I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
17-2 ODAの実施体制の強化
経済協力局政策課長 上村司
平成18年4月
施策の目標
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体制の強化による効果的・効率的なODAの実施
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施策の位置付け
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平成17年度予算重点事項
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施策の概要
(10行以内)
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効果的・効率的なODAを行うため、その実施の体制について強化する。特に主要な被援助国について、被援助国の開発計画や国際的な開発目標とも整合性を確保しつつ、国別援助計画及び重点課題別・分野別の援助方針を策定する。国際機関や他ドナー等とも連携を強化しつつ、政策立案能力を一層強化するとともに、政策を具体的な案件の形成・選定・実施につなげていくため、現地の体制を強化する。さらに草の根レベルにも援助の効果を行き渡らせるべく、NGOと連携する施策を講じる。
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【施策の必要性】
ODAは外交の重要な手段であり、様々なODA事業を積極的に展開してきたが、ODA大綱及び中期政策に基づき、一層効果的・効率的なODAの実施に資するための体制整備を行う必要がある。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
ODA大綱やODA中期政策にも記されているとおり、現地機能の強化やNGO等との連携強化による草の根レベルへの援助の拡充を行うことで、我が国の援助をより効果的・効率的に実施するための体制を強化することができる。
【施策の効率性】(3行以内)
国会審議、総務省評価等で掲げられているとおり、当該施策の遂行により「限られた援助資源(予算・人員)を有効に利用し、成果重視のODAの実現を図る」ことができるため、効率的である。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
2,898,000 |
2,918,000 |
単位:千円
(注)本省分予算
(内訳)
NGO支援無償 |
2,850,000 |
2,850,000 |
現地機能強化のため現地の情勢の調査、ワークショップ開催等の経費 |
48,000 |
68,000 |
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
13 |
13 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
(内訳)
現地機能強化担当職員 |
3 |
3 |
民間援助支援に当たる担当職員 |
10 |
10 |
【外部要因】
NGOによる援助のニーズ等による申請数の増減等
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
マネジメント体制に対する試行的評価。今後体制の変革等を含め、評価方法については再度検討するものとする。
【評価の切り口】
(1)現地ODAタスクフォースの設置
(2) NGO支援無償資金協力の実施
【目標の達成状況(評価)】
(1)現地ODAタスクフォースの設置
(イ) 被援助国や他の援助国・国際機関等との連携・調整については、現地機関及び実施機関の機能・役割の強化を通じて取り組んできているところである。具体的には、69か国の被援助国において現地ODAタスクフォースの設置を進めるなどの取組を行ってきた。(平成17年度においては、3か国設置)
(ロ) 現地ODAタスクフォースにおけるワークショップ、遠隔会議システムを活用したセミナー(平成17年度8回実施)等を実施した。
(2)NGO支援無償資金協力の実施
(イ) 日本NGO支援無償資金協力は、日本のNGOが開発途上国・地域で実施する経済・社会開発プロジェクト及び緊急人道支援プロジェクトに対し資金協力を行うスキームであり、本予算の増額は、日本のNGOの活動に対する資金協力の拡充、連携強化、ひいては草の根レベルへの援助効果の一層の拡大となる。平成14年度20.0億円、平成15年度22.0億円、平成16度27.0億円、平成17度28.5億円と増額させた。
(ロ) 平成17年10月に発生したパキスタン等大地震の発生直後より、ジャパンプラット・フォーム(JPF)(注)傘下のNGOは政府資金を活用し緊急人道支援活動を展開し、また、国際緊急援助隊・医療チームとの連携、緊急援助物資の配布の際の在パキスタン我が方大使館、自衛隊、国際移住機関(IOM)との連携、JPF傘下のNGO、パキスタン政府、現地NGO、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等との連携による越冬支援用「キャンプ・ジャパン」の運営を行った。日本のNGOと日本政府、現地政府、国際機関等との連携は史上初めてのものであり、モデルケースとなった。
(注:海外での大災害・紛争等の際の日本のNGOによる迅速で効果的な緊急人道支援活動を目的として平成12年8月にNGO、経済界及び政府の協力により設立された。資金源は、政府拠出金及び民間寄付金。)
【評価の結果(目標の達成状況)】
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)所定のセミナーや協議会等の実施、現地ODAタスクフォースの設置等を行い、また、日本NGO支援無償資金協力を通じたNGOへの資金面での協力やJPFとの連携による事業等を行い、予定通りの業務を執行した。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
