I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
13-2 国際文化交流の促進
文化交流課長 片山和之
人物交流室長 山元毅
平成18年5月
施策の目標
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文化交流事業を展開・促進・支援することにより、日本文化そのもの及びその背景にある価値観(和を尊ぶ心、自然観、感性、美意識)等を伝達し、各国国民の対日理解を促進し、また親日感の醸成を図る。 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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各国国民の対日理解を促進し、また親日感の醸成を図るため、(1)文化事業や知的交流事業の実施による日本の魅力の発信、(2)人物交流事業、(3)日本語・日本研究事業、(4)周年事業等における大型文化事業の実施を通し、日本の文化・思想・価値観といった「ソフト」な魅力でもって外国人を魅了する。
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【施策の必要性】
(1) グローバル化や情報通信技術の発展と共に、(イ)各国の市民がインターネット等を通じて国際的なネットワークを組み、外交上影響力のあるイニシアティブをとる(例えば、NGO等による国際規範作りへの関与)ことや(ロ)各種メディアを通して世論を形成し、所属政府の行動に影響を与えるといった形で、非国家主体の外交に与える影響力が増している。
(2) このような背景事情により、日本に有利な外交上の環境を作り出していくために伝統的な政府間の外交のみならず、各国の諸国民に対する働きかけを通じて、対日理解を促進し、親日感を醸成するとともに、日本国民との間の相互理解を深めていく必要がある。このため、広報及び文化交流を通じ、諸外国の市民への働きかけを行っていく必要があるが、このうち文化交流は、例えば日本の政策そのものの正当性を訴える政策広報とは異なり、公演事業や人物交流事業、日本語教育事業といった文化事業の実施・展開等を通じて、日本の文化・思想・価値観といった「ソフト」な魅力を発信することによって各国国民の対日感情を好転させることができるという特性を持つ。
(3) 文化交流の主な担い手は民間の主体(公益法人を含む各種交流団体、企業、大学教育界、メディア、NGO、NPO、一般市民等)であるが、外務省及び独立行政法人国際交流基金は、以下の観点から文化交流事業に実施・関与する必要がある。
(イ) 外交上の効果が高いにもかかわらず、民間ベースに任せておいた場合採算性といった観点から実現が困難なものや大型周年事業におけるオープニング事業の実施等、民間ベースでの文化事業実施の呼び水となるような事業について国または(独)国際交流基金が実施・支援する必要がある。
(ロ) 日本全体として、諸外国市民の対日理解促進、親日感の醸成、相互理解の促進に取り組むことが、文化事業総体としての効果を高める上で重要である。このため、文化・知的交流の担い手と広く対話をし、情報を分かち合い、意見交換を続ける体制を整備する必要がある。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
日本の文化・思想・価値観といった「ソフト」な魅力でもって外国人を魅了するためには、文化事業や知的交流事業を通じて外国人が日本の魅力に触れる機会を増やし人物交流を通じて各国に親日層・知日層を形成し、日本語の学習や日本研究を通じて日本についてより深く理解する機会を作ることが有効である。具体的には以下の事業を実施することが適当である。
(1)文化事業や知的交流事業の実施による日本の魅力の発信
公演事業、展示事業、ワークショップ、映画祭といった文化事業を通じた日本文化の魅力の発信によって、諸外国国民が魅了される効果のみならず、外国文化の日本での紹介を通じて日本が諸外国に関心を持っている姿を伝えたり、日本と海外の芸術家の共同作業型事業を行うことによって、諸外国国民が「日本の心」に触れ合えたと感じられる効果の実現を目指す。また、知的交流事業の展開によって、各国の共通課題や国境を越えた問題について、日本の有識者の意見を発信し、解決に向けた貢献を行うとともに、人的ネットワークの構築を図り、国際的な知的対話の展開において日本のプレゼンスを示す。
(2)人物交流事業
各国において日本社会や文化、その背景にある日本人の価値観や思考形態に対する理解を深め、日本への親近感を醸成するとの観点からは、その核となる親日層・知日層を各国内に形成していくことが重要である。このような観点から、現時点で各国において指導的立場におり一定の影響力を有している者、並びに次世代を担う留学生や将来各界において指導的な立場に就くことが期待される青年層が日本の実情を体感し、日本人と直接触れ合うことができる機会を提供する人物交流事業を推進する。
(3)日本語・日本研究事業
経済的な理由(ビジネス機会の確保等)や文化的な理由(日本の伝統文化やポップカルチャー等の現代文化への関心等)によって日本に関心を抱いた者が日本に対する関心を維持しうる環境を整備するためには、日本語教育の振興が重要である。このため、海外日本語教育・学習の支援の取組を行う。
また、各国において、深い対日理解に基づいて日本に関する意見を発信できる層を確保する上で、海外における日本研究の振興は重要であるので、右促進のための措置をとる。
(4)大型文化事業
大型文化事業とは、政府首脳レベルでの決定や合意等に基づき外交上の節目に集中的に文化事業等を展開する周年事業に際して、政府として内容、規模の充実した根幹となりうる事業として実施するものである。同事業の実施により対象国の国民の親日感を醸成し、対日理解を促進する上で高い効果を得ることを目指す。
上記目的を効果的に実現するため、人脈形成、情報収集、要人往来に伴う機動的な運営といった観点から国自らが一定の層との関係構築を行いフォローアップしていくことが必要なもの、現地要人や親日団体との関係で国がカウンターパートになるべきものなど、国が行わなければ効果が出ない、または効果が減じるものについては、在外公館文化事業等の形で国が実施する。一方、それ以外の事業、特に日本語教育機関の支援や日本研究の拠点機関の育成等中長期的な視野からの取組が必要な事業については、独立行政法人国際交流基金が、外務省によって提示された政策に基づき、事業を企画・実施し、民間が行う文化・知的交流事業を支援する。
【施策の効率性】(3行以内)
独立行政法人国際交流基金事業について、(1)日本語能力試験の受験料徴収を通じた現地独立採算及び自己収入の確保を通じたより少ない政府予算での事業実施、(2)同一の相手先に対して、原則として4年以上の助成を実施しない「3年ルール」の導入、在外公館文化事業について、(1)文化無償資金協力との連携案件の実施、(2)第三国派遣型在外公館文化事業等を通じた効率的な事業実施に努めている。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
