省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

2-2 米国との経済分野での協力推進

北米第二課長 水嶋光一
平成18年4月
施策の目標
日米両国の持続可能な経済成長に資する各種の政策分野での協調の推進。
施策の位置付け
第159回/第162回/第164回国会における内閣総理大臣施政方針演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1)「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営
 平成13年6月の日米首脳会談の際に両首脳間で合意された日米間の経済対話の枠組みである成長のための日米経済パートナーシップの下6つの枠組み(別添資料参照)において、日米間で双方向の建設的な対話を行うことで、日米両国とともに世界の持続可能な成長のために各種の政策分野で協調することを目指す。また、米国との対話にあたっては、在米日本企業が直面している問題について聴取するなど、民間部門との連携も重視する。
(2)個別問題への対処
 WTOなどの国際的枠組みに通じた解決に必ずしもなじまない問題(米国産牛肉の輸入(手続)再開問題など)については、関係省庁と連携しながら二国間での協議によって問題解決を図っている。

【施策の必要性】

 外務省が当該政策を実施する理由は、主に以下の3点に集約される。
(1)日米間の安定的・協調的な経済関係の維持は我が国外交の基軸である日米同盟関係の維持・強化における不可欠な要素の1つである。また、経済のグローバル化が進展する中で、合計で世界全体のGDPの4割近くを占める日米両国経済が安定した協調的な関係を維持することは、日米両国の経済発展のみならず世界全体の安定と繁栄のためにも必要である。
(2)我が国の企業が米国で経済活動を行う上での基礎的環境整備との観点からも、日米の安定的・協調的な経済関係の維持は不可欠である。
(3)また、極めて多岐にわたる分野で緊密化している日米経済関係は、個別分野毎にばらに扱うのではなく、外務省が、総合的な外交上の配慮を加味しつつ、バランスよく運営していくことが、日米同盟関係の維持・強化の観点及び我が国の国益の確保の観点からは不可欠である。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)全世界のGDPの4割近くを占める日米両国間で取り扱うべき事項は、極めて多岐にわたっている。このため、平成13年6月の日米首脳会談の際に両首脳間で合意された「成長のための日米経済パートナーシップ」の下には、幅広い事項をカバーするために6つのフォーラムがあり、この枠組みを適切に運営していくことにより、米国との経済分野における二国間のみならず地域的、国際的な課題で協力推進を図ることが出来る。
(2)「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営にあたり、民間部門の問題意識を聴取する機会を多く設けることにより、政府として民間企業が貿易や投資を行う際の良好な環境を整備することができる。
(3)日米二国間における個別経済問題の中には、ともすれば政治問題化する可能性のある問題もあるが、問題が政治化することを未然に防ぐよう適切に対処していくことが、両国が協調を推進していく上で有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 対面での交渉及び対話により相手国担当者との信頼関係を確立した上で、可能な範囲でテレビ電話を活用した協議を実施する等により、緊密な対話を継続しつつ、出張旅費や協議会場設営等の経費を節約した。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
84,023
63,585
 
(国際会議費:54,904
拠出金:22,249)
(国際会議費:43,115
拠出金:15,574)
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
22
21
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

(1)日米両国の協調の推進に際しては、相手国である米国の行政府や議会、あるいは州政府の政策が多大な影響を及ぼし得る。
(2)また、「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営や、個別問題への対処にあたっては、関連する規制等を所管する国内の関係省庁と緊密に協議を行い、連携を図っていくことが不可欠である。外務省としては、我が国の重要な国益である日米経済関係の安定的な運営のため、国内関係省庁と緊密に連携しつつ、省庁横断的な観点からバランスの良い外交政策の立案・実施に意を用いている。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

