I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
1-1 東アジアにおける地域協力の強化
アジア大洋州局地域政策課長 相川一俊
平成18年4月
施策の目標
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東アジア地域の地域協力の枠組みを活用した連携の強化 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策:記載あり。
平成18年度重点外交政策:記載あり。
第159回国会施政方針演説:言及あり。
第162回国会施政方針演説:言及あり。
第164回国会施政方針演説:言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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日本の安全と繁栄にとって不可欠である安定的な地域国際環境を形成していく上で、二国間関係の増進に加え、各種地域協力を活用する必要性が高まっている。本施策は、具体的には1)日ASEAN関係、2)ASEAN+3(日中韓)に加え、本年度に立ち上げられた3)東アジア首脳会議での取組を通じ、東アジア各国との協力関係を強化するものである。
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【施策の必要性】
現在、東アジアでは、急速な経済発展や地域の安定に対する新しい脅威(テロ、海賊、感染症等)といった変化を背景に、将来に東アジア共同体を形成することを共通目標にしながら、地域共通の課題に協力して対処し、地域全体の一層の繁栄と安定を確保していこうとする機運が高まってきている(例:経済連携、金融協力、国境を越える犯罪(テロ・海賊・人身取引等)対策、エネルギー、環境、感染症対策)。これに伴い、日本としても、日本の繁栄と安定を確保する上で不可欠な安定的な地域国際環境を形成していく手段として、二国間関係の増進という政策手段に加え、これら各種地域協力を活用していく必要性が高くなっている。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)日ASEAN関係
2005年12月の第9回日ASEAN首脳会議で、日本とASEANの「戦略的パートナーシップ」を深化・拡大させ、日本とASEANがともに東アジア全体の繁栄と安定を目標に地域の課題に共同して対処する意思を確認した。また、この際日本側から、総額75億円のASEAN統合支援を行うことを表明した(その後2006年3月に「日ASEAN統合基金」を設置し、拠出を行った)。ASEANは東アジア地域協力の調整役を担っており、ASEANとの関係を強化することは、東アジア地域協力の発展にも資するものである。この意味で、2005年度に日本とASEANの関係を具体的に強化できたことは、施策目的達成にとって有益であった。
(2)ASEAN+3
2005年12月の第9回ASEAN+3首脳会議をはじめとする様々な対話を通じて、参加国が東アジアの発展のために協力する意思があらためて確認された。特に、首脳会議において、東アジア地域協力に関する首脳共同声明を2007年に作成・採択するとの合意を達成したことは、東アジア地域協力の発展を通じたASEAN+3諸国の連携を中長期的に強化する重要な契機となるものであった。また、日本は、地域協力の全体像を把握し各国の共有情報とするため、地域協力のデータベースを作成し、ASEAN+3外相会議に提出した。これは、地域協力の進展状況を客観的に把握する意味で、今後各国間の連携を深めていくための基礎を提供するものとなった。
(3)東アジア首脳会議
2005年12月に開催された初の東アジア首脳会議には、従来のASEAN+3に加えインド、豪州、ニュージーランドが出席した。これは、東アジアの繁栄と安定にとって重要な国をより広く包含した枠組みが設置されたという意味で、地域各国と一層幅広い連携を実施していく上で有益であった。また、同首脳会議で、普遍的価値(自由・民主主義・市場経済など)とグローバルな規範の強化に努める旨合意されたことは、これら16か国で協力して、安定的な地域環境作りを進めていく意思の現れであり、日本の政策目標に合致するものであった。
【施策の効率性】(3行以内)
2005年度には上記のとおりそれぞれの枠組みにおいて相当の進展が見られ、手段は適切であったと考えられる。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
606,816 |
546,245 |
単位:千円
(注)本省分予算
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
24 |
23 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
地域協力の枠組みにおいて取組を進めるに当たっては、関係国との意見調整が必要であること、また、東アジアが歴史的に見ても大きな変化の過程にあることから、施策の効果が短期的には明らかにならない場合が多い。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
平成17(2005)年度は、初の東アジア首脳会議が開催される等、東アジア地域協力が具体的に前進した年であるため、通常の評価を行う。
【評価の切り口】
(1)日ASEAN行動計画のフォローアップの状況
(2)東アジア共同体形成を含む地域協力の進展の度合い。
【目標の達成状況(評価)】
(1)日ASEAN行動計画のフォローアップの状況
