省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

3-1 中米諸国等との協力及び交流の強化

中米課長 大森摂生
平成18年5月
施策の目標
(1)経済関係の再活性化
(2)国際場裡における協力関係強化
(3)相互理解の促進
施策の位置付け
特になし
施策の概要
(10行以内)
(1)日・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)の発効とその効果的な実施を通じて、メキシコとの経済関係を発展させる。
(2)中南米の主要国たるメキシコとの戦略的な協力を構築する(ハイレベルの対話等を通じた二国間関係の強化及び国際場裡における協力の推進、有識者等の民間レベルの対話の推進等)。
(3)中米諸国(2005年日・中米交流年(中米諸国との外交関係樹立70周年))との協力関係の促進、経済協力を通じた支援。

【施策の必要性】

(1)近年中南米地域は地域全体として3年連続でプラス成長、平成17年には4%を超える経済成長率を達成している。その中でもメキシコは、中南米における日本の最大の貿易パートナーであるとともに、欧米及び中南米に広汎なFTAのネットワークを有することにより日本企業にとって米州市場へのゲートウェーとなる戦略的重要性を有する。メキシコとの経済関係強化は、我が国の安定的な繁栄にとって重要。
(2)また、メキシコは、中南米地域の大国として、近年国際社会の諸課題に対する関与を拡大してきており、国際場裡における発言力を高めている。国連改革、環境等の問題について、メキシコと協力を深めて共同で対処することは、我が国の国際場裡における影響力の増大を図る上で戦略的重要性を有する。
(3)中米地域は、共同市場として米国とのFTA交渉を一体となって行うなど経済面での統合を進める(中南米第3の市場)とともに、政治面でもブロックとしてまとまり発言力を増している。また、南・北米大陸をつなぐ位置にあり、パナマ運河を擁するなど地理上・交通上の戦略的重要性を有する。このような中米地域との協力関係強化に取り組むことは、地域の安定に資するとともに、我が国への物資の安定的供給の確保、国際場裡における我が国への支持の確保等の面で極めて重要。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)日墨EPAが発効(平成17年4月1日)することにより、日墨間の貿易・投資は大幅に拡大するので、経済関係の活性化に有効である。
(2)平成17年9月の日メキシコ外相会談により、日墨EPAの効果的な実施、日墨文化サミットの開催、日本のセルバンティーノ国際芸術祭への参加等について意見交換が行われ、その後これら案件の成功裏の実施およびフォローアップにつながる。
(3)平成17年8月、中米諸国との初めての本格的な首脳会談を東京で実施し、日・中米関係の中・長期的指針である「東京宣言」及び「行動計画」を採択した他、「日・中米交流年2005」として種々交流事業が実施され、日・中米間の緊密な協力関係が確認され、対外的にも発表される。これらは、相互理解の促進に有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 平成17年度を通じ、「協力」と「交流」を柱とする「日・中南米 新パートナーシップ構想」の具体化に向け、後述のとおり相当の進展が見られたことから、施策は適切かつ効率的であったと判断できる。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
68,483
67,889
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
21
21
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

 メキシコや中米諸国で採用されてきた経済改革・貿易自由化路線(含むFTAの締結)により各国のマクロ経済は安定し、経済成長も堅調であり、同地域との更なる経済関係強化に向けた基盤が整いつつあると考えられる。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 平成17年度は、日墨EPAが発効し、また、日本・中米首脳会談が実現するなど、日本とメキシコ及び中米諸国との関係が大きく進展した年であったので、平成16年9月に発表された「日・中南米 新パートナーシップ構想」のフォローアップ状況を評価する年として適当である。

【評価の切り口】

(1)日墨EPAの発効後の円滑な協定履行を確保。
(2)中南米の主要国たるメキシコとの戦略的な協力関係の構築(「戦略的パートナーシップ」の深化、各種二国間対話を通じた両国関係の強化、国際場裡における協力の推進等)。
(3)中米諸国(日・中米交流年2005(中米諸国との外交関係樹立70周年))との協力関係の促進。

