省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

8-1 大量破壊兵器及びその運搬手段の軍縮・不拡散

軍縮不拡散・科学部
軍備管理軍縮課長 芹澤清
生物・化学兵器禁止条約室長 青木健至
不拡散・科学原子力課長 鈴木哲
平成18年4月
施策の目標
大量破壊兵器及びその運搬手段の軍縮・不拡散を通じた我が国及び国際の平和と安全の確保
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回/第162回/第164回国会における外務大臣の外交演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
 北朝鮮・イラン等の核問題や、非国家主体による大量破壊兵器を用いた国際テロのおそれが生じている状況の中、我が国及び国際社会の平和と安全の確保のためには、軍縮・不拡散体制の維持・強化が重要である。その重要性に鑑み我が国は、核兵器については、NPT1の体制強化、国連総会での核軍縮決議の提出・採択、CTBT2の早期発効に向けた働きかけ、IAEA3の保障措置4の強化等、核軍縮・不拡散に向けた取組を積極的に行っており、また、生物兵器、化学兵器については、関連条約の普遍化、国内実施の強化等に貢献している。また、大量破壊兵器及びその運搬手段の不拡散について、国際的輸出管理レジームの強化、PSI5への貢献等を通じてその体制の強化に貢献している。

【施策の必要性】

 核兵器を含む大量破壊兵器の軍縮・不拡散を推進することは、「国際環境の安定を確保することにより、自国の平和と安全を図る」との我が国の安全保障上の基本的な立場を実施する方策の1つである。また、唯一の被爆国として、核兵器のない平和で安全な世界を実現することは、国民の悲願でもあり、この目的のために現実的な措置を着実に積み重ねていくことは、日本国民及び我が国の利益増進に大きく寄与するものである。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

 北朝鮮・イラン等の核問題や非国家主体による大量破壊兵器を用いたテロのおそれが生じている現在、国際社会が軍縮・不拡散に関する目標及び達成手段を共有することが重要である。施策が掲げている国際的な関連ルールを基盤にした取組を行うことは、現在の国際社会の構造において主権国家に軍縮・不拡散に関するコミットを根拠付けて実施させる最も有効な手段である。

【施策の効率性】(3行以内)

 施策が掲げている国際的な関連ルールを基盤にした取組を行うことは、比較的少ないコストでもって、数多くの主権国家に具体的かつ明確に軍縮・不拡散にコミットさせる最も効率的な手段である。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
1,964,733
1,983,897
単位:千円
(注)本省分予算

(参考:上記以外の予算)
 
平成17年度
平成18年度
国際会議参加費
63,426千円
56,898千円
軍縮関係分担金
4,168,955千円
3,574,001千円
国際原子力機関(IAEA)分担金
6,658,218千円
6,887,460千円

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
36
36
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

本件政策を推進する上では、我が国の政策以外の各種の外部要因が影響を与える。
例えば、
(1)核軍縮及び不拡散の分野では、世界の国々が核兵器国、非核兵器国、核兵器不拡散条約(NPT)非締約国(インド、パキスタン、イスラエル)といったカテゴリーに分類され、それぞれ異なる立場を強くとり、軍縮・不拡散の推進の停滞の要因となることがある。
(2)北東アジア、中東等における不安定な地域情勢は、NPT、BWC6、CWC7、IAEA追加議定書8等の軍縮・不拡散関連条約の普遍化及び履行を妨げる要因となりうる。
(3)一般に、途上国においては輸出入管理体制が整備されておらず、実施体制が脆弱である場合が多いので、大量破壊兵器・ミサイル及び関連物質の輸出管理政策の適切な履行を阻む要因となる。
(4)軍縮・不拡散の取組は各国の安全保障と密接に関連することから、基本的に、軍縮・不拡散に関する協議・交渉には各国とも慎重となるため、成果をあげることに時間を要する。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

