I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
6-1 TICADプロセスを通じたアフリカ開発の推進、平和と安定の実現のための支援の推進
アフリカ第二課長 森美樹夫
平成18年4月
施策の目標
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アフリカ諸国のオーナーシップ(自助努力)と国際社会のパートナーシップ(連携)に基づく持続可能なアフリカ開発の推進 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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(1)TICADプロセスの着実な推進と制度化
TICADアジア・アフリカ貿易投資会議(2004年11月)のフォローアップの推進及びTICAD平和の定着会議の開催(2006年2月)。
(2)我が国の対アフリカ協力の基本方針に基づく包括的な支援の推進
TICAD III以降、「平和の定着」、「経済成長を通じた貧困削減」、「人間中心の開発」を我が国の対アフリカ開発政策の基本理念と位置づけ、アフリカ向けODA事業や各種施策の計画、実施に反映。
(3)パートナーシップの拡大(南南協力、特にアジア・アフリカ協力の推進)
TICADプロセスでは、アフリカ開発のパートナーとしてアジア諸国を重視、アジアの経験のアフリカへの伝播を目的とする。
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【施策の必要性】
アフリカには、貧困、紛争、感染症など21世紀の国際社会が直面する課題が集中して存在している。かかる問題の解決は日本を含む国際社会が全体として取り組むべき課題であり、アフリカ諸国と援助国、国際機関等が今後のアフリカ開発のあり方について真剣な政策対話を行う場としてのTICADの必要性は大きい。我が国としてもTICADプロセスを主導することにより、アフリカ支援において応分の責任を果たすことで、世界の4分の1以上を占めるアフリカ53か国との関係を強化し、信頼と支持を得ることは、日本が国際社会において積極的な役割を果たしていく上で極めて重要であり、国際社会における我が国及び国民の利益増進に大きく寄与するものである。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)貧困、紛争、感染症など、様々な問題を抱えたアフリカ諸国の安定と繁栄のためには、我が国や他の先進国をはじめとする国際社会の支援を結集するとともに、アフリカ諸国の側でも、自ら問題意識を持ち、自国の開発・発展に積極的に関与・貢献していくことが極めて重要である。
(2)我が国は、上記の観点から、TICADプロセスの開始当初より、オーナーシップと国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきた。アフリカ諸国のオーナーシップを奨励し、援助国・国際機関との対話を通じてパートナーシップを強化するためには、アフリカ諸国、援助国、国際機関の参加を得て、様々な分野、課題に関して包括的な取組を行う必要がある。その観点からアフリカ開発に関する世界最大級の政策フォーラムであるTICADは最適の舞台であり、国際社会からもアフリカ開発政策を議論する場として高く評価されている。
(3)また、TICADプロセスで合意を得たアフリカ支援の基本方針は、各国・国際機関の援助政策に取り入れられ、実施されることが重要であり、我が国の施策としても、アフリカ向けODA事業や各種施策の計画、実施に反映させていくことは非常に重要である。
(4)アフリカの開発においては、かつて貧困状態から経済発展を遂げた東アジア諸国の経験を活用することが有効であり、かかる観点から、我が国の発展経験及びアジアにおける開発支援の経験に根ざした独自の視点に立った南南協力、特にアジア・アフリカ協力を推進することが重要である。
【施策の効率性】(3行以内)
平成17年度における活発な要人往来や平成18(2006)年2月のTICAD平和の定着会議等の国際会議の場において、アフリカ諸国をはじめ、関係国、国際機関等から我が国のTICADプロセスを通じたアフリカ開発支援に対する感謝と評価の声が寄せられたことは、施策の効率性を示している。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
78,443 |
71,640 |
単位:千円
(注)本省分予算
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
34 |
34 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
(注)投入資源(予算及び人的投入資源)は、施策6-2「G8、国連等マルチの国際的枠組みにおけるアフリカに対する協力の強化」、施策6-3「アフリカとの重層的な交流の実施」と共通。
【外部要因】
