省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

9-2 科学技術に係る国際協力の推進

国際科学協力室長 本清耕造
平成18年5月
施策の目標
我が国及び国際社会の科学技術発展
施策の位置付け
特になし
施策の概要
(10行以内)
 科学技術は経済・産業や国の安全保障、人類の生活と福祉の発展を支える基盤的要素であり、また、21世紀の国際社会は地球規模の諸課題の解決のために科学技術を駆使して協力して取り組むことが求められている。日本は高い科学技術水準を有し、各国との科学技術協力において果たせる役割は大きいと考えられる。外務省は、外交を通じた各国との科学技術協力と交流の促進に努め、国際的諸課題の解決という外交目的の科学技術の活用による達成を目指す。そのために(a)二国間科学技術協力の実施、(b)ITERの実施に向けた関係国・機関との協力、(c)国際宇宙基地(ISS)協力及び各国との宇宙に関する法的枠組みにおける調整業務、及び(d)国際科学技術センター(ISTC)への支援などを重点的に行っている。

【施策の必要性】

 各国が保有する科学技術力を二国間及び多国間の枠組みやプロジェクトを通じて集約することで、科学上の課題に対するより効率的・効果的な取組を可能とし、科学技術の発展を促進するために、条約作成や多国間プロジェクトの実施を外務省が政策として推進する必要性がある。これらの科学に係る外交を通じて我が国の技術力を確保すると共に我が国の指導力を発揮する効果が期待される。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

 上記のような観点から、科学技術の一層の発展と応用を目指し、個々の協力案件を推進するために二国間科学技術協力協定のような国家間の枠組みを整備し各国との二国間協力を進めるとともに、ITERやISSなど一国では実施できない大規模な国際科学プロジェクトや、ISTCなど国際社会の平和的発展にとって重要なプロジェクトの実施を促進するため、さらには宇宙等の新たな分野でのルール作りに参加するなど、多国間の国際協力を積極的に進めていくことが重要かつ有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 科学技術協力は科学技術予算を得て実際の協力案件を所管する国内他省庁の果たす役割が大きいことから、協議枠組みの提供や協定交渉など、外交面で特に外務省として貢献できる側面に集中特化した取組を行うことで、最大の効果を得ることを目指している。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
165,759
138,382
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
8
7
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

 本件政策の推進にあたっては、科学技術に関する知見を牽引し我が国の科学技術政策の策定や実施に関与している国内他省庁の動向が重要な外部要因となることから、これらとの密接な協議と連携が必要である。
 また本件政策で多国間で行われるものについては、我が国の政策以外の外部要因が影響を与える点が存在する。例えばITER計画においては、サイト決定や協定交渉など、参加他極(日、米、韓、EU、露、中。平成17年12月以降は印を加えた7極)の政策動向が大きな要因となっている。
 ISS計画においては、主要な輸送手段である米国スペースシャトル事故に伴うISS計画の見直しの結果、米国がシャトル飛行回数の削減を含めISS計画を縮小する方針を打ち出したことなど、大きな影響を受ける外部要因が存在する。また宇宙に関するルール作りでは各国の意向が大きな外部要因である。
 一方、ISTCにおいては、国際テロ組織等、不拡散をめぐる新たな脅威が表面化していることから、こうした動向に注意する必要がある。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に関する評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

(1)二国間科学技術協力枠組みの維持・発展
(2)ITER計画の進捗状況
(3)国際宇宙基地(ISS)計画進展を含めた宇宙に係る外交措置の実施状況
(4)国際科学技術センター(ISTC)を通じた大量破壊兵器関連研究者・技術者の平和目的計画への転換状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)二国間科学技術協力枠組みの維持・発展
 平成17年には、イタリア、米国、カナダ、フランス、スウェーデン等との間で科学技術関連の会合を行い、協議・意見交換を行った。また、我が国は欧州共同体(EC)とスイスとの間で科学技術協力協定を交渉中。このように、二国間協力においては既存の協力関係の維持・発展と、新たな協力関係の開拓という形で政策目的の達成に貢献した。

(2)ITER計画の進捗状況
サイトの決定を受けた協定交渉の加速化、「幅広いアプローチ」の交渉進展など、ITER計画は前進しており、ITER実現に向けた国際協力の推進という目的は着実に進捗している。