通常の評価を行う。

【評価の切り口】

軍縮・不拡散体制の強化及び我が国の貢献

【目標の達成状況(評価)】

以下のとおり、軍縮・不拡散体制の強化において進展があり、我が国も積極的な貢献を行った。
(イ)平成17年5月にNPT運用検討会議が開催され、我が国よりは、町村外務大臣(当時)が一般討論演説を行ったほか、「21世紀のための21の措置」を提出し、今後の核軍縮・不拡散体制を強化していく作業において有益な材料を提供した。
(ロ)平成6年以降、我が国は、毎年、国連総会に核軍縮決議案を提出して国際社会で核軍縮・不拡散に関するコンセンサスの形成に努めてきているが、平成17年は決議案を新たに構成し直し、名称を「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」に変更し、重複を避け、簡潔で力強い決議案として国連総会に提出した。その結果、過去最多の168か国という圧倒的支持で採択され、核兵器の全面的廃絶に向けた国際社会の意思形成を着実に進展させることができた。
(ハ)グレンイーグルズ・サミットにおいて、原子力供給国グループ(NSG)での濃縮・再処理の技術・移転の制限に関するガイドラインの改正のための協議、IAEA追加議定書の普遍化のためのG8共同での各国への働きかけ、生物テロに関する専門家会合の開催等の各種の重要な協議や取組の契機となったシーアイランド・サミットの「不拡散に関する行動計画」のフォローアップとなる「不拡散に関する首脳声明」の採択に我が国も貢献した。
(ニ)我が国はCTBTの普遍化のための働きかけを積極的に行った結果、平成18年3月にはCTBTの発効要件国であるベトナムがCTBTを批准し、発効要件国は残り10か国となった。
(ホ)平成17年6月、G8グローバル・パートナーシップ(G8GP)9に関する東京セミナーを後援し、G8GP及びロシアの原潜解体事業等に関する意見交換・情報交換に寄与した。
(ヘ)平成16年12月、ロシア退役原潜解体協力事業「希望の星」の第一号案件(ヴィクターIII級原潜1隻の解体)を完了させ、ロシア側の様々なレベルから謝意表明がなされた。平成17年11月、日露間で5隻の原潜解体に関する実施取決めに署名した。
(ト)我が国単独及び他国と共同で追加議定書の締結を各国に働きかけた結果、多くの場合、締結に向け肯定的な回答を得た。IAEA追加議定書の締結国は平成17年3月時点で65か国であったが、平成18年3月時点では10か国増加し、75か国となった。
(チ)平成18年2月、BWC東京セミナーを開催し、BWC強化のために国内実施や普遍化が重要であることにつき関係者の理解を促した。またCWCについても他の締約国や化学兵器禁止機関(OPCW)10とともにイラク(未締約国、平成17年7月及び平成18年2月)やカンボジア(締約国、平成17年12月)等への普遍化・国内実施支援を行った。こうした我が国からの働きかけもあって、平成17年度には、BWCにつき1か国(タジキスタン)、CWCにつき11か国(カンボジア等)が新たに批准し、現在の締約国数はBWC155か国、CWC178か国にまで増加した。
(リ)CTBTの国内運用体制整備・強化については、国内2か所の国内データセンターにおける解析・監視プログラムの整備が着実に進んだ。また、国内10か所のうち、高崎放射性核種観測所が、CTBT準備委員会より認証を受けた。未だ認証を受けていない7施設についても認証に向けた整備が進展した。
(ヌ)我が国は、それぞれの国際輸出管理レジームの総会や種々の会合に積極的に参加し、議論の進展に貢献する一方、それぞれのレジームの非参加国に対するレジームのガイドラインの遵守への働きかけにも積極的に参加した。また、NSGについては、円滑な事務局運営の結果、各国による情報共有が滞りなく行われた。
(ル)我が国は平成17年度には二国間での協議や平成18年2月に我が国が主催した第3回ASTOP11などの多国間での協議の場で、HCOC12非参加国に対して、弾道ミサイル不拡散の重要性等を説明するとともに、HCOCへの参加及びHCOCに関する国連総会決議案の支持を働きかけた。その結果、HCOC参加国は平成17年3月には119か国だったが、平成18年3月には123か国に増加し、弾道ミサイルの不拡散に関する国際的な取組は一層強化された。また、平成17年12月、国連総会にてHCOCへの参加を促すHCOC決議案が、158か国の支持を得て採択された。
(ヲ)平成18年2月、アジア地域における不拡散問題を包括的に議論する「第3回アジア不拡散協議」(ASTOP)及びアジア諸国の輸出管理能力の向上を目指し「アジア輸出管理セミナー」を開催し、アジアにおける不拡散及び輸出管理問題に関する包括的な意見交換を行い、これらの分野における理解が増進され、今後の積極的な取組を促進する効果が生まれた。
(ワ)我が国は、輸送段階、輸出入管理、国内管理等のすべての過程において不拡散のための取組を強化する必要があるという考えの下、PSIをこれまで我が国が行ってきた大量破壊兵器等の不拡散に関する取組に沿ったものとして支持し、その活動に積極的に参加するとともに、前項の「アジアにおける不拡散体制の強化に向けた取組」の一環として、アジア諸国によるPSIへの支持と理解の拡大及び輸出管理の強化を目的とする様々なアウトリーチ活動を実施した。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)上記の通り、国連総会での我が国の核軍縮決議に対する過去最多の支持、CTBT、CWC、BWC、IAEA追加議定書等軍縮・不拡散関連条約の普遍化、国際的輸出管理レジームの強化等を中心に想定された進展があった。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 我が国は、今後とも国際的な軍縮・不拡散体制の維持・強化を通じた我が国及び国際の平和と安全の確保のため、様々な外交努力を通じた更なる貢献を行っていく方針である。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 軍縮・不拡散のための取組として、目標の達成状況を踏まえ、下記の通り重点等を見直しつつ、今後も継続して実施していく。

【事務事業の扱い】

(核兵器)
(生物・化学兵器)
(輸出管理)
(ミサイル)
(その他国際協力)

【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 浅田正彦  京都大学教授
(1)同時多発テロ事件以降、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散や大量破壊兵器とテロとの結合によってもたらされうる、国際の平和と安全および我が国自身の安全に対する脅威について、いかに対処するかということが、重大かつ喫緊の課題として認識されるようになってきた。しかし、このような課題に対する万能薬が存在する訳ではなく、様々な措置を組み合わせることによってのみ対処することが可能である。その意味で、施策が掲げている軍縮・不拡散の国際的な関連ルールを基盤にした取組は、現実の国際社会の構造を前提とした場合最も有効な手段であり、軍備管理軍縮課、生物・化学兵器禁止条約室および不拡散・科学原子力課の設定した施策の必要性・有効性の考え方は至当である。
(2)目標の達成状況については、平成17年は、NPT運用検討会議が実質的事項に関する合意文書を作成できなかったこと、国連首脳会合(世界サミット)の成果文書において軍縮・不拡散に関連する部分が最終段階でほとんど削除されたことなど、軍縮・不拡散分野において逆風が強く吹いた1年であったが、そのような中で我が国は、とりわけ国連総会での核軍縮決議の提出・採択、CTBTの普遍化のための措置、CTBTの我が国国内運用体制の整備、BWCおよびCWCの普遍化やその国内実施体制強化のための支援、IAEA保障措置の強化(追加議定書の普遍化のための措置)、PSIへの貢献などの諸分野において継続的に妥当な努力を行っており、課題は残るものの重要な成果が上がっているとの印象をもつ。
(3)今後は、国際社会が現在直面する喫緊の課題であるイランの核問題、北朝鮮の核問題および大量破壊兵器の不拡散問題に有効に対処するために、NPTからの脱退への対処、NPTやIAEA保障措置協定の違反への対応、NPTにおける平和利用の権利(濃縮・再処理を含む)の位置づけ、PSIをさらに実効あらしめるための措置などにおいて、我が国が積極的なイニシアティブを発揮することを期待したい。同時に、アジア不拡散協議(ASTOP)や、東南アジア諸国の国内輸出管理体制強化への支援など、アジア地域諸国との間で行われている安全保障対話や支援の関係も、地域の安全という観点のみならず国際の平和と安全の観点からも、引き続き維持・強化していくことが望まれる。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 軍縮・不拡散の分野における多岐にわたる取組及びその成果が簡潔に説明されている。また「第三者の所見」が、評価シートを総括した上でのコメントとなっており、説明責任を補完する役割を果たしている。

