I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
8-2 地雷や小型武器などの通常兵器に関する取組の強化
通常兵器室長 内川昭彦
平成18年4月
施策の目標
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地雷や小型武器等に関する国際的枠組の普遍化・強化、既に非合法に埋設・流通しているこれら武器への対応 |
施策の位置付け
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特になし
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施策の概要
(10行以内)
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(1)武器の取引や使用を規制する国際的な枠組の普遍化・強化への貢献
- 小型武器の非合法取引の防止に関する国連等の取組への貢献
- 特定通常兵器使用禁止制限条約(注1)への取組
- 対人地雷禁止条約(オタワ条約)の普遍化への取組
(2)対人地雷・小型武器等に関する被害国への支援
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(注1) 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW):過度に傷害を与え、又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用を規制する条約。枠組条約と5つの議定書で構成されている。現在、我が国及びアメリカ合衆国を含む100か国が枠組条約の締約国となっている。
【施策の必要性】
地雷や小型武器などは、被害国において現実に多くの人を殺傷するばかりではなく、紛争後における復興開発の阻害要因ともなっており、安全保障、人道、開発等の分野にまたがる緊急の課題となっている。また、テロリストや国際犯罪組織等への武器の非合法取引を阻止することは我が国の安全保障の強化や治安の確保にもつながる。武器輸出三原則等の平和外交の一環として、また、主要ドナーとして、国際的枠組みの普遍化・強化や被害国への支援において貢献していく必要がある。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)広範に流通・拡散するおそれのある通常兵器の規制は一国のみではなく、国際社会全体の問題として優先的に取り組むべき課題であり、国連等における国際的な枠組みの普遍化・強化が有効。
(2)対人地雷・小型武器対策支援は、実際の被害の削減に直接寄与し、また、国際的枠組みの実効性を担保する役割を果たす。
【施策の効率性】(3行以内)
極めて少ない人員にもかかわらず、出席する国際会議を厳選し、各会議で提案・発言するとともに、プロジェクトを推進し、日本の主導的役割を国際社会にアピールすることが出来た。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
6,130 |
17,652 |
単位:千円
(注)本省分予算
(参考1)内訳
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
国際会議費 |
6,130 |
11,348 |
軍備管理軍縮問題専門家会議 |
― |
6,304 |
(参考2)分担金予算
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平成17年度 |
平成18年度 |
特定通常兵器使用制限禁止条約 |
35,613 |
37,128 |
対人地雷禁止条約 |
21,552 |
13,052 |
(参考3)平成17年度小型武器・地雷対策関連支援実績(対人地雷対策無償30億円を含む)※当室主管外予算
小型武器関連支援 |
約70億円(暦年) |
地雷対策支援 |
約16億円(平成18年1月現在) |
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
3.5 |
4.5 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
(1)武器を規制する国際的枠組みの普遍化・強化について
(イ)一国のみで決定できる問題ではなく、多国間交渉においては、問題解決に向けた各国の意志と協力が必要。
(ロ)通常兵器は国防上必要とされるため、各国の安全保障環境・治安情勢等により、新しい枠組みへのコンセンサス形成が影響を受ける。
(2)現場での支援への取組について
(イ)紛争後に実施されることが多いため、和平合意の履行、治安の確保、相手国政府の実施能力(例:政権の安定、軍・警察等の協力)等により影響を受ける。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の評価を行う。
但し、小型武器、特定通常兵器使用禁止制限条約についての国際的枠組みの評価は、平成18年度に国連小型武器履行検討会議及び特定通常兵器使用禁止制限条約運用検討会議が行われるため、仮の評価とする。
【評価の切り口】
(1)通常兵器分野における国際的な枠組みの普遍化・強化の進捗状況
(2)関連プロジェクトの実施状況
【目標の達成状況(評価)】
(1)通常兵器分野における国際的な枠組みの普遍化・強化の進捗状況
通常兵器分野において、以下の通り取組が進展したことは、国際的枠組の普遍化・強化に寄与したと言える。
(イ)小型武器への取組において、我が国が提出した国連決議によって設置されたオープン・エンド作業グループにおいて交渉されていた小型武器のトレーシング国際文書(注2)が平成17年6月に妥結し、小型武器規制の強化に資する重要な文書が成立した。
