I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
16-1 的確な情報収集及び情報の政策決定ラインへの提供
第一国際情報官 藤村和広
第二国際情報官 前田徹
第三国際情報官 垂秀夫
第四国際情報官 武藤顕
平成18年4月
施策の目標
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情報収集の強化と政策決定ラインへの適時の情報提供により、外交政策の立案・実施に寄与すること。 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回/第162回/第164回/施政方針演説に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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政策目的を達成するために必要と思われる国際情勢に関する情報収集の強化。また、そのための情報収集手法の開拓・整備。政策決定ラインへの的確な情報の提供。
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【施策の必要性】
複雑かつ流動的な国際情勢に迅速に対応するためには、的確かつ時宜に適った情報収集及びその政策決定ラインへの提供は、我が国及び国民の利益保護のために必要不可欠な施策である。近年の不確実性や多様なリスクが増大する国際情勢の中で、的確な情報収集の成果を政策決定ラインに適時に提供することにより、日本の平和と繁栄、国民の生命・安全・利益を確保する外交政策の立案・実施に寄与することを目的としている。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)外務省が行う対外情報収集は、在外公館における情報収集活動が大宗を占めることから、在外公館に対して収集すべき情報は何か、本省側の問題意識は何かを適時かつ的確に伝えることにより、在外公館が効率的かつ的確な情報収集活動を行えるようにすることが重要である。そのため、在外公館に対する本省側の重点事項や問題意識を伝える訓令電の発出、特定のテーマに関する本省及び在外公館双方の関係者による会議の実施等の施策を行うことが必要である。
(2)情報収集能力の強化・向上には、本省及び在外公館における情報源の開拓や、衛星画像の活用、各情報源に対する評価の実施、公開情報の効率的活用、電子化の促進等による多様な情報収集手法の開拓及び整備が有効である。
(3)我が国の外交政策決定を行う上で、政策部門の情報ニーズに迅速かつ的確に応えるためには、重要な情報について省内政策部局はもちろん、必要に応じて官邸及び関係省庁に対し、適時かつ迅速に情報を提供することが有効である。
【施策の効率性】(3行以内)
主要在外公館の政務責任者の会議の実施やデータベース構築等により施策の目標に向けて進展があったことは、手段が適切であったことを示している。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
533,700 |
592,900 |
単位:千円
(注)本省分予算
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
67 |
73 |
単位:人
(注)人的投入資源は、施策16-2「的確な情報分析及び分析の政策決定ラインへの提供」との合計。本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
(1)本省及び在外公館における対外情報の収集は、我が国と対象国・地域の外交関係、対象国・地域の政治・治安事情等の外部的要因により制限される。
(2)情報収集手法については、情報源及びそのもたらす情報の信頼性の評価が容易ではない(入手された情報がすべて実証されるとは限らず、実証されないからといって当該情報が誤りであるとはいえない、1つの情報源のもたらす情報が常に正しいとはいえない等の要因)、衛星画像情報については撮像周期や天候に左右される等の外部要因が存在。
(3)伝達した情報が外交政策に具体的にどのように反映されたか、評価が困難。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の評価を行う。
ただし、「情報収集」という性質上、情報収集能力強化のための施策の成果は、目に見えて分かるものではなく、評価にあたっては中長期的な視点が必要である。
【評価の切り口】
(1)情報収集の強化の状況
(2)外交政策の立案・実施への寄与の度合い
【目標の達成状況(評価)】
以下のとおり、本件施策は目標の達成に寄与した。
(1)情報収集の強化の状況
(イ)特定地域の在外公館の政務担当者及び本省・関係省庁関係者による会議を開催し、特定重要テーマに関する本省側問題意識の提示、本省及び参加公館との情報の共有、共通認識の提示等の成果が得られた。
(ロ)必要に応じて収集すべき情報について随時訓令を発出、出張調査等を指示することにより、在外公館の情報収集活動に指針を与えるとともに、情報収集経費や出張経費の支援等ロジ支援も行うことで、在外公館の情報収集活動を活発化した。
(ハ)在外公館において情報源を追加、既存の情報源との比較・対象を可能とした。
(ニ)テロ関連声明のデータベース化等を含め、既存の公開情報のより効果的な活用のための改善策を検討した。
(ホ)衛星画像活用の基盤整備のために、商用衛星画像の購入増加や画像解析研修の実施、機器やデータベース等のインフラ整備を実施した。
(2)外交政策の立案・実施への寄与の度合い。
官房主催の各種治安・危機管理関連の会議に出席、関連情報を提供する他、大臣、政務官等幹部への各種ブリーフを増加、右幹部ブリーフへの政策部局からの積極的参加を推進する等、省内政策部局との連携を強化した。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)本省と在外公館双方の関係者が一堂に会する会議の開催等により、在外公館に対し収集すべき情報は何か本省側の問題意識を的確に伝えるとともに、在外公館の情報収集活動を活発化することが可能となったこと、新たな情報源の開拓により在外公館の情報収集能力を強化できたこと、さらに政策部局へのブリーフ等を通じて情報の政策決定ラインへの適時・的確な提供が可能となったことから、総合的に見て、的確な情報収集及び情報の政策決定ラインへの提供という政策目標に向けて、想定された成果があったことを示している。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
情報収集活動が一定の成果を得るためには長期的な視点が必要であり、平成18年度以降も在外公館における情報収集活動強化のための施策を継続又は拡充していくことが必要。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
施策を継続または拡充していくことが必要との評価結果を踏まえ、今後とも一層体制を充実させるべく、予算、機構、定員要求に反映させていく。
【事務事業の扱い】
- 在外公館に対する情報収集に関する重点課題・指針の提示
及び支援の提供等、在外公館の情報収集活動強化のための措置の実施→拡充強化