14,472,551 |
14,106,490 |
(注)本省分予算
(在外分予算 699,811 698,164 )
単位:千円
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
24.4 |
23.7 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
文化交流の施策目標は、対日理解の促進、対日好感度の向上、諸国民との相互理解の促進等であるが、これらの要素は、国際情勢の変化や相手国政府の対日政策の展開等の外的要因によって大きな影響を受けるものである。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の評価を行うが、以下の事情により、周辺的な指標を用いた暫定的な性格の評価となる。
文化交流の施策目標は、対日理解の促進、対日好感度の向上、諸国民との相互理解の促進等であるが、その成果を定量的に示すことは困難である。対日好感度等については、1つの定量的指標として世論調査等があるが、国際情勢の変化や相手国政府の対日施策等によって大きな影響を受けるものであり、施策の効果のみを抽出することはできない(文化交流の効果を定量的に測るためには、国際情勢の変化を所与として、文化事業を実施した結果としての現実の対日世論と、文化事業を実施しなかった場合という現実になかった状況における対日世論を比較する必要がある)。
また、文化交流事業の成果は、中長期的に現れるものであり、ある年度の終了時点において年度事業の効果を直ちに測ることは出来ない。
【評価の切り口】
(1)各種事業に対する裨益者等の反応
(2)文化交流の中長期的な効果を示す統計等
(3)文化交流事業のより効果的な実施に向けた取組の状況
【目標の達成状況(評価)】
(1)各種事業に対する裨益者等の反応
具体的には、以下の「事務事業」の評価にて記述されているとおり、各種事業は、裨益者等からは高い評価を受けている他、各種メディアにおいても取り上げられている。なお、独立行政法人国際交流基金の行う個別の事業に対する裨益者等の反応については、外務省が示した政策の下で独立行政法人国際交流基金が効果的に事業を実施したかを測るための指標であるため、独立行政法人評価の下で評価する。
(2)文化交流の中長期的な効果を示す統計等
平成17年5月1日現在の我が国に滞在する留学生数は、12万1812人であり、前年よりも4510人増加して過去最高となった。
また、平成16年7月に発表された海外の日本語学習者数(平成15年度独立行政法人国際交流基金調べ。調査は通常5年ごとに実施している)は、前回調査(平成10年度)よりも約12%多い235万6,745人にのぼり、着実に増加している。
(3)文化交流事業のより効果的な実施に向けた取組の状況
文化交流事業の更なる効果的な実施に向け、以下の取組を実施した。
(イ)外交政策に基づく戦略的な文化事業の実施のための取組
外交政策に基づいて戦略的に文化事業を実施することによって、文化事業の対日理解促進及び親日感醸成の効果をより高いものとするべく、平成17年度は以下の措置を実施した。
(i) 独立行政法人国際交流基金事業については、1)各事業分野についてそれぞれの国・地域の実情に沿った重点事業を明確化した中長期基本方針、2)国際交流基金海外事務所所在国及びロシア・中東等重点地域における国・地域別基本方針、また、相手国との交流の節目に行われる周年事業を外務省から基金側に伝達することを通じて、相手国からのニーズに応じた事業の実施を通じた親日感の醸成や、現地公館における人脈形成等、相手国外交上の必要性の高い事業を実施することを確保した。このため、国内事業については、真に外交上の必要性の高い事業についてのみ実施がなされ、日本語教材寄贈等、多数の機関に対して少額の支援を実施するスキームについては、必要性を見つつ厳選実施する等、事業の「選択と集中」が図られた。
(ii) また、民間の担い手との連携を図りつつ日本の対外イメージを重点的に向上させる企画として、外交関係樹立50周年といった外交関係上の節目等の特別な機会を迎える国や地域との間で文化交流事業を集中的な展開を図るものである「周年事業」についても、外務省全体の外交方針を踏まえつつ、全省的な協議を経て決定し、外交政策のツールとして効果的に用いるべく工夫を行っている。平成17年度においては、2007年に実施する周年事業のうち、資源を集中的に投入すべきものを再検討・決定した。
(ロ)地域別ニーズにきめ細かく応えるための取組
また、本省及び独立行政法人国際交流基金本部ベースでは必ずしも把握できない各国でのニーズに対してきめ細かい配慮を行うことによって、文化事業の対日理解促進及び親日感醸成の効果をより高いものとするべく、平成17年度も引き続き、独立行政法人国際交流基金事業の採否確定プロセスにおいて、在外公館が特に強く要望する事業を取り纏めたものである特記事項を各在外公館より提出させ、このうち本省として優先度が高いと思われる事業につき、独立行政法人国際交流基金に対し、その採用について検討を要請した。特記事項については、在外公館として立証することを要求する基準を設けるとともに、幾つかの記入例を示すことによって記載内容について在外毎にばらつきが出ないようにした。
(ハ)事業のより効果的な実施を図るための取組
文化事業の対日理解促進及び親日感醸成の効果をより高いものとするべく、以下の措置を実施した。
(i) 在外公館文化事業について、他スキームとの連携によってより効果的な事業実施を図るため、「文化無償関連型」事業を平成17年度より新設するとともに、「第三国派遣型」事業を強化実施した。
(ii) さらに、人物交流事業について、時宜の外交課題により柔軟に対応すべく機動的な案件の選定を可能とすることを通じて、招へい事業をより一層戦略的かつ効果的に実施していくため、平成17年度より既存のスキームを統合し、新たなスキームを立ち上げた。
(iii) 大使館推薦国費留学生の一層の質の向上を図るため、平成17年度に実施した平成18年度渡日分の大使館推薦国費研究留学生の選考実施に際し、新たに、応募者の基礎学力(大学での成績)に最低合格ラインを設定するとともに、全世界共通の語学(英語、日本語)試験を導入した。また、選考における透明性を確保するため、各在外公館では、従来からの取組を徹底し、現地学識者等の外部委員を加えた選考委員会の設置を原則化した。
(ニ)事業実施の必要性の不断の見直しのための取組
基盤強化等の所期目的が達成された機関に対する援助を新たなニーズが生じている他の機関へ効果的に移行するために、独立行政法人国際交流基金による日本語・日本研究に係る支援については、平成16年度より、継続しての助成は原則として3年を上限とすることとした。
(ホ)より少ない費用での効果的な事業の実施を行うための取組
