省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

11-5 難民・国内避難民等に対する人道支援を通じた人道問題への取組

人道支援室長 野呂元良
平成18年4月
施策の目標
1)大規模自然災害、紛争等により生じた大量難民、国内避難民等に対し国際機関への支援を通じ、人道的な緊急支援を実施。
2)国内における難民及び難民申請者に対する支援
施策の位置付け
特になし。
施策の概要
(10行以内)
 冷戦終了後も世界の様々な国や地域では内乱や地域紛争等により引き続き多くの難民・国内避難民が発生している。さらに、スマトラ沖大地震・インド洋津波被害、パキスタン等大地震被害をはじめとして、大規模な自然災害の発生により多くの被災者が例年発生している。加えて、我が国において定住する難民や難民認定申請者に対する適切な支援が必要な状況である。
 このような人道上の問題に対し適切に対処するとともに、実際に困難な状況に置かれている人々に支援を差し伸べるために、国際的な人道支援機関、ドナー各国等とも連携し、我が国として応分の貢献を行う。

【施策の必要性】

 難民・国内避難民等に対する人道支援の実施は、国際社会の共通の課題であるとともに、国際社会において責任ある地位を占め、難民条約の加盟国である我が国としての責務である。また、人道支援分野での国際協力に積極的に参加することは、我が国の国際社会におけるプレゼンスを更に高め、信頼性を一層向上させることにも資するものである。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)地球規模の問題である人道支援を適切かつ円滑に実施するに当たって、人道支援分野の国際機関や主要ドナー国政府との協力関係を促進することが有効である。
(2)政策面においては、国際場裡における人道支援に関する主要な議論に積極的に参加し意見交換すると共に、我が国が基本理念としている「人間の安全保障」の考え方に基づいた政策提言を積極的に行うことが有効である。
(3)人道ニーズを踏まえた実際の支援を円滑に行う上で、世界各地の人道支援の現場で活動している国際機関に対し、我が国としての応分の資金拠出を行うことが有効である。
(4)我が国における難民の定住を促進するために、各種の支援事業を効率的に実施する必要がある。このため、事業を委託する財団(財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部)を適切に指導・監督するとともに、関係する国内省庁・NGO等との連携を図ることが有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 緊急人道支援の実施等業務量自体は年々増大しているものの、平成16年度の人的投入資源10人から平成17年度は一名減(9名)と人的投入量は減少しているため、室内の業務体制・作業効率の見直しを行うことにより、業務増へ対応した。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
859,397
500,848
単位:千円
(注)本省分予算

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
9
9
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

(1)難民等の発生国・地域の政治社会的情勢や受入先となる周辺国等の状況が、難民発生状況や帰還等のための条件に複雑な影響を与える。
(2)国連の場や主要ドナー国の間における人道支援に関する様々な議論の動向が、我が国の人道支援の理念や政策の推進にとって影響を及ぼし得る。例えば、現在、北欧や北米諸国等を中心に、人道支援の資金拠出が抱える問題点(資金量が十分でなく、地域的偏りがあり、また実際の拠出まで時間がかかりすぎる等)に対し、ドナーの行動に焦点を当ててその改善を図ることによって、より効果的な国際人道支援の実現を目指そうとのイニシアティブ(グッド・ヒューマニタリアン・ドナーシップ)があり、我が国を含む国際社会での人道支援での政策議論に影響を与える傾向がある。
(3)我が国における難民の定住促進、難民認定申請者への生活支援は、内閣府が主宰する「難民対策連絡調整会議」の枠組みで実施しており、当省の業務遂行に当たっては、内閣府による調整と関係省庁との協力が必要。また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日地域事務所との緊密な協力も不可欠。なお、我が国における難民認定業務は、法務省の所管となっている。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

