる成長回廊と見込まれており、わが国の支援は民間セクター開発に繋がる効果が期待できる。こうした特定地域への選択と集中を通じた支援も状況に応じて援助の手法として採用する。
*概算要求、機構・定員要求への反映方針
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概算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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―
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政策評価を行う過程において使用した資料等
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- 「カンボジア国別評価報告書」(平成18年3月)
- (要約のみ別添。全文については外務省ホームページにて公表)
- 〔http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/shiryo/hyouka.html〕
- ODA白書(2004年)
- 国別データブック(外務省ホームページにて公表)
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備考・特記事項
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カンボジア国別評価
要約
1. 評価の実施方針
1.1 評価の背景
わが国の国際貢献の主要な柱の一つである政府開発援助(ODA)は、総額で世界のトップクラスの規模を維持しているが、近年、その効率的・効果的な実施が問われており、説明責任の観点からODAの評価の重要性は高まっている。本評価は「ODA評価ガイドライン」(2005年5月)に則り、わが国の対カンボジア援助計画全般を対象とする政策的な観点からの評価(政策レベルの評価)である。
わが国は、カンボジアの復興開発が始まった1992年より常にトップドナーとなっている。カンボジアへのODAはわが国の2004年の二国間供与額の第12位を占めている。また、ASEAN支援、メコン地域開発においてもわが国にとってカンボジアは重点国となっている。わが国は、2002年2月、カンボジアに対する援助の枠組みとして「国別援助計画」を策定したが、今後より効果的・効率的な支援を行っていくためには、これまでの援助の取組みおよび実績をレビューすることが求められている。
1.2 評価の目的
本評価は、中間評価としての位置づけであり、わが国の対カンボジア国別援助計画をレビューし、今後のより効果的・効率的なODA政策の実施に向けた教訓を導き出し、提言を行うことを目的とする。また、調査結果を公表し説明責任を果たし、カンボジアにおけるわが国のODAに関する国民の理解を促進することも目的とする。
1.3 評価の対象と枠組み
評価の対象は2002年2月に策定された「カンボジア国別援助計画」とする。評価対象期間は2002年から2005年8月までとしたが、必要に応じて前後の社会・経済状況や援助政策にも言及している。
本評価にあたっては、「ODA評価ガイドライン」に準拠し、カンボジア国別援助計画の1)「目的」、2)「結果」、3)「策定・実施プロセス」について、調査・分析した上で総合的に検証する。また、他ドナーの政策との比較、援助協調の実態についても分析する。
2. カンボジアの開発と日本および他ドナーの援助動向
2.1 カンボジアの概況
2.1.1 経済概況
カンボジアの経済は、2003年時点で一人当たりGNIが300ドルと近隣諸国に比べても低く、未だ後発開発途上国(LDC)のままである。しかし、政治状況が安定し、経済成長率も最近は5-6%程度に回復し、1999年のASEAN加盟、2004年のWTO加盟など、地域経済および世界経済との統合を強化している。
成長の原動力となっているのが繊維縫製業と観光業であるが、WTOの取り決めに従い2004年末で多国間繊維協定に基づいて設けられていた輸入数量枠が全廃され、成長率の鈍化も見込まれ、カンボジア経済は未だ脆弱であるといえる。
2.1.2 社会開発の現状