- 情報収集手法の開拓及び整備 →拡充強化
- 政策決定ラインへの適時の情報提供 →今のまま継続
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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○
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
星野俊也 大阪大学教授
情報部局による的確な対外情報(インテリジェンス)の収集と政策部局への適時的な提供は、 戦略的な外交の立案・決定・実施にとってのまさに「底力」となるものであることから、本施策が引き続き我が国の重点外交政策に位置づけられ、さらに「対外情報機能強化5ヵ年計画」が組まれ、人材養成やインフラ整備に向けた積極的なステップが取られようとしていることはきわめて重要である。
具体的に対外情報を政策決定に生かすための「インテリジェンス・サイクル」が機能するかどうかは、政策部局のニーズや問題意識を反映した情報収集体制が構築できるかに大きく依存する。その点、国際情報統括官組織各室が外務本省及び関係省庁と在外公館とを結ぶ「ハブ」となり、情報要求の明確化、情報収集体制の支援、幹部への情報提供などに力点を置いて活動してきたことは適切であり、所期の目標の達成に寄与する進展があったとする自己評価は妥当といえる。
複雑に利害が錯綜する国際社会のなかで対象国の動向や多様化する脅威の実態を見極めるには長期にわたる地道な観察とデータの蓄積が必要となることから、情報収集分野における予算・機構・定員面を含む体制の更なる拡充と重点化を期待したい。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
外交政策の立案・実施にどれだけ寄与したのか評価は性質上困難ではあるが、施策の目標に対する具体的な取組・措置及びその効果について説明されており、適切な評価をしている。
【事務事業の評価】
事務事業名:在外公館に対する情報収集に関する重点課題・指針の提示及び支援の提供等、在外公館の情報収集活動強化のための措置の実施
事務事業の概要
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在外公館に対する本省側の重点事項や問題意識を伝える訓令電の発出、特定のテーマに関する本省及び在外公館双方の関係者による会議の実施等により、在外公館に対し収集すべき情報は何か、本省側の問題意識は何かを適時かつ的確に伝えることができ、在外公館が効率的かつ的確な情報収集活動を行う上で必要性は高いと考える。
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有効性
(具体的成果)
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(1)特定地域の在外公館の政務担当者及び本省・関係省庁関係者による会議を開催し、特定重要テーマに関する本省側問題意識の提示、本省及び参加公館との情報の共有、共通認識の提示等の成果が得られた。
(2)必要に応じて収集すべき情報について随時訓令を発出、出張調査等を指示することにより、在外公館の情報収集活動に指針を与えるとともに、情報収集経費や出張経費の支援等ロジ支援も行うことで、在外公館の活発な情報収集活動に寄与した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
一定の成果を得たものの、対外情報収集の基本は在外公館における情報収集活動にあり、また情報収集活動が一定の成果を得るためには長期的なスパンが必要であるところ、平成18年度以降も施策を継続または拡充していく必要がある。
(今後の方針)
我が国にとり情報収集能力の強化が急務である分野・地域は多岐に及び、平成17年度において成果のみられた同様の事業を平成17年度の施策の対象となった以外の分野・地域に対しても実施する。
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事務事業名:情報収集手法の開拓及び整備
事務事業の概要
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本省及び在外公館における情報源の開拓や、各情報源に対する評価の実施、衛星画像の効果的活用、公開情報の効率的利用、電子化の促進等による情報収集手法の開拓及び整備は、情報収集能力の向上に不可欠である。
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有効性
(具体的成果)
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(1)在外公館において新たな情報源を獲得、既存の情報源との比較・対象を可能とした。
(2)テロ関連声明のデータベース化等を含め、既存の公開情報のより効果的な活用のための改善策を検討した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
一定の成果を得たものの、入手された情報や各情報源に対する評価については不十分な面もあり、今後、情報源の評価をいかに行うか更に検討する必要がある。公開情報の活用については、省内における共有体制の強化、一層の電子データ化、既存の公開情報の整理・統合等、改善を必要とする点もある。
(今後の方針)
公開情報収集の外部委託、情報の電子データ化、衛星画像活用のための一層のインフラ整備、在外における情報収集要員の増強等をさらに進めるべく、予算・定員要求に反映していく。
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事務事業名:政策決定ラインへの適時の情報提供
事務事業の概要
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我が国の外交政策決定を行う上で、政策部門の情報ニーズに迅速かつ重点的に応えるためには、重要な情報について省内政策部局はもちろん、必要に応じて官邸及び関係省庁対し、適時かつ迅速に情報を提供することが必要である。 |
有効性
(具体的成果)
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官房主催の各種治安・危機管理関連の会議に出席、関連情報を提供するほか、大臣、政務官等幹部への各種ブリーフを増加、右幹部ブリーフへの政策部局からの積極的参加を推進する等、省内政策部局との連携を強化した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
外務省が行っている国際情勢に関する情報の収集は、外交政策の立案・実施に即した問題意識に基づいて行われ、情報収集・分析の結果が外交政策の立案・実施に適時・適切に活用されることが重要であり、一定の成果が得られている政策決定ラインへ適時の情報提供は、今後とも継続することが必要である。
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【評価をするにあたり使用した資料】
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。