I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
5-3 アフガニスタンの平和と安定の実現のための支援
中東第二課長 岩井文男
平成18年5月
施策の目標
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アフガニスタンの安定への貢献 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回/第162回施政方針演説に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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アフガニスタンの安定は、国際社会の安定と繁栄に資するとの観点から、我が国は、2001年のタリバン政権崩壊以降、2002(平成14)年1月の東京でのアフガニスタン復興支援国際会議の開催、2003(平成15)年のDDR東京会議の開催等で、国際社会全体としてのアフガニスタンへの復興支援をとりまとめたほか、2004年3月のベルリンのアフガニスタンに関する国際会議でドイツとともに共同議長を務めるなど、アフガニスタンの和平と復興に向けて積極的に貢献してきている。2001(平成13)年から2006(平成18)年4月までの支援額は約10.3億ドルに上る。2006(平成18)年1月にはアフガニスタンに関するロンドン会議が開催され、我が国は4.5億ドルの追加支援を表明した。
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【施策の必要性】
アフガニスタンを安定させ、テロの脅威を排除し、再び破綻国家となることを防ぐことは、世界の平和と安定に寄与し、ひいては日本の安全保障上の利益につながる重要な課題である。また歴史的にアフガニスタンの戦乱には関わりが薄い日本が積極的に役割を果たすことについて、アフガニスタン国内や関係各国からも強い期待が寄せられている。国際社会がアフガニスタンを再び破綻国家にしないとの決意から、協力して同国の和平・復興に取り組んでいる中、我が国としても国益を確保し、また、国際社会における責任ある一員としての役割を果たすことが必要である。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
アフガニスタンはこれまで着実に復興・再建を進めてきており、高い経済成長率を達成する(2003年15.7%、2004年8.0%(世銀))など2001年の状況に比べれば大きな前進が見られるが、復興はいまだ道半ばであり、平和と安定を実現するためには、アフガニスタン国民の生活が改善され、希望を持って復興への努力を継続することができる環境を作ることが第一に重要である。また、そのためには中央政府の統治が全土に行き渡り、治安情勢が安定することも必要である。したがって、日本がアフガニスタンの安定に貢献するためには、第二次世界大戦後復興を成し遂げた経験も生かしつつ、人道支援を含め、治安や和平プロセスの進展に対する支援を実施することが最も有効な手段である。また、支援のニーズを的確に判断するための緊密な対話や、支援に対する理解を深めてもらい、日本に対する良好な感情を醸成するための広報活動等、二国間関係の強化が重要である。
【施策の効率性】(3行以内)
復興支援については、和平プロセス(選挙支援等)、治安維持(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰(DDR)や地雷対策等)及び復興(幹線道路整備等)の3つの柱に対する支援を行い、目標達成の点から効率的であった。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
21,789 |
13,591 |
単位:千円
(注)本省分予算
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
3.5 |
3.5 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
(1)アフガニスタンの平和と安定に対しては、アフガニスタンの政権の動き、軍閥やテログループなど不安定要因をもたらすグループの動向、米国をはじめとする国際社会の動向等が大きな影響を与える。
(2)アフガニスタンへの復興支援は、主要ドナー国及び国連諸機関をはじめとする関係国・国際機関と協力して実施している。
(3)人道支援などアフガニスタン国民の生活環境向上に直接つながることが期待されるものがあるものの、復興支援全体の効果は、治安情勢や政治プロセスの進展状況など、アフガニスタンの国内事情に影響を受ける。
(4)アフガニスタン支援の成果が発現しているかどうかについては、中長期的な視点が必要であり、必ずしも短期的に目に見える形で確認できる性質のものではないことに留意する必要がある。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
平成17年度は、12月の国会開会により、統治機構整備プロセスが完了したため、政治分野の評価としては区切りのよい年である。治安、復興支援については、中、長期的なタームで評価する必要があり、暫定的な性格なものである。
【評価の切り口】
(1)アフガニスタンの安定への我が国の貢献
(2)二国間関係の強化の状況
【目標の達成状況(評価)】
(1)アフガニスタンの安定への我が国の貢献
アフガニスタンの安定への我が国の貢献は以下のとおりである。
