I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
1-8 大洋州地域諸国との友好関係の強化
大洋州課長 浅利秀樹
平成18年4月
施策の目標
|
大洋州島嶼国との友好協力関係の深化と対日協力姿勢の確保
|
施策の位置付け
|
平成17年度重点外交政策に言及あり。
|
施策の概要
|
(1)太平洋島嶼国との幅広い分野での友好・協力関係の推進は、我が国の国民生活と国益にかなうものとして積極的に推進していく必要がある。特に首脳レベルでの意見交換の場として、我が国は1997年以降3回にわたり「日本・太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議」を開催してきている。こうした取り組みは島嶼国側からも高く評価されている。第3回会議の成果である「沖縄イニシアティブ」のフォローアップを引き続き着実に実施しながら、島嶼国との更なる協力関係強化のため、平成18年5月の第4回首脳会議開催に向けて準備を進めている。
(2)また、我が国は毎年「PIF域外国対話」にハイレベル(平成15年は矢野副大臣、平成16年は阿部副大臣、平成17年は有馬政府代表)の参加を行ってきている。このような対話を通じて、日本の太平洋島嶼国に対する協力を強化していくことにより、同地域の対日友好関係の深化と我が国の国際場裡における取り組みに対する支持と信頼を得るべく努めている。
(3)さらに、島嶼国の将来を担う若い人材に対する対日理解促進・友好協力関係の構築はこうした対大洋州島嶼国外交の要の一つであり、長期的な政策目的達成のために不可欠である。こうした観点から、青少年交流事業の実施にも力点を置いている。
|
【施策の必要性】
太平洋島嶼国は、伝統的に親日的な国々である。例えば、ミクロネシア3か国では歴史的関係から日系人の存在が大きく、ノート・マーシャル大統領、レメンゲサウ・パラオ大統領、ナカヤマ元ミクロネシア大統領ほか各国でリーダーを輩出し、日本との関係が深い。
太平洋島嶼国と外交関係を維持し、幅広い分野での友好・協力関係を推進しつつ、これら諸国との絆の維持・強化をはかることは、次に述べるとおり、我が国の国民生活に直結する資源、食糧の安定確保の観点や、国連(安保理)改革をはじめとする国際場裡における我が国への支持を確保するといった観点からも重要な意味を有する。
(1)安全保障上の重要性 我が国の南の近隣地域として、太平洋島嶼国地域の安定は我が国の安全保障にとって重要。
(2)同地域の排他的経済水域(EEZ)は広大。陸地面積53万平方キロ(我が国は38万平方キロ)に対し、同地域のEEZは北米大陸の面積に匹敵する約2,000万平方キロ。
(3)水産資源、エネルギー燃料、鉱物等の供給地や海上輸送路として太平洋島嶼地域に大きく依存。
(注1)重要な資源供給地
(1)水産資源:中西部太平洋水域における日本のマグロ類漁獲量は、約45万トン。漁獲金額は約1450億円。我が国消費量の約8割。(2002年FAO統計に基づく水産庁統計)
(2)鉱物資源:パプアニューギニアからの銅の輸入量は約7万5千トンで総輸入量の5.7%。(平成17年資源エネルギー庁調べ)
(注2)重要な海上輸送路(例示)
豪州産資源の輸送路の1つ。(我が国の品目別全輸入額に占める豪産品の順位(2005年)は次のとおり。石炭(第1位)、LNG(第3位)、鉄鉱石(第1位)、アルミニウム(第1位)、牛肉(第1位))
(4)国際場裡における我が国に対する安定した支持母体(国連の12票)として、国連改革、地球温暖化防止への取組、捕鯨問題、各種国際機関選挙において、我が国の立場を支持。
(注)国際場裡における日本に対する安定した支持母体(例示)
(1)国連改革
我が国の常任理事国入り支持(全島嶼国)。G4決議案共同提案国(フィジー、キリバス、ナウル、パラオ、マーシャル、ソロモン、ツバル、バヌアツ)
(2)地球温暖化防止への取り組み
トンガを除く全島嶼国は京都議定書を締結(フィジー、キリバス、ミクロネシア連邦、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル、サモア、ソロモン、ツバル、バヌアツ)
(3)IWC(国際捕鯨委員会)における持続的利用支持国(加盟国:ツバル、ナウル、パラオ、キリバス、ソロモン。マーシャルも同様の立場でIWC加盟希望。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