現在までに設置した現地ODAタスクフォースの強化に取り組み、NGO等の組織強化、人材育成等もますます重要である。しかしながら、人的・予算的側面からその執行については現段階の取組が限界である。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
ODAをより効率的・効果的なものとするため、援助政策の立案及び実施体制の強化や国民参加の拡大等の一連の措置を講じ、取組を継続する。
【事務事業の扱い】
- 現地実施体制の強化
→拡充強化
- NGOとの連携強化
→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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-
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
牟田博光 東京工業大学大学院教授
現場のニーズや援助協調の動きに迅速に対応するため、現地タスクフォースを設置することは極めて重要である。ただ、各メンバーの任期が短いこともあり、国によってはタスクフォースの能力に問題が生じる恐れもある。必要な人的体制の整備と共に、タスクフォースの能力を向上・発展させる手段を講じ、同時に、サポート体制を構築する事は喫緊の課題である。これらの仕組みを作ると同時にそれらを維持することが重要であり、継続した努力が必要である。
また、適時適切なODA実施のために、NGO支援無償資金協力を強化する意義は大きい。しかし、それらが効果的、効率的に運用されることが前提であるため、自己評価能力を含めたNGOの運営管理能力向上についても、同時に強化がなされなければならない。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
施策の目標として「体制の強化による効果的、効率的なODAの実施」を掲げ、そのアプローチとして現地ODAタスクフォースの設置とNGO支援無償資金協力の2つの「評価の切り口」により、目標への達成状況を把握しようとしている。特に、後者については、パキスタン等大地震後の支援の成果について具体的に説明されており、試行的な段階ではあるが、支援の現場の成果を踏まえた適切な評価となっている。
【事務事業の評価】
事務事業名:現地実施体制の強化
事務事業の概要
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ODAの効率的・効果的実施に向け、現地ODAタスクフォースを設置し、開発ニーズなどの調査・分析、援助政策の立案・検討、援助対象候補案件の形成・選定等の取組を拡充し、その適切な人員の配置や人材育成などにより体制を強化する。
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有効性
(具体的成果)
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「現地ODAタスクフォースの設置」との評価の切り口から見れば、平成17年度において現地タスクフォースが3つ立ち上がり(平成17年度末時点で合計69)、現地での大使館、JICA等の我が国関係機関が一体となって活動するようになったことにより(現地の限られた人的リソースの効率的活用)、援助政策の立案や援助実施の能力が一層強化された国が増えたことになる。したがって、「現地実施体制の強化」という事務事業、つまり「ODAの実施体制の強化」との施策により、「体制の強化による効果的・効率的なODAの実施」との目標の達成に向けて部分的な進展があった。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
徐々に上記の取組が進められているが、「点検と改善」報告書等において、国別アプローチの一層の強化が必要とされている。今後もより一層の取組が必要である。
また、効果的・効率的なODAの実施のためには、ODAタスクフォース数の増加だけでは十分でなく、同時に同タスクフォースの人的体制を強化する必要がある。
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事務事業名:NGOとの連携強化
事務事業の概要
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ODAの効率的・効果的実施に向け、NGOとの連携強化による草の根レベルへの援助の拡充を行うため、主に次の取組を行っている。
(1)日本NGO支援無償資金協力等の援助スキームによる資金協力。
(2)我が国のNGOの組織運営能力や専門性の向上のための協力を目的とした「活動環境整備支援事業」。
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有効性
(具体的成果)
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効果的・効率的なODAの実施のためのNGOとの連携強化により次のような効果的なアプローチをとることができた。
(1)支援対象地域の住民のニーズを把握し、これら住民に直接裨益する援助の実施。
(2)我が国が有する技術、知見、人材、制度の活用。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
NGOとの連携は今後とも重要であり、国会をはじめとして、様々な機会に提言がなされているところ。今後のODAの効率的な実施のためにも、NGOへの資金面での協力、キャパシティビルディングを中心にその連携策を講じていく必要がある。
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【評価をするにあたり使用した資料】
- 「経済協力にかかる政策評価」平成16年4月 総務省
- 「ODAの点検と改善報告書」平成17年12月 外務省
- 「政府開発大綱」平成15年8月 閣議決定
- 「政府開発援助に関する中期政策」平成17年2月 閣議報告
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。