(1)国際的な人道支援の進展状況と我が国の貢献
(2)我が国国内における難民等への定住支援の状況、難民認定申請者に対する支援の状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)国際的人道支援の進展状況と我が国の貢献
(イ)人道支援を実施している国際機関との政策協議や対話を行うとともに、これらの機関が主催する国際会議やドナー国会合に積極的に参加することによって、人道問題の解決に向けた議論の発展に貢献した。特に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連世界食糧計画(WFP)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)及び国際移住機関(IOM)との間で「人間の安全保障」の考えに基づくパートナーシップの促進について合意するとともに、米国との間でも「人道支援に関する日米パートナーシップ会合」を開催し、継続的な日米の人道支援政策における協力について議論していくこととなった。
(ロ)厳しい財政状況の中、人道支援分野の主要な国際機関であるUNHCR、WFP、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国連人道問題調整部(OCHA)、国連地雷対策支援信託基金、国際移住機関(IOM)、赤十字国際委員会(ICRC)、国連地雷対策サービス部(UNMAS)等に対して継続的に資金を拠出することで(平成17年度のこれらの機関に対する通常拠出は、約89億円(但し、津波支援、パキスタン支援等の予備費、補正予算、緊急無償計上を除く))、現地のニーズを踏まえた人道支援の実施に貢献した。また、国連及び国際赤十字等による緊急人道アピールに応えスーダンにおける難民・国内避難民への支援のためにWFP、UNMAS、UNHCR、IOM、ICRCを通じて約4,229万ドルの支援、平成16年末に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波被害に対して国際機関経由で2億5千万ドルの人道支援、平成17年10月に発生したパキスタン等大地震被害に対し国際機関経由にて総額2千800万ドルの支援をそれぞれ行い人道支援に貢献した。
(2)我が国の国内における難民及び難民申請者に対する支援
(イ)我が国における難民・難民認定申請者に対する支援を、財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部への業務委託を通じて実現した。平成17年度においては、107人のインドシナ難民の家族を我が国に受け入れ、国際救援センターにおいて各種定住支援(日本語教育、社会適応指導、就職斡旋・職業訓練等)を実施、また、我が国で難民と認められた条約難民及びその家族に対しても希望に応じて定住支援を実施した。さらに、難民認定申請者に対する支援として、特に生活に困窮している人に対する生活費、住居費、医療費等の支給や、住居を探すことが困難な人に対する緊急宿泊施設の提供等を実施した(平成17年度は、28人(平成16年度は、19人))。
(ロ)加えて、難民や難民認定申請者の支援に係わる各種の相談事業を行い、平成17年度は、昨年度を超える1万8,000件以上の相談件数となり、支援が強化された(平成16年度は、1万7,324件)。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)
(1)平成17年度は、インド洋津波支援、パキスタン等大地震被害支援等大規模災害に対する緊急人道支援が行われたが、我が国としては、国連等緊急アピールに早急に応えるべく、迅速な支援実施を行うことができたことは評価できる。また、厳しい財政事情の中、人道支援国際機関に対して継続的に資金を拠出することで、国際人道支援業務の円滑な実施に向けての貢献を行うことができた。そうした中、グテーレス国連難民高等弁務官、モリスWFP事務局長、エグランド国連事務次長(人道問題担当)、アブザイドUNRWA事務局長等が訪日し、人道支援政策、継続的な協力関係の構築、「人間の安全保障」の考えに基づくパートナーシップの促進について協議することができた。
(2)国内における難民及び難民申請者に対する支援については、平成16年度に引き続き、平成17年度も100人を超えるインドシナ難民の家族を我が国に受入各種定住支援を実施し、インドシナ難民受入業務を終了することができた。また、平成18年度より、条約難民を対象として実施する定住支援事業の継続的な実施の体制作りを行うことができた。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 人道支援への取組は、中長期的視点からの取組、国連等での議論をどのように施策に組み込んでいくか引き続いての検討が必要。我が国での難民等の支援については、今後条約難民定住支援の円滑な実施に向け、後継施設を含めた条約難民の定住支援の支援実施体制の強化を行う必要がある。また関係省庁・NGO等との連携強化によるきめの細かい支援を引き続き追求していく必要がある。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 人道支援分野での我が国の取組を強化するため、国際場裡での積極的な議論参加、国際機関への資金拠出を通じた効果的、効率的な人道支援の実施を確保していく。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