経済分野での協調の度合い

【目標の達成状況(評価)】

経済分野での協調の度合い

(イ)施策の結果、平成17年度において、日米両国の経済分野での協調は深化しており、深化の度合いは二国間の貿易や投資額、人的交流等に現れている。具体的には以下のようなデータが得られている。
(ロ)また、平成17年度には、「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営により、米国の規制が改善されたものとして以下のような成果が得られた。なお、特に2つ目の点については、米側への要望を行うにあたって、在米日本企業が直面している問題について聴取するなど、民間部門との連携によって得られた成果である。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)上記(ロ)のとおり、「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営について、民間部門の意見を踏まえ、国益が増進する筋道が具体的につけられたことは予想以上の進展といえる。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 日米両国の持続可能な経済成長に資する各種の政策分野での協調の推進という目標については、長期的に評価を行い、その達成の度合いを検証する必要があるため、引き続き同様の目標を維持していくことが適当。さらなる進展に向け、施策の中で、「成長のための日米経済パートナーシップ」運営の拡充強化についても検討していく。また、日米経済関係は、かつてのような摩擦に象徴される関係から、建設的な対話を通じた協調の関係へと変貌を遂げていることが確認された。今後、良好な日米経済関係をさらに拡充強化していくために、「成長のための日米経済パートナーシップ」の見直しも検討していく。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 今後、日本経済の変化や国際経済での新たな展開を踏まえ、日米間の既存のメカニズムを活用しつつ、二国間の事項にとどまらず、国際経済が抱える様々な課題についても積極的に対話と協力を進めていく。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

金原主幸 社団法人日本経済団体連合会国際第一本部長
(1)我が国にとって最大の貿易・投資相手国のひとつである米国との良好な経済関係の維持・促進は、経済分野での最重要課題のひとつである。「成長のための日米経済パートナーシップ」の下で、両国間の緊密な対話が継続的に行われ、バード修正条項の廃止、入国管理手続の改善、日米社会保障協定の発効等、我が国の懸念事項に一定の改善が見られたことは評価に値し、自己評価の内容は概ね妥当である。
(2)他方、依然として領事事項や海事テロ対策等の関連で我が国産業界が困難に直面している点については、解決に向けより一層の努力が必要である。また、対米要望作成に際しては、在米日系企業の要望をヒアリングしていることは評価するが、日本国内における民間からの意見聴取を含めた同プロセスの一層の強化、ならびに各要望事項の着実な実現に向けたフォローアップ及びその結果の産業界へのフィードバックなどの面で、改善が図られるよう期待する。
 さらに今後の日米経済関係は、アジア地域における経済連携との関係や、多国間での貿易自由化との関係を抜きにして考えることはできない。こうした観点から、民間の意見を踏まえ、「成長のための日米経済パートナーシップ」の拡充強化を検討すべきである。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 「評価の切り口」である「経済分野での協調の度合い」が、官民合同の「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営ぶり及び米国の査証免除継続、査証申請受付公館の拡大等ビジネスのための渡航に必要不可欠な手続の規制緩和等により具体的に示されており、適切な評価となっている。

【事務事業の評価】

事務事業名:「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営

事務事業の概要
 平成13年6月の日米首脳会談の際に両首脳間で合意された日米間の経済対話の枠組みである「成長のための日米経済パートナーシップ」の下には次官級経済対話、官民会議、規制改革及び競争政策イニシアティブ、投資イニシアティブ、財務金融対話、貿易フォーラムの6つの枠組みがある。平成17年度は、規制改革及び競争政策イニシアティブ、貿易フォーラム等を開催した。
 日米両国は世界の二大経済大国であり、両国間の経済に関する事項は多岐にわたっているため、日米間で密接かつ双方向の対話を行うには、種々の対話の枠組みが必要である。このような枠組みを利用して対話を行うことによって、日米両国の持続可能な経済成長のために各種の政策分野での協調の推進に資すると考えられる。
有効性
(具体的成果)
(1)事務事業の結果、平成17年度において、日米両国の経済分野での協調は深化しており、深化の度合いは二国間の貿易や投資額、人的交流等に現れている。具体的には以下のようなデータが得られている。
(イ)米国に在留する日本人の数は平成17年10月1日現在、35万1668人であり、国別在留邦人総数で第1位となっている。平成16年10月1日の時点では、33万9387人、平成15年10月1日の時点では、33万1677人であり、近年増加が続いている。
(ロ)日米間の貿易総額は、平成17年は1,935億ドル(米商務省統計)であり、日中の貿易総額に香港を含めない場合、米国は日本の最大の貿易相手国である。また、平成16年は1,840億ドル、平成15年では1,700億ドルであり、近年増加が続いている

(2)また、平成17年度には、「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営により、米国の規制が改善されたものとして以下のような成果が得られた。
 WTO協定違反が確定していたバード修正条項の廃止を要請し続けた結果、平成18年2月8日、米国議会は、1)バード修正条項を廃止する、2)ただし平成19年10月1日までに米国に輸入された物品に対するダンピング防止税等は、引き続き同条項に基づき分配するとの内容を含む赤字削減財政調整法案を成立させた。バード修正条項の廃止により、米国企業と競争関係にある日本企業の経済活動の安定性が増した。ただし、同法によれば、一定期間同条項に基づく分配が行われることになるため、政府としては、引き続き米国に対し、速やかに分配を停止し、同条項を完全に廃止するよう強く働きかけていく考えである。