カンボジアの貧困率は35-40%と言われており、その中でも人口の約8割を占める農村部に貧困層の大部分が集中している。国連開発計画(UNDP)による人間開発指数では177カ国中130位と「中位国」の中でも下位にランクされている。カンボジアにおける社会開発には課題が多く残っている。成人識字率、初等教育就学率などは順調な伸びを示しているが、中等教育以上のレベルとなると就学率も低く(24%、2002年)、また男女差もまだ改善されていない(1:0.64、2002年)。また、平均余命、乳幼児死亡率、妊産婦死亡率などの保健指標は2000年以降横ばいであり、関連するミレニアム開発目標の達成が難しいとされる指標が多い。
2.2 カンボジアの国家開発計画の推移
わが国のカンボジア国別援助計画が策定された2002年を前後するカンボジアの国家開発計画・戦略は、(1)第二次社会経済開発5ヵ年計画(SEDPII)2001年-2005年、(2)国家貧困削減戦略(NPRS)2003-2005、(3)四辺形戦略、(4)国家戦略開発計画(NSDP)2006年-2010年、の4つが挙げられる。
開発計画・戦略
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開発課題
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重点課題/分野
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SEDPII(2001-2005)
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経済成長を通じた貧困削減
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グッドガバナンス、民間セクター開発、農業・農村開発、インフラ整備、保健、栄養、教育、森林管理、水資源管理、土地管理 |
NPRS(2003-2005)
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貧困削減
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マクロ経済の安定維持、農村生活向上、雇用機会の拡大、能力開発(教育・保健)、制度強化とガバナンスの向上、脆弱性の緩和および社会統合強化、ジェンダー、人口問題 |
四辺形戦略
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貧困削減
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グッドガバナンスを中核とし、四つの成長戦略として、1)農業セクター開発、2)インフラ整備、3)民間セクター開発・雇用促進、4)能力開発(教育・保健) を提示 |
NSDP(2006-2010)
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貧困削減
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グッドガバナンス、グッドガバナンスを巡る環境整備、農業・農村開発、インフラ整備、民間セクター開発・雇用促進・貿易促進、能力開発 |
2.3 わが国の対カンボジア援助
2.3.1 カンボジア国別援助計画
国別援助計画は、1)これまで最大の援助国として同国の復興努力を支援してきたこと、2)わが国は常に国際社会をリードしてきたこと、3)今後も同国の経済社会開発において他ドナー国、機関に比べ相当に重要な役割を担っている、という認識を踏まえ、持続的な経済成長と貧困削減の両方の視点から支援を実施するとしている。
重点課題としては、I.「持続的な経済成長と安定した社会の実現」、II.「社会的弱者支援」、III.「グローバルイシューの対応」、IV「ASEAN諸国との格差是正のための支援」の四つを設定し、さらに、重点分野として、I-1)5つの改革支援とグッドガバナンス、I-2)社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備、I-3)農業・農村開発と農業生産性向上、I-4)対人地雷問題への包括的支援、II-1)教育、II-2)保健・医療、II-3)上水道整備、III-1)環境保全、III-2)薬物対策、IV-1)メコン地域開発、IV-2)T支援が打ち出されている。留意点としては、「ジェンダー・WID」、「各国・国際機関との連携」、「各経済協力スキームの連携」、「NGOとの連携」を挙げている。
2.3.2 わが国の援助実績