【目標の達成状況(評価)】

(1)日墨EPA の発行後の円滑な協定履行を確保
(イ)日墨EPAの発効後、日メキシコ間の貿易総額は約38%、日本の対メキシコ輸出は約45%、日本のメキシコからの輸入は約22%増加し(平成17年度の前年度比)、発効の前後から日本の対メキシコ投資も増大(約242%増(平成17年(暦年)の対前年比))するなど、日メキシコ経済関係には目覚ましい進展があり、目標である経済関係の再活性化に寄与した。
(ロ)なお、日墨EPA発効後1年の効果に関しては、以下のとおり意見が経済誌等に掲載されている。
(i)月刊経済Trend(平成17年12月号)日本経団連日本メキシコ経済委員長・日産自動車取締役共同会長である小枝至氏の意見
「日墨経済連携協定(EPA)は、両国政府の精力的な交渉の結果、2004年3月に基本合意に達し、国会での批准手続きを経て、今年4月に発効した。貿易面では、輸出入の品目が多様化し、総額の増加が期待される。投資面でも日本企業はより積極的かつ戦略的にメキシコへの投資が実施できるようになった。投資の増加は、メキシコの雇用を創出し、ひいては地域経済の発展につながる。日墨EPAは双方にとって大きなメリットをもたらすことが期待されている。」
(ii)JETRO記者発表(平成18年4月7日付)
 「日メキシコ経済連携協定(日墨EPA)発効後1年目の効果」について
1)「日本メキシコ経済連携協定(EPA)発効後の両国間貿易は21.9%増加」
 日墨EPA発効後9か月間(2005年4~12月)に、メキシコの対日輸入(日本の輸出)は前年同期比22.3%増加の104億4,690万ドルを記録した。日本の対メキシコ輸入も19.2%増加し、19億96万ドルであった(注)。この結果、両国間貿易は21.9%増加し、過去19年間(1995年4月~2005年3月)の年度平均増加率(7.9%増)を大きく上回った。
(注)日墨間貿易は米国経由が多く、両国の輸出統計では米国経由の輸出が対米貿易輸出に計上される。両国間貿易の実態を正確に把握するため本報告では両国の輸入統計をベースに分析した
2)「日本の対メキシコ投資は自動車分野を中心に急増」
 日本の2005年の対メキシコ直接投資(国際収支ベース、暫定値)は、前年比3.3倍の6億2,962万ドルに達した(財務省データよりジェトロがドルに換算)。過去最高を記録した1999年(11億8,900万ドル)に次ぐ投資額を記録した。メキシコで完成車生産を行う日産、ホンダ、トヨタが拡張投資を相次いで発表したほか、完成車メーカーに歩調を合わせた部品メーカーの投資も増加した。日墨EPAは投資保護やビジネス環境整備などの規定を含むため、制度的安定性など投資環境の向上をもたらしており、北米自由貿易協定(NAFTA)市場向け生産拠点としてメキシコを捉える日系企業の投資拡大にも結びついている。
3)「日系進出企業の63.3%が日墨EPAのメリットを享受」
 ジェトロが2006年1~2月に在メキシコ日系企業を対象に実施したアンケート(248社に配布、60社が回答、回収率は24.2%)では、回答企業の63.3%(38社)が「日墨EPAは自社にとってメリット」と回答。特に商社や自動車・部品メーカーでメリットとする回答率が高い。具体的なメリットとしては、もっとも効果の大きいものとして「関税の撤廃」(66.7%, 38社)をあげる企業が多い。以下、「関税手続きの簡素化」(12.3%, 7社),「ビジネス環境の改善」(10.5%,6社)

