省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

7-1 日本の安全保障政策に関する外交政策

(1)イラク・アフガニスタンの復興・テロ対策、平和活動への自衛隊派遣
(2)ASEAN地域フォーラム(ARF)、及び安保対話の実施による地域安全保障促進と協力関係強化
安全保障政策課長 新美潤
平成18年4月
施策の目標
(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
施策の位置付け
(1)平成17年度・平成18年度の重点外交政策、第159回・第162回・第164回の施政方針演説いずれに関しても言及あり。
(2)平成17年度・平成18年度の重点外交政策において言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 中東地域の平和と安定は日本を含む国際社会全体の平和と繁栄に直結する問題である。イラクやアフガニスタンの復興が失敗し、これらの国がテロの温床となれば、中東地域のみならず我が国自身の安全も脅かされることとなる。我が国自身の安全を確保するためにも、これらの国の安定と復興のため、国際社会と一体となって可能な限りの支援を行う必要がある。イラクにおいては、依然として治安情勢が予断を許さない状況であり、民間部門の活動はできないことから、自衛隊を派遣し、国際社会の責任ある一員として人道復興支援を行う。また、インド洋でテロリスト捕捉のための作戦を継続しているコアリション各国への支援を行うため、自衛隊艦船をインド洋に派遣し、コアリション艦船への給油等を行い、国際的な「テロとの闘い」に協力する。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 多国間の枠組みとして、日本はアジア太平洋地域の主要国が参加する地域的な政治・安全保障の枠組みであるASEAN地域フォーラム(ARF)を活用している。ARFは、1)信頼醸成の促進、2)予防外交の進展、3)紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指している。
 二国間の枠組みとして、日本は、各国の安全保障担当部局との間で、安全保障に関する対話を行い、相互の信頼関係を高め、安全保障分野における協力関係を進展させるよう努めている。

【施策の必要性】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 世界の主要なエネルギーの供給地域である中東地域の平和と安定を確保することは日本を含む国際社会全体の平和と繁栄に直結する重要な問題であり、現下のイラク情勢、アフガニスタン情勢に鑑み、我が国も国際社会の一員として適切な取組を行う必要がある。イラクやアフガニスタンの復興が失敗し、これらの国がテロの温床となれば、中東地域のみならず我が国自身の安全も脅かされることとなる。また、各国が持てる力を持ち寄ってこれらの国の復興に取り組んでいる中で、我が国は何もしないということでは国際社会の信頼を得ることはできない。国際社会の一員としての責任を果たすためにも、自国の特性を活かし自衛隊を派遣し、これらの国の復興を支援し、「テロとの闘い」を継続しもって我が国自身の安全確保を図ることが必要。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 依然として不透明、不確実な要素の残るアジア太平洋地域の平和と安定を確保していくためには、同地域における米国の存在と関与を前提とした上で、同地域の安全保障環境に影響を及ぼす各国との信頼醸成を促進し、これを通じて安全保障環境を向上させていくことが必要である。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 地域紛争等国際社会の平和と安定が脅かされるような状況は、我が国の平和と安全に密接に関わる問題であるとの認識の下、我が国の平和と安全をより確固たるものとすることを目的として、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動に積極的に取り組む必要がある。その際、国際社会の責任ある一員として、自衛隊の派遣等による人的貢献を政府開発援助とともに支援の柱として実施することが適当である。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 アジア太平洋地域では、政治・経済体制、さらには各国の安全保障観の多様性が特徴である。こうした状況で、アジア太平洋において、欧州安全保障協力機構のように制度化された安全保障機構を構築することは、少なくとも現時点では、現実的ではない。むしろ、米国の存在と関与を前提としつつ、種々の二国間・多国間の対話の枠組みを重層的に活用していく方が、地域の特性により適合した現実的かつ適切な方策である。

