省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

1-7 南西アジア諸国との友好関係の強化

南西アジア課長 清水信介
平成18年5月
施策の目標
二国間関係の更なる強化。特に潜在力の大きなインドとの連携(戦略的パートナーシップ)の強化。
施策の位置付け
第164回/麻生大臣外交演説においてインドとの関係強化に言及。
施策の概要
(10行以内)
(1)要人往来をはじめとする対話の継続・促進
 首脳、外相をはじめ多くの閣僚レベル等の往来を実施した。4月の小泉総理訪問の際には首脳会談後に共同声明と「8項目の取組」を発出。
(2)日印、日パキスタンの外務次官級政務協議等各種協議等の推進
 日印、日パ外務次官級政務協議、日印安全保障対話、日スリランカ政策協議を実施。また、各種シンポジウムを開催。
(3)日印経済関係強化
 共同研究会を実施し、EPAの可能性を積極的に検討した。
(4)経済協力
 パキスタン大地震被害への支援を含め、積極的に経済協力を実施。

【施策の必要性】

(1)南西アジア諸国は戦略的にも経済的にも重要性を高めている。なかでもインドは、高い経済成長率を達成するとともに、対外的にも、米国との安全保障面を含む関係強化、東アジア地域との経済連携強化等を通じて、急速に国際社会におけるグローバル・パワーとして台頭してきている。またインドは、民主主義、市場経済という我が国と共通の価値観・システムを有しており、我が国にとって、戦略的パートナーシップを強化し、アジア地域ひいては国際社会の平和と繁栄のために協力すべき相手としての重要性を益々高めている。加えて、インドは我が国と中東諸国とのシーレーン(海上輸送路)上に位置している。
(2)南西アジア諸国との二国間関係の強化、特に日印間の戦略的パートナーシップの強化は、以上のような国際社会におけるインドの存在感の高まり、我が国にとってのインドの重要性を踏まえ、今後更に推進していく必要がある。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)南西アジア諸国との二国間関係は、民間部門の活動により自然に維持・強化されていくような成熟した状態にはなく、特に日印間の戦略的パートナーシップを強化するためには、ある程度政府が主導し、まずは、日印関係全般の強化に対する政治的なコミットメントを示すことが必要である。
(2)その具体的な方途としては、(1)要人の往来及び政治レベルでの協議を活発化させること、(2)(1)と密接に関連する事務レベルでの協議を活発化させること、(3)なかでも、本来有する日印間の潜在性を十分に実現していない経済関係を強化すること、(4)経済協力を実施すること、が主たるものとして挙げられる。

【施策の効率性】(3行以内)

 総理インド・パキスタン訪問や麻生外務大臣のインド訪問等により施策の目標に向けて相当の進展があったことは、手段が適切であったことを示している。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
73,864
77,239
(注)本省分予算
単位:千円

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
14
14
(注)本省分職員数(定員ベース)
単位:人

【外部要因】

(1)南西アジア諸国との関係、とりわけ日印関係強化において最も重要な分野の一つとして経済関係が挙げられるところ、各国における経済の動向が、企業の貿易・投資行動を通じて、二国間の経済関係、ひいては全般的な関係の強化に重要な影響を与える。
(2)カシミール地方の領有を巡る問題で対立するインドとパキスタンの関係、スリランカ和平問題の動向を含む各国の内政・治安状況は、度々緊迫化、不安定化するおそれがあるため、日本企業の行動に対する影響を通じて二国間の経済関係に、また、経済協力に影響を及ぼし、ひいては全般的な関係に影響を与える。
(3)インド及びパキスタンは1998年に核実験に成功し核保有を実現する一方で、核不拡散条約(NPT)に加盟していない。そのため、インドとの貿易等において一定の制約が存在する。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 本年度は、総理のインド・パキスタン訪問及びそれに続く麻生外務大臣のインド・パキスタン訪問が実現する等、南西アジア諸国との関係、特に日印関係にとって大きな節目となる年であったので、評価を行う年として適切である。