(1)アフリカは、全世界の4分の1以上の国、2割以上の面積、約13%の人口を占め、現状では、貧困、飢餓、感染症等の多くの課題が山積している。そのため、短期間で顕著な効果が現れると想定することは困難である。さらに、アフリカの開発の進展は政治情勢、天候、一次産品等の国際市況の影響を受けるものである。
(2)対アフリカ開発支援は、我が国のみならず、国際社会全体で取り組んでいる課題であり、我が国の対アフリカ支援の効果のみ抽出して評価することは困難である。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
2005年は「アフリカの年」として、国内外でアフリカ問題及び対アフリカ開発支援に関心が集まったこともあり、この点にも留意して評価を行う。
【評価の切り口】
アフリカ開発に対するTICADプロセスと我が国の貢献
【目標の達成状況(評価)】
アフリカ開発に対するTICADプロセスと我が国の貢献
以下のとおり、アフリカ開発に対するTICADプロセス及びアフリカ支援が進み、アフリカ開発の促進に寄与した。
(1)TICADプロセスの推進と制度化
(イ)TICAD平和の定着会議
アフリカでは、スーダン、西アフリカ、大湖地域を中心に多くの紛争が終結に向かっている。開発には平和の定着が不可欠であるとの観点から、TICADプロセスの重点分野の1つである、「平和の定着」に焦点を当てて、2006年2月にアディスアベバ(エチオピア)でTICAD平和の定着会議を開催した。この会議は、TICAD IIIのフォローアップとして、2004年のTICAD-AATICに続く2回目の分野別の会議であった。我が国からは塩崎外務副大臣が首席代表として参加し、全体会議の議長を務めた。同会議の成果は議長総括としてまとめられた。
(ロ)TICAD―AATICのフォローアップ
2004年11月に開催されたTICAD-AATICでは、アフリカの貿易投資促進に向けて「産業振興のための適切な政策の策定」、「比較優位に基づく商品開発の推進」、「地場中小企業の振興」及び「民間企業の社会貢献の促進」の4つの提案を示すとともに、かかる提案に沿って具体的にアフリカ諸国を支援していくことを表明した。以上の経緯をふまえ、我が国は外務省、財務省、経済産業省、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易振興機構(JETRO)、国際協力機構(JICA)、日本貿易保険(NEXI)、海外技術者研修協会(AOTS)等の諸機関がいわば「チーム・オール・ジャパン」として、フォローアップの具体的施策を積極的に実施した。
(ハ)NEPAD政策対話
NEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)は、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップというTICADの基本哲学を反映したアフリカ自身による開発イニシアティブであり、我が国はTICAD IIIにおいてNEPAD支援の方針を明確化した。2006年3月には、我が国の招聘により来日したムカベレNEPAD事務局長と日・NEPAD政策対話を実施した。
(2)我が国の対アフリカ支援
(イ)我が国は、TICADプロセスの重点分野である「平和の定着」、「経済成長を通じた貧困削減」、「人間中心の開発」を中心にアフリカ支援に取り組み、平成17年の対アフリカ無償資金協力実績は約630億円(閣議決定ベース。アフリカ難民向け援助を含む)と、平成16年度の約420億円に比べて増額となった。なお、有償資金協力については、平成17年度は487.52億円を供与した。技術支援(JICAベース)についても概ね対前年比増となっており、アフリカ地域から保健・医療、農業等の分野で1049人の研修員を受入れ、506人の青年海外協力隊派遣等を行った。
(ロ)また、我が国は2005年を「アフリカの年」と捉え、2005年4月のアジア・アフリカ首脳会議では「2008年のTICAD IV(第4回アフリカ開発会議)の開催」や「今後3年間でのアフリカ向けODA倍増」、7月のG8グレンイーグルズ・サミットでは「アフリカ諸国に対する全債権国中最大級の債務削減」、「今後5年間で総額50億ドルを目処とする「保健と開発」に関するイニシアティブ(アフリカは主要な裨益者)」を表明し、また、12月のWTO香港閣僚会議では、途上国を対象とした「開発イニシアティブ」を表明するなど、我が国の対アフリカ支援を強化する方針を示した。
(ハ)我が国の対アフリカ支援に対しては、以下のとおり、アフリカ諸国から高い評価が寄せられている。
(モレレキ・レソト外務大臣)TICADプロセスについては、日本は、先進国の中でも最も古くから、アフリカ支援につき指導的役割を果たしてきた。レソトは、小泉総理がジャカルタのアジア・アフリカ首脳会議で、TICAD IVの開催につき発表されたことを心強く思っており、右開催を心待ちにしている。自分は、ジャカルタでカリスマがあり礼儀正しい小泉総理と、総理のスピーチに感動した。日本がアフリカに対するODAを倍増することについても感謝する。日本は、非白人国家、非欧州国として、今や世界の指導的役割を担っている。
