I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
13-1 海外広報
総合計画課長 岡田隆
平成18年5月
施策の目標
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海外における対日理解の促進、対日親近感の醸成及び我が国の政策への理解の促進 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第162回国会における外交演説及び第164回国会における外交演説に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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海外広報事業として、我が国の政策についての理解促進を目的とする「政策広報」と、我が国の一般事情についての理解促進を目的とする「一般広報」を実施。
具体的には、在外公館における広報事業(講演会やシンポジウム・セミナーの実施、現地メディアへの発信等)、オピニオンリーダーの訪日招待等の人物交流事業、映像資料や印刷物等の広報用資料の作成、英語版外務省ホームページや在外公館ホームページ等インターネットを通じた広報を実施してきている。
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【施策の必要性】
我が国の政策(特に外交政策)及び一般事情に関し、正確で時宜を得た発信を行い、諸外国国民の対日親近感の醸成及び正しい対日理解の増進を図ることは、我が国の外交政策の効果的な展開及び安全保障に資するものであり、我が国の国際社会における地位・発言力の向上につながる。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
政策広報、一般広報のいずれについても、対象国・地域の広報環境、対象者、伝えるべき内容、期待する広報効果等、広報目的に応じて様々な手段・媒体を使い分けた。また、児童・生徒に対する広報は、日本に対する既成概念の薄い対象に対して行うものであり、特に効果が大きいと考えられる。さらに、広報に対するニーズの発掘及び広報効果の確認のため、外国における対日意識調査を実施した。
【施策の効率性】(3行以内)
在外公館事業の経費は随時稟請せしめ、政策上の要請に機動的に対処するとともに、効率的な予算執行を図っている。また、広報資料については利用状況調査の実施、人物交流事業では複数箇所巡回や一定の滞在期間の確保など、支出の効率化にも努めている。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
1,287,930 |
1,236,557 |
(注)本省分予算
(在外分予算 1,353,304 1,183,437)
単位:千円
人的投入資源 |
平成17年度 |
平成18年度 |
23 |
24 |
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
海外広報は、究極的には外国国民・政府の行動を変化させるために実施しているものであるが、当方の発するメッセージが外国国民に如何に受け止められ、如何に行動に反映されるかは、個々人の精神活動として行われるものであり、制御の範囲外である。また、世界の広報環境の多様性(言語の違いから、通信手段の発達度合、外国政府による統制に至るまで)が著しい。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の評価を行う。ただし、対日理解や対日親近感の醸成は中長期的・連続的に行われるものであり、施策の効果を単年度毎に計ることは困難。
【評価の切り口】
(1)広報事業が対象者にどれだけ届いているか(事業実施件数、事業参加人数、ホームページアクセス数等、対象者の反応)
(2)外国における対日論調、対日意識(報道ぶり、世論調査の結果等)
【目標の達成状況(評価)】
(1)以下のとおり、海外広報事業は対象者に到達していると考えられる。
(イ)在外公館においては、平成17年度、本省に対する報告があった範囲で、講演会約1,000件や、教育広報約2,000件を含む広報事業を実施。本邦より講師を派遣して実施した講演会においては、参加者の9割以上が好意的な回答をしている。
(ロ)本邦に招待したオピニオン・リーダーは帰国後訪日経験に基づく発言を行っている。また、招待したTV取材チームによる日本特集番組が放送されている。
(ハ)印刷物資料は一般広報用から政策広報用のものまで、目的別に使い分けているが、配布先の反応はおおむね好意的である。また、視聴覚広報資料であるジャパン・ビデオ・トピックスは世界100か国以上、200近いテレビ局で放映され、延べ約50億人が視聴したと推定される。
(ニ)インターネットホームページに対するアクセス(ページビュー)は、英語版外務省ホームページで対前年度比11%、在外公館ホームページで対前年度比52%、Web Japanで対前年度比35%増加した。
(2)他方、外国における対日論調の状況は以下のとおり。
