I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
3-2 南米諸国及びカリブ共同体諸国との協力・交流の強化
南米カリブ課長 平田健治
平成18年4月
施策の目標
|
(1)経済関係の再活性化
(2)国際場裡における協力関係強化
(3)相互理解の促進
|
施策の位置付け
|
特になし
|
施策の概要
(10行以内)
|
(1)ブラジル・チリ等の主要国をはじめとする南米諸国との経済関係再活性化のため、制度面を含むビジネス環境整備に向けた取組を強化する。
(2)国連、WTO等の国際場裡における南米・カリブ諸国との協力関係を強化するため、ブラジル等の域内主要国及び、メルコスール、カリコム等の地域国際機関の枠組みを活用した南米・カリブ諸国との対話及び連携を強化する。
(3)日・中南米関係にとっての貴重なアセットである日系人の存在及び移住周年事業等を活用し、更なる対日理解の促進を図る。また、在日ブラジル人を巡る諸問題の解決に取り組み、彼らとの共生のための環境を整備する。
|
【施策の必要性】
(1)近年は世界的な資源需要の高まりや経済統合の効果もあり、中南米地域は地域全体として3年連続でプラス成長、2005年には4%を超える経済成長率を達成している。かかる中南米地域のうち、豊富な天然資源・食糧資源を有し、活力ある日系人社会を内包する南米地域との経済関係強化は、我が国の安定的な繁栄にとって重要。
(2)ブラジル等の南米主要国は、国連等の国際場裡において益々発言力を高めており、我が国にとって重要なパートナーである。また、南米・カリブ地域においては、メルコスール、カリコム等の地域共同体の統合が進んでおり、地域ブロック単位での発言力を増している。そのため、南米・カリブ地域の主要国との連携強化及び、地域国際機関の枠組みを活用した南米・カリブ諸国との協力関係強化に取り組むことは、我が国の国際場裡における影響力の増大を図る上で戦略的重要性を有する。
(3)地理的に遠距離である南米・カリブ地域との関係強化においては、人物・文化交流事業を通じた相互理解の促進が重要。同地域には、約150万人の日系人が対日理解の土壌として存在していることから、相互理解の促進に向けて、これら日系人及び移住周年事業等の活用は肝要。また、在日ブラジル人の急増に伴い、ブラジル犯罪人の国外逃亡、社会保障、教育等の分野で様々な問題が表明化しており、これらの諸問題に取り組むことは、良好な日伯関係の維持・発展の観点からも急務である。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)2004年9月の小泉総理の中南米訪問以降、それまで低調であった日・中南米経済関係の再活性化に向けた機運が高まっている。政府として、右を側面支援するため、制度面を含めたビジネス環境整備に向けた取組を強化することは、経済関係の再活性化に有効である。
(2)24か国もの独立国が存在し、国際場裡で益々活躍する南米・カリブ諸国との協力関係を緊密化することは、国連、WTO等の場において我が国が外交目標を実現する上でも極めて有効な方策である。
(3)中南米地域との架け橋としての日系人の役割の重要性については、2004年9月の小泉総理のブラジル訪問の際にも改めて確認されている。今後、2006年9月にはパラグアイへの日本人移住70周年、2007年には日チリ修好110周年、2008年には日伯交流年、日コロンビア外交関係樹立100周年、日亜修好110周年、日エクアドル外交関係樹立90周年等、多数の周年事業が予定されており、これらの佳節を活用し、更なる相互理解の促進を図ることは、同地域との友好・協力関係増進に大いに資する。また、在日ブラジル人を巡る諸課題は、放置すれば在日ブラジル人の排斥の動きにも繋がりかねず、日・ブラジル間の友好関係や日本の経済・社会の安定的な発展にも悪影響を及ぼす恐れがあるため、彼らとの共生のための環境を整備することは、日・ブラジル間で取り組むべき最重要課題の一つである。
【施策の効率性】(3行以内)
2005年度を通じ、「協力」と「交流」を柱とする「日・中南米 新パートナーシップ構想」の具体化に向け、後述の通り相当の進展が見られたことから、施策は適切かつ効率的であったと判断できる。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
61,309 |
43,992 |
単位:千円
(注)本省分予算
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
20 |