(3)最近では、日米間でいわゆる「貿易摩擦」は表面化していないが、両国の経済規模の大きさと両国間の貿易・投資規模の大きさから考えても、今後摩擦につながり得る問題は常に存在する。「成長のための日米経済パートナーシップ」の下の建設的な対話の推進は、「摩擦」の芽を摘み取り、日米間の協調を推進するという意味において大きな成果を上げているといえる。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 「成長のための日米経済パートナーシップ」は上述のように既に一定の成果をあげているが、良好な日米経済関係の維持・発展のためには絶え間ない努力が不可欠。今後、日本経済の変化や国際経済での新たな展開を踏まえ、日米間の既存のメカニズムを活用しつつ、二国間の事項にとどまらず、国際経済が抱える様々な課題についても積極的に対話を進めていく方針である。

事務事業名:日米経済関係強化に向けた取組

事務事業の概要
 「成長のための日米経済パートナーシップ」の運営や、個別問題への対処に当たり、日米双方が提起する諸課題について関連企業と随時率直な意見交換を行う。
有効性
(具体的成果)
 規制改革及び競争政策イニシアティブ等の対話における議論を、民間部門の問題意識を十分踏まえたものとすることは、在米企業の経済活動のための環境を整備し、日米間の経済分野での協調を推進する上で極めて重要である。この観点から、平成17年度においては、具体的に以下の事業を実施した。
(1)規制改革及び競争政策イニシアティブにおいて米国に対する要望を行うに当たり、全在米公館を通じて在米日本企業の問題意識を聴取し、それを踏まえた要望を行った結果、平成17年10月までとされていた米国査証免除継続のためのICチップ搭載旅券の導入期限に関し、我が国より繰り返し働きかけを行った結果、2005年6月、導入期限が1年延長され、日本国民に対する査証免除が停止される事態を防ぐことができた。
(2)また、日本国内における査証申請受付公館の拡大を要望してきた結果、平成18年4月8日、9.11以降受付を停止していた在札幌米国総領事館において、査証申請受付のパイロット・プログラムが開始された。これらにより、テロ対策の観点から米国が強化している入国管理措置が、日米間の人的交流の妨げとならない方向で一定の改善が図られた。
(3)平成17年10月1日には、民間企業のニーズを踏まえた、日米社会保障協定が発効した。この条約により、日米両国の年金制度及び医療保険制度の適用が調整され、ならびに両国での保険期間を通算してそれぞれの国における年金の受給権が確立されることとなり、社会保険料の二重払いの問題や、保険料掛け捨ての問題が解決することが見込まれる。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 今後も、民間部門の問題意識を聴取する場を設け、政策に反映させていくことは極めて重要であり、このような方針は在米日本企業などの民間部門からも高く評価されている。引き続き、民間部門との緊密な連携を図っていく方針である。

事務事業名:個別問題への対処

事務事業の概要
 米国産牛肉の輸入(手続)再開問題など、WTOなど国際ルールによる解決に必ずしもなじまない問題については、関係省庁と連携しながら二国間での協議によって問題解決を図っている。
有効性
(具体的成果)
 日米間の牛肉貿易問題については、国民の食の安全・安心の確保を大前提として、科学的知見に基づいて判断するとの方針に基づき対応してきた結果、平成17年12月12日、政府は米国産牛肉の輸入再開を公表し、米政府も同日、日本産牛肉の輸入再開を公表した。
 しかし、平成18年1月20日、米国から到着した子牛肉から特定危険部位であるせき柱が発見されたため、我が国は全ての米国産牛肉の輸入手続を停止。2月17日、米国農務省が、本件に関する調査結果報告書を公表。この報告書の内容を踏まえて3月28日から29日まで、日米専門家会合を開催するなど、日米間で協議を行っているところ。2年間にわたる日米間の協議を経て合意されたシステムの信頼性の回復が何よりも重要であり、政府としては国民の食の安全・安心を大前提に適切に対応している。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 このような個別問題は、牛肉貿易問題に止まらず、今後とも多岐に亘る分野で生じる可能性がある。このような個別問題の解決のためには、日米関係の維持・強化の観点から、引き続き緊密かつ地道な協議の継続が求められる。今後とも、現在の日米間に存在する懸案事項の解決を図るべく二国間の協議を継続する。

【評価をするにあたり使用した資料】

成長のための日米経済パートナーシップ(PDF)PDF

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