【事務事業の評価】

事務事業名:G8先進国首脳会議、不拡散シニアグループへの積極的参加

事務事業の概要
 我が国は、軍縮・不拡散に必要不可欠な要素である濃縮・再処理の機材・技術の移転の制限や旧ソ連諸国の非核化等のために、G8の場において積極的に議論を提起し、これまでにG8シニアグループ会合、G8不拡散専門家会合(平成18年からは右2会合が統合される形でG8不拡散局長級会合(NPDG会合)となった)、G8グローバル・パートナーシップ(G8GP)・ワーキンググループ会合等の議論に積極的に関与している。国際的な軍縮・不拡散のためには核兵器国及び非核兵器国の代表的な国でもあるG8各国に積極的に働きかける必要があり、軍縮・不拡散の促進のためには、G8先進国首脳会議やG8シニアグループ等の場で軍縮・不拡散に関する様々な新たな試みのための議論を行うことが、国際社会における取組の弾みとして非常に重要である。例として、過去にもカナナスキス・サミットにおいて立ち上げられたG8GPは旧ソ連諸国の非核化に大きく役立っている。そのため、我が国として、G8の場で積極的に議論に貢献することが必要である。
有効性
(具体的成果)
(1)我が国は、平成17年度は、英国及び露議長国下のG8不拡散関連会合に参加し、現下の国際社会の緊急の課題である大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散を防ぐための方途をG8諸国と協議した。
(2)また、平成17年7月に開催されたグレンイーグルズ・サミットでは不拡散に関する首脳声明を採択した。右声明の採択はシーアイランド・サミットの「不拡散に関する行動計画」のフォローアップであり、内容としては、NSGでの濃縮・再処理の技術・移転の制限に関するガイドラインの改正のための協議、IAEA追加議定書の普遍化のためのG8共同での各国への働きかけ、生物テロに関する専門家会合の開催等である。長期的には、これらの取組を促進することは濃縮・再処理に関連する技術の拡散を防ぎ、IAEA追加議定書の締約国を増加させ、生物テロへの国際的な対処能力を高めることにつながり、軍縮・不拡散の推進に貢献することが期待される。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 我が国のG8の不拡散関連会合への積極的な参加が、G8各国の不拡散への取組強化にも一定の貢献をしていると考えられるが、目的の達成に向けては長期的な取組が必要であり、事業を継続するが、今後は一層、NSGの濃縮・再処理の技術・移転の制限に関するガイドライン改正の早期合意、IAEA追加議定書の一層の普遍化のための努力等を強化する必要がある。
(今後の方針)
 引き続き、G8での不拡散関連の取組に積極的に貢献する。

事務事業名:ジュネーブ軍縮会議(CD)への積極的参加

事務事業の概要
 国際社会において軍縮関連ルールを策定する機能を担う唯一の場と言えるCDにおいて、新たな軍縮関連ルールを設定するために、CD参加国に積極的に働きかける。CDは、国際的な軍縮の推進のために不可欠な軍縮関連ルールの策定に不可欠であり、我が国として、軍縮の推進を目指し、新たな軍縮関連ルール設定のための議論をリードする必要がある。
有効性
(具体的成果)
 CDにおいて、我が国が重視する兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)19の交渉開始については、現在まで停滞していた観があったが、我が国を含むFMCT早期交渉開始に積極的な国の働きかけの結果、FMCTの早期交渉開始の必要性に対する理解が浸透しつつある。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 FMCT早期交渉開始の必要性に対する認識が浸透したことを捉え、交渉開始実現を達成できるよう今後もCDの場において積極的に働きかけていく必要がある。
(今後の方針)
 引き続き、CDの軍縮関連の取組に積極的に貢献する。

事務事業名:核兵器不拡散条約(NPT)運用検討プロセスへの積極的な参加

事務事業の概要
 NPT運用検討会議は、5年に1度、NPTの運用状況を検討するために開催される国際的な軍縮・不拡散体制の維持・強化に重要な会議であることから、右会議の成功を確保することは、国際的な軍縮・不拡散の推進に極めて重要である。
有効性
(具体的成果)
平成17年5月にNPT運用検討会議が開催され、我が国よりは、
(1)町村外務大臣(当時)が一般討論演説を行ったほか、「21世紀のための21の措置」を提出し、会議が採択する成果文書に反映させるよう努めた。また、我が国の立場を包括的に述べた作業文書並びに核軍縮及び1995年中東決議の履行に係る報告を提出。更に、軍縮・不拡散教育に関する作業文書を他の7か国と共同で提出したほか、我が国の取組を紹介する作業文書も併せて提出。
(2)河井大臣政務官(当時)がNGOセッションに出席するとともにレセプションを主催し、軍縮・不拡散分野でのNGOとの対話を重視する我が国の姿勢をアピール。また、我が国を含む多くの国は、今次運用検討会議に貢献すべく種々の有益な提案を出しており、また、これらを踏まえ、会議において集中的な意見交換が行われたことは、今後の核軍縮・不拡散体制を強化していく作業において有益な材料を提供した。
(3)更なる核兵器の削減を主張したほか、会議開催に先立ち、CTBT未批准国のうち、米を含むすべての発効要件国に対し、早期批准を求める外務大臣書簡を発出したほか、会議中にもCTBTフレンズ会合を主催した。
 このように、我が国はNPT体制の強化のために努力を行ったが、会議全体としては、実質的事項に関する議論のための時間が限られていたこともあり、中東問題やイランの核問題、核軍縮について、関係国及び関係国グループの立場の隔たりが収斂せず実質的事項に関する合意文書を作成することができず、また、議長による実質的事項にかかる声明も行われないという結果に終わった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 2005年NPT運用検討会議が実質的事項に関する合意文書を作成できなかったことがNPT体制の権威を低下させ、個別の問題に悪影響を与えることのないよう、国際的な核軍縮・不拡散体制を強化するために、主要国とも協力しつつ、その他の国際フォーラム・レジームを通じてNPT体制の強化のための具体的な措置を強化していく必要性が一層増した。
(今後の方針)
 2007年から2010年NPT運用検討会議準備委員会が開催されるところ、我が国としてもNPT体制の維持・強化のため、関係国との連携を含め積極的に貢献していく方針である。