1991年から2003年までの援助資金供与の中でわが国は総額の21.2%を占め、これまで最大のドナーとして圧倒的なプレゼンスを示し、同国の復旧・復興を支援している。わが国は、2004年度までの累計で総額1,498.11億円を拠出しており、その内訳は、無償資金協力1,021.56億円(68.2%)、技術協力346.54億円(23.1%)、有償資金協力130.01億円(8.7%)となっている。
カンボジアがLDCであることから、これまで無償資金協力が占める割合が高く、食料援助、保健医療、教育関連などのBHNを充足するための援助や、道路、橋梁、上水道などのインフラ整備を中心に実施している。また、技術協力では人造り、グッドガバナンス、社会基盤整備、農業、保健医療分野を中心とした支援を、カンボジアの現状に鑑み、制度面・人材面の両方から行っている。有償資金協力は、内戦や政治的混乱により暫く中断していたが、1999年の「シハヌークヴィル港の緊急リハビリ事業」案件から再開し、その後2004年度には「シハヌークヴィル港緊急拡張計画」および「メコン地域通信基幹ネットワーク整備事業」、2005年度には「シハヌークヴィル港経済特別区開発計画」の調査・設計に円借款を供与している。
2.3.3 他ドナーの援助動向および援助協調の動向
わが国以外では、支援額では世界銀行、アジア開発銀行、国連グループといった多国間機関の支援が続き、他の二国間ドナーの支援額は小さい。比較的プレゼンスの大きな二国間ドナーとしては、アメリカ、豪州、フランスが挙げられる。また、近年では支援額はまだ少ないが、タイや中国といった近隣諸国の「新興ドナー」が台頭している。
援助協調としては、主要セクターおよび課題毎に現在では18のTechnical Working Group(TWG)が編成され、ドナー・政府間及びドナー間における援助協調の枠組みができている。現在、教育および保健分野においてセクター・ワイド・アプローチを実施しているが、今後財政支援の検討も含めて、ますますセクター・ワイド・アプローチを実施する分野が増える傾向にある。
3. カンボジア国別援助計画の目的に関する評価
3.1 目的に関する評価結果
3.1.1 わが国のODA上位政策との整合性
わが国のODAの上位政策である新・旧ODA大綱の基本理念、原則、重点事項とカンボジア国別援助計画の重点分野は合致しており、整合性を有している。また、援助計画は、旧ODA中期政策の基本的考え方を十分反映させたものであり、中期政策の重点課題、地域別援助のあり方(東アジア地域)とも、その内容および方向性の整合性が確認できた。
カンボジア国別援助計画では、4つの重点課題をそれぞれ分野横断的課題として設定している。しかし、次期計画策定の際には、より援助の効果や効率を明確にするためには、より体系的および論理的な構成を重視することも一案であろう。
3.2.2 カンボジアの開発ニーズとの整合性
わが国の援助計画とカンボジアの2つの政策(SEDPIIとNPRS)、および現在の包括的な国家開発枠組みである「四辺形戦略」を実現するための最新のNSDPとの整合性を検証したところ、これらの重点課題と国別援助計画の重点課題とが概ね整合性を有している。
ただし、民間セクター開発や人口政策などカンボジアの援助政策と整合性が弱い部分もあった。
3.2.3 他ドナーの援助政策との比較
他主要ドナー、国際機関の援助方針とわが国の援助計画との共通点および相違点を検証した。その結果、援助計画策定当時、他ドナーのほとんどが「貧困削減」のみを上位目標に設定していたのに対し、わが国の援助計画は、「経済成長」と「貧困削減」の両方を上位目標に設定していた。策定当時の援助動向が「貧困削減」基調であり、経済成長を前面に出すことが憚られる傾向の中、わが国が「経済成長」を目標の一つとして前面に押し出したことは、カンボジア政府にとって成長重視の戦略と捉えられ歓迎されたと考えられる。また、他ドナーとの比較で大きな違いは、わが国の援助計画はカンボジアのニーズが多岐に亘ること、最大ドナーへの期待などから、カンボジアの開発ニーズのほとんど全てを網羅しているのに対し、中・小規模なドナーには、援助資金の効率的分配も考慮の上、支援分野を絞っている場合もあった。
3.2.4 地域的な枠組みとの整合性
国別援助計画の重点課題である「メコン地域開発」や「ASEAN諸国の格差是正」は、わが国の「メコン地域開発」の基本方針や国際的な地域協力枠組みともその目的の整合性が確認された。従って、メコン地域開発政策とカンボジア国別援助計画は整合性が図られ、妥当性が高いと言える。
3.2.5 目的に関する考察