【評価の切り口】

 国際社会で存在感を高めつつある南西アジア諸国、特にインドとの戦略的パートナーシップの強化・進展の状況

【目標の達成状況(評価)】

 国際社会で存在感を高めつつある南西アジア諸国、特にインドとの戦略的パートナーシップの強化・進展の状況

 以下のとおり南西アジア諸国との関係、とりわけ日印間の戦略的パートナーシップは格段に強化された。
(イ)総理のインド・パキスタン訪問、そのフォローアップとして行われた外相の両国訪問、パキスタン首相の訪日、バングラデシュ首相の訪日をはじめとする多くの閣僚レベルの往来が実現した。特に印との関係では、5年ぶりとなった4月の総理訪印により、印との関係を全般的に推進していくとの政治的コミットメントを示したのみならず、首脳会談の際には共同声明(「アジア新時代における日印パートナーシップ~日印グローバル・パートナーシップの戦略的方向性~」)を発出することともに、今後の日印関係の戦略的方向性に関する具体的指針となる「日印グローバル/パートナーシップ強化のための8項目の取組」)に合意し、今後の戦略的パートナーシップ強化の基礎固めが達成された。これに続いた2006年1月の外相訪印の際には、「8項目の取組」のフォローアップとして、外相間の戦略的対話の開始、EPAの可能性の真剣な検討、今後3年間で4000人の人的交流の実現を目指す「麻生プログラム」の立ち上げ、に合意し、更なる関係強化が実現した。
(ロ)インド、パキスタンとの外務次官級の政務協議、インドとの局長級の安全保障対話、スリランカとの局長級の政策対話等を実施し、アジア地域をはじめ、近隣国であるアフガニスタンやイランを含む国際情勢につき認識を共有するとともに、国連改革、テロ等グローバルな課題についても幅広く意見交換を行った。これらは、南西アジア諸国との経済分野に限定されない幅広いものとすることにつながると考えられる。
(ハ)日印両国間の経済関係強化に向けた方途を探り、経済連携協定の可能性を積極的に検討する共同研究会(JSG)の開始、我が国財界からの要望を踏まえた日印租税条約の改正など、日印関係において最も重要な経済分野における具体的措置が講じられた。これらは、民間部門の活動を促進することになると考えられる。
(ニ)インドについては、同年4月の小泉総理訪印時の成果のフォローアップとして、経済関係の飛躍的拡大に資する高容量貨物専用鉄道建設計画の実行可能性を検討するための調査を開始したほか、同年度の円借款として、1,554.58億円を供与(インドは円借款の最大の受取国)。また、2005年10月に発生したパキスタン等大地震に際して、復旧・復興を目的とする総額約2億ドルの支援を実施した。

【評価の結果(目標の達成状況)】

「目標を達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)5年ぶりとなる総理のインド・パキスタン訪問、パキスタン首相、バングラデシュ首相の訪日が実現した。特にインドとの間では首脳会談後に共同声明及び「8項目の取組」が発出され、今後の戦略的パートナーシップ強化の基礎固めがなされた。更に平成18年1月の麻生外務大臣のインド訪問で外相間の戦略的対話の開始、EPAの真剣な検討、人的交流の拡大を目指す「麻生プログラム」の立ち上げが合意されたこと、インドが3年連続で円借款の最大の受取国となったこと等は、総合的に見て、日印間の戦略的パートナーシップの強化という目標に向けて、想定以上の成果があったことを示している。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 南西アジア、とりわけインドの重要性が益々高まる中、最も重要な経済関係強化のみならず、要人往来、各種協議、経済協力を通じその他の分野でもバランスよく具体的施策を講じる。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 日印間では経済連携協定の開始を積極的に検討するとともに、2007年の「日印交流年」を協力の機運が高まる機会と捉え、具体的な事業の拡大を目指す。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)


【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 5年ぶりの総理の訪印とその成果が具体的に示されており、また、それにより今後の新たな日印関係の基礎が築かれたことにも言及があり、目標である「特に潜在力の大きなインドとの連携(戦略的パートナーシップ)の強化」に向けての進展に関し、適切な評価がなされている。