(ムタリカ・マラウイ大統領)日本がアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)支援の役割を果たしてきていること、また、TICADのプロセスを進めていることに感謝。さらに日本は、HIV/AIDS対策ほかの重要な国際的な行動にも参加している。これらはアフリカ開発問題に取り組み、グローバリゼーションの中でアフリカ諸国の国際市場へのアクセス確保を支援する上でも特に重要な行動である。
(カゴニェラ・ウガンダ総務大臣)TICAD平和の定着会議のような、日本政府による紛争国に対する具体的なイニシアティブに対し謝意。同会議の参加者は、政府のみならず市民社会からも多数参加しており、非常に有意義であった。紛争問題に関しては、概して処方箋を誤って失敗する場合が多いため、先ず初めに問題を正確に把握し、対処方法を考えることが重要であると考えている。その意味では、平和の定着会議に参加することで、他国における紛争の状況・問題や対処方法を学ぶことができたので、良かった。
(3)アジア・アフリカ協力を中心とするパートナーシップの拡大
(イ)「TICAD平和の定着会議」では、明石元国連事務次長の全体会合での演説においてカンボジア及びスリランカの経験を踏まえた具体的な教訓と提言が行われたほか、アフガニスタンのDDR委員会議長を務めた駒野前アフガニスタン大使、カンボジア地雷対策センター事務局次長によるプレゼンテーションが行われ、これらアジアの経験の発表はアフリカ側参加者の関心を集め、今後のアジア・アフリカ協力の発展可能性の高さが示された。
(ロ)2005年4月のアジア・アフリカ・ビジネス・サミットにおいて、小泉総理から2006年に「より大規模な」第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムを開催する旨発表したほか、2005年はJETROによるアフリカ産品の対日輸出支援やビジネスセミナー開催、TICADエクスチェンジ・ネットワークの設立、アジアの若者をアフリカに派遣し、青年交流と人造りを推進する「アジア青年海外協力隊」の創設など、TICAD-AATICのフォローアップとしてアジア・アフリカ間の貿易投資拡大のための官民パートナーシップの強化が図られた。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)2005年は、アジア・アフリカ首脳会議(4月)、G8グレンイーグルス・サミット(7月)、国連首脳会合(9月)、WTO香港閣僚会議(12月)等の国際会議において、アフリカ開発が主要なテーマとなる「アフリカの年」であったが、我が国はこの機運を捉え、様々な対アフリカ支援策を発表したほか、既に発表していた支援策の着実なフォローアップを行った。平成18(2006)年2月にはTICAD平和の定着会議を開催し、アフリカにおける平和の定着の重要性を再確認し、また、自らも種々の支援策を発表し、着実にこれを実施した。これらTICADプロセスを基軸とする日本の対アフリカ政策は、アフリカ及び国際社会から一様に高い評価を得、アフリカのオーナーシップ及び国際社会のパートナーシップを高めることができた。
【今後の課題】(2行以内)
今後は、平成17年度に表明した3年間でのアフリカ向けODA倍増等の対アフリカ支援策を着実に実施していく必要がある。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
2008年のTICAD IV開催に向け、平成17年度に表明した対アフリカ支援策を着実に実施するとともに、引き続きTICADプロセスを推進していく。
【事務事業の扱い】
- TICADプロセスの着実な推進と制度化→今のまま継続
- 我が国の対アフリカ協力の基本方針に基づく包括的な支援の推進→拡充強化
- パートナーシップの拡大(南南協力、特にアジア・アフリカ協力の推進)→今のまま継続
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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-
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
星野俊也 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
(1)2005年はアジア・アフリカ会議(バンドン会議)50周年や国連創設60周年など周年事業との関係で開催された大規模国際会議やG8、WTO会合などの主要な政策協調・調整の場でアフリカ開発に焦点があてられた。こうした気運を捉え、日本は2005年を「アフリカの年」と認識し、時宜を得たアフリカ支援策を発表し、また、これまでの支援策については着実なフォローアップを行っていたことが伺える。