事務事業名:NPT、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准国増加のための働きかけや、核実験モラトリアム継続のための働きかけ

事務事業の概要
 軍縮・不拡散政策の推進のためには軍縮・不拡散体制の礎であるNPTやCTBTへの加入国を増加させ普遍化させることが不可欠であり、NPTやCTBT加入国増加への働きかけは、軍縮・不拡散の実現のために重要かつ有効な手段である。我が国はこれまでにもNPT及びCTBTの普遍化のための取組を積極的に行ってきている。
有効性
(具体的成果)
 CTBT署名国・批准国数は着実に増加しており、平成18年3月にはCTBTの発効要件国であるベトナムがCTBTを批准し、発効要件国は残り10か国となった。また、我が国がCTBTの軍縮・不拡散における重要性を主張していることは、1998年来、核実験が実施されていないことに貢献している。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 CTBTの早期発効、核実験モラトリアムの継続は、我が国の軍縮・不拡散分野における政策の重点事項であり、CTBT未署名国・未批准国に対し早期署名・批准を働きかけ、核兵器を保有している国に核実験のモラトリアムを働きかけることが必要。
 現在の取組は着実に成果を挙げつつあるが、米国等の発効要件国がCTBTに加入することによって実現されるCTBTの早期発効、インド、パキスタン、イスラエル等のNPT加入の実現のためには長期的な取組が必要であり、継続とする。
(今後の方針)
 特に方針の変更などはない。

事務事業名:核軍縮決議案の国連総会への提出・採択

事務事業の概要
(1)平成6年以降、我が国は、現実的、漸進的に核軍縮・不拡散を進めるために、毎年、国連総会に核軍縮決議を提出して国際社会で核軍縮・不拡散に関するコンセンサスの形成に努めてきている。
(2)被爆60周年にあたる平成17年は、5月のNPT運用検討会議及び9月の国連総会首脳会合において軍縮・不拡散分野で実質的な内容の合意ができなかったことを踏まえ、決議案を新たに構成し直し、名称を「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」に変更し、重複を避け、簡潔で力強い決議案として国連総会に提出した。
有効性
(具体的成果)
(1)決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」は、国連総会本会議において、賛成168、反対2、棄権7の1994年の提出以来最多の支持を集め採択された。
(2)我が国の核兵器国を含むすべての国に対する核廃絶に向けた核軍縮・不拡散分野における外交努力が国際社会において一層強調されるとともに、平成17年は、5月のNPT運用検討会議及び9月の国連総会首脳会合において軍縮・不拡散分野で実質的な内容の合意ができなかったことから、我が国提出の核軍縮決議が平成17年の核軍縮分野における、国際社会で最も幅広い支持を得られた政治的意思となるなど、国際的にも重要な役割を担った。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 我が国の核軍縮決議は国際世論の形成に大きな役割を果たしてきており、今後とも、唯一の被爆国として、核廃絶に向けた国際社会での積極的なイニシアティブをとるという意味で継続する必要がある。
(今後の方針)
 今後も、核廃絶に向けた決議案を国連総会に提出し、核廃絶に向けての国際世論の形成に主導的な役割を果たすこととする。

事務事業名:旧ソ連諸国に対する非核化協力事業(ロシア退役原潜解体協力事業「希望の星」等)の実施

事務事業の概要
【対ロシア】
(1)日露非核化協力委員会を通じ、極東ロシアにおける退役原潜の解体に協力する事業。
(2)現在、極東ロシアには、約20隻の退役原潜が未処理のまま海上に係留されており、艦体の腐食による放射能汚染や艦内に残された核燃料の盗難の危険性がある。退役原潜の解体は、第一義的にはロシアの責任で実施すべきであるが、ロシアのみの資金で解体するのは時間がかかるため、核軍縮・不拡散及び日本海の環境保護の観点から、国際的な協力が必要である。
【対カザフスタン、ウクライナ、ベラルーシ】
 これら3か国に対する非核化協力を進めるため、各非核化協力委員会を通じ、各国の国内計量管理システム・核物質防護システム・医療機材等の整備を行うという事業。
有効性
(具体的成果)
【対ロシア】
(1)平成17年6月、G8GPに関する東京セミナーを後援し、G8GP及びロシアの原潜解体事業等に関する意見交換・情報交換に寄与した。
(2)平成17年11月、プーチン露大統領の訪日時に5隻の原潜解体に関する実施取決めに署名した。
【対カザフスタン、ウクライナ、ベラルーシ】
 医療機材供与案件(カザフスタン、ウクライナ)及び退役軍人職業訓練センター機材供与案件(ベラルーシ)のフォローアップについて先方と協議した。
事業の総合的評価
【ロシア】
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 日本海の環境保全及び放射性核物質等の不拡散の観点から継続する必要がある。
(今後の方針)
 今後とも原潜解体及びその関連事業に協力していく。
【対カザフスタン、ウクライナ、ベラルーシ】
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 これら3か国の核不拡散、またIAEA追加議定書の批准及び実施を促進するとの観点から継続する必要がある。
(今後の方針)
 今後とも国内計量管理システム及び核物質防護システムの整備の分野での協力を検討していく。