(イ)英国BBCが世界33か国で行った世論調査では、31か国において、我が国が世界に良い影響を及ぼすとした回答が、悪い影響を及ぼすとした回答を上回っており、我が国に対する高い評価が見られる。ただし、中国及び韓国においては悪い影響を及ぼすとする回答が過半数を占めている。
(ロ)外務省が実施した対日世論調査では、米における調査では、有権者の91%、一般回答者の69%がそれぞれ日本を信頼できると回答し、豪における調査では日本についてのパーセプションで各項目に対する肯定的な回答が過半数を超える等、我が国に対して好意的な見解が示されている。
(ハ)他方、外国における対日論調については、平成17年が戦後60周年に当たったことから、歴史問題に焦点が当てられ、我が国に対する厳しい論調も見られた。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)
- 当省の実施する広報活動は一定程度対象者に届いていると考えられる。
- 海外における世論調査では一般的に我が国に対する好意・高い評価が見られる。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)
東アジア、特に中国を念頭に置いた広報の強化
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
現代文化の魅力等も活用しつつ、等身大の日本の発信を目指す。また広報事業の実施に必要な資料の整備を引き続き進める。
【事務事業の扱い】
- 政策広報→拡充強化
- 一般広報→今のまま継続
- 教育広報→今のまま継続
- 広報環境調査→今のまま継続
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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○
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【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
阿川尚之 慶應大学総合政策学部教授
(注:下記の所見は、施策13-1~13-3まで共通。)
(1)政策評価は、政策の目標・手段・成果のそれぞれについて、また相互の関係について行なうべきものと考える。この観点に立って本自己評価を読むと、目標が正しく、成果が認められるとしても、用いられた手段によって当該成果がもたらされたものかどうか、時にあいまいである。たとえば「海外広報」について「目標の達成に向けて進展があった」とし、その理由として、「海外における世論調査では一般的に我が国に対する好意・高い評価が見られる」ことを挙げる。しかし「国際文化交流の促進」に関しては、「(世論調査は)国際情勢の変化や相手国政府の対日施策等によって大きな影響を受けるものであり、施策の効果のみを抽出することは出来ない」と記しており、同じ自己評価のなかで見解の相違が見られる。
(2)理想的には、特定の政策手段と目標の実現度のあいだに、明確な因果関係があるかどうかにつき、より詳細な検討が必要であろう。ただ本自己評価が指摘するとおり、対外広報文化事業においては目に見える成果が直ちに得られることは少ないので、むしろ中長期的な成果を求めるべきであろう。外部要因の影響が大きいため、特定手段による目標実現度の計測が困難であることも、指摘のとおりである。
(3)だとすれば、「評価の結果(目標の達成状況)」に関して、「類型化した表現で自己評価する」との指示にしたがい、「目標の達成に向けて進展があった」と記述することに、どれほどの意味があるのだろうか。むしろ、さらに一歩踏み込んで、対外広報文化事業の性格に内在する評価の難しさを、丁寧に説明していることを、評価したい。この点については、さらなる分析が期待される。
(4)ただ、「国際文化交流の促進」に関する当該回答で、国際交流基金の行なう個別事業について、独立行政法人評価で別途評価すると記すのは、いかにもお役所仕事であり、不親切である。国民の目から見れば、外務省と国際交流基金がそれぞれ行なう文化事業は車の両輪であり、総合的に評価すべきものである。別々に評価するのは、本自己評価の意義を低下させよう。
(5)以上、気づいた点を批判的に述べたが、外務省の広報文化事業は、その効果についての包括的・総合的な評価が難しくても、今後もやり続けねばならない重要な仕事である。数年前まで在外公館という現場で広報文化の仕事にたずさわったものとして、人的資金的資源の制約のなかで個々の担当官が地道に仕事をしている姿を見た。対外広報文化事業の成果は、こうした個々の担当官の努力の総和であり、この観点からも外務省の広報文化事業を今後とも見守りたい。
(6)結論として、本自己評価は、そうした現場の、また個々の事業についての実情をふくめ、外務省全体としてこの分野でどのような目標を立て、どのような手段を用い、どのような成果を上げてきたかについて、まとまった情報を提供するものであり、積極的に評価したい。ただその際、ただ単に広報文化交流部、あるいは外務省だけの視点からではなく、オールジャパンとして他省庁、民間にあるリソースを手段として結集し、いかなる目標を立て、いかなる成果を上げるべきか、それだけの戦略性を有して仕事をしているかどうかも、今後は自己評価の対象にすべきだと考える。