上記「施策の概要」で述べた具体的諸政策の推進は、太平洋島嶼国との友好協力関係の深化と対日協力姿勢の確保という目標の達成のために以下のとおり有効である。
- 「沖縄イニシアティブ」のフォローアップにより、会議の成果を着実に実施し、同時に島嶼国の信頼を得ることが出来る。我が国が「沖縄イニシアティブ」を着実に実施し、島嶼国の発展と安定に貢献していることについては、島嶼国から高い評価を得ている。
- PIF域外対話に積極的に参加することで、島嶼国と様々な話題につき意見交換を行い、友好協力関係を強化し、具体的な協力につなげることができる。また、3年毎に開催される太平洋・島サミットの会期間の会合として、フォローアップ及び次期サミットを検討する重要な機会となる。
- 島嶼国からの青年を招聘することは、我が国に対する理解を深め、長期的な対日協力姿勢を確保するために有効である。
【施策の効率性】(3行以内)
下記【目標の達成状況(評価)】で述べるように、我が国と太平洋島嶼国の友好関係の深化、対日協力姿勢の強化が顕著に見られることは、施策が効率的であったことを示している。
また、島嶼国地域の首脳が一堂に会するサミットを定期的に開催し、首脳レベルで短期間に働きかけを行うことは効率性の観点からも重要である。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
123,590 |
164,149 |
(注)本省分予算
単位:千円
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
17 |
17 |
(注)本省分職員数(定員ベース(大洋州課))
単位:人
【外部要因】
太平洋島嶼国各国に内在する諸課題として、ガバナンスの問題、経済の未発達の部分、部族対立に起因する紛争等があり、また、域外からの影響や、グローバル化への対応に起因するアイデンティティー危機、伝統文化の衰退、環境問題や感染症さらに国際組織犯罪の脅威等に直面している。こうした不安定要因が我が国の対島嶼国外交に対する外部要因となっている。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の事業に対する評価を行う。なお、平成18年5月には第4回太平洋・島サミット(3年に1度開催)が沖縄で開催されるため、太平洋島嶼国については平成18年度が評価の重要な節目となる。
【評価の切り口】
友好協力関係の深化と対日協力姿勢の状況
【目標の達成状況(評価)】
別紙(個別事務事業の評価)の具体的諸政策の実施の結果、次に述べるとおり、我が国との友好関係の深化、対日協力姿勢の強化が顕著に見られている。
(1)我が国の国連安保理常任理事国入りについては、島嶼国12か国すべてが支持している状況の中、平成17年夏の国連安保理改革G4枠組み決議案につき、8か国が共同提案国となった。
(2)また、我が国が第4回日本・PIF首脳会議開催を決定した直後、10月のPIF総会コミュニケで、我が国の同イニシアティブへの感謝と期待が表明された。
(3)平成17年は愛知万博賓客等の招聘により、多くの島嶼国首脳が来日し、二国間首脳会談を実施。いずれの首脳も我が国の支援を高く評価した。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「平成17年度の目標を達成した。」
(理由)
上記の通り、安保理改革等、国際場裡で島嶼国からの支持を得たため。
なお、施策の目標は中期的な性格のものであり、今後も継続する。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)
我が国にとっての太平洋島嶼国の重要性につき、国内における一層の理解促進のため、太平洋・島サミット等を通じ、強くアピールすることが必要。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
今後も継続的に目標達成すべく、取り組みをさらに強化していく。同時に、我が国として、より力強い支援を太平洋島嶼国に行っていくことを内外に明確にし、アピールする。その過程で、島嶼国の我が国にとっての重要性を国内でアピールしていく。
【事務事業の扱い】