西立野園子 東京外国語大学教授
 国際的人道支援機関に対する継続的な資金の拠出、また国連などによる緊急人道アピールに対応した国際機関を通じての援助金の提供など、日本政府の積極的な姿勢は十分評価される。しかしそれらの資金の用途について適切なフォロー・アップはなされているであろうか。迅速且つ有効な人道支援のためには各国、各機関の活動のより一層のコーディネートが重要である。近年、地震、津波などの大きな自然災害がアジア・太平洋地域で続発している。その意味からも、同地域の主要人道支援国として日本、アメリカのみならずオーストラリアともパートナーシップを構築し、地域的かつ恒常的な協力体制を作るのが望ましいと考える。難民問題については、日本がUNHCRに対して資金面で多大な貢献をしていることは大いに評価される。しかし日本は欧米に比して難民に対して閉鎖的との批判がある。今後、難民条約、避難民への対応において、世界的な難民政策への貢献という視点からUNHCRとの協調をより尊重する姿勢が日本政府に対して求められるであろう。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 インド洋津波支援、パキスタン等大地震被害支援等大規模災害に対する緊急人道支援が迅速に行われた等施策の目標に向けての取組、成果に関する具体的記述がなされ、適切な評価がなされている。

【事務事業の評価】

事務事業名:人道支援を行う国連・国際機関、関係国との協力を通じた人道支援の実施

事務事業の概要
(1)国連世界食糧計画(WFP)等の国際機関と定期政策協議を実施した他、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国連人道問題調整部(UNOCHA)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、赤十字国際委員会(ICRC)、国際移住機関(IOM)等との間で人道支援政策についての対話を行った。また、各人道関連国際機関の各種会合に参加し、我が国の人道支援政策の反映を行いつつ、各ドナー国との協調・連携の強化を推進した。
(2)米国との間で、人道支援に関する定期的な政策対話を開催したほか、各種の国際会議等を通じて、主要ドナー国との意見交換や政策対話の強化を図った。
(3)世界の人道危機に対して、現地の人道ニーズについての国連や関係国際機関のアピール等を踏まえ、関係国際機関に対する応分の資金拠出を行うことを通じて、必要な人道支援を実施。
有効性
(具体的成果)
(1)人道支援を行う国際機関との政策対話、意見交換を通じて、我が国が人道支援を行っていく上での根本的な理念である「人間の安全保障」についての考え方について、国際機関側の理解の促進に努めるとともに、我が国の苦しい財政事情の中、我が国の人道支援政策を国際機関の活動に反映させることに努めた。また、UNHCR、WFP、IOM、UNRWA等の人道支援国際機関の執行委員会及び各種会合に参加し、我が国意見の反映、加盟国との協調関係の強化に努めるとともに、各国際機関長の訪日の際には、援助協調、「人間の安全保障」パートナーシップの構築、人道支援に対する協力関係の構築等に努めた。
(2)平成16年12月に開始された「日米パートナーシップ会合」は、双方の人道支援政策を理解することで、具体的な協調関係の構築を図っていく上で効果が上がった。平成17年6月に第2回会合を開催したが、国連人道システム改革、アフリカ諸国、アフガニスタン、パレスチナ等中近東情勢について、情報の共有、人道支援の基本的な理念の整理、対象国の政治、人道支援の現状認識を行うことができた。今後も、定期的に本件会合を開催し、日米の人道支援分野における協調及び協力関係の強化について議論していくこととなった。
(3)平成17年度も、引き続き世界各地で新たな難民や国内避難民が発生し、特にスーダンにおいては、引き続き内乱に伴う難民・国内避難民が発生していたことから、平成16年度に830万ドルの支援を決定したのに続いて、平成17年7月に、国際機関を通じて1,120万ドル、9月に3,200万ドル及び10月にはWFPを通じた449万ドルの追加的人道支援がそれぞれ決定され、帰還・再統合支援、初等教育、道路緊急整備の実施等が行われた。
(4)平成16年12月末に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波災害については、15の国際機関を通じ2億5千万ドルの緊急人道支援を行い(1月21日までにすべての国際機関に対し拠出を完了)、各国際機関においては、緊急仮設住宅の建設、食糧支援、テント、ビニールシート、毛布等の配布、医療支援等を実際した。平成18年1月31日には、外務省において国際機関を通じた津波支援報告会を開催し、我が国の拠出の現状について国際機関より活動報告が行われた。
(5)平成17年10月9日パキスタン等大地震については、5つの国際機関に対し総額800万ドルの緊急人道支援を実施し、ビスケット約1,840万トンの配布、給水活動、被災者の緊急輸送、医薬品等の支給、テント等の支給を行った。さらに、平成17年2月には、8国際機関に対し、総額約2,000万ドルの追加的な人道支援を決定し、シェルター等緊急人道支援の配布、保健・医療、早期復興・再建等の分野への支援を行った。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 地球規模で発生している人道危機に対する人道支援は、我が国が国際社会の一員として果たすべき責務であり、我が国外交上の重要な柱の一つである。また、人間の個人としての生存の尊厳を守り、能力強化を図るという「人間の安全保障」の考えに基づいた具体的な取組として、我が国が今後も重視していくべき課題である。
 近年の我が国の厳しい財政事情により、我が国の国際人道支援機関に対する拠出金は大幅な削減を余儀なくされている。国際社会においては依然人道危機への対処が必要とされている中で、我が国がこうした大幅な削減を毎年続けていくことは、我が国が人道支援分野を重要視していないとのメッセージを人道危機に瀕している人々また国際社会に対して与える可能性があり、今後我が国の人道支援に対する姿勢を示す上でも、拠出金の拡充強化を図っていく必要がある。

