省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

12-2 政治・安全保障分野における国際約束の締結・実施

条約課長 山上信吾
平成18年4月
施策の目標
(1)我が国の外交・安全保障の基盤的枠組み作り
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回、第162回及び第164回施政方針演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1)戦後残された課題である日朝国交正常化交渉及び日ロ平和条約交渉に適切に対処(法的な検討及び助言を含む。)
 六者協議や日朝政府間協議等において、適切な対処(法的な検討及び助言を含む。)を実施した。
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施(法的な検討及び助言を含む。)への取組
 日韓刑事共助条約、国連腐敗防止条約等のテロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施(法的な検討及び助言を含む。)への取組を実施した。

【施策の必要性】

(1)日朝・日露関係における戦後未解決のまま残されているものをはじめとする諸問題を解決し、日本の周辺諸国と安定した関係を築くことは、我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みを構築するにあたって、喫緊かつ重要な課題である。
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去については、これに関連する条約の締結・実施により、我が国における対策を強化するとともに、国際的な法的枠組みの構築に寄与することが可能となる。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)北朝鮮、ロシアとの間に存在する諸問題を適切な形で解決し我が国を取り巻く国際環境の安定を図ることは、我が国の国民の生命及び最低限の安全の確保に加え、我が国の一層の安全の確保及び我が国の繁栄のために有効である。
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施により、我が国におけるこれらの行為への対策を強化するとともに、これらの行為を犯した者が起訴及び処罰を免れられないような国際的な法的枠組みの構築に寄与することは、我が国における国民の安全を向上させるのみならず、国際社会全体としてテロや大量破壊兵器拡散の可能性を低減させることを通じて、これらに関する国際社会の不安定要因の除去に有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 日朝間の諸問題の解決や日露平和条約の締結に向けた交渉は我が国の外交安全保障の基盤的枠組みの構築に、テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施を進めることは国際社会の不安定要因の除去に大きく寄与するものであり、効率性のある対応といえる。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
7,252
7,797
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
30
30
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

 これらの施策は、いずれも、条約その他の国際約束の締結並びに条約その他の国際約束及び確立された国際法規の解釈及び実施を所掌する外務省が一元的に行うものであるが、その際、関係する他府省庁と調整・連携を行うことが必要である。また、国際約束の作成交渉については、その時点における相手国政府の政策や国際情勢全般によりその進捗いかんが大きく左右され、その結果、年によって締結まで至る国際約束の本数も変動することとなる。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 本施策は施政方針演説において言及され、また、重点外交政策に挙げられたものであるため、通常の評価を行うこととする。

【評価の切り口】

(1)我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みの現状
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去の進展状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みの現状
 法的な観点の考慮が不可欠である日朝間の諸問題や日露平和条約に向けた交渉へ適切に対処したことは、我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みの構築に少なからず寄与するものである。具体的には、例えば、以下のような成果が得られた。
(イ)日朝関係においては、核問題については平成17年7月に第4回六者会合が開かれ、同会合では、六者会合として初の共同声明が発表され、その中で北朝鮮が、「すべての核兵器及び既存の核計画」の検証可能な廃棄を約束するなど、重要な前進があった。また、11月には約1年ぶりに日朝政府間協議が行われ、同協議では拉致問題を含む諸懸案を包括的に解決するため日朝間で「包括並行協議」を立ち上げることで一致するなどの進展があった。
(ロ)日露関係においては、平成17年11月のプーチン大統領訪日時に日露首脳会談が行われ、同会談において、日露平和条約問題について両国が共に受け入れられる解決を見いだすよう努力することで一致したほか、テロやエネルギー等の分野における12の文書に署名するなど、「日露行動計画」に基づき幅広い分野で両国の協力を一層強化していくことで一致した。

(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去の進展状況
 テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施を進めることは、国際社会の不安定要因の除去に大きく寄与するものである。具体的には、例えば、以下のような成果が得られた。
(イ)捜査、訴追その他の刑事手続についての日韓間での共助が一層実効的に行われることとなるよう、日韓刑事共助条約の締結につき、平成18年の第164回通常国会において承認を得た。
(ロ)国際的な現象となっている公務員等に係る腐敗行為に対処するため、腐敗行為の防止措置、腐敗行為の犯罪化、国際協力、財産の回復等について定める国連腐敗防止条約の締結につき、平成18年の第164回通常国会において承認を得た。

【評価の結果(目標の達成状況)】

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)
(1)戦後残された課題である日朝国交正常化交渉及び日ロ平和条約交渉につき、日朝関係において、六者会合及び日朝政府間協議が再開されたのみならず、六者会合においては六者会合として初の共同声明が発表され、その中で北朝鮮が、「すべての核兵器及び既存の核計画」の検証可能な廃棄を約束するなど、重要な前進があったこと、及び日露関係において、プーチン大統領訪日及び日露首脳会談が実現したのみならず、同会談において日露平和条約問題について両国が共に受け入れられる解決を見いだすよう努力することで一致したほか、テロやエネルギー等の分野における12の文書に署名するなど、「日露行動計画」に基づき幅広い分野で両国の協力を一層強化していくことで一致したことは、日本の周辺諸国と安定した関係を築くことにより、我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みを構築するという目標に向けて、国際法的論点についても適切に対処しつつ、一定の成果があったことを示している。
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施につき、包括テロ防止条約等の条約の交渉妥結に向け、我が国としての貢献を強化したのみならず、核テロ防止条約、核物質防護条約改正、海洋航行不法行為防止条約の改正議定書等が採択され、日韓刑事共助条約及び国連腐敗防止条約の締結につき国会の承認を得られたことは、我が国における対策を強化するとともに、国際的な法的枠組みの構築及びその下での国際的な協力の実施に寄与し、テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去等の目標に向け、着実な成果があったことを示している。