【施策の効率性】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 人的貢献を通じてイラクやアフガニスタンの復興を支援するという目的を果たすため自衛隊の派遣は適切な手段である。理由は、1)国際的な安全保障の環境を改善するため、国際社会の多くの国(イラクでは約30か国、アフガニスタンでは約45か国)が部隊を派遣し、安全確保活動や人道復興支援等を実施しており、我が国としても相応しい活動を行う必要があること、2)特に、イラクにおいては、いまだ民間人が活躍できる治安情勢になく、人的貢献という場合には、自己完結性を備えた自衛隊による活動が必要であることが挙げられる。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 ARFは、安全保障問題について議論するアジア太平洋地域における唯一の政府間対話と協力の場であり、これを活用することは効率性の観点からも適当である。

【投入資源】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
予算
平成17年度
平成18年度
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
4.5
4.5
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
予算
平成17年度
平成18年度
13,083
9,626
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
4.5
4.5
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 イラクやアフガニスタンへの支援実施に際しては、現地における治安情勢、復興の進捗状況の他、国際機関や他国の取組の動向によって、支援の必要性、効果が影響を受ける。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 多国間及び二国間の枠組みを通じた政策が中心となる性質上、我が国の政策のみならず参加国の政策も注視する必要がある。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 (1)(2)ともに、通常の評価を行う

【評価の切り口】

(1)人的貢献の結果(成果)とこれに対する各国の評価
(2)地域安全保障の促進と協力関係の強化状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)人的貢献の結果(成果)とこれに対する各国の評価
(イ)我が国の人的貢献の具体的内容
  • 陸上自衛隊により、ムサンナー県内の学校32校が改修、道路についても陸上自衛隊とODAで合計113キロメートル程度が改修されている。また、県内32箇所のプライマリー・ヘルス・センター(PHC)のうち、21箇所を改修している(平成18年2月現在)。
  • 「テロとの闘い」については、海上自衛艦をインド洋に派遣し、各国艦船への補給活動等を実施。これまでに11か国に対し、約42万キロリットル以上を給油(平成18年3月現在)。
(ロ)我が国の貢献に対する諸外国の評価
 イラク復興支援、アフガニスタンにおける「テロとの闘い」に対しては、以下のとおり各国要人より高い評価が示されている。
  • イラク
     イラク移行政府のタラバーニー大統領、ジャアファリー首相、ズィバーリー外相等から、我が国の自衛隊による支援に対して謝意を表明。
  • アフガニスタン
     平成17年4月、カルザイ大統領より小泉総理に対し、日本がテロ対策特措法に基づく支援を延長した決定をアフガニスタン政府は高く評価し、歓迎している旨発言。
  • 米国
     平成17年11月、ブッシュ大統領より小泉総理に対し、イラク・アフガニスタンにおける日本の支援に深く感謝する旨発言。

(2)地域安全保障の促進と協力関係の強化の状況
 以下のとおり、ARF及び安保対話によって地域安全保障が促進し、協力関係が強化され、アジア太平洋地域の平和と安定の確保に寄与した。
(イ)ARFにおける達成状況
  • ARFはアジア太平洋地域における安全保障面での唯一の政府間対話と協力の場として着実に前進している。
  • これまでの会合を通じて、参加国自身を当事者とする問題(朝鮮半島情勢、インドネシア情勢、ミャンマー問題等)を含めて、率直な意見交換を行う慣習が生まれつつあるとともに、具体的な信頼醸成措置(年次安保概観ペーパーの提出、各種会合の開催等)が実施されている。さらには、テロ、海賊対策等、域内各国にとって共通の議題となっている「新たな脅威」においては、キャパシティ・ビルディング等、「対話から行動へ」の具体的な動きが見られている。
  • テロ対策に関する事務レベル会合が定期開催され、外交当局のみならず実務当局者も会合に参加するなど、テロ対策において実務的な協力が進められている。第12回ARF閣僚会合(平成17年7月29日、於:ビエンチャン)では、逢沢外務副大臣(当時)より、年内に「海上安全保障のキャパシティ・ビルディングに関するARFワークショップ」をインドネシアと共催する旨発言し、2005年12月に東京での開催が実現した。
  • 第12回ARF閣僚会合において、逢沢副大臣から、六者会合では問題完結に向けた実質的な進展を得ることが重要であること、及び朝鮮半島の非核化という六者共通の目標に向け、北朝鮮が国際的な検証の下での全ての核計画の完全廃棄にコミットすることが何よりも重要であり、我が国としても建設的な役割を担う考えである旨発言した。議長声明では、朝鮮半島の非核化に向けた平和的解決を探求する重要性に言及。
  • 第12回ARF閣僚会合において、逢沢副大臣から、ARF各国に対し、拉致問題の解決に向けた我が国の立場に対する引き続きの理解と支持を求めた。
  • 第12回ARF閣僚会合において、逢沢副大臣から、ARF議長強化のためには「議長フレンズ(議長国を他の参加国が支援する仕組み)の設置」に向けた議論を進めるべきであること、ASEAN事務局内に設置されたARFユニットの構成を非ASEAN諸国にも開放する必要があること等につき発言。閣僚会合はARFに「議長フレンズ」を設けることに合意。
(ロ)二国間の安保対話における達成状況
 域内安全保障に影響を及ぼし得る事項につき、日仏防衛・外務当局者間協議等安全保障担当部局間で、率直な意見交換を実施。