(注2)トレーシング(追跡)国際文書:非合法に流通している武器が回収或いは押収された場合、それらの武器が如何なるルートにて、武器製造国或いは輸出国から流出したかを追跡する(trace)ことについての国際協力に関する国連文書。
(ロ)我が国が例年に引き続き提出し、採択された小型武器決議により、国際社会の今後とるべき具体的指針(国連小型武器履行検討会議の日程、トレーシング国際文書の履行奨励、ブローカリング政府専門家会合の設置等)が示され、小型武器問題の枠組み強化に繋がった。
(ハ)アジア・太平洋地域のオタワ条約未締結国16か国に条約加入を働きかけ、検討状況及び条約加入を困難にしている要因を明らかにした。
(2)関連プロジェクトの実施状況
(イ)平成17年度に実施した我が国の対人地雷対策プロジェクト(地雷除去、犠牲者支援、技術開発等)は、合計42件、約39億円(平成18年3月末現在)。
(ロ)平成17年に実施した我が国の小型武器関連プロジェクトは、武器回収・廃棄支援の他、元兵士の武装解・動員解除・社会復帰支援(DDR)、法制度整備・法執行能力構築支援、セミナーの実施等、合計22件、約70億円。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)目標達成のためには安全保障情勢や他国の意思等の影響を受けるが、小型武器決議案の採択、トレーシング国際文書の採択、軍縮関連の国際会議を通じた我が国の積極的提案・働きかけ等、平成17年度に達成された成果は、一定の前進といえる。
また、現場におけるプロジェクトの着実な実施は、枠組みの実効性の強化に貢献すると共に、現実の被害を削減することに貢献した。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
上記評価の結果を踏まえ、国際的枠組みの普遍化・強化については引き続き積極的に取り組むとともに、現場での支援の実施も一層推進する。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
小型武器及び特定通常兵器使用禁止制限条約の会議への準備、そのフォローアップも含め我が国の取組を引き続き強化していく。
【事務事業の扱い】
- 小型武器の非合法取引の防止に関する国連の取組への積極的参加
→今のまま継続
- 特定通常兵器使用禁止制限条約への取組
→今のまま継続
- 対人地雷禁止条約の普遍化への取組
→今のまま継続
- 対人地雷・小型武器等による被害者への支援や武器の回収・除去といった現場での支援への取組
→今のまま継続
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
浅田正彦 京都大学教授
通常兵器は大量破壊兵器とは違って実際に紛争や犯罪・テロなどで被害を生んでいることから、通常兵器への取組は、狭義の安全保障のみならず、日本国内の治安や海外在留の日本人の保護に直結する重要な課題である。小型武器問題に関して、国際的な枠組み作りにとどまらず、被害国の現場での取組を進めることは、非合法な小型武器による被害を削減するという目的を担保する上で、有効なアプローチと考えられ、そのような取組に進展があったとする自己評価は概ね妥当と考えられる。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
施策の目標のための我が国の活動・貢献の成果に関する評価及び関連するプロジェクトの実施状況が適切に記述されている。
【事務事業の評価】
事務事業名:小型武器の非合法取引の防止に関する国連の取組等への貢献
事務事業の概要
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小型武器の分野では、国際的な枠組みの整備が行われており、我が国としては、国連小型武器行動計画を中心とする制度的枠組み作りに積極的な提案・働きかけを行っていく。 |
有効性
(具体的成果)
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我が国の提案・働きかけは、トレーシング国際文書の採択、決議案の採択など国際的な枠組み作りにおける以下のような具体的成果に直結した。
(1)小型武器への取組において、国連で協議されていた小型武器のトレーシング国際文書が平成17年6月に妥結し、小型武器規制の枠組み強化に資する重要な文書が成立した。
(2)我が国が例年に引き続き提出し、採択された小型武器決議により、国際社会の今後とるべき具体的指針(国連小型武器履行検討会議の日程、トレーシング国際文書の履行奨励、ブローカリング政府専門家会合の設置等)が示され、小型武器問題解決に向けた枠組み強化に繋がった。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(理由)小型武器の規制の問題は、未だ課題が多く、引き続き国際社会全体の問題として取り組むべき課題。
(今後の方針)今後とも、長期的に国連等における小型武器問題の取組への貢献を継続していく。
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事務事業名:特定通常兵器使用禁止制限条約への取組
事務事業の概要
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国防上及び人道上の観点を考慮しつつ、ある種の通常兵器(ブービートラップ、焼夷兵器等)を規制するため、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)における取組に貢献。現在は対戦車地雷について議論が行われており、我が国の安全保障上の利益を確保しつつ、人道的観点から当該地雷の規制の早期実現に貢献するため、会議の場での提案や非公式協議などを通じて会議に貢献する。 |
有効性
(具体的成果)