対カンボジア国別援助計画は、ODAの上位政策、カンボジアの開発ニーズに合致していることが確認でき、援助計画の目的の妥当性が確認された。しかし、重点課題・分野の内容を精査することにより、カンボジアのニーズである「民間セクター強化」や「人口対策」など、わが国の援助計画が直接対応していない分野もあり、その理由が明記されていない。現在の国別援助計画では対応しきれていない分野もでてきており、カンボジアの現在のニーズをより反映した援助計画の改訂が求められる。また、効果的・効率的な援助を実施するためには、援助計画は重点分野の中での優先付けや、目標達成のためのアプローチ、そして具体的な指標を明確にすることが望まれるであろう。指標については、カンボジア唯一の開発計画であるNSDPの指標でもあるカンボジアミレニアム開発目標(CMDGs)をマクロ指標とし、その達成への貢献という位置づけの援助計画を作成すべきであろう。
4. カンボジア国別援助計画の結果に関する評価
4.1 重要分野別の結果の有効性に関する評価結果
4.1.1 5つの改革支援とグッドガバナンス(持続的な経済成長と安定した社会の実現)
現在のカンボジア政府の開発政策である四辺形戦略においてグッドガバナンスは、持続的な経済成長と貧困削減のための最も重要な前提条件であると同時に中心課題として位置づけられている。当該分野では特に、わが国の民法・民事訴訟法立法化の支援は、司法改革の中で最も重要な改革の一つであり、大きな貢献をしている。また、財政改革の中で、カンボジアの税収増加へのわが国の支援は重要な位置を占める。さらに、わが国はジェンダーにおけるTWGでもリード・ドナーとなっており、2003年から実施している「社会・ジェンダー政策立案・制度強化支援計画」を通じて、カンボジア女性を経済的にエンパワーし、経済発展に資する支援を行っている。
4.1.2 社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備(同上)
四辺形戦略において、インフラ整備は四つの成長戦略の一つに位置づけられている。その中でも最重要課題である運輸ネットワークのリハビリテーションに関しては、わが国は、ADBと並ぶトップドナーであり、両者とも主要幹線国道の修復を中心に支援を行っており、主要幹線道路の整備がある程度目処が立ったところ、わが国が果たした役割は大きい。港湾では、カンボジアのコンテナ貨物のほぼ全量を取り扱うシハヌークヴィル港の埠頭拡張への支援により物流の活性化に貢献している。また、シハヌークヴィルでは、「シハヌークヴィル経済特区開発計画」への支援により、カンボジア政府が重要課題としている民間セクター開発・民間投資・貿易促進に資する支援を行っている。
4.1.3 農業・農村開発と農業生産性向上、地域格差是正(同上)
所得・雇用の両面から、農業はカンボジアにとって最も大切な経済セクターであり、カンボジア政府も成長戦略の重要な柱として、土地改革・漁業改革・林業改革に加え、民間セクターを巻き込んでの農業生産性の向上・多様化を掲げている。カンボジアの農業成長率、米の収穫高は横ばいであり、農業セクター全体の成長が見られないものの、わが国の援助は、灌漑施設の整備、農業生産性の向上、生産・流通システム整備など、カンボジアの農業セクターの重要課題に対応して支援を行っている。
4.1.4 対人地雷問題への包括的支援(同上)
地雷除去の主たるプレイヤーであるカンボジア地雷対策センター(CMAC)へのわが国拠出額は全ドナーの拠出額の約15%を占め、地雷除去面積増大へのわが国の貢献が伺える。
4.1.5 教育(社会的弱者支援)
長期の内戦により多くの人的資源を失ったカンボジアにとって、教育の質とアクセスの向上は重要な課題である。初等教育へのアクセスは増加しているが、中等教育へのアクセスや公平なアクセスの改善は捗っていない。その中で、わが国は、「プノンペン市小学校建設計画」など、初等教育のアクセスの改善・環境改善に資する支援を行っている。また、「高校理数科教科書策定」などを通じ、全国的な後期中等レベルの理数科教育の質の向上、教員の質の向上に貢献している。
4.1.6 保健(同上)
カンボジア政府は、保健医療に関して、母子保健、感染症、人材育成・基盤整備の改善を通じての保健サービスの提供を重要課題として掲げている。カンボジア政府の予防接種拡大計画におけるわが国の供与額は、伝統的なワクチン(ポリオ、はしか、三種混合ワクチン、破傷風)の調達の約50%に相当し、またコールドチェーン調達の70%がわが国の支援であり、カンボジアの予防接種率(1歳以下)の向上(2004年40%から2005年予測値83%)への貢献は高い。
4.1.7 上水道整備(同上)
