省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

11-3 国際社会における人権の保護・促進のための国際協力の推進

人権人道課長 木村徹也
平成18年5月
施策の目標
国際社会における人権の保護促進
施策の位置付け
 国際社会における人権の保護・促進については、地球規模の問題であり、その取組や国際的ルール作りの重要さについては、以下のとおり言及されている。
  • 平成17年度重点外交政策に言及あり。
  • 平成18年度重点外交政策に言及あり。
  • 第58回国連総会における外務大臣一般討論演説、第60回国連総会における外務大臣演説、第164回国会における内閣総理大臣施政方針演説、第164回国会における外務大臣外交演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1)国連総会(第三委員会)、人権委員会(平成18年度よりは人権理事会)における人権関連決議案の提案を通じた人権分野の議論への積極的参画
(2)二国間での人権対話の実施を通じた開発途上国の人権の保護、促進
(3)人権関連分野でのセミナーの開催、国際法模擬裁判の実施を通じた人権分野における知識の普及と意見交換
(4)国連人権関係基金等への拠出

【施策の必要性】

(1)人権は、すべての人間が生まれながらに等しく有している基本的権利である。国連憲章第1条は「人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて国際協力を達成すること」を目的の1つとして掲げている。世界各地では依然として、差別、虐待等の人権侵害が見られるが、人権は、普遍的価値を有することから、人権問題は、各国の純然たる国内問題にとどまらず、国際社会の正当な関心事項である。
(2)人権という基本的権利を国際社会において保護・促進する政策を行うことは、国際社会の当然の責務であり、このような人権分野での国際協力は、我が国の国際社会での役割、信頼性等を強化するとともに、我が国にとって望ましい国際環境の実現にも資するものである。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

(1)人権の保護・促進にあたっては、世界各国それぞれが、異なる文化的・歴史的・宗教的な或いは経済的社会的な状況にある以上、一律の特効薬的な手段・施策はない。その一方で、普遍的価値を有する人権概念を没却することなく、国際的に推進していくことは我が国をはじめとする国連加盟国の責務である。したがって、この要請を満たすために我が国としては、各国と人権に関する二国間での対話・協議を行い、相互理解を進めること、また、国際的な人権規範の確立を目指すために、人権に関する国際フォーラムへ積極的に参加していくこと等の地道な積み重ねが有効である。
(2)国際的な人権保障の取組に対しては、前述の国際フォーラムや二国間対話といった手段以外にも、人権保護・促進のために活動する国連人権関係の諸機関・基金による、例えば、児童、女性、障害者等、社会的弱者を対象とした国家の枠組みを超えた国際社会全体を対象とした活動がある。我が国としても、こうした人権に関連する各種の国連基金等が活動を行う際に不可欠な拠出を行い、人権の保護・促進のための支援を行っていく必要がある。
(3)内外における人権についての理解を深め、意識向上を通じた人権の保護・促進のために、各種周知・啓発活動が必要である。

【施策の効率性】(3行以内)

 国際社会における人権の保護・促進を効果的・効率的に行うために、国連の人権分野の改革である、強化された人権理事会設立の議論に積極的に参加し、既存の手続きやメカニズムの見直しを含む総会決議が採択された。また、国際フォーラムや二国間の対話の結果、各国の人権意識に影響を与えている。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
2,671,072
2,479,408
単位:千円
(注)本省分予算、関連拠出金等を含む。

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
15
15
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

(1)各国の歴史、宗教、経済等含む国内事情がそれぞれ異なるため、国際社会における人権についての意見や価値観の相違が見られる。
(2)各国国内の政治、経済等の事情が、人権に関する外交政策に大きな影響を与える。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

(1)国際社会における人権の保護・促進の進捗状況
(2)我が国の国際社会における議論への参加及び貢献状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)国際社会における人権の保護・促進の進捗状況
(イ)国連人権委員会における決議を通じた貢献の状況
(ロ)人権に関連する国連基金等への拠出を通じた貢献の状況
(2)我が国の国際社会における議論への参加及び世論形成への貢献状況
(イ)国連等の場における議論への参加及び貢献の状況
(ロ)二国間人権対話における意見交換を通じた貢献の状況
(ハ)国際人権法模擬裁判には、一般から多くの聴衆が来場し、人権・人道法の知識を啓発するとともに、それらについての国民の理解を深めることができた。

【評価の結果(目標の達成状況)】

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)国際社会における人権分野の意見や価値観の相違は、短期的に解消されるものではなく、継続的に積極的な関与が必要であるが、強化された人権理事会の設立等国連での人権主流化の動きや、我が国も共同提出した「北朝鮮の人権状況」決議が国連総会で初めて採択されるなど、その動きは着実に進んでいる。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 国連改革の一環として、3月に総会決議によって人権委員会に代わって設置が決定された人権理事会においても、国際社会の人権の保護・促進のため議論に積極的に参加する。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 国際社会における人権の保護・促進のためには、継続性が必要であり、今後とも諸事業を引き続き行うこととし、定員要求、予算要求等に反映させていく方針である。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 林陽子 弁護士
 国際フォーラムにおける人権外交に関しては、日本がEUとともに「北朝鮮の人権」決議の主提案国となり、同決議を初めて国連総会で採択させたことを高く評価したい。2006年5月に行われた最初の人権理事会選挙で日本は当選を果たしたが、今後は同理事会に積極的に参加をし、アジア地域グループの中での存在感を高めなければならない。
 二国間での人権対話の手法も、概ね評価できるものである。ただし、日本は国連の主要な人権6条約をすべて批准しているが、個人通報制度を定めた条約の選択議定書を全く批准していない。各条約の報告書制度に基づく適時の報告書の提出と併せて、日本国内で個人通報制度への理解を深めることが、人権対話の質をより高めるのではないかと思われる。
 人権高等弁務官事務所(OHCHR)の強化は世界首脳サミット「成果文書」での合意事項であり、日本はOHCHR拠出金を拡充すべきであるが、国際機関への人的資源の投入も実現すべきである。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 「北朝鮮の人権状況」決議が国連総会で初めて採択されるなど、施策の目標である「国際社会における人権の保護促進」に向けての具体的な成果が記述されており、適切な評価となっている。

