I.実施計画に基づく事後評価
1. 地域・分野
11-4 国際組織犯罪への取組
国際組織犯罪室長 前川信隆
平成18年4月
施策の目標
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国境を越える組織犯罪への対処のための国際的な連携・協力の強化 |
施策の位置付け
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平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回国会における内閣総理大臣施政方針演説に言及あり。
第159回国会における外務大臣外交演説に言及あり。
第161回国会における内閣総理大臣所信表明演説に言及あり。
第162回国会における内閣総理大臣施政方針演説に言及あり。
第162回国会における外務大臣外交演説に言及あり。
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施策の概要
(10行以内)
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(1)国際的な法的枠組みづくりへの参画
国際組織犯罪防止条約、サイバー犯罪条約等の締結のための国内法整備の促進。締約国会議等を通じた国際的な法的枠組み構築。
(2)国連、G8、金融活動作業部会(FATF)等における国際的な取組への参加・協力
G8リヨン・グループ、国連薬物犯罪事務所、国連麻薬委員会、犯罪防止刑事司法委員会、FATF等における、薬物問題、資金洗浄等の国際的な組織犯罪防止の取組に積極的に参加。
(3)人身取引撲滅のための国際協力の推進
政府協議調査団の派遣、国際シンポジウムの開催等を実施。
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【施策の必要性】
(1)グローバル化や情報通信の高度化、人の移動の拡大等に伴い、国境を越える組織犯罪(国際組織犯罪)が一層深刻化している。平成16年には、日本国内において人身取引被害者であるコロンビア人の少女がストリップ嬢として働かせられていた事犯や、平成17年度に刑法に新設された人身売買罪を初適用して、インドネシア人を売買した加害者が逮捕・起訴された事犯、また、マネーロンダリング事案につき日本の暴力団構成員等が検挙されるなど、近年、我が国においても国際組織犯罪の事例が明らかになってきている。
(2)国際組織犯罪は、社会の繁栄と安寧の基盤である市民社会の安全、法の支配、市場経済を破壊するものであり、また、我が国の経済、社会、市民生活に直接に影響を及ぼすものである。このような組織犯罪は国境を越える性質を有しており、的確に対処するために、各国の刑事司法・法執行制度を強化することを含め、国際的な連携・協力がますます重要になってきている。また、我が国は国益を守る観点から、国際組織犯罪への対処のための国際的な取組に協力・貢献する必要がある。
【施策の有効性】(目標達成のための考え方)
(1)そもそも、犯罪を防止し取り締まるための措置は、刑事・司法当局が自国の領域において排他的に権限を有し実施するものであり、とりわけ、世界各国が異なる文化的・歴史的或いは経済社会的な状況を有する中において、それぞれの刑事・司法制度にも差異が生じる。しかし、右に加え、薬物犯罪、資金洗浄、人身取引等の国境を越える組織犯罪に効果的に対処するためには、国際的な連携・協力が不可欠である。
(2)とりわけ、条約等の国際的な法的枠組みづくり、国連、G8等を通じた取組の推進、二国間協議の促進等は、各国の刑事司法・法執行制度を強化し、また、国際社会が一致して防止・取締りに取り組む観点からも有効である。
(3)例えば、国際組織犯罪防止条約等の国際的な法的枠組みづくりにより各国が自国の刑事・司法法制において取るべき措置が定められ、また、国連薬物犯罪事務所、国連麻薬委員会、犯罪防止刑事司法委員会、G8リヨン・グループ、金融活動作業部会(FATF)等の取組により、国境を越える組織犯罪を防止するための措置が不十分な国々に対しても、積極的な対処を促進することとなり、ひいては、世界的にこの問題に対処する体制構築が進展する。
(4)また、人身取引については、我が国において現実に発生している重大な犯罪及び人権侵害であり、関係省庁との緊密な連絡の下、人身取引の防止・撲滅、被害者の保護に向けて政府を挙げて取組体制を確立している。
【施策の効率性】(3行以内)
国際組織犯罪に効果的に対処するための国際的な連携・協力の実施においては、既存の国連・G8関係者とのネットワークや在外公館及び国内関係機関による情報収集や協議・連携を通じ、常に、迅速かつ効率的な対処を実施してきている。
【投入資源】
予算 |
平成17年度 |
平成18年度 |
305,611 |
282,398 |
単位:千円
(注)本省分予算
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)
【外部要因】
(1)世界各国が異なる文化的・歴史的或いは経済社会的な状況を有する中において、各国の刑事・司法当局が自国領域内において排他的な管轄権を有し、かつ独自の刑事・司法制度を有するため、それぞれの法制度及び法執行体制に差異が生じる。
(2)各国政府の取組にもかかわらず、グローバル化や情報通信の高度化、人の移動の拡大等に伴い、今日、国境を越える組織犯罪が一層複雑化・深刻化している。
施策の評価
【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】
通常の評価を行う。(但し、当室は平成16年8月に新設されたところ、当室として年度を通じた政策評価の実施は今回が初めてである。)
【評価の切り口】
国際組織犯罪対策における国際協力の進捗状況
【目標の達成状況(評価)】
国際組織犯罪対策における国際協力の進捗状況
以下のとおり、目標達成に寄与する具体的進展があった。
(イ)国際組織犯罪を防止するための国際的な法的枠組みとしては、国際組織犯罪防止条約、人身取引議定書、密入国議定書、銃器議定書、