【事務事業の評価】

事務事業名:要人往来をはじめとする対話の継続・促進

事務事業の概要
 政府要人の往来は、所掌分野における協力を総括し、新たな協力を進める絶好の機会を提供するものであり、政府間の幅広い分野での協力を推進するという意味で、さらには国同士の関係を強化するという意味で、南西アジア諸国との二国間関係、就中インドとの戦略的パートナーシップを強化する基本的手段として必要不可欠である。また、国会議員の往来については、政府間の関係強化のみならず、層の厚い関係を構築する上で必要である。
 インドを中心に、主な要人の往来は以下のとおり。
【インド】
 2005年4月 ナート商工相訪日
    4月 小泉総理大臣訪印
    5月 谷川外務副大臣(当時)訪印
    8月 福島外務大臣政務官(当時)訪印
    8月 麻生総務大臣訪印
    9月 アイヤール石油相訪日
 2006年1月 麻生外務大臣訪印
    1月 チダンバラム蔵相訪日

【その他】
 2005年4月 小泉総理大臣(パキスタン訪問)
    5月 谷川外務副大臣(当時。バングラデシュ訪問)
    6月 逢沢外務副大臣(当時。スリランカ、バングラデシュ訪問)
    6月 河井外務大臣政務官(当時。ネパール、ブータン訪問)
    7月 パラス皇太子訪日(ネパール)
    7月 ジア首相訪日(バングラデシュ)
    8月 アジーズ首相訪日(パキスタン)
    8月 福島外務大臣政務官(当時。スリランカ訪問)
    10月 谷川外務副大臣(当時。パキスタン訪問)
    11月 塩崎外務副大臣(パキスタン訪問)
 2006年1月 麻生外務大臣(パキスタン訪問)
有効性
(具体的成果)
 以下のように、様々な分野における政治レベルでの合意が形成され、南西アジア諸国、とりわけインドとの関係強化に実質が与えられた。
  • 小泉総理大臣の訪印時に、共同声明「アジア新時代における日印パートナーシップ~日印グローバル・パートナーシップの戦略的方向性」を発出するとともに、今後の日印関係の戦略的方向性に関する具体的指針となる「日印グローバル・パートナーシップ強化のための8項目の取組」に合意し、今後の戦略的パートナーシップの基礎固めが達成された。
  • 麻生外務大臣が、「8項目の取組」のフォローアップとして、外相間の戦略的対話の開始、EPAの可能性の真剣な検討、今後3年間で4000人の人的交流の実現を目指す「麻生プログラム」の立ち上げに合意し、更なる関係強化が実現した。
  • チダンバラム蔵相訪日時に、日印租税条約改正議定書に署名。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 インドを含む南西アジア諸国との関係は、民間部門の活動により自然に強化される状態にはなく、ある程度政府が主導し、日印関係強化に対する政治的コミットメントを示すことが必要である。日印戦略的パートナーシップを更に強化し、協力分野の拡大、頻度の強化を図っていくためにも、最も目に見える手段としての要人往来を更に活発化させる必要がある。
 具体的には、平成17年度に総理、外相を含む日本政府要人の訪印が数多く実現したのに比べ、インド政府要人の来日が少なかったことを踏まえ、マンモハン・シン首相、新たに任命される外相をはじめとするインド政府要人の来日の増加実現をはかる。

事務事業名:日印、日パキスタンの外務次官級政務協議等各種協議等の実施

事務事業の概要
 要人往来と同様、各種協議についても所掌分野における協力を総括し、新たな協力を進める絶好の機会を提供するものであり、政府間の幅広い分野での協力を推進するという意味で、さらには国同士の関係を強化するという意味で、二国間関係、特にインドとの戦略的パートナーシップを強化する基本的な手段として必要不可欠である。
 主な協議は以下のとおり。
【政治レベル】
2005年 4月 日パキスタン外相会談(アジア協力対話(ACD)出席の機会を利用して実施)。経済関係の強化、軍縮・不拡散分野での協力について協議。
2005年12月 日印首脳会談(東アジア首脳会議(EAS)出席の機会を利用して実施)。安保・防衛面、経済連携、経済協力、安保理改革等の国際的課題について幅広く協議し、協力を確認。