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平成17年度は、3回の政府専門家会合と締約国会議が開催され、我が国は軍事専門家及び法律専門家を含む代表団を派遣し、議場内外において積極的な発言・提案・意見交換を行い、議論の前進に貢献した。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(理由)対戦車地雷の議論は、多くの論点で意見が収束しつつあり、今年も引き続き我が国として貢献する必要があるため。
(今後の方針)我が国として、引き続きCCWの下で特定通常兵器の規制の実現に貢献していく。
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事務事業名:対人地雷禁止条約(オタワ条約)の普遍化への取組
事務事業の概要
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普遍化に向けた努力の強化は、平成16年12月に開催された第一回検討会議でも翌5年間の重要な課題として挙げられ、我が国として未締約国への働きかけやハイレベルでの発言を通じ、これに積極的に取り組む必要がある。 |
有効性
(具体的成果)
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アジア・太平洋地域の未締約国16か国に対し、二国間協議や国際会議等の場において、我が国は、発言・ステートメント等を通じてオタワ条約普遍化促進の意義を強調し、加入を働きかけた結果、検討状況及び条約加入を困難にしている要因が明らかになった。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(理由)現在、41か国の未締約国が存在し、対人地雷の全面的禁止を実現するためには、一国でも多くの国が条約に参加することが重要。
(今後の方針)長期的な取組として、多国間や二国間の協議の機会を捉えて、未締結国のオタワ条約早期加入を働きかけていく。
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事務事業名:対人地雷・小型武器等による被害者への支援や武器の回収・除去といった現場での支援への取組
事務事業の概要
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本施策は、被害者への人道支援とともに、地域の治安や復興開発の阻害となっている小型武器や対人地雷への被害国に向けた支援を促進することを内容としている。 |
有効性
(具体的成果)
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(1)対人地雷
アジア・中東・アフリカ地域に力点を置きつつ、1)平和の構築への貢献、2)人間の安全保障の視点の重視、3)産官学民の連携およびその一環としての技術開発への取組、の3原則に従って、従来同様の規模で地雷対策支援を行っていくとの新地雷政策(平成16年12月)の下、平成17年度合計42件、約39億円のプロジェクトを実施(平成18年3月末現在)、地雷の除去・犠牲者への支援等が進んだ。
(例)
- アンゴラに地雷回避教育支援計画(平成17年8月)
- WFPを通じたスーダンにおける物流促進及び難民・国内避難民の帰還のための緊急支援(平成17年9月)
(2)小型武器
平成17年(暦年)に総計22件、約70億円の関連プロジェクトを実施し、各国における小型武器対策の体制整備や小型武器の回収等が進んだ。
- 小型武器セミナーの開催(平成17年4月、於:中国北京):国連、我が国、中国、スイスによる共催。ASEAN及び中央アジア地域における小型武器の取組等につき協議。70余名が参加。
- 小型武器回収・廃棄プロジェクト(平成18年3月):
(例)
- カンボジアにおける「平和構築と包括的小型武器対策プログラム」(平成14年度4.5億円、平成16年度4.7億円)では、平成18年2月までに13,400の武器、42,900の弾薬類を回収の上廃棄。
- シエラレオネ及びリベリア対し、UNDPを通じて「小型武器回収及びコミュニティベースの開発促進計画」への拠出を決定(それぞれ約1.9億円、約2.3億円)。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(理由)対人地雷や小型武器は、未だ多数埋設・蓄積されているところ、今後策定される国際的ルール(武器の廃棄・管理義務等)の実効性を担保するためにも、取組の継続が必要。
(今後の方針)地雷・小型武器関連の支援プロジェクトを推進。
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【評価をするにあたり使用した資料】
- 国連ホームページ
- ジュネーブ人道的地雷除去国際センター:http://www.gichd.ch/
- カンボジア小型武器管理日本支援チーム:http://www.jics.or.jp/jsac/index.html
- 外務省ホームページ
- わが国小型武器決議案の国連総会第一委員会での採択について
- わが国小型武器決議案の国連総会本会議での採択について
- 不法小型武器の特定及び追跡に関する国際文書(仮称)草案を巡る交渉の妥結について
- 国連小型武器第二回中間会合の開催について
- オタワ条約第一回検討会議/概要と評価
- CCW第11回政府専門家会合(2005年8月)/概要
- CCW第12回政府専門家会合・第7回改正議定書II年次会合・締約国会合(2005年11月)/概要と評価
- CCW第13回政府専門家会合(2006年3月)概要
- スーダンに対する緊急無償資金協力について
- リベリアにおける小型武器回収及びコミュニティベースの開発促進に対する無償資金協力について
- シエラレオネにおける小型武器回収及びコミュニティベースの開発促進に対する無償資金協力について
- 中国小型武器セミナー/概要と評価
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