わが国は、シアムリアップ上水道整備計画や、プンプレック浄水場拡張計画などの支援によりプノンペンやシアムリアップといった都市部における水へのアクセス向上に貢献している。また、水道事業人材育成プロジェクトなど、水道事業に携わる人材育成・組織能力向上などに資する事業を実施している。
4.1.8 グローバルイシューへの対応(環境保全、薬物対策)
森林保全に関しては、対象期間において、長期・短期の専門家派遣、研修員受け入れを、また、漁業資源管理(トンレサップ湖における漁業資源保全および適性管理)に関しては、専門家派遣を行っている。薬物対策に関しては、広域プロジェクトとして「薬物対策地域協力プロジェクト」などを実施している。
4.1.9 ASEAN諸国との格差是正のための支援(メコン地域開発・IT支援)
国別援助計画では、インドシナ半島全域に裨益するメコン地域開発として、具体的に第二東西回廊を中心としたインフラ整備や、民間投資を促進する法・制度整備等の支援が掲げられている。本分野では、「社会・経済インフラ整備推進と経済振興のための環境整備」と重複するが、道路・架橋・港湾などへの支援を行っている。IT支援に関しては、同じく上述のインフラ整備と分野的に重複するが、「メコン地域通信基幹ネットワーク(カンボジア成長回廊)」を実施している。
4.2 カンボジア援助実施体制評価(1999年実施)での指摘事項への対応
4.2.1 人材育成の支援強化・知的支援の拡大
各種人材育成を目指した研修の拡充が行われている。特に、カンボジアの開発課題に則し、行政、法整備などグッドガバナンスの分野が充実している。また、日本・カンボジア人材開発センターにより、市場経済運営の強化に努めている。
4.2.2 援助対象の分野及び地域の拡大
薬物対策、家畜疾病防除など、近隣諸国を含む「広域協力案件」が実施されている。「メコン地域開発」が援助計画にも重点課題として選定されており、案件としても、4.1.9で述べたとおり、広域的な視野での協力が実施されている。
4.2.3 現地機能の拡充強化
JICA事務所では現地事務所への権限委譲および機能強化の方向が強まっており、日本人スタッフの人員増加、ナショナルスタッフの能力強化も行われている。一方、大使館では数的な人員の拡充は行われていない。他ドナーとの連携強化については、日本は援助協調の基本的枠組みであるTWGにもすべて出席しており、2つのTWGでリード・ドナーとなるなど他ドナーや国際機関との連携強化のために積極的な対応をしている。しかし、援助協調も多セクターに亘り、また援助協調に関する最新の手法、手続きなど様々な知識が必要なため、人員拡充とともに能力強化、そして東京サイドからのバックアップ体制が必要となっている。
4.3 カンボジアにおけるわが国ODAの認知度
わが国の援助の効果や認知度としては、道路、橋、電力施設などのインフラ案件の認知度が政府・ドナー・NGOなど共通して非常に高かった。中でもプノンペン市内にある別名「日本橋」のチュルイ・チョンバー橋や、メコン川を横断する「きずな橋」は認知度が高かった。インフラ整備はニーズが高い分野であるため、認知度と同時に評価も高かった。キャパシティ・ビルディングに関しても各種訓練、奨学金制度(留学生無償)の評価が高かった。
4.4 結果の有効性に関する考察
わが国の支援は、経済成長および貧困削減(生活・社会面の格差是正)の双方で、バランスのとれた支援を行っていると言える。特に、インフラ整備では、成長の足かせの一つと言われているインフラへのアクセスの欠如・高コストという阻害要因を取り除くことに貢献していると思われ、各関係者からもカンボジアの開発にインパクトを与えていると評価されている。また、シハヌークヴィルには、互いに連関するわが国の民間セクター開発・貿易促進と物流インフラ整備の支援が集中しており、今後援助の集中の効果の発現が期待される。一方、生活・社会面の格差是正では、保健・教育・上水整備共に、アクセスの改善に寄与しているものの、格差是正という観点からは、わが国の援助はプノンペンやシアムリアップなどの都市部に集中しており、都市部と農村部の格差是正の貢献は限られている。過去、治安上等の問題からわが国の援助は都市部に集中していたが、治安が改善されつつある中、格差是正を果たすためには農村部への展開を検討したい。
わが国の援助は、トップドナーとして、カンボジア政府をはじめ他ドナー、NGOに強く認識されているインフラ整備は、さらに今後も引き続き支援を期待されている分野である。