- 第3回日・PIF(太平洋諸島フォーラム)首脳会議のフォローアップ→拡充強化
- PIF域外国対話への積極的な参加→拡充強化
- 人的交流の拡大(日・PIF未来創造高校生交流の実施等)→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
|
予算要求
|
機構要求
|
定員要求
|
反映方針
|
○
|
○
|
○
|
【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
小林泉 社団法人太平洋諸島地域研究所理事
第3回日・PIF首脳会議のフォローアップは、安全保障、教育・人材育成の改善、保健・衛生、環境の重点分野につき、きめ細かく対応していることを評価。同首脳会議は、対太平洋島嶼国の我が国政策を推進する上で重要なツールであり、継続的実施が望まれる。また、我が国と太平洋島嶼国の更なる関係強化のために、効果的に活用することも重要である。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
施策の目標である「対日協力姿勢の確保」に関し、我が国の国連常任理事国の支持の状況(全島嶼国)等具体的な成果が示されており、評価は適切に行われている。
【事務事業の評価】
事務事業名:第3回日・PIF(太平洋諸島フォーラム)首脳会議のフォローアップ
事務事業の概要
|
2003年の第3回太平洋・島サミットで採択された開発戦略文書「沖縄イニシアティブ」で策定された5つの重点目標(安全保障、環境、教育、保健、経済成長)に対する協力を太平洋島嶼国に行うこと。
|
有効性
(具体的成果)
|
(平成17年度の実績例)
- ブーゲンビルの復興促進支援
- アジア・ブロードバンド計画(フィジー南太平洋大学遠隔教育、情報通信技術強化プロジェクト)の推進・JICA「廃棄物管理改善計画」に基づき技術協力プロジェクトを実施(パラオ)
- ゴミ問題に対して、草の根・人間の安全保障無償による協力(バヌアツ、ミクロネシア)
- 2005年7月から2年間の任期で、パラオ共和国と共同で、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)の事務局を実施中
- 小学校の新・増・改築や機材供与(サモア10校、ソロモン9校、トンガ2校、バヌアツ9校、PNG2校、パラオ1校、フィジー4校、マーシャル3校、ミクロネシア1校 (計41校))
- サモア職業訓練学拡充整備計画の実施(サモア)
- 草の根・人間の安全保障無償による医療機関整備(ソロモン1、PNG1、バヌアツ1、フィジー1、マーシャル2)
- JICA研修による数多くの支援(全ての大洋州島嶼国、地域)
以上は一部の例であり、この他にも様々な分野で多くの支援を行っている。
2005年10月に行われたPIF域外対話では、我が国の対PIF、太平洋島嶼国への貢献につき謝意表明が行われた。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
太平洋島嶼国は親日国家群であるとともに、国際社会における我が国の様々な取組に対する強力な支持母体である。我が国外交にとって非常に重要な国々である太平洋島嶼国との関係を強化し、同地域発展に共に取り組むために、我が国は、1997年10月橋本総理(当時)が太平洋諸島フォーラムの加盟国・地域の全首脳を招待してサミット(通称:太平洋・島サミット)を開催。その後2000年4月(宮崎:森総理)、2003年5月(沖縄:小泉総理)と計3回開催。我が国は、過去3回の太平洋・島サミットを通じ、同地域の安定と繁栄のため首脳間の対話を行うとともに、具体的な協力を積み重ねてきた。こうした我が国の取組は、太平洋島嶼国地域の持続可能な発展に資するものとして、参加諸国・地域から高い評価を得ており、様々な機会に謝意及び継続への期待が表明されている。
(今後の方針)
第4回太平洋・サミット(平成18年5月)で策定される予定の新たな日・PIF協力枠組みである「沖縄パートナーシップ」のフォローアップのため、日・PIF合同委員会を新たに設置。今後、PIFメンバーの参加を得て、日・PIF協力のレビューを行うべく検討中。
|
事務事業名:PIF域外国対話への積極的な参加
事務事業の概要
|
