省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

12-1 国際法規の形成への寄与と外交実務への活用

国際法課長 秋葉剛男
平成18年5月
施策の目標
(1)国際法規の形成への我が国の主張の反映及び新たな国際ルール作りへの積極的貢献
(2)研究会及び意見交換等を通じて得られた国際法に関する知見の外交実務における国際法解釈及び法的な助言への活用等
(3)国際約束に関する情報の集約・活用
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1) 国連国際法委員会(ILC)をはじめとする各種国際フォーラムに参加し、我が国の主張を表明・反映することを通じて、新たな国際ルール作りへ積極的に貢献する。
(2) 研究会の開催及び研究者等との意見交換を通じ、国際法の最新の動向を把握し、国際法解釈に係る知見を深化・活用するとともに、そこで得られた知見を、外交実務における国際法解釈及び法的な助言、及び、国際法に関する知識の普及を通じた国際法の発展の基盤作り等に活用する。
(3) 条約集の発行及びインターネットによるデータベースの作成等を通じて、我が国が締結した国際約束に関する情報を集約・活用する。

【施策の必要性】

 今日の国際社会において、グローバル化の進展に対処しつつ国際関係における様々な問題を解決し、国際関係を円滑に深化させる上で、国際法の果たすべき役割はますます大きくなっている。このような中、新たな国際ルール作りに積極的に参画するとともに、外交案件を処理する上で国際法を的確に解釈し、国内における知見の普及を含め国際法の発展に主体的に関与していくことは、国際社会の一員である日本として、日本国民の利益を確保していくために不可欠である。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)国際法規の形成は国際社会の秩序作りの根幹を成す作業であり、このプロセスの重要性は今後も増すと考えられ、今後とも、二国間協議や国際的な議論の場で、日本の意見を表明するとともに、各国の考え方を聴取し、国際法の潮流を見極めることが必要かつ効果的である。
(2)研究会や各種委託調査等を通じ、国際法解釈に関する知見を蓄積するとともに、これを日々発生する種々の外交案件において法的な助言へ活用することが重要であり、そのためには、各種の意見交換等の場を活用していくことが必要かつ効果的である。
(3)我が国が締結した国際約束に関する情報を対外的に活用できる形で集約することを通じて、国際法に関する知識を普及させることは、国際法の発展基盤を広げると同時に、国際法に従った行動が求められていることについて我が国国内の理解を得るという観点から必要かつ効果的である。

【施策の効率性】(3行以内)

 国際法に関して定期的に開催される国際的な議論の場へ出席し、我が国の立場を一貫して主張するとともに、国内の研究会については、その都度の外交課題に照らして時宜を得たテーマを取扱うことにより、外交実務の必要性に直接応えるよう効率的に開催している。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
87,665
91,863
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
24
24
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

 国際法規の発展及び解釈は、関係国との合意形成の過程、各国の国家実行及び絶えず変化する国際情勢等の外部的要因に伴い、短期的に「達成度」を測ることは困難である。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 本施策は、重点外交政策に挙げられたものであるため、通常の評価を行うこととする。

【評価の切り口】

(1)国際法に関連する各種会合への我が国関係者の参加の状況及びその意見の反映状況
(2)知見の蓄積のための会合の実施及び知見の活用状況
(3)条約集及びインターネット上のデータ・ベースの作成等を通じた国際法の普及活動状況

【目標の達成状況(評価)】

(1) 国際法に関連する各種会合への我が国関係者の参加の状況及びその意見の反映状況

 以下のとおり国際法に関連する各種会合へ我が国関係者が参加し、我が国の立場を表明し、国際法規の形成に向け積極的に議論に参加、貢献した。
(イ)国際法委員会(ILC)及び国連総会第六委員会、アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)、ヘーグ国際私法会議、私法統一国際協会(UNIDROIT)会合、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)等の国際フォーラムに参加し、日本政府としての意見表明を行った。
(ロ)特にILCにおいては、山田中正委員(外務省参与)が、共有天然資源に関する特別報告者として条文草案の作成に積極的な貢献を行っており、平成18年度には条文草案を提出する予定である。
(ハ)平成17年12月、国際刑事裁判所(ICC)のカターラ書記局長を招き、ICCの活動の現状を把握し、我が国がICC規程の締結を検討するために大きく資するものとなった。
(ニ)各種国際法局長協議の主催・参画についても積極的に取り組み、国連総会第六委員会の際の法律顧問会合や欧州評議会国際公法法律顧問委員会(CAHDI)等の主要国の国際法担当局長の会合に参加した。また、種々の機会を活用して、米国及び韓国等の各国際法局長と二国間の意見交換を行い、海洋法やICC等に対する我が国の立場を説明するとともに、各国の国際法上の諸問題に関する意見を得ることができた。