独立行政法人国際交流基金が海外での実施を所掌する日本語能力試験について、実施体制の見直しを進めた。その結果、平成16年度予算において、10百万円であった日本語能力試験収入について、平成18年度予算において、80百万円を計上することができた。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて進展があった」
(理由)先述の通り、文化交流の施策目標は、諸外国国民の対日理解の促進、対日好感度の向上、諸国民との相互理解の促進等であるが、文化交流事業の成果は中長期的に現れるものであり、ある年度の終了時点においてその年度の事業の効果を把握できないのみならず、国際情勢の変化や相手国政府の対日施策等の外部要因によって大きな影響を受ける。よって、文化事業の効果については、上述のような周辺的なデータにより判断せざるを得ない(よって、達成の程度についても直ちに把握することができない)が、在外公館や国際交流基金の実施している文化事業の裨益者の満足度も高く、日本語学習者数等、一部のデータについては前向きな統計が得られている。さらに、文化事業のより効果的な実施を確保するための様々な取組が行われているので、目標の達成に向けて進展があったと評価することができる。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)
新たに発生したニーズに応じて、文化交流事業を強化すると同時に、事業の「選択と集中」、他団体や他スキームとの連携の強化、招へい事業のフォローアップの強化、国際交流基金における自己収入の確保等によって、より効果的な事業の実施に努めていく。個別具体的には、各「事務事業」の事業の総合的評価の「今後の方針について」等において記載されているとおり。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
各国国民の対日理解の促進、親日感の醸成を図る必要性が高まる中、文化交流事業を拡充強化していく。
【事務事業の扱い】
- 日本の魅力の発信(在外公館文化事業・国際交流基金事業)
→ 拡充強化
- 人物交流事業
→ 今のまま継続
- 日本語の普及、海外日本研究の促進
→ 拡充強化
- 大型文化事業
→ 内容の見直し
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
阿川尚之 慶應大学総合政策学部教授
(注:下記の所見は、施策13-1~13-3まで共通。)
(1)政策評価は、政策の目標・手段・成果のそれぞれについて、また相互の関係について行なうべきものと考える。この観点に立って本自己評価を読むと、目標が正しく、成果が認められるとしても、用いられた手段によって当該成果がもたらされたものかどうか、時にあいまいである。たとえば「海外広報」について「目標の達成に向けて進展があった」とし、その理由として、「海外における世論調査では一般的に我が国に対する好意・高い評価が見られる」ことを挙げる。しかし「国際文化交流の促進」に関しては、「(世論調査は)国際情勢の変化や相手国政府の対日施策等によって大きな影響を受けるものであり、施策の効果のみを抽出することは出来ない」と記しており、同じ自己評価のなかで見解の相違が見られる。
(2)理想的には、特定の政策手段と目標の実現度のあいだに、明確な因果関係があるかどうかにつき、より詳細な検討が必要であろう。ただ本自己評価が指摘するとおり、対外広報文化事業においては目に見える成果が直ちに得られることは少ないので、むしろ中長期的な成果を求めるべきであろう。外部要因の影響が大きいため、特定手段による目標実現度の計測が困難であることも、指摘のとおりである。
(3)だとすれば、「評価の結果(目標の達成状況)」に関して、「類型化した表現で自己評価する」との指示にしたがい、「目標の達成に向けて進展があった」と記述することに、どれほどの意味があるのだろうか。むしろ、さらに一歩踏み込んで、対外広報文化事業の性格に内在する評価の難しさを、丁寧に説明していることを、評価したい。この点については、さらなる分析が期待される。
(4)ただ、「国際文化交流の促進」に関する当該回答で、国際交流基金の行なう個別事業について、独立行政法人評価で別途評価すると記すのは、いかにもお役所仕事であり、不親切である。国民の目から見れば、外務省と国際交流基金がそれぞれ行なう文化事業は車の両輪であり、総合的に評価すべきものである。別々に評価するのは、本自己評価の意義を低下させよう。
(5)以上、気づいた点を批判的に述べたが、外務省の広報文化事業は、その効果についての包括的・総合的な評価が難しくても、今後もやり続けねばならない重要な仕事である。数年前まで在外公館という現場で広報文化の仕事にたずさわったものとして、人的資金的資源の制約のなかで個々の担当官が地道に仕事をしている姿を見た。対外広報文化事業の成果は、こうした個々の担当官の努力の総和であり、この観点からも外務省の広報文化事業を今後とも見守りたい。
(6)結論として、本自己評価は、そうした現場の、また個々の事業についての実情をふくめ、外務省全体としてこの分野でどのような目標を立て、どのような手段を用い、どのような成果を上げてきたかについて、まとまった情報を提供するものであり、積極的に評価したい。ただその際、ただ単に広報文化交流部、あるいは外務省だけの視点からではなく、オールジャパンとして他省庁、民間にあるリソースを手段として結集し、いかなる目標を立て、いかなる成果を上げるべきか、それだけの戦略性を有して仕事をしているかどうかも、今後は自己評価の対象にすべきだと考える。
(7)限られた予算のなかで、本分野で政府ができることには限界がある。だとすれば、外務省広報文化交流部がなしうる最大の貢献は、日本の広報文化外交の枠組みを構築するため、これまで集積した知見をもとに、アイディアを提供すること。また対外広報文化の仕事にたずさわる我が国の他のプレイヤーと、知的戦略的対話を継続的に実施し、日本全体としての広報文化外交の力を強化すること。その二つだと考える。
(8)最後に付け加えれば、本自己評価を行なうこと自体に、外務省の対外広報文化事業を国民に紹介し、理解を求める広報活動の一部だという視点が欠けていると感じた。記述は専門的で、不親切である。文章が硬い。典型的な役所の表現が散見される。もっと広報マインドをもった、わかりやすく、読みやすい自己評価を、今後期待する。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
3つの「評価の切り口」の観点から各々について具体的な取組の成果を可能な限り数値を用い示しており、また「日EU市民交流年」等市民も参加する形で施策の目標に向けて進展していることが適切に評価されている。
【事務事業の評価】
事務事業名:文化事業や知的交流事業の実施による日本の魅力の発信
事務事業の概要
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日本文化、思想、価値観等の魅力を諸外国国民に伝え、対日理解や信頼を深め、日本への共感を醸成し、ひいては知日家・親日家を養成していくことを目的として、在外公館や独立行政法人国際交流基金を通じて、公演事業、展示事業、ワークショップ、映画祭等といった日本文化の海外での紹介事業を実施している。