(2)中南米の主要国たるメキシコとの戦略的な協力関係構築
 平成16年9月の小泉総理のメキシコ訪問時に、日墨両首脳は、日墨EPAの早期発効と効果的実施を通じ、日墨経済関係を発展させていくことで一致したほか、文化交流(日墨文化サミットの開催、メキシコの愛・地球博への参加、日本のセルバンティーノ国際芸術祭への参加など)、中米支援、国連における協力、第4回世界水フォーラムの成功に向けた協力等、幅広い分野における「戦略的パートナーシップ」の深化に向けて意見交換を行った。平成17年度中にそれぞれ以下のとおり進展があり、経済の再活性化のみならず、国際場裡における協力関係の強化、相互理解の促進に寄与した。
(イ)平成17年3月に、日本の対メキシコ支援の実績をもとに両国が対第3国支援を行うための枠組みである日メキシコ・パートナーシップ・プログラムの第1回計画委員会が開催され、その後も、日本・中米首脳会談(下記(3)参照)も踏まえ、具体的な中米支援策についてメキシコ側と協議を継続した。
(ロ)平成18年3月に、メキシコにおいて第4回世界水フォーラムが開催され、皇太子殿下が御臨席。我が国は、第3回同フォーラム主催国として、メキシコに運営支援のために専門家を派遣。両国の協力により、同フォーラムが成功裏に開催された。
(ハ)平成18年2月、メキシコ・シティにおいて、我が国とメキシコが共同議長国として人間の安全保障ワークショップを開催。国連首脳会合の成果文書のフォローアップに向け、人間の安全保障を多様な側面から議論した。
(ニ)平成17年9月、両国の第一線で活躍する文化人が参加して日墨文化サミット第1回会合が開催され、忌憚のない意見交換が行われ、さらに、平成18年7月に第2回会合を我が国において開催することを確認した。
(ホ)メキシコは愛・地球博に参加し、また、中南米を代表する国際芸術祭であるセルバンティーノ国際芸術祭に、平成17年10月我が国は招待国として参加した。

(3)中米諸国との協力関係の促進
 平成16年10月の第8回日・中米フォーラムにおいて、平成17年を日・中米交流年と定め、日本・中米首脳会談をはじめ種々の交流事業を行うことに合意し、日・中米関係の強化、相互理解の促進に向けて以下の進展があった。
(イ)平成17年8月、東京において、小泉総理と中米統合機構加盟国及び準加盟国の大統領及び副大統領が出席して、日本・中米首脳会談が開催され、今後の日・中米の協力関係の中長期的指針を示す、「東京宣言」とその「行動計画」が採択された。中米諸国が一致して日本の安保理常任理事国入りを支持したこと、我が国が中米統合支援及び広域協力重視の方針を表明し、中米諸国より謝意が表明されたことは特筆すべき。
(ロ)平成17年10月、常陸宮同妃両殿下がニカラグア及びエルサルバドルを皇族として初めて両国を御訪問された。エルサルバドル訪問の思い出を詠まれた歌が平成18年の歌会始で紹介されたことにより、御訪問が広く国民にも知られることとなった。
(ハ)平成17年3月~9月 中米諸国が愛・地球博に共同出展。約220万人(全入場者数の約10%)が中米共同館を訪問した。
(ニ)平成17年4月、沖縄で開催された米州開発銀行(IDB)総会に際し、中米投資セミナーが開催された。
(ホ)平成17年11月、東京において、ジェトロの主催により、中米各国産品の対日輸出促進及び国情、観光資源、投資環境等の紹介を目的として、「中米展」が開催され、約2000名の入場者、約1000件の商談という成果があった。

【評価の結果(目標の達成状況)】

「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)日墨EPAの発効に伴い、日メキシコ経済関係は拡大し、その他の分野でも、2004年の日メキシコ首脳会談で合意された各案件が着実に実施された。また、日・中米交流年についても、日本・中米首脳会談をはじめ様々な行事が開催され、安保理改革等の国際場裡における協力が確認されるなど、想定以上の進展があった。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 平成18年度にはメキシコや一部の中米の国で政権交代がある予定のため、これまでの友好協力関係を新政権との間でも円滑に維持・強化出来るよう努める必要がある。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 日墨EPAの発効や日本・中米首脳会談を通じて日本とメキシコ及び中米諸国との関係強化のための枠組みが整備されたところ、今後この枠組みの下、一層の関係強化を図る。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