事務事業名:IAEA(国際原子力機関)の保障措置の強化

事務事業の概要
 国際社会の平和と安全に対する脅威である核兵器の拡散を防止するためには、原子力が平和的目的から核兵器等の軍事目的に転用されないことを確保する必要がある。核物質等の軍事転用がないことを検証する措置として存在するのが、IAEAの保障措置であり、核物質の計量管理報告の検認を中心とする包括的保障措置と、より広範な検証活動を可能にする「追加議定書」に基づく保障措置がある。IAEAの保障措置の強化に向けた手段のうち、外務省としては、特に「追加議定書」の普遍化を重視しており、そのための努力を継続することが重要である。
 「追加議定書」は、申告された核物質の検認のみならず、未申告の核物質及び原子力活動の探知をも目的とするものである。「追加議定書」締結国においては、秘密裡に核開発を行うことが極めて困難となるため、「追加議定書」が国際社会において広く実施されることは、IAEAの保障措置体制、ひいては国際的な核不拡散体制を大幅に強化することになる。
 核不拡散体制の強化は、現下の国際社会が取り組むべき緊急かつ最も重要な課題の一つであるが、我が国は「追加議定書」の普遍化が最も現実的かつ効果的な方途であると確信しており、平成16年のシーアイランド・サミットにおいて「追加議定書」締結促進のG8の共同デマルシュの実施が決定されるなど、G8諸国の共通認識ともなっている。我が国は、厳格な保障措置を適用している原子力先進国として、国際社会に範を示し、同時に、国際的な不拡散体制の強化に尽力する責務がある。
有効性
(具体的成果)
(1)追加議定書の締結国は平成17年3月時点で65か国であったが、平成18年3月時点では10か国増加し75か国になった。我が国単独及び他国と共同での働きかけの結果、多くの場合、追加議定書の締結に向け肯定的な回答を得た。
(2)平成18年2月に我が国が主催した第3回ASTOPの場で、昨年新たに追加議定書を署名したタイ、シンガポール、マレーシアの取組が参加国間で共有されるなど、アジア各国における理解の増進と今後の積極的な取組の促進に寄与した。
(3)世界中の追加議定書等未締結国に対する他のG8諸国との共同デマルシュや二国間協議等の機会を捉えた追加議定書締結の働きかけを実施した。
(4)また、我が国自身も、包括的保障措置協定及び追加議定書に基づく保障措置を誠実に受け入れることで、自国の原子力活動の透明性を確保するとともに、他国に対して模範を示してきた。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
(1)追加議定書の締結には、国内法令の整備、専門家の育成など一朝一夕にクリアできない手続等が存在するため、各国が締結に踏み切るには継続的に働きかけを実施する必要がある。
(2)イランやリビア等、核兵器の不拡散上の懸念国でありながら追加議定書を締結していない国が依然として存在する。
(3)我が国の安全保障上重要なアジア地域には追加議定書を未締結の国が依然として多い。
(今後の方針)
 上記の理由により、追加議定書締結国の更なる増加を目指す。

事務事業名:CTBT国内運用体制整備・強化

事務事業の概要
 我が国は、平成9年にCTBTを批准した。同条約の規定では、国内10か所の国際監視制度(IMS)20施設を建設・運用すること、及びCTBT発効後に設立される執行理事会に選出される理事国として核実験の探知に係る独自の解析・評価能力を備えることが責務とされている。
有効性
(具体的成果)
 国内2か所の国内データセンターにおける解析・監視プログラムの整備が着実に進んだ。また、国内10か所のうち、高崎放射性核種観測所が、CTBT準備委員会より認証を受けた。未だ認証を受けていない7施設についても認証に向けた整備が進展した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 国内データセンターにおけるデータ解析・監視プログラムを作成し、自動監視・識別解析システムを整備する必要がある。また、条約上未認証の7施設の整備が求められている。
(今後の方針)
 今後も未認証のIMS国内施設や国内データセンターの整備を目指す。

事務事業名:生物兵器禁止条約(BWC)及び化学兵器禁止条約(CWC)の普遍化・国内実施強化のための支援

事務事業の概要
 生物・化学兵器の軍縮・不拡散を推進するためには、これらの兵器の開発、生産、貯蔵等を禁止しているBWC及びCWCの締約国数を増加させることで普遍化を図ると同時に、締約国の中で特に途上国等に対し条約上の義務の国内実施を十分に履行させることが不可欠である。
有効性
(具体的成果)
 我が国は、未締約国の条約加入及び国内実施措置の拡充を働きかけてきた。例えば、平成18年2月にBWC東京セミナーを開催し、BWC強化のために国内実施や普遍化が重要であることにつき関係者の理解を促した。またCWCについても他の締約国や化学兵器禁止機関(OPCW)とともにイラク(未締約国、平成17年7月及び平成18年2月)やカンボジア(新規締約国、平成17年12月)等への普遍化・国内実施支援を行った。
 こうした我が国からの働きかけもあって、平成17年度には、BWCにつき1か国(タジキスタン)、CWCにつき11か国(カンボジア等)が新たに批准し、現在の締約国数はBWC155か国、CWC178か国にまで増加した。またCWCにつき何らかの国内実施措置を講じている国が153か国に達し、その他多くの国も国内実施措置の策定に着手している。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 普遍化及び国内実施の強化は両条約の最大の課題であり、我が国の平和と安全にとって最も影響を及ぼすアジア地域においても未締約国や国内実施が不十分な国もあるので同事業を継続する必要がある。
(今後の方針)
 今後とも、引き続き同事業を実施する。

事務事業名:原子力供給国グループ(NSG)、ザンガー委員会(ZC)、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、ワッセナー・アレンジメント(WA)等の国際的輸出管理レジームの強化及び適切な輸出管理の実施