また、援助協調に対するわが国の対応は積極的な姿勢であると受け取られており、他ドナー、NGOにも歓迎されている。わが国の援助は、通信セクターへの支援における郵電省改革をセットとした有償案件、PRSO支援を通じた民間投資環境に関する政策助言なども行っており、こうした援助を通じ援助の効果向上だけではなく、カンボジアの政策にも影響を与えている。
5. カンボジア国別援助計画のプロセスに関する評価
5.1 援助計画策定における開発ニーズの把握プロセスの適切性
カンボジア国別援助計画は、外務省経済協力局政策課国別計画策定室を中心に策定された。在カンボジア大使館が素案を作成、外務本省内で検討され第一案となった。第一案において、特に5つの改革支援とグッドガバナンスを第一番目の課題に持ってきたことは意義が高い。一方、大使館およびJICA(現地事務所を含む)からは第一案に対し、「持続的な経済成長と安定した社会の実現」「社会的弱者支援」「ASEAN諸国との格差是正」などは、重点分野・課題ではなく、より上位の目標とした方が良いことなどが提案されたが現行の国別援助計画は課題別の設定により整理を試みている。また、わが国の重要分野・課題別方針の中に明記すべきであると提案された「貿易振興、民間セクターの育成」は、現時点でカンボジアに取って重要な政策であり、強調しても良かったであろう。
カンボジア側との政策協議では、2000年11月に当時の外務省国別計画策定室長がカンボジアを訪問、カンボジア政府関係機関と面談を行った。その後、2003年3月の経済協力協議を行った際に、日本側より、国別援助計画に則った我が国の援助方針を説明し、当該計画の下、案件選択・採択を行っていくことを説明した。カンボジア側は、国別援助計画、特に優先分野につき支持を表明した。
NGOとは現地(現地NGOおよび日系NGO)および日本国内で懇談会・意見交換会を執り行った。NGOの意見が全て国別援助計画に反映されている訳ではないが、NGOと異なる外務省の課題の捉え方を説明しており、透明な策定過程であったと思われ、また、多様なニーズの把握に努めている。
他ドナーに関しては、世界銀行、ADB、UNDPと意見交換を行った他、2004年より、世銀、ADBと日本関係各省・実施機関の三者協議(非公式の意見交換)が開かれており、カンボジアの開発課題、改革の進捗につき共有を図っている。
尚、国別援助計画の見直しは現在まで行われておらず、来年度以降、改定の可能性を検討する予定である。
5.2 援助計画実施プロセスの適切性
5.2.1 実施機関の援助方針・援助計画への反映プロセス
国別援助計画策定時には、JICAの国別事業実施計画2001年版が存在しており、当時、重点分野を8つに分類していた。策定時期は前後するが、国別援助計画策定時には、国別援助計画とJICAの国別事業実施計画の整合性を、外務省・JICA間で確認している。また、現時点のJICA国別事業実施計画は、2004年7月の四辺形戦略およびCG会合のモニタリング指標を考慮し改訂され、重点分野が8分野から5分野に整理されている。JBICは、海外経済協力業務実施方針において、カンボジアへの援助方針を策定しており、国別援助計画との整合性を図りつつ策定されたものと考えられる。
5.2.2 案件形成の実施プロセスの適切性
カンボジア支援の主要スキームである無償資金協力・技術協力に関しては、カンボジア各省庁が援助調整機関であるカンボジア開発評議会(CDC)が第一次スクリーニングを行った後、現地ODAタスクフォースが各省庁に対してヒアリングの実施、第二次スクリーニングおよびレーティング(AからD)を行い、外務本省に提出する。外務本省では、現地ODAタスクフォースでC以下と評価した案件は検討対象外としており、現地ODAタスクフォースへある程度権限委譲が行われることが伺える。また、各省庁より、案件決定までの期間の更なる短縮化と可能な限り明確な通知時期に対する期待も挙げられた。特に、カンボジア政府側にとっては支援先のオプションを探すためにも、不採用になった案件はより迅速に通知するような対応が必要であろう。また、草の根への支援など小額案件については、現地での人員拡充や外部委託を含めた現地機能強化をした上で、将来的には権限委譲も検討することが考えられるだろう。
5.2.3 スキーム間の連携
カンボジアの場合、各支援スキーム間の連携が多く見られる。これは、カンボジア側のキャパシティに限界があるため、有償資金協力、無償資金協力で建設された施設・設備の持続性・自立発展性のためには有効な手段となっている。また、技術協力と無償資金協力では案件発掘・形成時に、プログラム化の視点から統一要望調査を実施しており、計画の時点から、プログラム化や両スキームの連携を視野に入れている。