2005年の国際的な関心の一つがアフリカ関係に収れんした背景には、引き続き「アフリカ問題」が焦眉の課題であり、現地の人々の自助努力と国際社会の連携を必要とする現実的なニーズがあるが、同時に、アフリカの抱える課題への取り組みがアフリカのみならず国際社会全体の安定と繁栄に結びつくという認識の一致もある。こうした認識の高まり自体、日本外交がTICADプロセスやG8プロセスを通じて地道に問題提起をし、支援の姿勢を示してきたこと成果と考えられる。総じて、目標達成に向けて相当な進展があったとする自己評価は適切と考える。
(2)今後は、2005年度に表明した「3年間でのアフリカ向けODA倍増」等の対アフリカ支援策を着実に実施していく必要があり、そのためには案件の発掘や開発ニーズの的確な把握のため、支援実施体制の強化が求められよう。
(3)また、近年は、第3回TICADが開催された2003年以降、2004年の「アジア・アフリカ貿易投資会議」、2005年の「平和の定着会議」等、分野別の会合の開催等も体系的に進められている。これはTICADプロセスの制度化につながる動きとして有益であり、今後、TICADがアフリカ問題に関する政策協議の中心的なフォーラムとしての機能が高まることが期待される。
(4)2005年が「アフリカの年」として一つの節目になったとしても、いうまでもなく、アフリカ問題は2005年で終わらない。今後、この気運と関心の高まりを生かした着実な対アフリカ政策の拡充強化も期待したい。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
「評価の切り口」であるアフリカ開発に対するTICADプロセスと我が国の貢献の3本柱である「平和の定着」「経済成長を通じた貧困削減」「人間の安全保障」の各々の取組の効果に関し、具体的に示されており、適切な評価である。
【事務事業の評価】
事務事業名:TICADプロセスの着実な推進と制度化
事務事業の概要
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我が国は、TICADプロセスを対アフリカ外交の基軸として積極的に推進しており、過去3回のTICAD開催はじめ、TICADに向けた準備や重点事項のフォローアップの一環として、様々な会合や事業を開催。
平成17年度は、貿易投資をテーマとしたTICAD-AATIC(2004年11月)の具体的フォローアップを積極的に実施したほか、TICADプロセスの重点分野の中で、「平和の定着」に焦点を当てたTICAD平和の定着会議を開催した(2006年2月)。
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有効性
(具体的成果)
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(1)「TICAD平和の定着会議」(2006年2月)
(イ)アフリカにおける平和の定着に関し、効果的かつ効率的な枠組み及びプロセスを確立することを目的として開催。
(ロ)73か国(うちアフリカ51か国)、38地域・国際機関、NGO・市民社会等20団体から400名以上が参加。アフリカ及びアジアでの具体的な経験に基づく活発な議論が行われた。
(ハ)全体会合に加えて、分科会として(a)治安確保、(b)政治ガバナンス、体制移行、(c)コミュニティ復興及び社会経済開発に関して集中的な議論が行われた。
(ニ)我が国は、2006年3月末までに6000万ドルを目途とする支援の実施を表明、各国から高い評価を得た。
(2)TICAD―AATICフォローアップ
本年度は、外務省、財務省、経済産業省、JBIC、JETRO、JICA、NEXI、AOTS等の諸機関がいわば「チーム・オール・ジャパン」として、TICAD-AATIC時に我が国が示した「4つの提案」に沿った具体的フォローアップを実施し、アフリカの貿易投資支援を促進した。
(3)「日・NEPAD政策対話」(2006年3月)
我が国のオピニオン・リーダー招聘計画にて訪日したムカベレ事務局長と「日・NEPAD政策対話」を実施、我が国の対NEPAD協力を紹介するとともに、意見交換の内容を議事録としてまとめた。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
今後は、2008年のTICAD IVに向け、分野別の国際会議、準備会合等の開催も含め、TICADプロセスの推進と制度化を図っていく必要がある。その中で、アフリカの貿易投資分野における「チーム・オールジャパン」の取組をはじめ、国内関係省庁・機関が一体となって対アフリカ支援の取組を強化していく。
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事務事業名:我が国の対アフリカ協力の基本方針(平和の定着、経済成長を通じた貧困削減、人間中心の開発)に基づく包括的な支援の推進
事務事業の概要