サイバー犯罪条約、国連腐敗防止条約があげられるところ、我が国は、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約については既に締結の国会承認を得た。
さらに、平成17年通常国会においては、人身取引議定書及び密入国議定書についても締結の承認を得、平成18年6月には国連腐敗防止条約の締結についても承認を得たところである。国会の承認を得たこれらの条約については、
締結のために必要な一部関連国内法の国会における審議が継続中であり、必要な説明等を行ってきている。
(ロ)平成18年2月には、尾﨑在ウィーン日本政府代表部公使が国連薬物・犯罪事務所(UNODC)条約局長に就任した。
このほか、平成17年度においては、国際組織犯罪条約及びサイバー犯罪条約それぞれの締約国会議に我が国はオブザーバーとして出席した。このように我が国は、国際的な法的枠組み構築促進に貢献するとともに、国際的な協力に積極的に参加してきている。
(ハ)国際組織犯罪を防止するための国際的な取組については、国連麻薬委員会、犯罪防止刑事司法委員会、国連薬物犯罪事務所、G8リヨン・グループ、FATF、アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)が開催する各種会合があげられる。
我が国はこれら会合において他国とともに、国際社会が一致して取るべき措置等につき協議・意見交換を行い、国際的な取組の促進及び体制の構築に貢献した。
(ニ)人身取引については、平成16年12月に策定された政府の行動計画に基づき、人身取引の防止等のための諸施策を関係省庁との協力の下推進してきたが、平成17年度については、人身取引議定書の締結につき国会の承認を得たほか、
前年度の3か国に続き、さらに他の4か国に政府協議調査団を派遣し、また、平成18年2月「人身取引問題に関する国際シンポジウム」を開催した。
これまでのところ、日本国内での人身取引事案の検挙件数は51件(平成15年)、79件(平成16年)、81件(平成17年)、起訴数は37名(平成15年)、48名(平成16年)、75名(平成17年)、公的シェルターでの被害者保護数は6名(平成15年)、24名(平成16年)、104名(平成17年)と増加傾向にあり、
人身取引にかかる犯罪が顕在化しつつあること、また、被害者に対する政府の保護策が浸透しつつあることなどが伺われる。
【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)
「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)国際的な法的枠組みづくりへの参画については我が国の条約締結について国会承認が得られたこと、多様な国際的枠組みの会合に積極的に参加し他国との関係構築を図ったこと、人身取引対策についても政府の施策が浸透しつつある点等があげられる。
【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)
犯罪防止に関する一般市民の意識啓発と国際的な連携・協力分野でのより積極的なイニシアティブに努めていきたい。
政策への反映
【一般的な方針】(2行以内)
条約締結後はその実施を的確に行う必要があり、他国との刑事・司法共助の件数が増加することが予想されることからも、定員要求、予算要求等に反映していく方針である。
【事務事業の扱い】
- 人身取引対策等、国際組織犯罪対策としての国際協力の取組→拡充強化
【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】
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予算要求
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機構要求
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定員要求
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反映方針
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○
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―
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○
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(当室は平成16年8月に新設され、当室として年度を通じた政策評価の実施は今回のものが初めてとなる。したがって、これら要求への反映は今後行っていく考えである。)
【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)
吉田容子 弁護士・JNATIP(人身売買禁止ネットワーク)共同代表
概ね政策目的に基づいた成果を達成していると考える。一方、国際組織犯罪防止条約及び人身取引議定書は、被害者保護及び被害防止に向けての対策と国際協力をも締約国に求めており、今後、日本政府は、これらの点においても、多国間ないし二国間協定等を含む法的枠組みづくりとその実施に重点的に取り組む必要がある。
また、人間の安全保障基金をはじめ日本政府が拠出する政府開発援助(ODA)を通じた被害者保護や被害防止のためのプロジェクトについては、その立案、実施、評価、対応のすべてにおいて、正確な情報と的確な人選が重要であり、その確保のためにも、継続的に人身取引対策に取り組むNGOとの積極的な連携が必要かつ有益である。
【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)
公的シェルター被害者保護数が24名(平成16年)から104名(平成17年)に急増していることが示されており、施策の効果が具体的に把握できる。