【今後の課題】

(1)平成18年度においても、引き続き、日朝間の諸問題及び日露平和条約に向けた交渉への積極的な取組が求められる。
(2)テロその他の犯罪や大量破壊兵器の拡散に関する条約については、核テロ防止条約、中国・ロシア等との刑事共助条約等につき締結に向けた準備を進めて行くことが課題となる。

政策への反映

【一般的な方針】

 政策目的(1)及び(2)につき、引き続き対応する必要がある。特に(2)については、交渉中のテロ防止関連条約の交渉妥結も見込まれるところ、これらの締結に向け業務拡大が必要。


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 奥脇直也 東京大学教授
(1) 約1年ぶりに再開された日朝政府間協議において、拉致問題を含む諸懸案を包括的に解決するため、日朝間で「包括並行協議」を立ち上げることで一致するなど進展があった。我が国の戦後処理、特に日韓国交正常化との関係を始めとして、法的な観点からの考慮が不可欠な日朝国交正常化交渉において、法的な検討及び助言を適切に行ったことは大いに評価できる。また、近年、テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因が増してきており、これまでになく積極的な外交上の対応が迫られている中で、核テロ防止条約、海洋航行不法行為防止条約の改正議定書等の採択に積極的に取り組み、また、日韓刑事共助条約、国連腐敗防止条約の締結につき国会の承認が得られたことには重要な意義がある。以上を踏まえると、自己評価の内容は妥当であると考える。
(2) 今後は、残された課題である日朝間諸懸案の解決及び日露平和条約の締結に向けて適切な助言をより一層積極的に行っていくことが必要である。また、核テロ条約を始めとするテロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関する未だ締結に至っていない条約の早期締結及び締結済み条約の適切な実施に向け、適切な助言を行うことが重要である。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 施策の目標について、外交・安全保障の基盤的枠組みづくり(日朝・日露関係)の交渉状況及びテロ、犯罪、大量破壊兵器関連条約の締結などの成果に言及されており、妥当な評価となっている。

【事務事業の評価】

事務事業名:日朝間の諸問題、日露平和条約に向けた交渉に適切に対処(法的な検討及び助言を含む。)

事務事業の概要
 平成17年度は、引き続き、日朝間の諸問題や日露平和条約に向けた取組を行った。これは、我が国を取り巻く国際環境の安定を図り、我が国において一層の安全や我が国の繁栄を確保する上で必要である。
有効性
(具体的成果)
 戦後残された課題である日朝国交正常化交渉及び日ロ平和条約交渉につき、日朝関係において、六者会合及び日朝政府間協議が再開されたのみならず、六者会合においては六者会合として初の共同声明が発表され、その中で北朝鮮が、「すべての核兵器及び既存の核計画」の検証可能な廃棄を約束するなど、重要な前進があったこと、及び日露関係において、プーチン大統領訪日及び日露首脳会談が実現したのみならず、同会談において日露平和条約問題について両国が共に受け入れられる解決を見いだすよう努力することで一致したほか、テロやエネルギー等の分野における12の文書に署名するなど、「日露行動計画」に基づき幅広い分野で両国の協力を一層強化していくことで一致したことは、日本の周辺諸国と安定した関係を築くことにより、我が国の外交・安全保障の基盤的枠組みを構築するという目標に向けて、一定の成果があったことを示している。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 日朝国交正常化をはじめとする日朝間の諸問題の解決及び日露平和条約締結の実現が、我が国の外交・安全保障にとって益々重要な意味を有するようになってきているため、より積極的に取組を行うこととする。

事務事業名:テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施(法的な検討及び助言を含む。)への取組

事務事業の概要
 平成17年度は、テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約については、包括テロ防止条約等の交渉への参加及び核テロ防止条約、核物質防護条約、海洋航行不法行為防止条約の改正議定書等、採択された条約につき締結に向けた作業を行った。さらに日韓刑事共助条約及び国連腐敗防止条約の締結に関して国会の承認を得た。こうした条約の作成交渉に当たっては、より一層我が国の利害を反映させるとともに、未だ締結していない国際約束の締結を鋭意進めていく必要がある。
有効性
(具体的成果)
 テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散に関連する条約の締結・実施につき、包括テロ防止条約等の条約の交渉妥結に向け、我が国としての貢献を強化したのみならず、核テロ防止条約、核物質防護条約改正、海洋航行不法行為防止条約の改正議定書等が採択され、日韓刑事共助条約及び国連腐敗防止条約の締結につき国会の承認を得られたことは、我が国における対策を強化するとともに、国際的な法的枠組みの構築及びその下での国際的な協力の実施に寄与し、テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散などの国際社会の不安定要因の除去等の目標に向け、着実な成果があったことを示している。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 テロその他の犯罪や大量破壊兵器等の拡散の分野では、現在締結作業中の「国際刑事裁判所規程」、「核テロ防止条約」、「海洋航行不法行為防止条約議定書」等の条約の他、「包括テロ防止条約」、「日露刑事共助条約」、「日中刑事共助条約」等、作成・改正交渉中の関連条約が今後交渉妥結に向かっていくことが見込まれるところ、これらの条約の締結に向け必要な業務量が増大する可能性があるため、業務を拡大する必要が見込まれる。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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