また、各国の共通課題や国境を越えた問題について、日本の有識者の意見を発信することによって、解決に向けた貢献を行うと共に、人的ネットワークの構築を図り、国際的な知的対話の展開において日本のプレゼンスを示すことを目的として、シンポジウムの開催やフェローシップの供与といった知的交流事業を実施している。
さらに、日本全体として諸外国市民の対日理解促進、親日感の醸成、相互理解の促進に取り組むために、民間や地方自治体といった文化・知的交流の担い手と広く対話をし、情報を分かち合い、意見交換を行うための取組を実施している。
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有効性
(具体的成果)
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(1)在外公館文化事業
在外公館文化事業については、平成17年度中は、主催・共催で1,609件、協力・後援で1,374件実施した(平成16年度は、主催・共催で2,207件、協力・後援を1,484件実施)。地域別の内訳は以下の通り。
年度 |
地域 |
主催・共催 |
協力・後援 |
合計 |
平成17年度 |
北米 |
221 |
232 |
453 |
中南米 |
230 |
154 |
484 |
欧州 |
388 |
557 |
945 |
ロシア・NIS |
199 |
60 |
259 |
大洋州 |
108 |
79 |
187 |
アジア |
216 |
246 |
462 |
中近東 |
81 |
28 |
109 |
アフリカ |
66 |
18 |
84 |
合計 |
1,609 |
1,374 |
2,983 |
平成16年度 |
北米 |
247 |
223 |
470 |
中南米 |
614 |
189 |
803 |
欧州 |
383 |
378 |
761 |
ロシア・NIS |
160 |
68 |
228 |
大洋州 |
130 |
133 |
263 |
アジア |
475 |
421 |
896 |
中近東 |
110 |
32 |
142 |
アフリカ |
88 |
40 |
128 |
合計 |
2,207 |
1,484 |
3,691 |
また、国際交流基金との連携のもとに行っている第三国派遣型在外公館文化事業(日本以外(主に先進国)に居住する日本文化の専門家を第三国(主に途上国)に派遣し、日本文化紹介事業を実施せしめるもの)については、平成16年度より開始し、15か国において24件(事業の実施は21都市)(平成16年度は4件11都市)実施した。また、文化無償資金協力との連携によって実施する在外公館文化事業について、平成17年度より開始し、29か国において48件(事業の実施は41都市)実施した。
また、平成17年度は、観客動員数、観客の反応、後援に来場する相手国高官のレベル・反応、相手国メディアの反応といった諸点を総合的に勘案して決定する各事業の成果の各公館の自己評価(A~Dの4段階)において、A(外交目的達成のために当初の予定通りの十分な成果をあげた)の評価が下された案件は主催・共催事業1,609件のうち1,205件(74.9%)であった(なお、平成16年度中は2,207件中1,590件(72.0%))。
(2)独立行政法人国際交流基金事業
(イ)文化事業
日豪交流年のオープニングを記念して平成18年2月から3月にかけて行われた日本を代表する和太鼓奏者の林英哲氏らによる公演は非常に好評を博した。テレビ、新聞等のマスコミにも盛んに採り上げられた(報道数39件)。
「身体の夢」展、「アジアのキュビスム展」は日韓友情年の一環として、また「日本の知覚」展、「YOKAI」展、「日本の磁器」展及び「坂本一成」展は日EU市民交流年の一環として開催され、一連の日本文化紹介事業の中でも一際存在感のある事業となって、周年事業に大きく貢献した。「坂本一成」建築展は、企画展を開催する機会の少ない中小国で、特に、ノルウェー、エストニア、チェコでは地方都市で現代日本建築に係る質の高い展覧会として開催が実現し共催機関等関係者からも、一般観客からも高い評価を得た。各々の事業の具体的な入場者数及び報道数は以下のとおり。
- 「身体の夢」展 入場者数21,300名、報道数30件
- 「アジアのキュビスム」展 入場者数22,669名、報道数26件
- 「YOKAI」展 入場者数17,952名、報道数130件
「日本の知覚展」は日・EU交流年のひとつとしてオーストリア並びにスペインにて開催された、日本現代美術を紹介する大規模な展覧会であり、オーストリアの中ではウィーン以外の都市として、旧東欧にも地理的に近いグラーツ及びこれまでに日本紹介の機会が比較的なかった南欧地域で日本現代文化を紹介する貴重な機会となった。これまでに紹介されてきたステレオタイプの日本像を打ち破る斬新な視点が各国専門家の間で注目を浴びた。一般観客においても、スペイン、ビーゴ現代美術館では2003年開館以来、最大の観客動員数になるなど、日本文化に対する潜在的な欲求の掘り起こしにもつながった。入場者数は計44,443名(グラーツ23,051名、ヴィーゴ21,392名)、報道数は計351件(グラーツ64件、ヴィーゴ287件)であった。
(ロ)知的交流事業
(a) 平成17年7月に、韓国国際交流財団及び中華全国青年連合会と共同で日中韓次世代リーダーフォーラム2005を実施し、参加国の各界若手リーダーが計14名集まり、「北東アジア共同体構築のための日中韓協力」について話し合ったり、各国の要人と意見交換するなどしながら、信頼関係を築いた。国内では読売新聞が、韓国では文化日報・連合通信が、中国では新華社通信等が紹介記事を掲載し、相互理解の幅を広げる試みとして、好意的に報道した。
(b) 平成17年11月に、第2回日・EUシンクタンク円卓会議を共催し、日本とEUが国際社会においてともに直面する課題について、両地域のシンクタンク等の研究者が意見を交わし、その解決方法を模索することを目的にラウンドテーブルを開催した。同年1月に東京で開催した第1回円卓会議に続き、日本側は総合研究開発機構(NIRA)、欧州側は欧州政策センター(European Policy Centre (EPC))と共催。第2回会議では、第1回に引き続きグローバル・ガバナンスを包括的なテーマに据えながら、(1)少子高齢化・人口減少(2)地域統合という2テーマについて、専門家が日本と欧州の経験を分かち合い、課題について討議した。日欧のシンクタンク関係者、学者など約30名が参加し、2日間に渡って活発な議論が繰り広げられた。
(c) 平成17年12月に、第2回日・アラブ知的交流アジェンダ・セッティング会議を開催し、日本及びエジプト、ヨルダン、ア首連、チュニジアの国際政治・経済等の専門家が、前回エジプトでの第1回会合に引き続き、東京で一堂に会し、これまで不十分であった政策研究分野における日・アラブ間の対話と協力において優先的に取り上げるべきアジェンダ、及びアジェンダ毎の有効な取り組み方法を検討した。あわせ、日本国内の市民の関心に応えるべく、一般公開のシンポジウムも開催した。読売新聞社と共催で実施した一般公開シンポは、12月16日の読売新聞朝刊に見開き2面で討議概要が紹介されたほか、12月24日のDAILY YOMIURIでも全面1ページに要約が掲載された。