10月26日(水曜日)~30日(日曜日)、有馬政府代表はパプアニューギニア(ポートモレスビー)を訪問、第17回太平洋諸島フォーラム(PIF)域外国対話に参加した。
PNG滞在中、有馬政府代表はソマレPNG首相、ナマリューPNG外相、ツポウ・トンガ外相、ヒル米国務省次官補(東アジア太平洋担当)と二国間会談を実施した。
|
有効性
(具体的成果)
|
(成果1)第4回太平洋・島サミット準備プロセスの開始会合となり、その後の効率的な準備に役立った。
今次PIF域外国対話では、沖縄イニシアティブの実施状況のレビュー、PIF総会が採択したパシフィック・プラン(PIF改革の実施計画であり、沖縄イニシアティブを念頭に策定している。)に関する意見交換、次回サミットの我が国の基本スタンスの説明を行い、日・PIF双方が協力して準備を開始することを確認できた。
(成果2)我が国の対PIF、太平洋島嶼国への貢献につき謝意表明が行われた。
域外国対話では、テム議長より、PIFにとって日本は重要なパートナーであり、日本の太平洋地域のための種々の協力に感謝する旨発言があった。また、トンガとの二国間会談において、経済協力につき、ツポウ外相は、日本からの大きな支援に感謝している旨述べた。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
本件対話への参加は、太平洋島嶼国地域への我が国の協力の効果的実施のため有益であり、3年間隔で開催される太平洋島サミットの会期間の会合として、フォローアップおよび次期サミットを検討するという重要な機会となるため。
(今後の方針)
毎年行われる同対話に、引き続き我が国政府要人の派遣を行い、ハイレベルでの意見交換を継続するとともに、日・PIF合同委員会を同時に開催することも検討中。
|
事務事業名:人的交流の拡大(日・PIF未来創造高校生交流の実施等)
事務事業の概要
|
日本・PIF高校生交流事業は、平成7年より10年間実施された「日本・太平洋島嶼国若人交流事業」を発展的に継承する事業として、本年より実施されたものである。過去11年の間、両事業で訪日した各国高校生(含、引率者)は92人、日本より各国を訪問した日本人高校生(含、引率者)は68人であり、過去11年間の交流実績は160人にのぼる。
また、対島嶼国青年招聘計画は、島嶼国地域において、将来指導的地位に就くと期待される青年を招聘し、対日理解の増進を図るものであり、太平洋・島サミットにて取り上げられた重点分野よりテーマを選び、同テーマに沿った施設視察を行うと共に、日本文化理解促進を図るべく文化遺産視察及びホームステイ等を実施している。20年にわたり訪日した各国青年は延べ178名にのぼる。
(平成17年度の実績)
平成17年度は、太平洋島嶼国から16名を招聘し、日本から島嶼国へ6名派遣した。
|
有効性
(具体的成果)
|
平成17年度における日本・PIF高校生交流事業では、横須賀市立横須賀総合高校の生徒をミクロネシア連邦に派遣し、環境問題及び歴史にかかる現地視察、現地高校との交流及びホームステイ等を行い、同国が直面する諸問題を考察すると共に、現地の生活及び文化等に関する理解を深めた。
また、ミクロネシア連邦からはポンペイ中央高校の生徒を招聘し、横須賀総合高校との交流及び同高校生宅でのホームステイを体験する他、防災及び科学技術に関する施設視察及び鎌倉等を訪問し、日本に関する理解を深めた。また、対島嶼国青年招聘計画では防災をテーマに選び、兵庫県立舞子高校(日本の高校で唯一の環境防災学科を有する)、富士常葉大学(環境防災学部を有する)、アジア防災センター等を視察し、防災に対する理解を深めた。さらに、日本文化理解のため、京都文化遺産を訪れた。また、秋篠宮同妃両殿下に御接見いただいた。
|
事業の総合的評価
|
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
太平洋島嶼国の青年層における対日理解者を増やしていくことは、長期的な政策目標達成のために意義がある。
(今後の方針)
第4回太平洋・島サミットで我が国が示す予定である「3年間で1000人の青少年交流」実現の一環として、高校生交流の枠の大幅拡大を検討中。
|
【評価をするにあたり使用した資料】
- 外務省ホームページ
- 政府開発援助(ODA)白書2005年度版
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。