5.2.4 他ドナーとの連携・協調
援助協調に関しては、現地ODAタスクフォースを中心に実施しており、わが国は援助協調の枠組みである18のTWG会合すべてに参加し、他ドナー、政府省庁との情報の共有や課題の整理を行っている。わが国の積極的な援助協調への参加はドナーおよび政府、NGOからも評価されている。一方、わが国への更なる期待として、援助実施スキームの柔軟性の確保、支援分野の優先順位付けなど他ドナーから提言された。
5.2.5 NGOとの連携
カンボジアにおいては日系NGOとのODA・草の根の経験および課題の情報の共有、連携促進のため大使館、NGO、JICA、JBICが参加する定期協議会、連携促進会議、分科会を開催するなど、各レベルやイシューにあわせて様々な形でNGOとの連携も図っている。また、草の根・人間の安全保障無償(大使館)、草の根技術協力事業(JICA)などを通じて、NGOとの連携案件を実施している。
5.3 プロセスの適切性に関する考察
5.3.1 援助計画策定プロセスの適切性
策定過程で様々なステークホルダーとの対話が持たれており、プロセスの透明性が確保されている。大使館やJICAカンボジア事務所など現場の方針が反映されていない部分もあり、民間セクター開発など現時点でカンボジアにとって重要な政策への支援を強調しても良かったであろう。国別援助計画の策定以降、WTOへの加盟、総選挙、四辺形戦略の発表、援助協調の進展など、カンボジアを取り巻く環境の変化は早い。民間セクター開発への支援などは国別援助計画で明確に記載されていないものの、援助の実態は環境の変化に対応している。現在、現地ODAタスクフォースが設立され、より現場重視の方向にあるが、今後の国別援助計画策定や重点分野・セクター戦略の策定などに関して、現地ODAタスクフォースの活用を強化し「オールジャパン」としてニーズの変化への素早い対応・方針を打ち出す必要があるだろう。
5.3.2 援助計画実施プロセスの適切性
案件形成・実施プロセスにおいては、大使館・実施機関とカンボジア側との協議は密に取られており、カンボジア側の案件形成能力を図りつつ、適切なプロセスが取られている。また、各スキーム間の連携、ドナーとの連携、NGOとの連携も図られ、援助の効率的・効果的な実施に努めている。これらの連携は、スキームを越えたプログラム・アプローチへの推進、カンボジア政府側のニーズの変化への対応などで効果を上げている。
6. 次期国別援助計画に対する提言
6.1 NSDPとのアラインメント
次期国別援助計画は新たな国家開発計画であるNSDPにアラインしたものを策定する必要がある。NSDPでは、最大の課題を「貧困削減」に据え、カンボジアのMDGsであるCMDGsの達成を目標とし、現政府が発表した「四辺形戦略」をその戦略にしたものである。日本は、NSDPへの策定過程にも参加しており、次期国別援助計画では、NSDPの目標、具体的には「CMDGs達成への貢献」を上位目標とする体系図の策定の可能性も検討すべきであろう。
6.2 国別援助計画の明確化と迅速な援助計画の見直し
国別援助計画は目的と手段の論理関係の整理を明確にし、重点分野の優先付けや、目標達成のためのアプローチを明確にすることにより、より有効な援助が可能となる。カンボジアの国別援助計画では、重点課題が上位目標に対し4つの分野横断的な課題として設定されているが、援助の効果をより明確にするためには、次期計画策定の際に、より体系的かつ論理的な構成を重視するのも一案であろう。また、開発目標や中間目標には曖昧さを可能な限り排除するため、指標を明記することも検討すべきであろう。同時に、カンボジアの経済社会状況の変化に応じ、また、わが国現地ODAタスクフォースによるレビューの結果を踏まえて、必要な場合にはタイムリーかつ迅速な計画の見直しや修正が望まれる。
6.3 支援分野の優先順位づけ
現在、日本はほぼすべての分野をカバーして支援を行っている。カンボジアの開発ニーズは多岐に亘っており、他のドナーと違いカンボジアでのプレゼンスが高い日本は、広く分野をカバーすることができ、カンボジア政府側からの幅広い分野への支援の期待が高い。しかし、網羅的な援助は結果的に各分野の貢献のインパクトが弱くなる場合もあり、今後よりメリハリのある援助を実施するためには、支援分野間、または支援分野におけるサブセクター(保健分野であれば感染症対策など)での優先順位づけの検討も念頭に入れる必要があるだろう。優先順位づけの基準は、例えば、経験や知識面での日本の比較優位、他ドナーとの連携により相乗効果を生み得る活動、現状ではMDGsの達成が難しいと予想されるサブセクター等の情報を基に分析を行い、優先分野を確定することが有効である。また、日本が比較優位を持ち、かつ、カンボジア政府から期待されている分野である経済成長や産業振興(非農業)への寄与も、その基準の一つとなろう。