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我が国は、TICADプロセスで議論された成果を、我が国の対アフリカ開発政策の基本理念と位置づけ、アフリカ向けODA事業や各種施策の計画、実施に反映させており、TICAD III以降、以下の3分野を中心とした取組を行っている。
(1)平和の定着~開発の基盤造りのため、紛争地域の和平推進、切れ目のない復興支援のための包括的な取組
(2)経済成長を通じた貧困削減
(イ)アジアの開発経験を踏まえた対アフリカ貿易・投資の促進
(ロ)農業・農村開発支援
(3)人間中心の開発~アフリカの持続的発展のための人的基盤造り
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有効性
(具体的成果)
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2005年を「アフリカの年」と位置づけ、積極的な対アフリカ外交を展開した我が国は、平成17(2005)年4月のアジア・アフリカ会議において、2005年以降5年間でのODA事業量100億ドルの積み増し、3年間でのアフリカ向けODAの倍増を表明している。
(1)平和の定着
(イ)平和維持活動への貢献
(a)アフリカで現在活動している国連PKO7ミッションの費用の20%負担。
(b)年間(2005年/2006年(単年))7億5800万ドル貢献。ダルフール問題に関するアフリカ連合(AU)の活動を支援するため600万ドル拠出。
(ロ)平和の定着のための支援
スーダンに対しては2005年1月の南北包括和平合意の成立を受け、同年4月、当面1億ドルの支援を南北双方に行う方針を発表(約6000万ドルを実施済み)。
(ハ)人道支援
平成18(2006)年2月には、TICAD平和の定着会議の機会を捉え、「新たなイニシアティブ」を発表し、その一環として2006年3月末までに6000万ドルを目途とする支援の実施を表明。
(2)経済成長を通じた貧困削減
(イ)アジアの開発経験を踏まえた対アフリカ貿易・投資の促進2004年11月に実施されたTICAD貿易投資会合のフォローアップとして、以下を実施。
(a)アジア・アフリカ間の貿易投資拡大のための官民パートナーシップ強化
- JETROの対日輸出支援、セミナー開催、日本貿易保険(NEXI)による貿易・投資保険引受の拡充、JBICの投資金融制度による日本企業支援など、日本企業の対アフリカ貿易・投資促進
- 平成18年度にはより大規模な形で第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF)を開催予定。
- TICADエクスチェンジ・ネットワーク(アジア・アフリカのビジネス関連情報をインターネットで提供)の立ち上げ
(b)産業振興のための適切な政策の策定・産業育成支援
- 政策策定支援:JBICによる投資環境整備・改善のための政策提言(ブルー・ブック)策定、投資促進のセミナー開催、OECDでの「アフリカ投資イニシアティブ」強化
- 民間セクター支援及びインフラ整備:TICAD I(1993年)以降、アフリカで約50億ドルのインフラ支援を実施。アフリカ民間セクター開発のための共同イニシアティブ「EPSA」(5年間で最大12億ドル)、NEPAD短期行動計画(STAP)に基づくインフラ整備支援
- 人材育成支援:アジア青年海外協力隊の創設、アジア生産性運動のアフリカへの伝播
(c)比較優位に基づく商品開発の推進
- JETRO・JICA連携による輸出可能性のある産品の特定と産業育成支援(ガーナの「シア・バター」)、第一次産業のインフラ整備支援(ベナンの綿花産出地帯の農道整備等、水資源開発、灌漑等)
(d)地場中小企業の振興・人材育成
- AOTSの民間企業の人材育成協力
- 「アフリカ版一村一品運動」の伝播
(e)民間企業の社会貢献の促進
- 日系企業の社会貢献事業の支援、多国間投資保証機関(MIGA)を通じた民間企業の能力強化支援(我が国は100万ドルを拠出)
(f)開発イニシアティブ(2005年12月)
途上国(特にLDC)の開発を進めるとの観点から、3年間で約100億ドルの資金協力、1万人の人的支援、LDC特恵制度の見直し等を含む包括的な途上国支援策を発表。
(ロ)農業・農村開発支援
(a)農業は、アフリカの経済の成長の鍵(人口の約7割が農村で生活)であり、農民の生計向上、食糧安全保障の観点から、農村の基盤整備、農業開発戦略の策定への支援、農業技術普及体制強化、農業生産性向上のための農業試験研究、小規模灌漑等の支援を推進。
(b)「緑の革命」実現のためのネリカ稲の品種開発・普及促進
- ネリカ稲基礎調査団の派遣(第1次:マリ、セネガル、ガーナ、エチオピア、ウガンダ、タンザニア、ケニア、第2次:ナイジェリア、マダガスカル、モザンビーク)
- 西アフリカ稲開発協会(WARDA)、ウガンダへ専門家を派遣
(c)アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI)
地方農村の自立のための基盤整備や能力強化等を組み合わせ、地域社会の開発を支援する取組。セネガル、ケニア、エチオピア等の各国において実施。