【事務事業の評価】
事務事業名:人身取引対策等、国際組織犯罪対策としての国際協力の取組
事務事業の概要
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人身取引撲滅のための国際協力の推進をはじめとし、国際組織犯罪を防止するための国際的な法的枠組みづくりへの参画を行い、国連、G8、FATF等における国際的な取組への参加・貢献を行うもの。
国際組織犯罪は、社会の繁栄と安寧の基盤である市民社会の安全、法の支配、市場経済を破壊するものであり、我が国の経済、社会、市民生活に直接に影響を及ぼすものである。我が国は、国益を守る観点からも、国際社会と一致協力してこの問題に対処する必要がある。
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有効性
(具体的成果)
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(1)国際的な法的枠組みづくりへの参画
(イ)国際組織犯罪を防止するための国際的な法的枠組みとしては、国際組織犯罪防止条約、人身取引議定書、密入国議定書、銃器議定書、サイバー犯罪条約、国連腐敗防止条約があげられる。
我が国は、国際組織犯罪防止条約については平成15年5月に、サイバー犯罪条約については平成16年4月に締結につき国会の承認を得、人身取引議定書及び密入国議定書についても平成17年通常国会において締結につき承認を得た。国連腐敗防止条約についても、平成18年6月に締結につき国会の承認を得たところである。
銃器議定書については、早期の締結を目指し、国内担保法の整備等につき関係省庁とともに検討を行っている。また、平成17年3月の国連麻薬委員会において我が国は、麻薬関連諸条約の規制対象外の物質に関する情報交換に関する決議案を提出し、全会一致で採択されるなど、
国際的なルールづくりに貢献した。また、マネーロンダリングやテロ資金供与、証券関連犯罪の防止・対策に資する情報交換枠組みの設定にも参画している。
(ロ)平成18年2月には、尾﨑久仁子在ウィーン国際機関日本政府代表部公使が国連薬物・犯罪事務所(UNODC)条約局長に就任し、国際組織犯罪を防止するための国際的な法的枠組み構築を促進する役割の一翼を日本人が担うこととなった。
これに加え、平成17年度においては、国際組織犯罪条約及びサイバー犯罪条約それぞれの締約国会議がウィーン及びストラスブールで、
また、国連腐敗条約締結促進セミナーがバンコクで開催され、我が国も出席の上、積極的に議論に参加した。このように我が国は、国際組織犯罪を防止するための国際的な法的枠組み構築促進に貢献するとともに、国際的な協力に積極的に参加した。
(2)国連、G8、FATF等における国際的な取組への参加・貢献
国際組織犯罪を防止するための国際的な取組については、国連麻薬委員会、犯罪防止刑事司法委員会、国連薬物犯罪事務所主要拠出国会合、G8司法内務閣僚会合、G8リヨン・グループ全体会合(年3回)、FATF全体会合(年3回)、アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)年次会合等があげられる。
我が国はこれらの会合すべてについて参加し、他国の司法・法執行当局関係者とともに、
国際組織犯罪防止対策として国際社会が一致して取るべき措置及び各国の実施体制・状況等につき協議・意見交換を行い、国際的な取組の促進及び体制の構築に貢献した。
(3)人身取引撲滅のための国際協力の推進
(イ)人身取引については、平成16年12月に策定された政府としての包括的な「人身取引対策行動計画」に基づき、人身取引の防止・撲滅及び被害者保護に向けた諸施策を関係省庁との協力の下推進してきたが、平成17年度については、人身取引議定書の締結につき国会の承認を得たほか、平成16年度のフィリピン、タイ、コロンビア、米国に続き、
ロシア、ウクライナ、ルーマニア、フランスに政府協議調査団を派遣し、また、平成18年2月、「人身取引問題に関する国際シンポジウム」を東京にて開催した。
(ロ)これまでのところ、日本国内での人身取引事案の検挙件数は51件(平成15年)、79件(平成16年)、81件(平成17年)、起訴数は37名(平成15年)、48名(平成16年)、75名(平成17年)、公的シェルターでの被害者保護数は6名(平成15年)、24名(平成16年)、104名(平成17年)と増加傾向にあり、人身取引にかかる犯罪が顕在化しつつあること、また、被害者に対する政府の保護策が浸透しつつあることが伺われる。
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事業の総合的評価
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○ 内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
国境を越える組織犯罪が一層複雑化・深刻化している今日、それぞれ異なる刑事・司法制度を有する世界各国が一丸となって犯罪の防止に取り組むためにも、国際的な法的枠組みづくりを進めることが効果的な対策であり、引き続き国際組織犯罪防止条約、銃器議定書等を実施するための国内法整備をはじめ国際的な協力の推進に努める。
また、国連、G8等の国際的な各種取組の会合は、外交当局のみならず刑事・司法当局関係者も出席し、犯罪防止分野の専門的な見地から効果的な対策につき協議される場であるところ、我が国としても引き続きこれらの取組・会合に参加することが有益である。
人身取引は我が国において現実に発生している重大な犯罪及び人権侵害であり、関係省庁との緊密な連絡の下、人身取引の防止・撲滅、被害者の保護に向けて政府を挙げて取組体制を確立し施策を実施していく必要がある。
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【評価をするにあたり使用した資料】
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