(3)国際宇宙基地(ISS)計画進展を含めた宇宙に係る外交措置の実施状況
 米国のスペースシャトル事故を契機としてISS計画の見直しとその結果を受け、我が国の実験棟「きぼう」の打ち上げへの悪影響等の不利益を被ることがないよう、外交ルートを通じた働きかけを行うとともに、多数者間調整委員会や宇宙機関長会議での動向を現行の法的枠組みの観点から注視するよう努めるなどして、引き続きISS計画を通じた政策目的の達成が可能になるよう努めた。また国連の宇宙関連委員会で新たなルール作りに関与した。

(4)国際科学技術センター(ISTC)を通じた大量破壊兵器関連研究者・技術者の平和目的計画への転換状況
 ISTCにおいては、支援極全体では、これまでに600億円を超える支援が行われ、延べ約5万8千人の大量破壊兵器関連研究者・技術者が平和目的のプロジェクトに従事する事ができ、関連技術の不拡散・ロシア・NIS諸国の平和的発展に貢献した。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)二国間科学技術協力については伊、米、加、仏、スウェーデン等と政府間会合を実施し、協力の実質内容や枠組みの在り方につき新たな議論の展開を見た。ITER計画においてはサイト決定を経て協定交渉が再開、協定締結へ向け前進した。ISS計画では米国によるISS計画見直し結果が発表されたことを受け、我が国が追求すべき目標範囲がより明確化された。宇宙に係るルール作りでは各国意見の集約に向けて進展を見た。ISTCでは、支援国である米、EU、加とともに、露/CIS科学者・技術者の自立化支援のための事業を構築・推進した。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 ITER計画の実施のために関連条約の成立(条約交渉完了、国会での条約批准)が必要。また我が国実験棟を含めたISS計画の順調な進展確保が重要。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 ITER計画の条約交渉を完了させ、国会での条約批准に努める。ISS計画の進展に向け関係国との調整を進めると共に、環境整備として宇宙に係るルール作りにも関与する。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

青木節子  慶應義塾大学総合政策学部教授
(1)科学技術国際協力においても、全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画のように多国間取組がますますさかんになっているが、二国間協力協定は科学技術の発展に寄与するだけではなく二国間の友好関係や文化交流を促進する作用があり、日本の外交基盤の強化に不可欠である。したがって、国際科学協力室にはその中核的な役割が期待される。限られた人員でその任に効果的に当たるためにも、二国間協定および同協定下の実施取決め等の現況が一覧できるデータベースを備えることを含め、省庁間の緊密な協力体制の構築が必要であると思われる。データベースにより、どの地域・国とより密接な協力体制にあるのか、今後重点的に協力をすべき分野や国が明確になり、アジアやアフリカとの協力を深化させるためにも有益な基礎事実になると考えられる。
(2)ITER国際プロジェクト成功のためには、共同実施協定の交渉妥結、計画の早期開始に向けての協議など短期間に合意に到達すべき事項とITER最終実現に至るまでの長期の地道な継続が必要な部分とがあり、強靱な外交力が要求される。日本主導で行うプロジェクト(「幅広いアプローチ」)の協議を進展させるために、国内外の実施主体と緊密に協調しつつ外務省が協定の早期締結に向けて行動することが重要である。また、これまでの経緯から、ITERの現状と意義について、関係省庁との協力のもとにマスメディアに対し積極的かつ有効なアウトリーチを行い、国民への広報が有効なものとなるよう留意すべきであろう。
(3)ISSは、大幅な建設の遅れと見通しの不透明さにより、すでに国民の関心も高いとはいえないように思われるが、国際枠組に基づく日本の有人宇宙活動である点を認識しつつ計画全体の評価を行うべきであろう。一方、ISS計画に関与した約20年について検証と評価を行い、他を圧倒する実力をもつ国が主導する多国間科学技術協力における日本の参加のありかた指針を作り上げることが、米国主導の月・火星探査計画への参加を検討する上で必須ではないかと考える。また、国連では、「打上げ国」概念や「登録」実行の検討に基づき、商業利用時代の宇宙活動ルールを作成しようとする動きが加速しつつあり、日本の存在感を維持し向上させるためにも、ルール作成へのより積極的な貢献が望まれる。
(4)2004年に「核の闇市場」の存在が明確になり、非国家主体が核兵器拡散にもたらす脅威の大きさが改めて認識されたこともあり、日本は、G8グローバル・パートナーシップに基づくコミットメントの一環として、引き続きISTC支援を継続しなければならないが、同時に他のG7と協力し、ロシアのコミットメントや軍縮を確認する努力も並行することが重要であろうかと考える。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 科学技術にかかわる国際協力に関し、「評価の切り口」を複数設け、多面的なアプローチを行い、各々について成果を明らかにしており、今後の政策課題との関連も提示しているので、適切な評価と言える。