20 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
近年の世界的な資源需要の増加の影響もあり、南米の経済成長率は順調に伸長しており、同地域との更なる経済関係強化に向けた基盤が整いつつあると考えられる。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
本年度は、2004年9月に発表された「日・中南米 新パートナーシップ構想」のフォローアップ状況を評価する年として適当である。
【評価の切り口】
南米諸国及びカリブ共同体諸国(以下、南米・カリブ諸国)との協力・交流の強化、進展状況
【目標の達成状況(評価)】
南米諸国及びカリブ共同体諸国(以下、南米・カリブ諸国)との協力・交流の強化、進展状況
以下のとおり、両地域間の協力・交流は格段に進展した。
(1)南米・カリブ諸国との経済関係拡大を視野に、2005年5月、ルーラ伯大統領の訪日に合わせ、日伯経済合同委員会が東京で開催され、それに先立ち、4月にはメルコスール駐日観光事務所が開設された。また、11月に行われた日チリ首脳会談において、EPA締結交渉の開始が合意され、2006年2月末に第1回交渉が開催された。
(2)南米・カリブ諸国との交流強化に向け、2005年度は上述のルーラ伯大統領(5月)のほか、ウリベ・コロンビア大統領(4月)、ダグラス・セントクリストファー・ネーヴィス首相(10月)、ドゥアルテ・パラグアイ大統領(10月末)がそれぞれ訪日したのに加え、4月の米州開発銀行(IDB)沖縄年次総会や愛・地球博の各国ナショナルデーに際しても各国首脳をはじめ多くの要人が訪日した。
(3)国際場裡においては、安保理改革の実現に向けG4を形成するブラジルとの間で協力関係を緊密化するとともに、旧G4共同決議案支持に対する日本の働き掛けに対し、南米・カリブ地域の多くの国々が支持を表明した。
(4)2005年10月に行われた内閣府世論調査において、中南米への親近感に関する質問に対し「親しみを感じる」と答えた人が2年前の前回調査より5ポイント増加し(37%)、また中南米と良好な関係を構築しているかとの質問に対し「良好である」と答えた人が10ポイント増加(48%)したなど、相互理解の促進の観点から前回調査より明らかな向上が見られた。
(5)在日ブラジル人を巡る諸課題(犯罪、社会保障、教育等)は、2004年9月及び2005年5月の日伯首脳会談でも最重要課題の一つとして取り上げられ、両国首脳間の合意により、教育問題に関する政府間協議、社会保障に関する作業部会を含む様々な協議の枠組みが新たに立ち上げられ、日伯間の協力が進展した。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)「協力」強化の一環として、伯とG4の枠組みで国連・安保理改革に向け協力して対処したこと、及び日・チリEPA締結交渉開始に合意したことは成果であった。また、「交流」の強化に向け、2005年度を通じ5人の元首をはじめとする多数の要人の訪日が実現し、これらの国々と二国間関係強化や国際場裡における協力等に関する数多くの合意がなされたことは、当初の想定を超えて大きな成果であった。また、在日ブラジル人を巡る諸課題について具体的な取組が進められた。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
2006年度は南米の多くの国において政権交代が行われる予定であるため、これまでの友好協力関係を新政権との間でも円滑に維持・強化できるよう努める必要がある。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
南米・カリブ諸国の好調な経済状況等を背景に、我が国を含むアジア地域に対する南米・カリブ諸国の関心が高まっているところ、更なる協力と交流強化に向けた基盤を整備する。
【事務事業の扱い】
- ブラジル、チリ等の主要国をはじめとする南米諸国との経済関係再活性化のための取組の強化→拡充強化
- ブラジル等の主要国との連携強化、地域国際機関の枠組みの活用を始めとする南米諸国との国際場裡における協力関係強化→今のまま継続
- 日系人及び周年事業の活用を含む人物・文化交流事業への取組を通じた相互理解促進の強化、在日ブラジル人を巡る諸課題への取組強化→拡充強化
- カリブ共同体諸国との対話の促進と対日協力姿勢の確保→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
|
予算要求
|
機構要求