(d) 平成18年3月に、村上春樹の作品と翻訳をテーマとし、世界16か国より18人の翻訳家・評論家を招へいして、東京、札幌、神戸にてシンポジウム/ワークショップを行った(共催機関:毎日新聞社)。東京会場のシンポでは、定員の倍に上る1,000人を超える事前申込があり、実施後のアンケートでは94%が事業の内容を評価したほか、新聞9紙、TV2局、雑誌2誌での報道があった。春樹作品が地球規模で読者を獲得し、その国の文化状況に応じ多様に受け止められていることが確認された。
(ハ)文化交流の担い手との連携
平成18年2月に、パネル・ディスカッション「外務省と語る国際交流」を実施し、「異文化の創造的受容~地域に活力をもたらす人と人との交流を目指して」をテーマとして、日本の地域社会がいかに諸外国の人材を惹きつける魅力を保ち発展していくことができるのかを念頭に、新たな魅力創造の源泉ともなり得る異文化交流のあり方につき議論がなされた。同事業には、地方自治体や民間交流団体等の関係者約120名が参加し、4名のパネリストは既に実践中の交流事例の成果や課題を発表し、政府が果たすべき役割について論じた。実施後のアンケートでは、「様々な分野の良い交流事例を知ることができた」、「今後の自分たちの活動にも参考とできるような例が多かった」、「他の国際交流主体とのネットワーク形成に役立った」との意見が寄せられるなど、各交流主体間のネットワーク構築及び地域の国際交流の推進に寄与した。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
1.理由
(1)既存の取組の成果について
上記のように、在外公館文化事業及び独立行政法人国際交流基金事業については、入場者数、報道件数、裨益者の反応等の点において良好な結果が得られている。また、独立行政法人国際交流基金事業については、(イ)各事業分野についてそれぞれの国・地域の実情に沿った重点事業を明確化した中長期基本方針、(ロ)国際交流基金海外事務所所在国及びロシア・中東等重点地域における国・地域別基本方針、また相手国との交流の節目に行われる周年事業、(ハ)在外公館が実施を強く要望する事業のうち、特に外交上の必要性が高いと思われるものをとりまとめた「特記事項」を外務省から基金側に伝達することを通じて、相手国からのニーズに応じた事業の実施を通じた親日感の醸成や、現地公館における人脈形成等、相手国外交上の必要性の高い事業を実施することを確保している。
(2)新たなるニーズについて
他方、下記のような新たなニーズが発生しており、そのために事業を拡充強化していく必要がある。
(イ) 情報化の進展や世界各地における民主化の進展を契機として、一般大衆が外交に与える影響が増加している。在外公館文化事業においては、現地公館における人脈形成のための活用や、要人往来等短期的に生じた外交上のニーズに応じた機動的な事業の実施に重点がおかれていたが、今後は、一般大衆をも対象にした在外公館文化事業の実施が必要になっている。このため、(1)単に公演や展示等、「見る」「聞く」といった裨益者が受け身となる事業だけではなく、日本語スピーチ大会、日本食料理講習会、マンガの書き方教室等、日本文化を身をもって「体験する」事業の実施、(2)大衆に対して訴求力を有する「ポップカルチャー関連」の事業実施、(3)首都のみならず「地方」における事業の展開が必要である。
(ロ) また、中国や韓国等、歴史に関連した種々の摩擦が生じやすい国については、単年の周年事業等のみならず、それらの大型文化事業で生じたモメンタムを有効に活用し、継続的なフォローを実施していくための事業の展開が必要である。
2.今後の方針
(1) 国際交流基金事業については、引き続き、外務省と国際交流基金の間の不断のコミュニケーション、外交上の状況の変化に応じた方針の改善等を通じて、外交上の必要性の高い事業が実施されることの確保に努める。
(2) 在外公館文化事業については、上記1.(2)の記述に基づき、市民参加型事業、ジャパン・クール事業及び地方展開が他事業の拡充を行い、さらに執行方法の見直しを図ることによって、同スキームの多面的機能の強化・拡充を図る。
(3) 知的交流事業については、多くの成果が挙げられているものの、日本からの知的発信の弱さがなお指摘されているので、引き続き日本からの知的発信の強化に努めていく。
(4) 文化交流の担い手との連携に係る取組も引き続き実施していく。特に、ポップカルチャー分野について、産業関係者や関連団体等との連携を深め、効果的かつ効率的に関連事業を企画・実施していく。
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事務事業名:人物交流事業
事務事業の概要
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外務省及び独立行政法人国際交流基金は、我が国の政治、経済、文化、社会等について正しい理解を深めてもらうことによって、各国における知日家・親日家層の形成を促進し、もって中・長期的に我が国と諸外国との外交関係の円滑化を図ることを目的として、以下をはじめとする人物交流事業を実施している。
事業
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取組みの内容
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留学生交流の推進
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- 在外公館を通じた国費留学生の募集・選考
- ウェブサイト「日本留学総合ガイド」等を通じた日本留学広報及び留学生アドバイザーによる相談業務の実施
- 「元日本留学者の集い」の開催や帰国留学生会の組織化支援等を通じたフォローアップ事業の実施
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招へい事業の実施
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諸外国における正しい対日理解を促進するため、外国の政・経・官・学・メディア・文化・芸術・スポーツといった分野において、一定の影響力を有する人材もしくは将来指導的な立場に就くことが見込まれる者を我が国に招へいし、関係者との意見交換や産業・文化施設の視察等を実施
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「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)への協力