(イ)2002(平成14)年1月に東京において、アフガニスタン復興支援会議を開催し、国際社会全体としてアフガニスタンへの復興支援をとりまとめたほか、2004年3月末のベルリンにおけるアフガニスタンに関する国際会議でドイツと共に共同議長を務めるなど、アフガニスタンの和平と復興に向けて積極的に貢献してきており、2001(平成13)年から2006(平成18)年4月までの支援額は約10.3億ドルに上る。2006(平成18)年1月にはアフガニスタンに関するロンドン会議が開催され、我が国は4.5億ドルの追加支援を表明した。日本の支援は、「平和の定着構想」に基づいており、この構想の3本柱である和平プロセス(選挙支援等)、治安改善(元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰〔DDR〕や地雷対策等)及び復興(幹線道路整備等)のすべてにわたる。我が国のこのような支援を含む国際社会の協力の結果として、アフガニスタンの状況は、2005年12月の国会開会による統治機構整備プロセスの完了等に見られるように、大きな前進があり、改善されてきている。
(ロ)2004(平成16)年度のアフガニスタンに対する無償資金協力は85.76億円、技術協力は約20.66億円であった。これまでの人道支援を含めた支援総額は、10.3億ドルを上回る。こうした支援の結果、これまでにカブール・カンダハール道路日本工区50キロメートルの完全舗装の完了(2004年9月)。DDR分野において旧兵士約6万3000人の武装解除が完了し、その内約6万2000人が動員解除され、約6万人が社会復帰途上にある。また、保健分野において100以上の診療所の支援等の具体的な成果があがっている。教育分野において、500校以上の学校を復興・整備した。
(ハ)2005年9月の国会下院・県議会選挙に当たっては、日本よりも選挙監視団を派遣し、成功裡の実施に貢献した。
(2)二国間関係の強化の状況
平成17年度においては、以下のような取組を行った。
(イ)4月に町村外務大臣(当時)がアフガニスタンを訪問し、5月にはアブドラ前外務大臣が来日した。また、4月にはジャカルタにおいて小泉総理とカルザイ大統領の間で、日アフガニスタン首脳会談を実施した。11月には、ラヒーン情報文化大臣が、1月にはアハディ財務大臣が来日した。1月のロンドン国際会議の機会に金田副大臣がカルザイ大統領と会談した。
(ロ)9月に行われた国会下院・県議会選挙には日本から選挙監視団を派遣した。
(ハ)我が国の支援を効果的なものとするため、両国で経済協力政策協議を実施していくことに合意し、平成18年5月、第一回経済協力政策協議が実施された(於:カブール 先方:サイカル外務副大臣他 当方:杉田経協局審議官他)。
【評価の結果(目標の達成状況)】
「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)アフガニスタンは未だ治安情勢については不安定なものの、国会の開会による統治機構整備プロセスの完了など、国際社会の協力を得つつ、着実に復興の道を歩んでいることから、我が国の人道支援及び和平の定着を念頭に置いた各種支援がこれに貢献しているものと評価できる。アフガン政府要人よりの我が国支援に対する評価は高い。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
復興には進展が見られるものの依然道半ば。非合法武装集団の解体、法の支配の強化、治安の回復、麻薬依存体質経済からの脱却、地方開発の促進等の課題が山積している。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
アフガニスタンの復興には進展が見られるものの依然道半ばであり課題も山積している。アフガニスタンの安定のためにも、引き続き支援が必要である。
【事務事業の扱い】
- アフガニスタンの安定への我が国の貢献→今のまま継続
- 二国間関係の強化の状況→今のまま継続
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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―
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
福田幸正 国際協力銀行(JBIC)開発金融研究所主任研究員
わが国のアフガニスタン支援は、当初より、平和構築の3要素、即ち、「政治プロセス」、「治安」、「復興」の相関関係を認識した上でバランスよくこれらを組み合わせて効果的な支援を追求してきたものであり、今後他の国・地域における平和構築支援に取り組むに際して一つの模範として有益な教訓を提示するもの。また、金額的には米国が突出したプレッジ額を示しているが、主要ドナーの中でもわが国の支援は金額面もさることながら、執行率が最も高く、これはわが国のアフガニスタン復興への真剣な取り組みの具体的な表れとして高い評価に値する。この点はまた、政策と実施の一貫性が保たれていることを示すものであり、わが国の援助の優位性でもある(政策が良くとも実施されなければ意味がない)。
当初よりわが国を含めた国際社会は一丸となってアフガニスタンの国づくりを支援してきた。それらが奏功してボン・プロセスはほぼ所期の日程をこなし、援助も緊急人道支援段階を脱しつつあるものと考えられるが、これからが正念場。アフガニスタンが安定軌道に乗るまで、国際社会とともにわが国が当初掲げた「継ぎ目のない支援」を名実共に持続することが課題。今後「継ぎ目のない支援」を効果的に実現するための一方途として、次のような取り組みが期待される。
ロンドン会議(2006年1月)においてアフガニスタン側から提示のあった暫定版ANDS(国家開発戦略=PRSP)は今後2007年末までに本格ANDSに収斂されていくことになった。現在アフガニスタンはANDS策定作業を通して本格的な国づくりのビジョンを描き出そうという極めて重要な局面にある。この作業を支援するためにわが国は専門家の派遣を検討中と承知するが、専門家の派遣もさることながら、当該専門家や在カブール日本大使館を政策面で支えるための国内支援体制の早期組成が望まれる(期間は2007年末までの時限付き)。即ち、しかるべき専門家からなる国内支援母体において質の高い分析とそれらに基づく各種政策提言のための材料を整理し、また、中長期的視野で無償、技協のみならず円借款も射程に入れた今後のアフガニスタン支援の道筋なども検討し、これらをANDSに組み入れていくことが得策。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