伊藤昌輝 ラテンアメリカ協会理事長代行 元一橋大学客員教授
 目標の達成に向けて相当な進展があったとの評価結果については、妥当であると認識。
但し、外交政策目標は、例えば、日墨間の貿易・投資額の増加や日本・中米首脳会談の実施といった一事業の成果を以て達成度を測ることは困難であり、日墨EPAが締結されたことや日本・中米首脳会談が実施されたこと自体も、それぞれメキシコ及び中米諸国とのこれまでの協力及び交流の強化政策の集大成に他ならない点には留意したい。
 メキシコとの日墨EPAの効果については、貿易・投資の拡大といった統計上目に見える部分のみならず、米州に進出する日本企業がメキシコへの投資に関心を示すようになるなど、単なる二国間の通商関係を超えたインパクトを持っている。また、メキシコ政府が日墨EPAを「経済的な同盟」と表現しているように、この協定の締結は、単なる貿易・投資拡大のためのツールを超えた、外交上の意義を有している点を指摘したい。
 また、日本と中米との関係については、近年、中米諸国が政治的及び経済的な安定を達成するとともに、中米統合機構としてまとまって一つの声をもつようになったため、大きく変化しつつある。従来は、日本による中米の民主主義定着と開発の支援を中心とする関係であったが、昨年の日本・中米首脳会談では、経済、開発、観光、防災や、人物交流、さらには、国連改革を始めとする国際場裏における協力といった幅広い分野での協力関係を構築する意思が初めて示された。これは、日本と中米諸国との関係に質的な変化が訪れたことを示している。政策評価においては、かかる視点からの評価がなされるような工夫が必要と考える。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 日墨EPA発効後1年間の効果が具体的な数値で示されており、施策の目標の1つである経済関係の再活性化に向けて明らかな進展があったことが適切に評価されている。また、メキシコ以外の中米諸国との協力関係についても、人的交流を中心とした視点から進展があった点につき適切に評価されている。

【事務事業の評価】

事務事業名:日墨EPAの発効後の円滑な協定履行を確保

事務事業の概要
 メキシコは、中南米における日本の最大の貿易パートナーであるとともに、欧米及び中南米に広汎なFTAのネットワークを有することにより日本企業にとって米州市場へのゲートウェーとなる戦略的重要性を有するところ、同国と締結した経済連携協定の円滑な実施を確保して、両国の経済関係強化を目指す。
効性
(具体的成果)
 日墨EPAの発効後、日メキシコ間の貿易総額は約38%、日本の対メキシコ輸出は約45%、日本のメキシコからの輸入は約22%増加し(平成17年度の前年度比)、発効の前後から日本の対メキシコ投資も増大(約242%増(平成17年(暦年)対前年比))するなど、日メキシコ経済関係には目覚ましい進展があった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 日墨EPAは既に締結・発効という初期の段階を終え、今後の円滑な運用、二国間協力等具体的な措置が必要となる取組の強化、再協議品目に係る交渉等あらたな段階にあるため。今後は日墨EPAの効果的な実施の観点から、より具体的な措置を検討することが必要。

事務事業名:中南米の主要国たるメキシコとの戦略的な協力関係の構築

事務事業の概要
 メキシコは、中南米地域の大国として、近年国際社会の諸課題に対する関与を拡大してきており、国際場裡における発言力を高めている。国連改革、環境等の問題について、メキシコと協力を深めて共同で対処することは、我が国の国際場裡における影響力の増大を図る上で戦略的重要性を有することから、政治面・文化面での幅広い協力関係を構築する。
有効性
(具体的成果)
 平成16年9月の小泉総理のメキシコ訪問時に、中米支援における協力、第4回世界水フォーラムの成功に向けた協力、国連における協力、日墨文化サミットの開催、メキシコの愛・地球博への参加、日本のセルバンティーノ国際芸術祭参加等について一致し、平成17年度中にはそれぞれの行事等が成功裏に開催された。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 平成17年中に方向性が示された種々の連携・強化のための取組を、今後も継続するとともに、その内容の拡大・具体化に取り組む必要がある。

事務事業名:中米諸国との協力関係の促進

事務事業の概要
 中米地域は、共同市場として米国とのFTA交渉を一体となって行うなど経済面での統合を進める(中南米第3の市場)とともに、政治面でもブロックとしてまとまり発言力を増しているのに加え、地理上・交通上の戦略的重要性を有する。このような中米地域との協力関係強化を進める。
有効性
(具体的成果)
 平成16年10月の第8回日・中米フォーラムにおいて、平成17年を日・中米交流年と定め、日本・中米首脳会談をはじめ種々の交流事業を行うことに合意し、平成17年8月中には日本・中米首脳会談を開催して今後の日・中米協力の指針となる「東京宣言」を採択したほか、1年を通じて様々な記念行事が開催され、日・中米関係強化に大きな進展があった。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 平成17年中に方向性が示された種々の取組を、対象地域・焦点を変えつつ、今後も継続する。

【評価をするにあたり使用した資料】

メキシコ
中米

 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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