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- 在外公館を通じた参加希望者の募集・選考及び渡日前オリエンテーションの実施
- 世界15か国に50支部あるJET同窓会組織(JETAA)の活動支援を通じたフォローアップ事業の実施
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有効性
(具体的成果)
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事業
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具体的成果
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留学生交流の推進
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- 平成17年5月1日現在の我が国に滞在する留学生数は、12万1812人であり、前年よりも4,510人増加して過去最高となった。
- 外務省としては、大使館推薦国費留学生の一層の質の向上を図るため、平成17年度に実施した平成18年度渡日分の大使館推薦国費研究留学生の選考実施に際し、新たに、応募者の基礎学力(大学での成績)に最低合格ラインを設定するとともに、全世界共通の語学(英語、日本語)試験を導入した。また、選考における透明性を確保するため、各在外公館では、従来からの取組を徹底し、現地学識者等の外部委員を加えた選考委員会の設置を原則化した。
- 約50の在外公館には留学生アドバイザーを委嘱して相談業務・日本留学広報を行った(多い公館では、一般からの照会数は年間2万件以上にのぼった)。
- ウェブサイト「日本留学総合ガイド」掲載内容の一部について、平成17年度からアラビア語及びロシア語版を開設した(注)。同サイトは、平成18年3月には、前年同月比で約34%の増加となる220万件以上の月間アクセスを得た(うち日本語56万件、英語118万件、中国語35万件、韓国語4万件)。
(注) 同サイトは日・英・中の3か国語版があるほか、平成16年度から掲載内容の一部についてフランス語、インドネシア語、韓国語、タイ語、スペイン語、ベトナム語版を開設している。
- 留学生受入れのフォローアップ事業として、各国の元日本留学生の組織化の促進や帰国留学生会の活動支援を行った。平成17年度は、東南アジア、中国・韓国・モンゴル、南西アジア・中東・中央アジアの26か国・75人の帰国留学生を招へいして「元日本留学者の集い」を開催した。こうしたフォローアップ活動の結果、南西アジアについては、平成17年度の「集い」において、帰国留学生会の地域連合組織である「南アジア元日本留学者連合会(SAFJUAA)」の発足署名式が行われるに至った。また、ギリシャ、ウズベキスタン、セルビア・モンテネグロなどでも帰国留学生会発足の動きがあり、各地で帰国留学生の組織化が進展した。帰国留学生会の数は平成16年度末から13増加し、世界89か国、251組織となった。
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招へい事業の実施
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- 平成17年度より、招へい事業を一層戦略的かつ効果的に実施していくため、既存のスキームを統合し、新たなスキーム「21世紀パートナーシップ促進招へい」を立ち上げ、同年度には世界114か国・国際機関より412人を招へいした。案件選定プロセスを改善した結果、常に変化する国際情勢と外交課題により柔軟に対応した招へい事業を実施することが可能となった。また、独立行政法人国際交流基金においては、「文化人短期招へい」や「知的リーダー交流」等のプログラムを用い招へい事業を実施した。
- 被招へい者の本邦滞在中は、官民の関係者との意見交換や関連施設の視察、市民との交流等を内容とするプログラムが組まれた。帰国後、被招へい者からは、「政府関係者との会談、愛知万博視察と閉会式出席、民間企業訪問等多様な日程を準備して頂き、大変有意義な訪日であった。多くの方々との会談、視察を通じて、日本に対する理解と友情を深めることが出来た」、「訪問を通じ日本の実情を実体験し、今後日本との更なる関係強化に努めていく決意を新たにした」等の感想が寄せられているほか、在外公館からも「政治・経済・文化等多方面の講義・訪問を実施し、日本に対する理解を一層促進することが出来た。日本青年との交流機会の提供は、一般の日本人の考えを知りたいという参加者の要望に適しており、好評であった」等との報告を受けている。また、被招へい者の本国において、本招へい事業について新聞で報じられたり、帰国後に被招へい者が自らの訪日成果・所感について寄稿する等の副次的な広報効果もあった。
- 我が国の伝統スポーツを通じて対日理解の促進を図る「スポーツ交流支援事業」として、平成17年度はアフガニスタン、イラク、リビア、シリアから柔道関係者12名を14日間招へいした。被招へい者一行は講道館での国際合宿及び「嘉納治五郎杯国際柔道大会」に参加した。本招へいは、自国では練習も思うにまかせない状況にあるイラクからの参加者はもとより、各被招へい者にとって本場でトレーニングする貴重な機会となった。また、本招へいの模様は日本のメディアで報じられ、厳しい環境下で研鑽に努めるイラク選手の言葉が紹介される等、広報効果も得られた。
- 平成17年4月に中国各地で発生したデモに見られたように、中国国内における対日感情の悪化が急速に顕在化しており、このまま放置しておくことは、外交や民間の経済活動にマイナスの影響を及ぼすおそれがあるという認識の下、新日中友好21世紀委員会の提言する日中若者世代の交流促進のために、日中21世紀交流事業(25億円)を平成17年度補正予算で計上した。このうち、5億円については日中友好会館に拠出し、平成18年度中にホームステイなどを通じた短期の交流のため、1,100名程度を招へいする予定である。また、残りの20億円については、独立行政法人国際交流基金等の資金を合わせ、計100億円の日中21世紀基金を立ち上げた。これらについては、運用益によって、高校生を中心とする中国の青年の中長期招へい事業、日中市民交流ネットワークの整備事業、中国国内の日中市民の対話・交流を促進に向けた拠点整備事業を実施することを予定している。なお、中国側においても、新日中友好21世紀委員会の提言に基づき、若者世代の交流促進のための事業の立ち上げの準備を進めている。
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「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)への協力