(イ)日ASEAN関係では、第9回日ASEAN首脳会議において、それまでの定期首脳会議では初めてとなる首脳共同声明を発出した。これは、日ASEAN関係のこれまでの発展と今後の取組強化を具体的に確認する意義を持ち、施策の目標に向けての基礎となった。
(ロ)また、その際小泉総理から、ASEAN統合支援として75億円を拠出する意思を表明したが、これは、2005年7月にASEANがASEAN統合を促進するための「ASEAN開発基金」を設置して以降初めての域外国による具体的拠出表明であり、ASEAN諸国の高い評価を得た。
(2)東アジア共同体形成を含む地域協力の進展の度合い。
(イ)東アジア地域協力データベースの作成は、9年に及ぶASEAN+3協力の中で初めての試みであり、地域協力が全体としていかなる進展状況にあるのかについて各国間で情報を共有するツールを提供するものとして、関係各国の評価を得た。これは地域協力の進展に資するものであり、連携強化に役立った。
(ロ)東アジア首脳会議においては、日本が主張してきている地域協力の基本的原則(1)地域協力の開放性・透明性・包含性、2)普遍的価値の尊重とグローバルなルールの遵守、3)個別分野での具体的協力を積み重ねて共同体の形成を目指す「機能的アプローチ」)のいずれについても首脳宣言の形でおおむね各国の合意するところとなった。これは、共同体形成の基礎となるもので、連携強化に役立った。
【評価の結果(目標の達成状況)】
「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)上述のとおり、平成17(2005)年度においては、首脳レベルをはじめ相当の進展があった。特に、アジアにおいて様々な歴史的変化が生じている中、東アジア共同体形成に向けた取組は、中長期的目標として少しずつ進めていくものであるが、第1回目となる2005年の東アジア首脳会議で、地域協力に係る基本的原則について首脳レベルで意見集約が図られたことは、相当の進展があったものと評価できる。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
東アジア首脳会議を通じた各国との連携をさらに実質化するため、第1回会議の成果に立脚して、同会議参加国による具体的な協力の進展を図る必要がある。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
引き続き各種地域協力を通じた対話・協力の発展を図る。
【事務事業の扱い】
- 日ASEAN協力→今のまま継続
- ASEAN+3協力→今のまま継続
- 東アジア首脳会議→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
白石隆 政策研究大学院大学教授・副学長
(1)我が国は東アジアにおける地域協力を、日本・ASEAN戦略的パートナーシップの拡大・深化、ASEAN+3を枠組みとする連携強化、東アジア首脳会議などによりつつ、強化している。これは東アジアの安定と繁栄の維持にとってきわめて重要であり、首脳会談の開催、日ASEAN統合基金設置、メコン地域開発協力、データベース作成など着実に進展している。
(2)このような方策の一環として、非伝統的安全保障(テロ、海上犯罪、違法伐採、マネー・ロンダリング、人身売買、武器密輸、麻薬密輸、サイバー犯罪)、SARS、鳥インフルエンザなどの感染症に対する協力、環境協力など、我が国が優れた問題対処能力をもっている分野でこれまで以上に地域協力のイニシアティヴをとっていくことが望まれる。
(3)東アジア首脳会議は2005年にはじまったばかりであるが、すでに定例化が決まっている。ASEAN+3と並んで、このフォーラムの活用が期待される。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
東アジアの地域協力が進展したことが、ASEAN/ASEAN+3という既存の枠組みと、東アジア首脳会議という新規の試みによる首脳レベルの会議、その成果文書により、具体的かつ明確に示されており、時宜を得た評価となっている。
【事務事業の評価】
事務事業名:日ASEAN協力
事務事業の概要
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日本とASEANの関係を幅広く強化するために、首脳・外相レベルを含む様々な対話を進めるとともに、日ASEAN行動計画のフォローアップ等を通じ、具体的な日ASEAN協力を進展させる。
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有効性
(具体的成果)
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(1)第9回日ASEAN首脳会議(12月13日にクアラルンプールで開催)、日ASEAN非公式外相会議(9月16日にニューヨークで開催)、第21回日ASEANフォーラム(次官級:8月25日・26日に東京で開催)をはじめとする多数の対話を実施し、日ASEAN関係や双方共通の課題についての意見交換を継続したことで、日ASEAN間の「戦略的パートナーシップの深化・拡大」に首脳レベルで合意できた。これは、東アジア全体の繁栄と安定を見据えた日ASEAN間の連携を実質的に強化する成果であった。