6.4 ガバナンスの向上および行財政改革への日本の貢献分野
ガバナンス向上への取組み方としては、わが国の支援セクターを通じてのガバナンス支援が有効であろう。従って、ガバナンス分野でも、日本としてはこれまでも支援を行ってきた司法改革、そして国税、関税、ジェンダー主流化の分野で貢献が出来ると思われる。特に今後財政支援も見据えた上、重要となってくる歳入面でのわが国の貢献が考えられるだろう。日本は歳出管理に比較優位があるとはいえない反面、歳入増加に関しては、他ドナーは支援していない分野であり、日本は税制度や税の徴収能力に関して比較優位がある分野であると考えられる。今後の支援において、現在も行っている会計や税務調査などの歳入面での人材育成を更に強化することが考えられる。
6.5 プノンペン-シハヌークヴィル間の援助の集中の効果
プノンペン-シハヌークヴィル間は、観光地として成長するシアムリアップや、産業拠点としての開発が期待されるポイペト等の国境地域と並び、現在カンボジア経済成長の原動力となる成長回廊と見込まれており、わが国の支援は民間セクター開発に繋がる「集中」効果が期待できる。シハヌークヴィル港拡張、プノンペン-シハヌークヴィル間光ファイバー敷設、経済特区整備に続き、送電線、鉄道などの有償案件が続く予定であり、カンボジア政府にとっても重要課題である貿易促進・外国投資誘致などを通じた民間セクター開発への大きな貢献が見込まれ、今後の援助の在り方への参考となる。
また、プノンペン-シアヌークヴィル間で行われているこれらのプロジェクトはほとんどすべてメコン地域開発に繋がるものである。わが国は、ASEAN諸国内の格差是正を促すため、「メコン地域開発」およびCLV国境隣接地域への「開発の三角地帯への協力」という2つの重要な地域協力に関するイニシアティブを打ち立てている。カンボジアへの支援は、こういった地域的な視野に立った視点も必要であり、わが国のこれらの地域協力イニシアティブは、カンボジアを支援する際の横断的視点または留意点として念頭に置かなければならない課題であろう。
6.6 「オールジャパン」としてのスキーム間の連携・協力による援助の効果・効率の向上
無償案件及び有償案件に技術協力との連携が見られ、これらのスキーム間の連携が政府側からの評価も高く、持続性、維持管理などの面で効果的な成果が発現されていた。このような援助の効果や効率を高めるためには、現地レベルでの臨機応変な対応および計画当初における検討など、現地での連携が欠かせなく、現地ODAタスクフォースの更なる強化が必要である。
一方、「オールジャパン」として更に一体感を強化するために、外務省・JICA・JBIC間でより連携した形での「国別援助計画」の策定も検討されるべきではないだろうか。また、国別援助計画はカンボジアの開発ニーズに応えるためにも、現地ODAタスクフォースが実質的にも中心的な役割を担い策定するべきである。さらに、案件策定プロセスの短縮化などに関しては、特に不採用案件に対するより迅速な通知など木目の細かい対応も必要であろう。
6.7 援助協調における現地ODAタスクフォースの役割の整理
上記のように、援助計画の策定、実施、モニタリングに対しますます現地ODAタスクフォースの役割が重視されている。また、援助協調の動きが多いカンボジアでは、18セクターすべてのTWGへ対応するなど、現在の人員体制ではかなり負担がかかっている。援助協調に対しては、要員の増加も求められるが、今後議論が活発化される一般財政支援や調和化など援助協調に関して議論ができる人材の能力強化が必要とされる。それと同時に、様々な援助協調における会合に対し、情報収集を目的とするもの、積極的に参加するもの、政策協議が必要なものなど区分しながら、大使館、JICA、JBICがどのように対応するか、役割分担を含めての整理が必要であろう。
6.8 東京サイドからの支援体制構築
援助協調などの議論は常に動いており、世界的な動きに関する情報や他国でのグッドプラクティスの共用、各種ノウハウの提供などが大いに有用である。現地機能の強化の検討とともに、まずは東京サイドから現地を支援するような体制を構築する必要があるだろう。具体的には、外務省に援助協調のモダリティ、調和化、一般財政支援の動きなど重要イシューに関するヘルプデスクの設置、有識者の照会システムなどのバックアップ体制が必要であろう。