(7)限られた予算のなかで、本分野で政府ができることには限界がある。だとすれば、外務省広報文化交流部がなしうる最大の貢献は、日本の広報文化外交の枠組みを構築するため、これまで集積した知見をもとに、アイディアを提供すること。また対外広報文化の仕事にたずさわる我が国の他のプレイヤーと、知的戦略的対話を継続的に実施し、日本全体としての広報文化外交の力を強化すること。その二つだと考える。
(8)最後に付け加えれば、本自己評価を行なうこと自体に、外務省の対外広報文化事業を国民に紹介し、理解を求める広報活動の一部だという視点が欠けていると感じた。記述は専門的で、不親切である。文章が硬い。典型的な役所の表現が散見される。もっと広報マインドをもった、わかりやすく、読みやすい自己評価を、今後期待する。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
海外広報事業の対象者への到達及び対日理解の促進について、事業実施件数、ホームページアクセス、BBC(英国放送協会)世論調査の結果等幅広い観点から定量的に成果を把握するべく評価が行われている。
【事務事業の評価】
事務事業名:政策広報(特に、理解と信頼を目指した戦略的広報及び、国益擁護のための情報発信)
事務事業の概要
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外交政策の遂行を容易にするため、外交政策をはじめとする我が国政府の政策や立場についての広報を行うことにより、これらへの諸外国国民による理解を増進する。
特に、平成17年は戦後60周年に当たったことから、歴史問題に関する我が国の政策や立場、戦後の平和国家としての歩みや国際貢献を発信することに注力した。
インターネットを通じた広報として、英語版外務省ホームページや在外公館ホームページ等がある。昨年度は歴史問題に関する政府の立場を簡潔にまとめた「歴史問題Q&A」を作成し外務省ホームページに掲載するなどした。また、教科書問題への対応の一環として、我が国の中学校用歴史教科書の近現代史の近隣諸国関係部分を英語、中国語、韓国語に翻訳しウェブサイト(外部業者に運営委託)に掲載する事業を行った。
また、戦後60周年パンフレット「平和国家としての日本の歩み」をはじめとする各種政策広報パンフレットの作成と配布、定期刊行物(「ジャパンエコー」誌及び「英語版外交フォーラム」誌)の購入と配布を行った。
在外公館においては、日本から派遣する講師や館員による講演会を行っている。また、外国のオピニオン・リーダーの招待を実施した。
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有効性
(具体的成果)
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インターネットを通じた広報は、同時に多くの対象に情報を伝達することが可能であり、非常に有効な手段である。年間合計で、外務省英語版ホームページは合計約2,025万ページビュー、在外公館ホームページは合計約8,200万ページビューを記録した。また、教科書翻訳ウェブサイトでは、開設した平成17年9月から平成18年3月までに、合計約42万ページビューを記録した。
政策広報パンフレットは合計57,500部、定期刊行物(ジャパンエコー誌、英語版外交フォーラム誌)を合計83,800部配布したが、これら印刷物資料は、政策の説明に当たっては不可欠なものであり、有効であったと評価できる。
派遣講師による講演会では、9割以上の参加者が肯定的な評価をしており、広報効果があったものと考えられる。
日本に招待されたオピニオン・リーダーが帰国後、我が国に対する理解に基づく発言をしている例も報告されており、有効であったと考えられる。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
民主化・グローバル化が進む世界において、我が国が外交政策を遂行するに当たって、外国国民の理解を得る必要性は増大しており、一層の努力を行う必要がある。特に、歴史問題は近隣国との関係で引き続き大きな懸案であることが予想され、今後ともこれに関連する広報には注力していく必要があると考えられる。
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事務事業名:一般広報(含む、日本の魅力の発信を通じたビジット・ジャパン・キャンペーンの推進)
事務事業の概要
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政策広報を行う前提としての、我が国に対する基本的な理解の促進や、親近感・好感情を醸成するための、我が国の一般事情に関する広報活動。また、日本の様々な魅力を発信することにより、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)にも貢献した。