【評価の結果(目標の達成状況)】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)イラク復興支援、アフガニスタンにおける「テロとの闘い」に対しては、上記のとおりの成果があがっており、また、各国要人より高い評価が示されている。

(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)第12回ARF閣僚会合で、テロ対策、海上安全保障、大量破壊兵器の拡散問題及び地域の防災・災害対策の分野に協力して取り組むことの重要性を確認し、テロ対策等における情報の共有に関する声明が採択され、また、「海上安全保障のキャパシティ・ビルディングに関するARFワークショップ」が東京で開催される等、アジア太平洋地域の平和と安定の確保という目標に向けて、進展があったと言える。
 さらに、二国間の安保対話を行ったことは、各国との相互の信頼関係を高め、安全保障分野での協力関係を進展させる上で有益であった。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 イラク、アフガン等における国際的な安全保障を改善するための国際社会の取組の状況、現地の情勢を踏まえ、我が国の活動のあり方を検討する。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
(イ)ARFが安全保障問題について議論するアジア太平洋地域における唯一の政府間対話と協力の場として、「信頼醸成」の段階から「予防外交」の段階に前進しているが、予防外交(具体的な行動)に本格的に取り組むための機能強化が必要である。
(ロ)各国との安全保障分野での協力関係の更なる進展をはかる必要がある

政策への反映

【一般的な方針】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
 国際的な安全保障を改善するための国際社会の取組の状況、現地の情勢に関する情報収集を適切に実施し、適時適切に判断を行う。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保
 アジア太平洋地域の平和と安定を確保するためにARFの機能強化のための貢献、予防外交への取組促進のための貢献、ARFの機能改善のための貢献を適切に実施また、各国との安保対話を通じて、安全保障分野における協力関係を進展させる。

【事務事業の扱い】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保

【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)


【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 日本の安全保障政策を地域的な観点から分類し、評価を行っている。また、評価を踏まえ、今後取り組むべき政策の方向性についても論理的に結びつけられる形式で記述されており、適切に評価が記述されている。