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- JETプログラムによって平成17年度に我が国が招致した外国青年は、約6,000名にのぼり、昭和62年度の事業開始以来、累計招致者数は、平成17年度で4万4,000人を突破した。本件事業は、次世代を担う青年層の相互理解を促進するものとして海外でも高く評価され、例えば、平成17年5月の天皇皇后両陛下のアイルランド御訪問の際に、同国のアハーン首相より、JETプログラムが日・アイルランド間の友好関係発展に大きく寄与したとの発言があった。
- 世界15か国に50支部あるJET同窓会組織(JETAA)の活動支援を通じ、若い世代を中心とした対日理解の促進、親日感の醸成に努めた。平成17年6月に神戸で開催されたJETAA国際総会では、平成17年度内の目標として、JETAA会員の包括的データベース(CMS)の立ち上げやJETAAの認知度を向上するためのPR冊子の作成について議論がなされたほか、地元高校生との交流事業(コラージュの共同製作)が実施された。その結果、総会参加者間に共通の目標を達成するための結束感を醸成し、またこれら参加者の我が国との草の根レベルの関係強化を促進する効果があった。その後、右国際総会のフォローアップとして、外務省はCMS構築への支援を開始した。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
1.理由
人物交流事業は、各国における知日家・親日家層の形成を促進する上で効果が高く、上記のように、効果の高さを示す各種事例も報告されている。よって、今後も中長期的な視野から継続的に実施していく必要がある。
2.今後の方針
特に、以下の点に留意しつつ、招へいした人物に対するフォローアップに関する施策の強化等を通じ、事業の一層の効果的・効率的な実施を図っていく。
(1)より質の高い留学生の確保に向けて在外公館の情報提供・選考機能を強化していく。
(2)21世紀パートナーシップ促進招へいをはじめとする招へい事業をより一層戦略的かつ効果的に実施していくため、被招へい者に対するフォローアップの強化を図る。
(3)「日中21世紀交流事業」については、国際交流基金に新たに設置された「日中交流センター」において、予定された事業の着実な実施を図っていく。
(4)JETプログラムについても、元参加者が我が国との結びつきを維持するとともに、元参加者相互間の知日家・親日家ネットワークの形成が可能となるよう、CMSの本格的な運用開始を目指す。
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事務事業名:日本語の普及、海外日本研究の促進
事務事業の概要
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海外における日本語の普及は、諸外国における日本語学習を支援することによって、日本の政治、経済、社会、文化に対する諸外国の関心を高め、日本に造詣の深い海外の専門家を育成することにより、諸外国における日本の対外発信力を高める上で重要である。外務省は、各国における日本語教育及び日本研究の一層の振興を目的として、主に独立行政法人国際交流基金を通じて、日本語教育専門家の派遣、現地日本語教師の育成、教材寄贈、日本語能力試験の実施、日本研究拠点への支援等を行っている。 |
有効性
(具体的成果)
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(1)日本語普及の政策に関する取組
海外の日本語学習者数は着実に増加している(平成15年度国際交流基金調査では、10年前の調査より約45%増の235万6,745人)一方で、増大する需要に応えるために、限られたリソースの一層効果的な活用が必要となってきている。このため、外務省は、独立行政法人国際交流基金との戦略協議の実施や同基金の年度計画策定への助言等を通じて、同基金の事業が時宜の外交課題に柔軟に対応できる体制の確保に努めた。例えばインドにおいては、在外公館と独立行政法人国際交流基金が緊密に連携して現地政府に働きかけを行った結果、平成17年4月の小泉総理訪問を機に、日本語学習者数を今後5年間で3万人に増加させるとの目標の下、中等教育における外国語選択科目への日本語の導入に向けた検討が開始された。また、中国においては、在外公館による度重なる申し入れの結果、日本語能力試験の受験者数制限の撤廃に向けた取組が強化され、より多くの日本語学習者に受験機会が与えられることとなった。米国においても、国際交流基金の支援により、平成19(2007)年5月から、「APテスト(注)」科目に日本語が導入される予定である。
(注)「APテスト」:APはThe Advance Placement Programの略。高校生が大学の教養課程科目の一部を先取りできる制度であり、日本語がテスト科目となることで、学習者数の増加につながることが見込まれる。
(2)海外日本研究の支援に関する取組
独立行政法人国際交流基金は、平成17年度には東南アジア・南アジアにおいて日本研究実態調査を実施。中国においては、これまで拠点であった北京日本学研究センターの自立化努力を促すとともに、地方に日本研究ネットワークが拡大しつつあることを念頭に、中国国内の地方の拠点となる支援対象機関の選定を開始した。また、中東においては、日・中東対話の中で双方の地域研究促進の必要性が指摘され、新たに中東での日本研究拠点の立ち上げに向けた検討作業が開始された。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
1.理由
小泉総理の下で開催された「文化外交の推進に関する懇談会」が平成17年7月にまとめた報告書において、「日本語を学ぶことは対日理解にとって最も基本的で効果的なものである。日本語教育においても、多様化する学習目的や動機、関心や興味に対応し、研究者や芸術家等だけでなく、より広い層の人々を対象にすることで日本に関心を持つ人々の層を広げ、日本理解につなげていく必要がある」と指摘されているところ、従来のような既存のニーズに応えるための支援のみならず、新たな学習者を獲得するための積極的な施策を展開すべきである。また、海外の日本研究に対する支援は、各国に日本についての理解者を確保し、その国の世論において日本を理解している者の意見が反映されることを確保する上で非常に重要である。
2.今後の方針
外務省は、独立行政法人国際交流基金と密接に協力しつつ、「基金」ブランド(日本語教育における標準的な教育のノウハウや教科書・教材等のリソース、右に対応した日本語能力試験)を早急に完成させ、これを積極的に活用したモデル講座等の直接教育を展開するとともに、自己収入基盤を拡大することによって、増大しかつ多様化する諸外国における日本語需要に応えていく必要がある。
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事務事業名:大型文化事業の実施
事務事業の概要