【事務事業の評価】

事務事業名:米、仏、加等との科学技術に関する二国間政府間対話の強化

事務事業の概要
 日本は、各国と科学技術協力協定を締結しており、協定に基づく定期的な政府間会合等を通じて、科学技術政策及び諸課題に関する意見交換や、具体的な共同研究案件についての協議を行っている。外務省は個別の科学技術協力を実施する国内他省庁をとりまとめて他国との協議枠組みを調整・提供し、対話を主導している。科学技術協力協定などを通じた二国間協力は国家間の科学技術協力に一般的枠組みを与えて制度的に実施していくための重要な手段であり、この枠組みを通じて共同プロジェクトの実施、対話を通じた情報交換・認識の共有・今後の課題の確認が可能になるなど、我が国及び国際社会の科学技術発展という政策目的の達成に欠かせない手段である。
有効性
(具体的成果)
 平成17年度には、イタリア、米国、カナダ、フランス、スウェーデン等との間で科学技術関連の会合を行い、将来の協力活動、二国間対話枠組みの在り方、研究者交流などについて協議・意見交換・議論が行われた。とりわけ、ナノテクノロジーやライフサイエンス、地球科学・環境等の高度な科学技術分野に関して意見交換がなされ、将来の日本の科学技術の促進に役立つことが期待される。また欧州共同体(EC)との科学技術協力協定案も交渉中であるほか、スイスとの間で協定締結交渉が行われ、一層の協力促進が探求された。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 理由:二国間の合同委員会は各国毎に概ね2~3年間隔で開催されており、安定した実績を維持している。
 今後の方針:引き続き各国との合同委員会を開催して二国間協力を促進する。

事務事業名:ITER計画の実現に向けた国際協力の推進

事務事業の概要
 ITER計画は、事実上無限で地域的偏在のない、そして安全かつ環境への負荷が少ないエネルギー源を獲得することを目指す国際協力プロジェクトである。資源の少ない我が国が、人類の恒久的なエネルギー源として期待される核融合エネルギーの研究開発において主導的な役割を果たすため、ITER政府間協議に積極的に関わってきた。平成17年度にはサイト地の決定及び機構長予定者の指名などITER計画が大きく進展した。今後はITER機構の早期発足のための協定の署名、批准などの手続を滞りなく実施することが不可欠である。また、ITERに関連し、日本においても日本主導で実施される核融合関連プロジェクト(「幅広いアプローチ」)についても、ITER建設期におけるプロジェクトの実施を念頭におき、協定の案文確定、署 名、批准を促進することが重要である。
有効性
(具体的成果)
 「核融合エネルギー」利用の実現を目指して、日・米・EU・ロシアの協力でITER工学設計活動(EDA)を進め、ITERの詳細設計仕様をまとめた。特に我が国の設計チームは最終設計報告書に記載されている、コンパクト化された現行ITERへの設計仕様変更において多大な貢献を行った。平成17年6月、ITERをフランスのカダラッシュに建設することが決定され、ITER計画実施に向けた大きな進展がみられた。さらに同年12月にはインドの計画参加が承認され、核融合分野における国際協力が広がった。またITERに関連し、日本で実施される核融合関連プロジェクト(「幅広いアプローチ」)についてEUとの間で協議が進んだ。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 理由:サイトの決定を受けた協定交渉の加速化、「幅広いアプローチ」の交渉進展など、ITER計画は着実に前進しており、ITER実現に向けた国際協力の推進という目的は着実に達成されている。
 今後の方針:今後はITER設立協定の早期締結、「幅広いアプローチ」の法的枠組みの構築など、外務省が中心となって推進すべき業務の増大が予想されることから、特にITERと「幅広いアプローチ」の協定交渉では、他の6極及びEUとの集中的な交渉を行い短期間に協定案文を確定させる必要があり、外国との交渉を担当する外務省として国会での条約審議を含め積極的に関与していく。