|
定員要求
|
反映方針
|
○
|
―
|
○
|
【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
遅野井茂雄 筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
協力と交流を柱とする中南米との「日・中南米 新パートナーシップ構想」は、日本の対中南米政策において画期的な意義を有する外交指針であるが、そのフォローアップ作業は平成17年度事業を通じ着実に成果を上げており、大いに評価できる。ただし、平成17年度の要人訪問はIDB沖縄総会や愛知万博などとの関連で行われたものがあり、今後は二国間・多国間協議などの場を通じていかに恒常的に首脳レベルの会談を重ねることができるか課題である。経済関係再活性化の手段として重視されているビジネス環境整備の強化は、実施された国際協力と一体で評価されるべきであるが、それが出されておらず、まして中長期的な評価とならざるを得ないだけに、年次ごとの具体的な到達点等を示した戦略的な展開が望まれる。成果を踏まえて今後の取組として指針が示された、見直し、強化、継続等の判断基準は曖昧である。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
国際場裡における協力関係強化、特に国連安保理改革、二国間関係の両面において協力・交流が強化された点が具体的に提示され、また、達成状況の目安として2005年の内閣府世論調査の結果も援用する等、広い視野から記述されている。
【事務事業の評価】
事務事業名:ブラジル、チリ等の主要国をはじめとする南米諸国との経済関係再活性化のための取組の強化
事務事業の概要
|
ブラジル・チリ等の主要国をはじめとする南米諸国との経済関係再活性化のため、制度面を含むビジネス環境整備に向けた取組を強化する。
|
有効性
(具体的成果)
|
豊富な天然資源・食糧を有する中南米との経済関係強化は、我が国の安定的な繁栄にとって重要。2004年9月の小泉総理の中南米訪問以降、それまで低調であった日・中南米経済関係の再活性化に向けた機運が高まり、2005年5月にはルーラ伯大統領が訪日し、日・ブラジル経済合同委員会が開催されたほか、11月にはチリとの間で経済連携協定(EPA)締結交渉を開始することが合意された。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
3年連続で4%台の経済成長を続ける中南米との間では、更なる経済関係再活性化に向けた基盤が整っているが、政府としても右を側面支援するためには、制度面を含めたビジネス環境整備に向けた取組が必要。
かかる観点から、2006年2月に開始された日・チリEPA締結交渉の早期妥結に向けて一層努力するとともに、域内主要国・地域とのハイレベルでの経済協議を継続・拡大する。
|
事務事業名:ブラジル等の主要国との連携強化、地域国際機関の枠組みの活用をはじめとする南米諸国との国際場裡における協力関係強化
事務事業の概要
|
国連、WTO等の国際場裡における南米・カリブ諸国との協力関係を強化するため、ブラジル等の域内主要国及び、メルコスール、カリコム等の地域国際機関の枠組みを活用した南米・カリブ諸国との対話及び連携を強化する。
|
有効性
(具体的成果)
|
ブラジル等の南米主要国は、国連、貿易、環境、軍縮・不拡散などの分野において、国際場裡での発言力をますます高めており、我が国にとって重要なパートナーである。また、南米・カリブ地域においては、メルコスール、カリコム等の地域共同体の統合が進んでおり、地域ブロック単位での発言力を増している。そのため、南米・カリブ地域の主要国との連携強化及び、地域国際機関の枠組みを活用した南米・カリブ諸国との協力関係強化に取り組むことは、我が国の国際場裡における影響力の増大を図る上で大きな戦略的重要性を有する。
2005年度は国連安保理改革に向け、ブラジルとG4の枠組みで協力して対処した結果、中南米の多くの国から我が国の立場への支持を得られた。2006年2月には、第11回日・カリコム事務レベル協議が開催され、安保理、WTO、IWC他様々な分野での協力関係につき協議がなされた。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
ブラジル等の主要国及び地域ブロックが国際社会においてますます重要な地位を占める中、国連安保理改革等、我が国にとっての外交目標の実現に向け、これら諸国との協力関係を一層緊密化することが重要である。
|