(2)知見の蓄積のための会合の実施及び知見の活用状況
以下のとおり、知見の蓄積のため会合を実施し、知見を活用した。
(イ)国内の研究者と「現代国際法研究会」(6回)、「国際法研究会」(8回)、「国際経済法研究会」(3回)、「国際法勉強会」(6回)等を実施し、ミサイル防衛、海洋法、中国における「反日デモ」に伴う国際法上の論点、国際投資紛争をめぐる国際仲裁事例の主要論点など、我が国にとり重要度の高い問題に関する法的論点を検討し、様々な視点や意見を聴取した。
(ロ)国内の研究者、各省担当者、実務関係者等を交え「UNCITRAL研究会」(3回)、「UNIDROIT研究会」(4回)を実施し、国際私法分野に関する問題を検討した。こうした機会を通じて蓄積した知見を、UNCITRALやUNIDROITの各種会合の対処方針等に反映させた。
(ハ)国際法委員会(ILC)において検討されている「共有天然資源」分野につき、国内外の研究者・実務家と研究会を定期的に開催し、ILC第57会期に向けて、特別報告者(山田中正委員)の第三報告書提出を支援した。

(3) 条約集及びインターネット上のデータ・ベースの作成等を通じた国際法の普及活動の状況
 我が国の締結した国際約束をとりまとめた主要条約集を500部発行し、国際法の研究促進を支援するとともに、公開講座や大学における臨時の講義の実施の際の学生との意見交換等を通じて、国際法に関する知識の普及に努めた。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて相当な進展があった。」
(理由)国際法に関連する主要な国際会合すべてに我が国関係者が出席し、我が国の立場を表明することを通じて、国際法規の形成に貢献するとともに、30回以上の研究会等を通じて得られた知見を基礎に、我が国の国益を踏まえ、海洋権益問題、反日デモをめぐる中国への対応などに際して、案件処理の指針となる国際法上の解釈を提示してきたことは、目標の達成に向けて進展があったことを示している。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 平成18年度においても引き続き積極的な取組が求められるが、近年ルール作りが活発化している国際私法の分野における取組を一層強化する必要がある。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 今日の国際社会において国際法の果たすべき役割は益々大きくなっており、施策の目標(1)~(3)につき引き続き対応する必要がある。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 奥脇直也 東京大学教授
(1)国際法規の形成への積極的な貢献は、中長期的に我が国の国益を確保していく上で極めて重要である。その中で、国際法委員会(ILC)における共有天然資源に関する法典化作業等への貢献や書記局長の招聘を含む国際刑事裁判所(ICC)規程の締結に向けた様々な取組み等は大いに評価できる。
(2)近年、東シナ海における海洋をめぐる問題や領土をめぐる問題など、国際法の解釈適用が密接に関係する外交課題が増加している。これらの課題に我が国が国益を踏まえて適切に対応していると評価できるが、なお一層それを進展させるべく、外務省において国際法についての知見を蓄積し、外交実務へ活用することが不可欠である。外務省は各種の研究会や意見交換等を通じて積極的な努力を行っており、外交実務家としての国際法局と国際法学界との交流は双方にとり有益である。引き続き、研究会等を通じた意見交換や学会報告、学会機関誌への寄稿などを通じて国際法学界との提携を強化するとともに、これらを一層効果的に外交政策へ活用していくことが重要である。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 3つの施策の目標に対して、3つの「評価の切り口」を設定し、各々について数値も交えつつ具体的な取組を示すことにより、進捗状況を説明しており、適切な評価といえる。

【事務事業の評価】

事務事業名: 国際法に関連する各種会合における我が国の立場の主張。そのような会合において、国際法規の形成及び発展の促進。主要な国際フォーラムにおける我が国からの知的貢献。

事務事業の概要
 個別の条約策定作業とは別に、国連国際法委員会(ILC)及び国連総会第六委員会、アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)、ヘーグ国際私法会議、私法統一国際協会(UNIDROIT)、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)、国際刑事裁判所(ICC)に関する各種会合等に参加した。
有効性
(具体的成果)
(1)国際法委員会(ILC)及び国連第六委員会、アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)、ヘーグ国際私法会議、私法統一国際協会(UNIDROIT)会合、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)等の国際フォーラムに参加し、日本政府としての意見表明を行った。
(2)特に、ILCにおいては、山田中正委員(外務省参与)が、共有天然資源に関する特別報告者として条文草案の作成に積極的な貢献を行っており、平成18年度には条文草案を提出する予定である。
(3)平成17年12月、国際刑事裁判所(ICC)のカターラ書記局長を招き、ICCの活動の現状を把握し、我が国がICC規程の締結を検討するために大きく資するものとなった。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 国際法は不断の発展をとげており、政府として国際社会の各種フォーラムにおけるルール作りに我が国の立場から積極的に関与していくことは国益に直結する施策である。引き続き、各種会合の機会を活かして一層積極的に国際法規の形成に貢献していく。特にICC規程や国際私法分野の条約の締結に向けて必要な国内法整備について一層の検討を進めつつ、各種会合にも参加して新しいルール作りに貢献していく。