(2)日ASEAN行動計画のフォローアップとして、2005年の進捗状況報告書(首脳会議に報告)で、1)日ASEAN包括的経済連携協定交渉の開始、2)2003年の日ASEAN特別首脳会議から向こう3年間でメコン地域開発に15億ドルの支援を行うとの目標達成に向け着実な進展があること(2005年11月までのおよそ2年間で11億ドルを超過)、3)同じく同首脳会議から向こう3年間でASEANの人材育成に15億ドルの支援を行うとの目標達成に向け着実な進展があること(同期間で約10.5億ドルを達成)、4)同じく同首脳会議から向こう5年間でASEAN諸国の青少年10,000人を日本に招聘するとの目標達成に向け着実な進展があること(同期間で4,300人を達成)、等、具体的な進捗が確認された。これは、日ASEAN協力の実施を通じて日本とASEAN諸国の連携が強化されてきていることを示している。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
これまで着実に進展があり、これを維持する必要がある。
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事務事業名:ASEAN+3協力
事務事業の概要
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ASEAN+3の枠組みで経済・社会面を中心に具体的な協力を進める。
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有効性
(具体的成果)
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(1)ASEAN+3の枠組みでは、17の分野・48の協力体が形成されるというように幅広い協力が進展しており、地域の繁栄と安定に向けた有効なツールとなってきている。
(2)2005年度には、首脳会議を1回(12月12日・クアラルンプール)外相会議を3回(5月4日・京都、7月28日・ビエンチャン、12月9日・クアラルンプール)、のほか、3回の高級実務者会合、2回の局長級会合など、重層的な対話が実施された。これらを通じて、ASEAN+3の枠組みを通じて参加国が東アジアの発展のために協力する意思があらためて確認された。特に、首脳会議において、東アジア地域協力実績の包括的見直しと今後の大局的方向性を示す首脳共同声明を2007年に作成・採択するとの合意を達成したことは、東アジア地域協力の発展を通じたASEAN+3諸国の連携を中長期的に強化する重要な契機となるものであった。
(3)また、東アジア地域協力は、ASEAN+3の枠組みを中心としつつ、分野によってはこれを超える形で進展してきているため、日本は、こうした地域協力の全体像を把握し、各国の共有情報とするため、地域協力のデータベースを作成し、ASEAN+3外相会議に提出した。これは、地域協力の進展状況を客観的に把握する意味で、今後各国間の連携を深めていくための基礎を提供するものとなった。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
これまで着実に進展があり、これを維持する必要がある。
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事務事業名:東アジア首脳会議
事務事業の概要
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東アジア首脳会議を推進し、地域協力の基本的原則を確認していくとともに地域の共通課題について戦略的議論を行う。
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有効性
(具体的成果)
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(1)第1回東アジア首脳会議にインド、豪州、ニュージーランドから参加したことは、東アジア地域協力への貢献を通じて地域にとっての重要性を増している国々の関与・貢献を増大させるとの観点から、地域協力を通じた各国との連携を深める上で有効であった。
(2)日本が主張する地域協力の原則(1)地域協力の開放性・透明性・包含性、2)普遍的価値の尊重とグローバルなルールの遵守、3)個別分野での具体的協力を積み重ねて共同体の形成を目指す「機能的アプローチ」)のいずれもがおおむね首脳宣言の形で各国の合意するところとなった。これらは、いずれも、地域協力を通じて関係国との連携を幅広く強化し、地域共通の課題に対する具体的に取組を進め、地域の繁栄と安定を確保するという目標を実現する上で、重要な基盤となるものであった。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
2005年度にも相当の進展が見られたが、東アジア首脳会議は設置されたばかりであり、同会議を通じて各国との連携を図っていくためには、同会議発展のための取組を強化する必要がある。具体的には、鳥インフルエンザ、科学技術、テロ等の分野において、東アジア首脳会議参加国による、閣僚級会合やワークショップ等具体的な協力案件を推進するべく、参加国に働きかけを行っていく。
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【評価をするにあたり使用した資料】
- 小泉総理の東アジア首脳会議等への出席(概要と評価)
- 東アジア首脳会議に関するクアラルンプール宣言
- ASEAN+3首脳会議に関するクアラルンプール宣言
- 第9回日ASEAN首脳会議共同声明
- 第6回ASEAN+3外相会議の概要
- 東アジア地域協力の拡大の現状
- 東アジア共同体構築に係る我が国の考え方
- ASEAN+3協力の進展
- 東アジア首脳会議(EAS)に向けた道のり、等
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。