事務事業名:日系人及び周年事業の活用を含む人物・文化交流事業への取組を通じた相互理解促進の強化、在日ブラジル人を巡る諸課題への取組強化
事務事業の概要
|
日・中南米関係にとっての貴重なアセットである日系人の存在及び移住周年事業等を活用しつつ、人物交流及び文化交流の更なる促進に取り組むことにより、良好な相互理解の促進を図る。また、在日ブラジル人を巡る諸問題の解決に取り組み、彼らとの共生のための環境を整備する。
|
有効性
(具体的成果)
|
地理的に遠距離にある中南米との関係強化においては、人物・文化交流事業を通じた相互理解の促進が効果的である。特に、右のためには、約150万人の日系人及び移住周年事業等の活用は有効である。
なお、中南米地域との架け橋としての日系人の役割の重要性については、2004年9月の小泉総理のブラジル訪問の際にも改めて確認されたところである。
2005年5月のルーラ大統領の訪日の際には、2008年の日伯交流年(日本人のブラジル移住100周年)及びそれ以降の日伯交流のあり方につき提言を行う「日伯21世紀協議会」が正式に立ち上げられた。また、2005年8月には、ボリビア最大の移住地の1つであるサンファン移住地移住50周年記念式典が開催され、日本より長崎県議会議長他来賓及び文化使節が訪問し、日・ボリビア交流促進の一助となった。
在日ブラジル人を巡る諸課題(犯罪、社会保障、教育等)は、2004年9月及び2005年5月の日伯首脳会議でも最重要課題の一つとして取り上げられ、両国首脳間の合意により、教育問題に関する政府間協議、社会保障に関する作業部会を含む様々な協議の枠組みが新たに立ち上げられ、日伯間の協力が進展した。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
今後、2006年9月にはパラグアイへの日本人移住70周年、2007年には日チリ修好110周年、2008年には日伯交流年・日コロンビア外交関係樹立100周年・日亜修好110周年・日エクアドル外交関係樹立90周年等、多数の周年事業が予定されており、これらの佳節を活用した更なる相互理解の促進を図ることは、南米との友好関係増進にとり重要。また、在日ブラジル人を巡る諸問題は、放置すれば在日ブラジル人の排斥の動きにも繋がりかねず、日・ブラジル間の友好関係や日本の経済・社会の安定的な発展にも悪影響を及ぼす恐れがあるため、ブラジルとの犯罪人引渡条約の締結を含め、早急に具体的取組を進めていくことが重要である。
|
事務事業名:カリブ共同体諸国との対話の促進と対日協力姿勢の確保
事務事業の概要
|
対外政策において共通の立場を取ることの多いカリコム諸国とのバイ・マルチでの対話を促進することにより、我が国との友好協力関係を強化し、国際社会における我が国の政策及び立場に対するカリコム14か国の理解・支持の確保に努める。
|
有効性
(具体的成果)
|
カリコム諸国との関係強化には、定例化している日・カリコム協議の枠組みや様々な国際会議でのマルチの場や、個別の二国間協議の場、要人往来の機会を活用し、多角的にアプローチする必要があることから、対話の促進は、目的達成のための有効なアプローチと判断される。こうした取組により、率直な意見交換が行われ、 放射性物質輸送に対する厳しい反応が鎮静化している。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
カリコム諸国は、対外政策において共通の立場を取ることが多い。カリコム諸国とのバイ・マルチでの対話を通じて我が国との友好協力関係を強化し、国際社会における我が国の政策及び立場に対するカリコム14か国の理解・支持を得ていくことは、我が国の外交政策を効果的に実施し、もって国民の利益を確保する上で大きな意味がある。
海洋生物資源の持続的利用については、現在、国際捕鯨委員会(IWC)において、これを支持する勢力と反対する勢力が拮抗している状況にあるが、捕鯨国を含むカリコム関係国との友好協力関係の維持・強化により、引き続き本問題につき我が国立場への支持を得、資源の持続的利用につき協力していくことは、我が国の国益上必要かつ重要である。
さらに、我が国の重要なエネルギー政策の一環である核燃料リサイクルに必要な放射性物質の円滑な輸送を確保するため、カリブ諸国に対し、我が国のエネルギー政策と本輸送の必要性についての理解を得るための努力を引き続き粘り強く行っていく必要がある。
|
【評価をするにあたり使用した資料】
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。