事務事業の概要
 NSG(核兵器関連)、ザンガー委員会(核兵器関連)、AG(生物・化学兵器関連)、MTCR(ミサイル関連)、WA(通常兵器関連)のそれぞれの国際輸出管理レジームでは、それぞれが対象とする兵器の開発に資するような汎用品・技術等について参加国が認識を共有しそれを詳細にリスト化し、そのリストを基に各国が自国国内法に従って厳格な輸出管理を行っている。
 各国が大量破壊兵器やその関連物資等の開発に用いられ得る資機材や技術を規制なしに輸出していては拡散を防止できず、こうした国際的な取組によってはじめて関連資機材等の拡散を効果的に防止することが可能になる。したがって、このような国際輸出管理レジームの強化に向けた取組は、大量破壊兵器等の不拡散、ひいては安全保障環境の改善のために必要な措置である。
有効性
(具体的成果)
 我が国は、それぞれの国際輸出管理レジームの総会や種々の会合に積極的に参加し、議論の進展に貢献する一方、それぞれのレジームの非参加国に対するレジームのガイドラインの遵守への働きかけを積極的に行ってきている。
(各レジームでの動き)
 各レジームでは、国際情勢の変化や技術進歩にあわせ、輸出管理ガイドラインや規制リストの見直しが行われている。これは輸出管理体制の強化に資するものとして評価できる。過去一年の主な改訂は以下の通り。
(1)NSGでは、総会において保障措置協定に違反している国への原子力移転を停止することに関する手続の設立を決定した。
(2)WAでは、総会においてテロ関連品目を含むコントロール・リストの見直しに合意した。
(3)AGでは、テロ対策に係る新規規制について合意した。
(4)MTCRでは、輸出管理執行の厳格化への決意を認識した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
(1)各国際輸出管理レジームにおいてはガイドラインの見直しが着実に行われているところである。しかし、我が国の安全保障に直結するアジア地域においては、こうした国際的な変化に対応した輸出管理体制の強化は勿論、基本的な法規制も整備されていない国が多く残ることから、国際的な輸出管理レジームの強化という施策の実現のためには、アジアにおけるレジーム非参加国が輸出管理体制を強化し、各レジームのガイドラインを自主的に遵守できるよう、今後とも引き続き働きかけを実施する必要がある。
(2)大量破壊兵器等の開発に用いられうる汎用品・技術は技術進歩により変わりうるものであり、輸出管理体制の強化のためには随時見直し作業を行い続ける必要がある。
(3)各レジームのガイドラインを各国が確実に遵守するとともに、各レジームの活動が我が国の安全保障に資するものとなるよう、各種会合での協議に積極的に参加する必要がある。
(今後の方針)
 アジア地域を中心とする輸出管理レジームのガイドラインの遵守促進、強化に努める。

事務事業名:原子力供給国グループへの事務局機能の提供

事務事業の概要
 原子力関連の資機材・技術に関する国際的な輸出管理の枠組みであるNSGに対して事務局機能(我が方ウィーン代表部が行っている)を提供し、その円滑な運営に貢献している。
 国際的な輸出管理レジームの強化は国際的な不拡散体制の強化のため不可欠であるため、事務局機能提供によるNSGの円滑な運営は政策目的に照らして必要なものである。
有効性
(具体的成果)
 企業からの輸出申請に対する参加各国政府の拒否通報や補足情報をまとめて各国に配布、各国に対する文書の改訂等に関する連絡、とりまとめ等を実施。また、年に2回、実質的な議論を行う場である協議グループ会合の開催場所を提供し、議長を補佐し、同会合を円滑に運営。円滑な事務局運営の結果、各国による情報共有が滞りなく行われた。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 核不拡散に関わる輸出管理レジームにおける我が国の貢献として各国より広く認知され、評価を受けている。また、我が国が事務局機能の提供を停止すればNSGの運営上支障が生じ、政策目的の達成が困難となる。
(今後の方針)
 今後とも、引き続き事務局機能を提供しNSGの円滑な運営に貢献する。

事務事業名:弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)への参加国を増やすための努力

事務事業の概要
 HCOCは、弾道ミサイル不拡散に関する初の国際的なルールであり、弾道ミサイルの拡散を防止・抑制する上で尊重されるべき原則とそのために必要な措置を示す政治的文書である。
 HCOC参加国はHCOCに従い、弾道ミサイル活動の最大限の自制や大量破壊兵器拡散懸念国の弾道ミサイル活動を支援しないなどの政治的意思を示すことになるため、HCOC参加国の増加は国際的な弾道ミサイルの不拡散への取組を強化し、我が国の安全保障環境を向上させることにつながる。
有効性
(具体的成果)
(1)HCOC参加国は平成17年3月には119か国だったが、平成18年3月には123か国に増えており、弾道ミサイルの不拡散に関する国際的な取組は一層強化された。
(2)平成17年12月、国連総会にてHCOCへの参加を促すHCOC決議案が、158か国の支持を得て採択された。
(3)我が国は平成17年度には二国間での協議や平成18年2月に我が国が主催した第3回ASTOPなどの多国間での協議の場で、HCOC非参加国に対して、弾道ミサイル不拡散の重要性等を説明するとともに、HCOCへの参加及びHCOCに関する国連総会決議案の支持を働きかけており、我が国自身も、HCOCに明記された各種措置(HCOC参加国に対する我が国の平和目的ロケットの事前発射通報、年次報告提出など)を誠実に実施し、さらに、平成17年11月にはJAXA種子島宇宙センターにて国際視察を実施する等、積極的に信頼醸成に努めている。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 HCOCは、平成14年11月に採択されてから、参加国が徐々に増加しており、引き続き積極的働きかけを行い、HCOCの普遍化を目指す必要がある。特に我が国の安全保障上特に重要であるアジア地域においては、HCOC参加国は我が国を除けば未だ5か国であり、引き続きアジア地域を含め各国に対する参加働きかけを実施する必要がある。
(今後の方針)
 今後とも、アジア地域を含む非参加各国に対する参加を働きかけていく。

事務事業名:アジアにおける不拡散体制の強化に向けた取組

事務事業の概要
 大量破壊兵器・ミサイル及びそれらの関連物資・技術の拡散は、アジア地域及び国際社会の平和と安定にとって現実の脅威となっており、我が国の安全保障にも直結する問題である。しかしながら、アジアにおける不拡散体制の強化は十分に進展しておらず、これを強化することが喫緊の課題になっている。
 このような認識に基づき、我が国は、特に(1)大量破壊兵器関連条約の締結促進及び国内履行強化、(2)輸出管理体制の整備・強化及び(3)拡散に対する安全保障構想(PSI)を3つの大きな柱として、アジア諸国を対象とするアウトリーチ活動を積極的に展開している。二国間・多国間の協議やセミナー等を行うことにより、不拡散体制の強化のための各種取組について、アジア諸国の理解と認識が深まるとともに、これらの諸国が抱える問題点やニーズが明らかになり、今後の協力・連携のあるべき方向性を提供することが期待される。
有効性
(具体的成果)
(1)平成18年2月にアジア諸国の輸出管理に対する共通理解を深めるための「第13回アジア輸出管理セミナー」を経済産業省と共同で委託開催。
(2)平成18年2月にはアジア地域における不拡散問題を包括的に議論する「第3回ASTOP」を開催。
(各セミナーの成果)
(1)第13回アジア輸出管理セミナーでは、昨年度初めて参加したパキスタンとアラブ首長国連邦がプレゼンテーションを行うなど貢献を行ったのをはじめとし、各国の経験共有にとって有意義な議論が行われた。
(2)第3回ASTOPにおいては、アジアにおける不拡散問題に関する包括的な意見交換を行い、これらの分野における理解が増進され、今後の積極的な取組を促進する効果が生まれた。また、アジア各国が不拡散に関する措置を国内的に実施していくために必要な支援や協力の内容が明らかになり、今後の具体的協力の方向性が明確に示される等の成果があった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 不拡散の取組強化に関するアジア諸国の理解や認識が高まり、モメンタムが強化されている一方で、その国内的履行に際しては各国がそれぞれ困難な問題に直面しており、これらは一律的に解決できるものではない。したがって、今後とも引き続き不拡散体制の強化を粘り強く働きかけていく一方で、アジアの各国のニーズにきめ細かく対応できるような協力のあり方について精査し、具体的な諸施策に反映させていくことが求められている。
(今後の方針)
 アジアにおける不拡散問題に関する更なる認識の強化と具体的な協力に向けたニーズの精緻化に取り組む。