事務事業名:国際宇宙基地(ISS)の活用を通じた科学技術協力の強化

事務事業の概要
 高度約400キロメートルの地球周回軌道上に平和的目的のための常時有人の民生用国際宇宙基地を建設し、宇宙環境を利用した種々の研究を行う計画。国際宇宙基地協力協定の下、日、米、露、加、欧州15か国の共同プロジェクトとして進められている。ISSにより微小重力環境を活用した科学研究が可能となるなど、我が国の総合的な科学技術力向上にとっても大きな成果が期待されることから、ISSの早期完成に向けた外交上の施策実施が引き続き不可欠である。国連等を通じた各国との宇宙に関する法的枠組調整では各国の宇宙への関心が高まる中でルール作りの議論に参加することが求められる。
有効性
(具体的成果)
 ISS計画の見直しとその結果を受けて、我が国が不利益を被ることがないよう、外交ルートを通じた働きかけを行うとともに、多数者間調整委員会や宇宙機関長会議での動向を現行の法的枠組みの観点から注視するよう努めた結果、法的枠組みに則った活動が行われた。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
 (理由と今後の方針)
 理由: ISSの主要輸送手段であるスペースシャトルの飛行回数が削減されるなど、米国がISS計画活動の縮小の方向性を打ち出しており、更に飛行回数が減少する可能性も排除されないことを踏まえた対応が必要。また宇宙に関するルール作りでは各国の利害が必ずしも一致していない。
 今後の方針:我が国の実験棟「きぼう」の打ち上げ確保など、スペースシャトル飛行回数の制約から我が国が不利益を被ることのないように引き続き注視していく。また宇宙に関するルール作りでは我が国の利益が確保されるような法的整備に努める。また宇宙分野においてより一層他国との協力関係を深めつつ、我が国の当該技術力をアピールしていくことで、本分野での指導的地位維持に役立てる。

事務事業名:国際科学技術センター(ISTC)の活用を通じた科学技術協力の強化

事務事業の概要
 国際社会において、懸念国・テロ組織への、大量破壊兵器・関連技術の拡散防止が喫緊の課題となっている。
 ISTCでは、ロシア・NIS諸国の大量破壊兵器に関する技術及び専門知識の拡散を防止するため、関連研究者・技術者による、平和目的かつ将来の自立に繋がるプロジェクトの研究・技術開発を支援している。この施策はISTCを通じて関連研究者・技術者に支援を行うもので、上記目的の推進のため直接的影響を与える。
 引き続きISTCを支援することで、国際社会の平和と安全の確保、我が国自身の安全確保に効果があり、国際社会への貢献の観点からも重要であると言える。
有効性
(具体的成果)
 平成17年度は、事務局経費の負担及び、プロジェクト経費に対する追加支援を行った。また、コラボレーター、パートナープロジェクトを通じて、関連研究者・技術者の知識・技術、関連施設を活用する事により、我が国の科学技術の発展にも効果がある。支援極全体では、これまでに600億円の支援が行われ、延べ約5万8千人の大量破壊兵器関連研究者・技術者が平和目的のプロジェクトに従事することができ、関連技術の不拡散・ロシア・NIS諸国の平和的発展に貢献した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
 (理由と今後の方針)
 理由:ISTCは東西冷戦終結時の大量破壊兵器の拡散防止に多大な貢献があったが、ロシア、NIS諸国の研究者・技術者の置かれた研究環境、経済状況は未だ向上しておらず、技術・知識の流出の危険性は依然として高い。したがって、軍縮・核不拡散の取組の一つとして、ISTC支援を継続する。
 今後の方針:各国政府が資金を投入するレギュラープロジェクトに加え、民間企業の資金を活用したパートナープロジェクトの活性化を図る。また、研究者・技術者の自立化に向けた取組を行う。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る