統治機構整備プロセスの完了を踏まえ、その観点からの評価が適切に記述されているとともに、今後の中・長期にわたる課題も提示されている。
【事務事業の評価】
事務事業名:アフガニスタンの安定への我が国の貢献
事務事業の概要
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(内容と必要性)
アフガニスタンは、我が国をはじめとする国際社会の協力・支援を受け、着実に国家再建プロセスを進めているが、中央政府の統治が行き届いていない地域を中心に、未だ治安情勢は不安定であり、復興は道半ばである。今後、新政権の下で国家統一が促進され、アフガニスタンに真の平和が定着し、再びテロの温床となることがないよう、我が国として引き続き和平プロセス、治安、人道・復興分野を中心に支援を実施していくことが必要である。支援の決定・実施に当たっては、アフガニスタンという紛争後の国家を効果的に支援するため、従来型の復旧・復興支援だけでなく、その前提となる治安や和平プロセスに対する支援も念頭に置いている。
(平成17年度の実績)
平成17年度においては、具体的には以下のような支援を実施した(ODAによる支援のみ。)。
- DDR支援
- 地方総合開発
- 国家開発戦略作成支援
- 学校建設計画、空港ターミナル建設計画
- 下院・県議会選挙実施のための支援
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有効性
(具体的成果)
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(1)これまでの支援の結果、以下のような成果が得られている。
(イ)教育分野(学校の修復や教師の育成など):500校以上の学校を復興・整備
(ロ)インフラの復旧(道路の修復など):カブール・カンダハール間幹線道路の内50キロを整備済み。カンダハール・ヘラート間幹線道路の内114キロの整備を実施中。
(ハ)難民・避難民への支援:UNHCRが2002年3月からアフガン難民帰還事業を開始して以来、2005年9月時点で約420万人がUNHCRの支援により帰還している。我が国は最近5年間でUNHCRを通じ総額約1億1500万ドルの拠出を実施しており、難民及び国内避難民の大規模な帰還に大いに貢献している。
(ニ)保健・医療分野(ワクチン供与や医療器材、医薬品の供与など):小児感染症予防医療器材、医薬品等に対し47.6億円の支援を実施(その他、草の根・人間の安全保障無償資金協力で8件を実施)。
(ホ)DDRプログラム:旧兵士約6万3000人の武装解除が完了し、その内約6万2000人が動員解除され、約6万人が社会復帰途上にある。
(2)平成17年9月の下院議会選挙や同12月の国会開会は、アフガニスタンの和平プロセスの総仕上げと言えるものであり、我が国をはじめとする国際社会の支援の結果、治安上の大きな混乱もなく、成功裡に実施された。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(具体的対応方針)
アフガニスタンにおいて本格的な国造りが進むよう、引き続き「平和の定着」のための支援を継続していく。
(理由)
アフガニスタンの平和と安定は国際社会の平和と安定に資するものであり、我が国の繁栄に影響を及ぼす重要な問題である。同国をテロと麻薬の温床としないためにも、和平・復興のこれまでの成果を確実なものとしつつ、我が国は引き続き国際社会と協力し道半ばである同国の復興を支援していく。
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事務事業名:二国間関係の強化の状況
事務事業の概要
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(内容と必要性)
アフガニスタンとの二国間関係の強化、相互理解増進の観点から、アフガニスタン問題に関するセミナーの開催、人物交流(要人間の会談等を含む)等を行っている。
アフガニスタンの平和と安定の実現は、中東や中央アジア地域だけでなく、世界全体の平和と安定、さらにはテロの根絶・防止にもつながり得る重要な課題である。我が国の支援が最大限の効果を発揮するような環境を整備するという観点から、アフガニスタンとの対話を密にし、二国間関係を強化し、交流を深めることは、我が国と中東・中央アジア・イスラム地域との相互理解の促進に資するものであり、将来的に良好な対日感情を醸成する上でも有効である。
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有効性
(具体的成果)
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平成17年度においては、以下のような取組を行った。
(1)4月に町村外務大臣(当時)がアフガニスタンを訪問し、5月にはアブドラ外務大臣(当時)が来日した。また、4月にはジャカルタにおいて小泉総理とカルザイ大統領の間で、日アフガニスタン首脳会談を実施した。
(2)9月に行われた国会下院・県議会選挙には日本から選挙監視団を派遣した。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(具体的対応方針)
アフガニスタンとの対話を密にし、二国間関係を強化するため、特に首脳・閣僚レベルの往来・意見交換を活発化させていく。
(理由)
二国間関係の強化・相互理解の増進のためには、中・長期的に取組を実施していく必要があり、特に、両国のハイレベル同士の緊密な意見交換が重要である。中東・中央アジア・イスラム地域に属すアフガニスタンをテロと麻薬の温床としないためにも、相互理解を深めつつ同国の復興を促進することに資する日本としての努力が必要である。
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【評価をするにあたり使用した資料】
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