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「大型文化事業」とは、政府首脳レベルでの決定や合意等に基づき具体的に文化事業等を実施する周年事業に際して、政府として内容、規模の充実した根幹となりうる事業として実施するものである。周年事業においては特にオープニングやクロージング、外交上意義ある日を中心にした集中的事業の実施など、人目を引く事業実施に配慮するとともに、地方自治体や民間団体、市民レベルの活動を含めた文化事業・交流事業を周年事業として認定することによって、オール・ジャパンとして特定国・地域との文化交流を集中的・戦略的に展開する。これにより、対日理解の促進、親日感の醸成、相互の信頼関係の構築といった効果について、単独の文化事業の積み重ねでは達成し得ないレベルで、実現しようというものである。
政府が内容・規模の充実したメインとなりうる大型文化事業を実施することによって、魅力ある日本文化を大いにアピールし、対日理解の促進・親日感の醸成を図ると共に、政府として周年事業等への深い関心とコミットメントを示し、他団体や市民レベルでの事業を慫慂する上での「呼び水」とすることが重要である。
平成17年度においては、「日・EU市民交流年事業」、「日韓友情年2005」、「日豪交流年」の3つの事業について大型文化事業としての予算を確保して事業を行った。
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有効性
(具体的成果)
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(1)日韓友情年2005
平成17年度の大型文化事業の予算については、民間団体等で構成された「日韓友情年2005」実行委員会が企画する事業を共催することにより効果的に事業を展開するよう努めた。
例えば、6月30日から7月3日の期間に、韓国の一般市民を対象として、日本と韓国の文化の相違点・相似点をわかりやすく理解してもらい、対日理解の促進及び日本への親近感を高めることを目的とした参加・体験型の展示事業「日韓文化交流展」を開催。期間中の来場者数は約23,500人に上り、来場者からは「ありのままの日本と、ありのままの日韓交流の現場を体験できた」「紙芝居、和太鼓、茶道、生け花の展示に日本文化の本質が見えたような気がした」といった声が寄せられた。
また、政府として、2005年10月、宝塚歌劇団による「ベルサイユのばら」韓国公演を支援した。3日間で3回の公演を行ったが、延べ9,000人以上の来場があり、観衆の反応も非常に好意的であったほか、韓国の3大新聞である「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」をはじめ、連合通信や英字新聞等に本件公演が多く取り上げられた。
また、2005年4月の「松竹大歌舞伎近松座公演」、同5月、7月の「その河をこえて、五月」日韓合作公演など、共同制作事業をはじめとした民間主導による事業が、文化庁及び国際交流基金の助成も得つつ、数多く実施されたが、その結果、本件事業として認定を受けた事業は、両国で700件を超えた。
(2)日EU市民交流年事業
平成17年度の大型文化事業の予算については、ポーランド・リトアニアで能楽協会による能公演を実施し、大変な好評を博し、現地紙でも大きく取り上げられ、対日理解促進に寄与した。
また、独立行政法人国際交流基金事業においても、日・EU市民交流年にあわせ、多くの主催事業をEU各国へ派遣した。5月にはスウェーデン・ポルトガル・独に伝統芸能である八王子車人形、10月には財団法人文楽協会との共催でスペイン・ハンガリーで文楽公演また狂言をスペインに派遣し、それぞれ好評を博した。
更に、在外公館文化事業のスキームを用い、ルクセンブルグ(2005年前半EU議長国)では、伝統的な着物に現代的なアレンジを加えた衣装等の「きものファッション・ショー」を開催したが、きものモデルにルクセンブルグの市民を起用するなど、市民参加型交流事業として好評を博した。また、英国(後半EU議長国)では、日EU市民交流年クロージング行事として、国際交流基金が「ストリングラフィ・コンサート」公演を実施する機会を捉え、公館文化事業としても演奏機会を設けた。右演奏会には、日英交流関係者、プレス関係者等を招待し、広報効果を高め、好評を博した。
これらの事業の結果、日EU市民交流年事業として認定を受けた事業は、約1900件を数えた。
(3)「日豪交流年」
2006年が日豪交流年であるため、オープニング事業が主となっているが、今後、多くの文化行事が予定されている。
国際交流基金事業においては、オープニング公演として、和太鼓奏者の林英哲一行をキャンベラをはじめ主要6都市に派遣し、現地人気和太鼓グループのタイコーズと共演した。入場チケットはすべて完売で、成功裡に終了した。
平成17年度の大型文化事業の予算については、豪州シドニーで観世流能楽協会による能公演を実施し、現地紙でも大きく取り上げられるとともに、多くの来場者より感動した旨の書簡が寄せられるなど、好評を博した。
在外公館文化事業のスキームを用い、シドニーにおいて、全豪オープニング行事として、琴、茶道、生け花デモを実施し、小池環境大臣、豪州外務貿易大臣により、交流年のオープニングを飾った。また、全日本学生柔道連盟一行がシドニーを訪問する機会に、日豪親善柔道大会、シドニー日本人学校でのデモンストレーション、豪州チームとの合同練習・柔道クリニック、シドニー・オープン柔道大会等を在外公館がアレンジするなどスポーツを通じた交流に大きく貢献した。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
1.理由
「日・EU市民交流年」、「日韓友情年2005」については、大きな成果をあげ、周年事業期間が終了したので廃止する。「日豪交流年」については、そのオープニング事業等につき、大きな成果を挙げたが、目的の達成に向け、同事業の終了する平成18年12月末まで事業を継続し、さらに一層の推進を図る。
2.今後の方針について
(1) イラク問題や中東和平問題等をはじめとして種々の不安定要因を抱えており、中東諸国の国民より一層の対日理解、親日感を得ていくことは、我が国の中東諸国とのコミュニケーションの円滑化につながり、ひいては、エネルギーの安定供給の確保、現地進出邦人企業をはじめとする我が国国民の安全にも寄与するため、2006年において「中東との集中的文化交流事業」を実施する。
(2) また、中国国内において顕在化している対日感情の悪化について、このまま放置しておくことは、外交や民間の経済活動にマイナスの影響を及ぼすおそれがあり、積極的な文化交流、人物交流を通じた国民レベルでの対日理解の促進が必要であるため、国交正常化35周年である2007年を「日中文化・スポーツ交流年」とし文化活動を実施していく。
(3) さらに、2007年は、「日タイ修好120周年」及び「インドにおける日本年」等として事業の推進を図っていく。
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【評価をするにあたり使用した資料】
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