【事務事業の評価】

(1)中東地域の平和と安定、繁栄の実現

事務事業名:イラク・アフガニスタンでの復興・テロ対策、平和活動への自衛隊派遣に関する事業

事務事業の概要
 イラクにおいては、依然として治安情勢が予断を許さない状況であり、民間部門の活動はできないことから、自衛隊を派遣し、人道復興支援を行う。また、インド洋でテロリスト捕捉のための作戦を継続しているコアリション各国への支援を行うため、自衛隊艦船をインド洋に派遣し、コアリション艦船への給油等を行う。
有効性
(具体的成果)
 地域紛争等国際社会の平和と安定が脅かされるような状況は、我が国の平和と安全に密接に関わる問題であるとの認識の下、我が国の平和と安全をより確固たるものとすることを目的として、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動に積極的に取り組む必要がある。その際、国際社会の責任ある一員として、自衛隊の派遣等による人的貢献を政府開発援助とともに支援の柱として実施することが適当である。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 イラク及びアフガニスタンがテロの温床となれば日本を含む国際社会が深刻なテロの脅威にさらされることとなる。日本としてはそのような事態を避けるため、国際社会と協調しつつ、自衛隊派遣による人材貢献を通じて、これらの国の安定と復興を支援し、テロとの闘いを継続する必要がある。なお、自衛隊の具体的な活動としては、これまで同様、イラクについては、インフラ整備や医療支援、また、アフガニスタンについては、インド洋上でテロリストに対する海上阻止活動を行う各国艦船への給油を継続する。
(2)アジア太平洋地域の平和と安定の確保

事務事業名:アセアン地域フォーラム(ARF)を通じた地域安全保障の促進に関する事業

事務事業の概要
 日本は、安全保障問題について議論するアジア太平洋地域の唯一の政府間対話の場であり、アジア太平洋地域の主要国が参加する全域的な政治・安全保障の枠組みであるASEAN地域フォーラム(ARF)を活用。ARFは、1)信頼醸成の促進、2)予防外交の進展、3)紛争へのアプローチの充実、という三段階のアプローチを設定して漸進的な進展を目指している。
有効性
(具体的成果)
 閣僚会合をはじめ、すべてのARFセミナー及びワークショップに参加し、地域安全保障を促進。

(我が国で開催したワークショップ)
2005年12月 海上安全保障のキャパシティ・ビルディングに関するARFワークショップ

(我が国が参加したARF会合)
2005年4月 第3回テロ及び国境を越える犯罪に関するARF・ISM(タイ)
2005年5月 ARF高級事務レベル会合(ラオス)
2005年5月 安全保障政策会議(ラオス)
2005年6月 ARF諸国の安全保障認識の変遷に関するARFワークショップ(モンゴル)
2005年7月 第12回ARF閣僚会合(ラオス)
2005年9月 軍民活動に関するARFワークショップ(フィリピン)
2005年10月 サイバーテロに関するARFセミナー(フィリピン)
2005年10月 ミサイル防衛に関するARFセミナー(タイ)
2005年10月 国防大学等学長会議(ベトナム)
2005年10月 信頼醸成・予防外交に関するARF・ISG(ホノルル)
2005年10月 海上安全保障協力のための訓練に関するARFワークショップ(インド)
2005年11月 小型武器に関するARFセミナー(カンボジア)
2005年11月 輸出管理専門家会合(シンガポール)
2005年11月 災害救助に関するARF・ISM(インドネシア)
2006年3月 信頼醸成・予防外交に関するARF・ISG(フィリピン)
2006年3月 大量破壊兵器不拡散に関するARFセミナー(シンガポール)
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 ARFが地域唯一の政府間の安全保障面での対話と協力の場として、「信頼醸成」の段階から「予防外交」の段階に前進しており、予防外交に本格的に取り組む(具体的な行動の促進)ために体制強化が求められており、日本としても積極的に関与する必要がある。

事務事業名:各国との安保対話を通じた地域安全保障の促進に関する事業

事務事業の概要
 日本は、各国の安全保障担当部局との間で、安全保障に関する対話を行い、相互の信頼関係を高め、安全保障分野における協力関係を進展させるよう努めている。
有効性
(具体的成果)
 各国との間で安保対話及び防衛交流が行われ、相互の信頼関係を高め、安全保障分野における協力関係の進展に貢献している。
(平成17年度に開催された防衛・外務当局者間協議)
2006年2月17日 日仏防衛・外務当局者間協議
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 各国の安全保障政策を正確に理解し、将来の動向を見据えて我が国の対応を検討し、また、アジア・太平洋地域の安全保障に関し、日本の立場に対する各国の理解を深めることは、重要かつ必要である。

【評価をするにあたり使用した資料】

(1)
(2)

 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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