このため、一般広報用ウェブサイトWeb Japanでは我が国に関する基本情報を掲載するとともに、ファッションやテクノロジーなど、海外から関心の高い現代日本事情の紹介を行った。
また、印刷物資料として、柔らかい話題や美しい写真を通じて日本を紹介する季刊誌「にっぽにあ」を14か国語、合計約69万部配布する等した。
さらに、毎月3~4トピック、15分程度の映像資料「ジャパン・ビデオ・トピックス」を在外公館に送付し、現地のTV局に提供した。また、外国のTV取材チームを本邦に招待し、帰国後日本特集番組を放映させる事業も実施している。
観光誘致の観点からは、VJC重点市場における、在外公館長を会長とするVJC現地推進会の開催、見本市におけるブース設置等のイベント参加、在外公館主催行事(プロモーション・パーティ、セミナー、講演会等)、メディアを通じた広報等を実施。
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有効性
(具体的成果)
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Web Japanへのアクセス数は、年間約2,600万ページビューと、これまでの最高値を達成した。「にっぽにあ」誌については、在外公館に対して行ったアンケートの結果では約80%の公館が現地において好評であると評価しており、有効であったと評価できる。ジャパン・ビデオ・トピックスは世界100か国以上、推定延べ50億人に視聴された。TVチーム招待事業では、招待したチームの全てが日本特集番組を放映している。VJCに関しては、平成17年の訪日観光客数が過去最大の673万人となるなど、効果を上げている。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
海外において、日本のアニメやマンガをはじめとするポップカルチャーの人気が高まっており、これらを活用することにより、より効果的な広報を実施することができる。一方で、途上国を中心に、世界の多くの地域においては、依然として在外公館が一般広報を行わない限り、我が国に関する情報流通はほぼ皆無であり、基本的な対日理解の進展が期待できない。
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事務事業名:教育広報
事務事業の概要
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教師あるいは学生・生徒を対象とした、学校訪問等の広報事業。青少年は外国に対する観念が固まっていないと考えられ、この時期に広報事業を行うことにより、将来的な親日派・知日派の育成を図る。 |
有効性
(具体的成果)
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在外公館では平成17年度に合計約2,000件の教育広報事業を実施。これらの事業のほとんどでは対象となった教師・学生・生徒や受け入れ校から好意的な反応を得ている。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
教育広報は一定の成果を上げているが、準備等に非常に手間がかかることもあり、対象を絞る等、効率的な実施に心がける。
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事務事業名:広報環境調査(対日世論調査等)
事務事業の概要
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広報事業を実施するに当たっては、そもそも諸外国における対日意識を把握することが必要であるが、第三者が実施する世論調査のみでは十分な情報が得られないため、自ら対日意識調査を実施する。平成17年度は米及び豪において世論調査を実施した。 |
有効性
(具体的成果)
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これらの調査結果は対象地域に対する広報文化交流計画の策定において活用されており、有効であったと考えられる。
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事業の総合的評価
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○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
対日意識の的確な把握のため、今後とも調査を実施する必要がある。調査対象については政策的重要性と、過去行った調査からの変化の把握の双方を勘案して決定する。
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【評価をするにあたり使用した資料】
資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(
http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。