事務事業名:難民の本邦定住促進等のための事業の実施、及び関係省庁、NGO等との連携

事務事業の概要
(1)我が国は、昭和54年(1979年)以来、インドシナ3国(ベトナム、ラオス、カンボジア)からインドネシア難民を政策的に我が国に受け入れており、定住のための各種支援(日本語教育、生活環境支援就職斡旋、職業訓練等)を実施。平成17年度は、インドネシア難民の家族の呼び寄せ及び定住支援事業を実施。同事業は平成17年度をもって終了。
(2)昭和58年(1983年)から難民認定申請者のうち生活に困窮する者に対する生活支援(生活費、住居費、医療費等の支援、緊急宿泊施設の提供(平成15年以降)等)を実施しており、さらに、平成15年(2003年)からは条約難民とその家族に対しても定住支援事業も実施。
(3)これらの事業は、我が国における難民や難民認定申請者等に対する人道支援という目的の達成にとって必要なものであり、財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部に業務を委託の上、関係省庁、NGOとも連携して適切な運営を図っている。
有効性
(具体的成果)
(1)平成17年度には、107人のインドシナ難民の呼び寄せ家族に対する定住促進支援を難民事業本部の国際救援センター(品川区所在)において実施した。これまでに我が国に定住したインドシナ難民及び家族は、1万1,000名以上となる。
(2)条約難民に対する支援として、国際救援センターにおいて合宿方式の定住支援を実施したが、同センターの閉所後、平成18年度以降開所される後継施設では、条約難民のニーズに合致した支援となるよう通所式による日本語教育等の定住促進支援を実施することとしている。
(3)難民認定申請者については、これまでの保護措置(生活困窮者に対する生活費、住居費、医療費等の支給)に加え、来日間もない等の理由で住居を探すことが困難な困窮者に対する緊急宿泊施設の提供を平成15年度より実施。平成17年度は、28名が同施設を利用した。
(4)難民・難民認定申請者に対する支援の実施においては、関係省庁との協力及び緊急宿泊施設の連絡人業務をNGOに委託実施、海外における難民の発生状況や受入事情に関する実態調査、難民に関するセミナーや講演会の開催等においてNGOと緊密に連携している。
事業の総合的評価
○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
(1)難民に対する適切な支援の実施は、難民条約に加入している我が国としての当然の責務でもあり、今後ともその目的のより良い達成に向け事業を継続していく必要がある。また、我が国において難民認定を申請している者に対しても、生活に困窮している者に対しては、人道的な配慮から出来る限りの支援を行っていかなければならない。これらの事業の推進においては、関係省庁や難民支援分野に知見と経験を有するNGO等との連携を引き続き適切に図っていくことが必要である。
(2)また、インドシナ難民及び受入業務は、平成17年度をもって終了したが、我が国に受け入れ定住したこれらのインドシナ難民及び家族に対するアフターケアについては、条約難民を対象として継続して実施する難民の我が国定住支援事業、難民や難民認定申請者に対する各種の支援業務と共に、今後もその施策を充実させつつ継続していく必要がある。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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