【事務レベル】
2005年 5月 日スリランカ政策協議(局長級)
   11月 日印外務次官級政務協議
   12月 日パキスタン外務次官級政務協議
2006年 2月 日印安全保障対話(局長級)【シンポジウム】
2005年10月 「ブータンと国民総幸福量(GNH)に関するシンポジウム」を主催し、河井外務大臣政務官(当時)、駐日ブータン大使他が出席。
2006年 3月 日印シンポジウム「21世紀におけるアジア・大洋州地域の課題と展望」を主催。日印両国の政・財界を含む著名人の参加を得て開催し、新しい時代の日印協力のあり方につき議論。
有効性
(具体的成果)
 首脳レベル、外相レベルでの国際会議開催の機会を活用した協議の他、事務レベルでの定期的な協議を実施することは、関係強化に向けたモメンタムを維持する上で効果があると言える。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 インドを含む南西アジア諸国との関係は、民間部門の活動により自然に強化される状態にはなく、ある程度政府が主導し、関係強化に対する政治的コミットメントを示すことが必要である。その最も目に見える手段としての政治レベルでの協議、また、政治レベルでの合意形成あるいはフォローのための事務レベルでの協議については、現状では十分とは言えず、分野の拡大、頻度の強化を図っていく必要がある。

事務事業名:日印経済関係強化

事務事業の概要
 2004年11月の日印首脳会談で日印経済関係強化のあり方を包括的に協議する両国の産官学のメンバーから構成される「共同研究会(JSG)」を立ち上げることに合意したことを受け、2005年4月の首脳会談ではJSG発足の一年以内に報告書を作成・提出することを決定した。JSGは7月に発足、平成17年度に3回の会合を開催し、モノ・サービスの貿易、投資等について包括的な議論を行い、報告書のドラフト作成・調整を行った。2006年1月の麻生外務大臣訪印の際には外相会談にて経済連携協定(EPA)の可能性を真剣に検討することに合意した。
(2006年6月のJSG第4回会合で報告書の作成に関する実質的な作業を終了。)
有効性
(具体的成果)
 大きな潜在性を指摘されつつも顕在化していない日印経済関係の拡大について、政府最高レベルにおいて、政治的なコミットメントを対外的に示し、両国の産官学のメンバーにてEPAの可能性を真剣に検討する議論を重ねることができたことは、民間部門での交流を活発化させる上で重要な役割を果たしたと言える。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 JSGが立ち上げられ、平成17年度内に3回の会合が開催されたが、今後は2006年6月の第4回会合でJSG報告書に関する実質的な作業を了したことを踏まえ、報告書の両首脳への提出を行い、その後は報告書の勧告に基づき将来の経済連携に関する枠組みの構築に向けて議論・作業を進めていく必要がある。

事務事業名:経済協力

事務事業の概要
 2005年10月に発生したパキスタン等大地震に際して、復旧・復興を目的とする総額約2億ドルの支援を実施した。また、インドについては、同年4月の小泉総理訪印時の成果のフォローアップとして、経済関係の飛躍的拡大に資する高容量貨物専用鉄道建設計画の実行可能性を検討するための調査を開始したほか、同年度の円借款として、1,554.58億円を供与(インドは円借款の最大の受取国)。
有効性
(具体的成果)
 経済協力は南西アジアに対する外交政策の重要な柱であり、積極的な経済協力の実施は、我が国の南アジア諸国との友好協力促進に少なからずの肯定的影響を与えた。特に、インフラ整備を通じた経済成長促進を重点目標の一つに位置付けるインドに対する経済協力については、貿易・投資関係を促進する上で重要な役割を果たしていると言える。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 依然として世界最大の貧困人口を抱える南西アジアに対する積極的な経済協力はMDGs達成の観点からも重要であるのみならず、二国間関係の強化や地域の安定的発展という我が国の南アジアに対する外交政策目標の実現の観点からも必要である。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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