事務事業名:拡散に対する安全保障構想(PSI)に対する貢献

事務事業の概要
 国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器・ミサイル及びそれらの関連物資の不拡散に関しては、NPT等国際条約に基づく不拡散体制が構築されるとともに、種々の国際的な輸出管理協力の枠組みも重要な役割を演じている。こうした国際的取組の存在は極めて重要であるが、関連条約を遵守しない国の存在などもあり、大量破壊兵器等の拡散を完全には防止できていないことから、従来の不拡散体制の抜け穴を埋めるべく、国際法・各国国内法の範囲内で参加国が共同してとりうる措置を検討する取組として、平成15年に「拡散に対する安全保障構想(PSI)」が立ち上げられた。
 我が国は、輸送段階、輸出入管理、国内管理等のすべての過程において不拡散のための取組を強化する必要があるという考えの下、これまで我が国が行ってきた大量破壊兵器等の不拡散に関する取組に沿ったものとして、PSIに積極的に参加してきている。また、PSIの発展のみならず、前項の「アジアにおける不拡散体制の強化に向けた取組」の一環として、アジア諸国によるPSIへの支持と理解の拡大を目的とするアウトリーチ活動を重視している。
有効性
(具体的成果)
(1)各種会合及び訓練への積極的な参加を通じて、他国との協働の下、PSIの活動基盤を強固にした。
(2)他国主催の訓練への積極的な参加により、我が国を含む各国の阻止活動に関する練度が向上し、相互の連携が強化された。
(3)我が国は、上記のように、自らPSIの諸活動に積極的に貢献する一方で、アジア諸国を中心とするPSI非参加国に対して、PSIへの支持と理解を促進するため、二国間の協議に加え、多国間の協議(我が国によるアジア不拡散協議の開催など)の機会を活用し、アウトリーチ活動を展開している。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 可能な限り多くのアジア諸国が大量破壊兵器等の拡散阻止活動に参加・協力することにより、我が国及びアジア地域全体の安全保障が向上するとの認識の下、アジア諸国によるPSIへの理解の促進と支持の拡大を目指す働きかけが引き続き必要である。
 PSIの活動をより効果的なものとするためにも、関係各国、関係国内機関の連携強化を一層強化していくことが有益である。
(今後の方針)
 引き続き各種会合及び訓練に積極的に参加していくほか、アジアにおけるアウトリーチ活動を一層進めていく。また、我が国PSI関係機関による連携を一層強化するための体制を整備していく。

【評価をするにあたり使用した資料】



(注)用語説明

1 NPT:「核兵器不拡散条約」。米露中英仏の5ヵ国を「核兵器国」と定め、それ以外の非核兵器国による核兵器取得等の禁止と保障措置の受け入れ、核兵器国による核軍縮のための誠実な交渉義務等を定めいている国際条約。昭和43年(1968年)成立し、昭和45年(1970年)発効。日本は昭和51年(1976年)批准。平成18年3月現在の締約国は189ヵ国。

2 CTBT:「包括的核実験禁止条約」。地下実験を含むあらゆる「核兵器の実験的爆発又は他の核爆発」を禁止する条約。昭和38年(1963年)に作成された部分的核実験禁止条約(PTBT)が地下核実験を対象としていなかったことから、地下核実験を含む全ての核実験を禁止する条約として策定された。平成8年9月に国連総会にて採択。条約の発効には、条約の附属書二に列記されている44ヵ国発効要件国)の批准が必要であり、現時点では未発効。条約発行時にはCTBT機関(CTBTO)が設立されることになっているが(条約第2条1)、平成8年11月よりCTBTO準備委員会が毎年2回ウィーンで開催されている。平成9年3月、準備委員会第一会期再開会期において、同委員会暫定技術事務局が設立された。

3 IAEA:「国際原子力機関」。原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が軍事的に利用されないことを確保するための保障措置の実施を目的とした国際機関(昭和32年(1957年)設立)。1)保障措置の実施、2)原子力発電及び核燃料サイクル分野での企画、研究、及び開発、3)医療、鉱工業、食品、農業等への放射線利用及び応用の促進、4)原子力安全上の基準の作成及び普及、5)原子力の平和的利用に関わる技術協力といった幅広い活動を行う。

4 IAEAの保障措置:IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、核物質等が軍事目的に利用されていないことを確保することを目的として、「査察」等の手段により検認活動を行うもの。

5 拡散に対する安全保障構想(PSI):大量破壊兵器等関連物資の拡散を阻止するために、参加国が共同してとりうる措置を検討・実践しようとの構想。平成15年5月、ブッシュ米大統領が提唱し、日本を含む11ヵ国(米、日、英、伊、蘭、豪、仏、独、西、ポーランド、ポルトガル)が参加。第3回パリ会合(平成15年9月)では、各国が国際法及び各国の関係国内法の範囲内で、拡散を阻止するための必要な措置を実施することを定めた政治文書である「阻止原則宣言」を採択。現在、70ヵ国以上が同宣言を支持し、実質的にPSIの活動に参加・協力している。