事務事業名:国際法局長と主要各国のカウンターパートとの協議の実施

事務事業の概要
 各国の外務省の国際法局長と、主要な国際法上の問題につき二国間で意見交換を行うことが、様々な分野における国際法の発展に資することから、主要国との間で二国間の国際法局長協議を開催した。平成17年度は、米国(5月)、韓国(平成18年1月)との間で開催した。また、各国の国際法局長・法律顧問が一堂に会する欧州評議会国際公法法律顧問委員会(CAHDI)に出席するとともに、国連総会第六委員会の際の法律顧問会合にも出席した。
有効性
(具体的成果)
 各種国際法局長協議の主催・参画についても積極的に取り組み、国連総会第六委員会の際の法律顧問会合や欧州評議会国際公法法律顧問委員会(CAHDI)等の主要国の国際法担当局長の会合に参加した。また、種々の機会を活用して、米国及び韓国等の各国際法局長と二国間の意見交換を行い、海洋法やICC等に対する我が国の立場を説明するとともに、各国の国際法上の諸問題に関する意見を得ることができた。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 今後とも、各種の国際的な議論の場で、日本の意見を表明するとともに、各国の考え方を聴取し、今後の国際法の潮流を見極めることは、きわめて重要である。平成17年度に実施できなかった主要国を念頭に引き続き国際法局長協議を実施していく。

事務事業名:国際法の諸分野、特に最近の国際情勢に関連がある分野または国際法を解釈する上で有益な分野について、研究会等を通じて知見を蓄積し、また法的な検討を行っていく取組(種々の外交案件につき、一般国際法をはじめとする国際法規に基づく解釈を提示し、法的な観点から案件の的確な処理に資する指針の提示)

事務事業の概要
 政府として国際法を的確に解釈し、国際法の発展に主体的に関与するために、「現代国際法研究会」(6回)、「国際法研究会」(8回)、「国際経済法研究会」(3回)、「国際法勉強会」(6回)、「UNCITRAL研究会」(3回)、「UNIDROIT研究会」(4回)等、国際法の諸分野について知見を蓄積し、法的な検討を実施するために、取扱う分野や参加者のバランスをとりつつ、効果的に研究会を実施している。その結果も踏まえ、我が国が、外交案件に対処するにあたり、国際法上の適切さを確保する観点から、一般国際法をはじめとする国際法規に基づく解釈を提示し、案件の的確な処理に資する指針を提示している。
有効性
(具体的成果)
(1)国内の研究者と「現代国際法研究会」(6回)、「国際法研究会」(8回)、「国際経済法研究会」(3回)、「国際法勉強会」(6回)等を実施し、ミサイル防衛、海洋法、中国における「反日デモ」に伴う国際法上の論点、国際投資紛争をめぐる国際仲裁事例の主要論点など、我が国にとり重要度の高い問題に関する法的論点を検討し、様々な視点や意見を聴取した。
(2)国内の研究者、各省担当者、実務関係者等を交え「UNCITRAL研究会」(3回)、「UNIDROIT研究会」(4回)を実施し、国際私法分野に関する問題を検討した。こうした機会を通じて蓄積した知見を、UNCITRALやUNIDROITの各種会合の対処方針等に反映させた。
(3)さらに、国際法委員会(ILC)において検討されている「共有天然資源」分野につき、国内外の研究者・実務家と研究会を定期的に開催し、ILC第57会期に向けて、特別報告者(山田中正委員)の第三報告書提出を支援した。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(1) 重要な外交案件として取り扱われることが予想される事項について法的論点を整理する作業を一層強化していく。あらゆる国際的な問題には、法的な側面が存在するといっても過言ではなく、我が国が様々な外交案件に適切に対処し、国際法の発展に積極的に関与していくためには、国際法上重要な論点を把握し、検討することが不可欠である。
(2) 種々の具体的外交案件における国際法に係る事項について、蓄積された知見に基づき的確な国際法の解釈を提示することを通じ主管局を補佐し、また、国内・国外での裁判において、我が国としての国際法の解釈を示し、我が国の国益を確保することは、国際法課の中心的業務の一つである。現在、海洋法等に係る問題についての事務が急増している状況を踏まえ、より一層、この取組を強化していく必要がある。

事務事業名:要請に基づく公開講座、大学における臨時の講義の実施。研究者、学生等との意見交換、交流の実施

事務事業の概要
 国際法の知識を普及させることを通じ、国際法に関係する人口の裾野を広げ、国際法の発展の基盤を形成する観点から、国内大学の要請に基づき、平成17年度は中央大学、立教大学等において通年及び各講座別での国際法に関する講義を実施。
有効性
(具体的成果)
 中央大学での講義では受講者の多くが国際法の実務が身近に感じられたとのアンケート結果を寄せ、立教大学でも同様の声が多く聞かれた。国際法が現実の外交や国際社会の場でどのように活用されているかを学生や若手研究者に広く実感させることは、国際法の裾野を広げ、その普及を図るために極めて重要である。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 今後も案件の的確な処理に資する法的指針の提示を強化していく。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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