(d)飢餓撲滅のため、二国間支援及びWFP経由にて食糧援助を実施。アフリカにおいて、平成17年度はこれまでに約80億円の食糧支援を実施。
(3)人間中心の開発
(イ)TICAD IIIの際に、今後5年間で10億ドルの無償資金協力(保健医療、水、教育、食糧等の分野)を実施する旨発表。
(ロ)保健・医療分野
(a)2005年6月、「保健と開発」に関するイニシアティブを発表。同イニシアティブに基づき、5年間で総額50億ドルを目処とする協力を実施。アフリカはその主要な裨益者。
(b)深刻なマラリアの脅威を軽減するため、当面の目標として2007年までに1,000万帳の長期残効型蚊帳を供与。
(c)世界エイズ・結核・マラリア対策基金へ約4億7619万ドルを拠出。また、2005年6月に当面5億ドルの拠出誓約を表明。
(d)ポリオ撲滅のため平成15年度~平成17年度の3年間に8000万ドルの支援を誓約し、この誓約額を達成できる見込み。
(ハ)水の供給:2005年は、70億円(閣議決定ベース)の水に関する無償資金協力を行った。
(ニ)人材育成:2005年より、4年間で1万人を目標とするアフリカの人々の人材育成を実施。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
我が国のアフリカ支援における各々の事業は概ね所期の成果を上げている。アフリカ地域のMDGsの達成状況はいまだ非常に厳しく、国際社会による支援強化の必要性が高まっていることから、引き続き、平和の定着、経済成長を通じた貧困削減、人間中心の開発の3分野を中心に、対アフリカODAの質量の向上を図る。
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事務事業名:パートナーシップの拡大(南南協力、特にアジア・アフリカ協力の推進)
事務事業の概要
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我が国は、アフリカ開発のパートナーとしてアジア諸国を重視しており、アジアの経験のアフリカへの伝播を目的として、TICADプロセスを通じた各種事業の開催や、技術支援などを行っている。
平成17年度は、4月にインドネシアで開催された「アジア・アフリカ・ビジネス・サミット」にて小泉総理がスピーチを行ったほか、TICAD-AATICの具体的フォローアップの中でアジア・アフリカ間の貿易投資拡大のための官民パートナーシップの強化が図られた。
2006年2月の「TICAD平和の定着会議」でも、平和の定着における南南協力の可能性が示された。
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有効性
(具体的成果)
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(1)「アジア・アフリカ・ビジネス・サミット」(2005年4月)
小泉総理から2006年に「より大規模な」第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムを開催する旨発表したほか、ITを活用したビジネス情報の発信を目的とした「TICADエクスチェンジ・ネットワーク」の立ち上げを表明した。
(2)TICAD-AATIC(2004年11月)のフォローアップ
JETROによるアフリカ産品の対日輸出支援やビジネスセミナー開催、TICADエクスチェンジ・ネットワークの設立、「アジア青年海外協力隊」(アジアの若者をアフリカに派遣し、青年交流と人造りを推進)の創設など、アジア・アフリカ間の貿易投資拡大のための官民パートナーシップの強化が図られた。
(3)「TICAD平和の定着会議」(2006年2月)
明石元国連事務次長のカンボジア及びスリランカの経験を踏まえたプレゼンテーション、駒野前駐アフガニスタン大使によるアフガニスタンのDDRに係るプレゼンテーション等はアフリカ側参加者の関心を集め、平和の定着分野における今後のアジア・アフリカ協力の発展可能性の高さが示された。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(今後の具体的方針)
深刻な貧困等の問題を抱えるアフリカの開発に対し、南南協力、アジア・アフリカ協力の拡大により、貧困から経済発展を遂げた東アジア諸国の経験を活用することは、我が国の対アジア支援の経験も踏まえた効率的な支援の推進に資するものである。2008年のTICADに向けて、2007年にアジア・アフリカ閣僚会議が開催予定であるほか、我が国の様々な取組により、南南協力の下地が出来つつあり、今後も、平和の定着や農業、中小企業育成等を通じた経済成長分野でのアジア・アフリカ協力の拡大を行う。
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【評価をするにあたり使用した資料】
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。