6 BWC:「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約。開発、生産、保有を含めた生物兵器の全面禁止及び保有する生物兵器の廃棄を目的とする条約」。昭和50年(1975年)発効。平成18年3月現在の締約国数は155ヵ国。同条約は加盟国による条約遵守を確認するための手段がないため、検証のための議定書を策定するための交渉が平成7年から続けられていたが、平成13年に事実上中断した。平成18年11月には、第6回運用検討会議の開催が予定されている。

7 CWC:「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」。開発、生産、保有を含めた化学兵器の全面的禁止並びに厳密な検証制度を特長とする条約。平成9年発効。平成18年3月現在の締約国数は178ヵ国。この条約に基づき、OPCW(Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons: OPCW)が平成9年5月にハーグに設立され、世界的な化学兵器の軍縮及び不拡散の実施の任に当たっている。

8 IAEA追加議定書:IAEAとの包括的保障措置協定に追加してIAEAとの間で各国が締結する議定書。この締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲や「補完的アクセス」による検認対象場所が拡大されるなど、IAEAの権限が強化される。平成18年3月現在、75ヵ国が締結。

9 G8グローバル・パートナーシップ(G8GP):G8は、平成14年のカナナスキス・サミットにおいて、大量破壊兵器、すなわち、核、化学、生物の各兵器、及びその関連物資等の拡散防止を主たる目的として、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」を発表した。これは、まずロシアを対象に、不拡散、軍縮、テロ対策及び環境を含む原子力安全に関連するプロジェクトを協力して実施することを内容とするもの(優先分野は、退役原子力潜水艦の解体、化学兵器の廃棄、核分裂性物質の処分、兵器の研究に従事していた科学者の雇用の4つ)。G8は、本構想の下で協力事業の円滑な実施を図るために、事業の実施に関する「指針」を策定するとともに、今後10年間にわたって200億米ドルを上限に資金協力を行うことを努力目標として掲げた。日本は、本パートナーシップの中で、当面、退役原潜解体事業のために1億ドル余りをあて、また、核弾頭から発生する余剰プルトニウム処分のために1億ドルを拠出することとしている。

10 化学兵器禁止機関(OPCW):CWCの発効に伴い平成9年5月オランダのハーグに設置された国際機関。CWCに基づき化学兵器の廃棄のために化学兵器及び生産施設の廃棄の進捗を、査察を通じて検証し、また、化学兵器の不拡散のために毒性化学物質を扱う産業施設等に対しても査察を行っている。

11 アジア不拡散協議(ASTOP):ASEAN10ヵ国、日本、中国、韓国、米国、オーストラリアの局長級の不拡散政策担当者が一堂に会し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行う協議。平成15年11月に第1回、平成17年2月に第2回、平成18年2月に第3回協議がいずれも東京で開催された。

12 ハーグ行動規範(HCOC):輸出管理だけではミサイル技術の拡散が進行するのを食い止めることはできないとの観点から、平成14年11月、オランダのハーグで採択された弾道ミサイル不拡散のためのグローバルな規範。弾道ミサイルの拡散防止、開発・実験・配備の自制、宇宙ロケット計画を弾道ミサイルの隠れ蓑にしないこと、信頼醸成措置などが主な内容。法的拘束力を持つ国際約束ではなく、政治的拘束力を持つ規範として位置づけられている。平成18年4月現在、124ヵ国が参加。

13 ジュネーブ軍縮会議(CD):国際社会で唯一の多国間軍縮交渉機関。国連や他の国際機関から基本的に独立している。昭和34年(1959年)設立された「10ヵ国軍縮委員会」が、いくつかの変遷を経て、拡大・発展したもの。平成18年3月現在の加盟国は65ヵ国。

14 原子力供給国グループ(NSG):核兵器開発に使用されうる資機材・技術の輸出管理を通じて核兵器の拡散を阻止することを目的とする輸出管理レジーム。45ヵ国が参加(平成18年3月時点)。原子力専用品・技術の規制指針であるロンドン・ガイドライン・パート1(昭和53年(1978年)成立)と、原子力関連汎用品・技術の規制指針であるロンドン・ガイドライン・パート2(平成4年成立)が存在する。

15 ザンガー委員会(ZC):NPT第3条第2項に規定する輸出管理の対象となる核物質、設備及び資材の具体的範囲を協議するために、スイスのザンガー教授の提唱により昭和45年(1970年)に設立された合議体。平成18年3月現在、35ヵ国が参加。

16 オーストラリア・グループ(AG):化学・生物兵器の開発・製造に使用しうる関連汎用品及び技術の輸出管理を通じて、化学・生物兵器の拡散を防止することを目的とする輸出管理レジーム。平成18年3月現在39カ国が参加。昭和60年(1985年)設立。

17 ミサイル技術管理レジーム(MTCR):大量破壊兵器の運搬手段となるミサイル及び有人航空機以外のその他の運搬手段(宇宙ロケット、観測ロケット、無人航空機)並びにその開発に寄与しうる関連汎用品・技術の輸出規制を目的とする輸出管理レジーム。34カ国が参加(平成18年3月時点)。

18 ワッセナー・アレンジメント(WA):ココムが発展解消し、その後継として平成8年設立された、(1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の過度な蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与し、(2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリストグループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止することを目的とする国際的輸出管理レジーム。平成18年3月現在、40カ国が参加。

19 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT):核兵器及びその他の核爆発装置用の核分裂性物質(プルトニウム及び高濃縮ウラン等)の生産を禁止する条約。平成5年9月にクリントン米大統領によって提案された。条約交渉はCDにて行われることとなっているが、CDの停滞から平成18年末時点においても交渉は開始されていない。

20 国際監視制度施設(IMS):国際監視制度はCTBTの遵守を検証する制度であり、世界337カ所に設置される4種類の監視観測所(地震学的監視観測所、放射性核種監視観測所、水中音波監視観測所及び微気圧振動監視観測所)により、CTBTにより禁止されている核兵器の実験的爆発又は他の核爆発が実施されたか否かを監視する制度。


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