【事務事業の評価】

事務事業名:国連総会(第三委員会)、人権委員会(人権理事会)等多国間の枠組みにおける人権分野の議論への積極的参画

事務事業の概要
 我が国は、国際的な人権規範の発展・促進、各国の人権状況の改善に向けた取組を進展させるため、人権に関する議論を行う国連総会第三委員会や人権委員会をはじめとする国際フォーラムに積極的に参加している。
 また、障害者権利条約作成交渉については、国連総会アドホック委員会に参加し、本条約が望ましい形で早期に国際社会の幅広い合意が得られるよう努力している。
 このような多国間の枠組みにおける人権分野の議論へ我が国が積極的に参画することは、国際社会において人権の保護・促進の推進に資することであり、国際的なルール作りの促進にも寄与するものである。
有効性
(具体的成果)
 近年、国連総会第三委員会や人権委員会等の国際フォーラムにおいては、人権問題に関する各国の意見や価値観の相違が見られたが、我が国は、ねばり強い協議を通じて、異なった意見を調整しバランスのとれた内容の決議案となるよう積極的な外交努力を行った。特に、人権委員会において、我が国がEUとともに主提案国として本決議を作成した拉致問題の解決等を含む「北朝鮮の人権状況」決議が、昨年よりも内容が強化されたのみならず、多くの支持(賛成票の増加(29票→30票)及び共同提案国の増加(42か国→47か国))を得て採択され、さらに初めて国連総会において同決議が採択されたことは、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題に関する国際社会の理解を一層深めることに寄与したものと評価される。これは、拉致問題を含む人権状況の改善に向けた北朝鮮への強い働きかけとなっている。
 障害者権利条約交渉に関しては、我が国は、早期に国際社会の幅広い合意が得られるよう積極的に貢献しており、我が国のこのような態度は国内外から評価されている。(なお、平成17年度は8月1日~8月12日及び1月16日~2月3日の2回にわたって条約交渉に係る国連総会アドホック委員会が開催された。)
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 国連総会や人権委員会に代わって国連総会決議によって設立が決定した人権理事会においても、引き続き国際的に人権が保護・促進されるよう、引き続き積極的に参画していく。また、障害者権利条約については、平成18年8月に次の国連総会アドホック委員会の開催が予定されており、同条約の早期合意の実現にむけて引き続き積極的に取り組んでいく。
 いずれにしても、国際社会における人権分野の意見や価値観の相違は、短期的に解消されるものではなく、継続的な関与が必要である。

事務事業名:二国間での人権対話の実施を通じた開発途上国の人権の保護、促進

事務事業の概要
 人権の擁護・促進は、国際社会の正当な関心事項であることを踏まえ、我が国は人権状況に深刻な問題がある国については、国際フォーラム等において国際社会と協調しつつ批判するべき点は批判し、改善を求めるとの立場をとるとともに、二国間の友好関係を基礎に具体的な人権状況の改善を促すことが適切な国については、人権対話を実施している。
有効性
(具体的成果)
 11月にミャンマー政府との対話の一環として、ミャンマーの刑務所局長による我が国の刑務所視察を実施した。平成16年に、両政府共催で実施したヤンゴンにおける「刑務所における処遇」をテーマとする人権セミナーで紹介した日本の刑務所の状況や処遇に関する国際基準等について実際の現場を視察することにより、理解を更に深め、ミャンマー政府内の人権意識を高めることができた点で効果があったと言える。
 3月にカンボジアとの間で実施した人権対話は、カンボジアに対する最大の支援国でありかつ国連人権委員会におけるカンボジア決議案の主提案国である我が国が、カンボジアの人権問題を把握し、具体的な支援分野を特定することで、人権分野の国際協力上の効果があったといえる。
 また、従来、我が国が実施してきた人権対話の対象国に加え、新たな国から対話の要望が表明されており、これは、人権対話が評価されていることを示していると考えられる。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 今後も国内に人権問題が指摘される国々との間で人権対話を実施する。
 我が国が、価値観を一方的に押しつけることなく、各国独自の事情を十分踏まえた上で具体的改善策を共に追求するとの基本姿勢に立脚し、対話を通じて当該国の人権状況改善を図っていることについては、各国より高く評価されており、また当該国との信頼関係の強化にも役立っていることから、人権対話を引き続き実施することが適切である。

事務事業名:人権関連分野でのセミナーの開催、国際法模擬裁判の実施を通じた人権分野における知識の普及と意見交換

事務事業の概要
 平成17年度は、国際法模擬裁判「2005年アジア・カップ」(外務省主催)を開催した。国際法模擬裁判は、アジア諸国の学生を招聘し、人権・人道分野の国際法に関わる係争を題材とする模擬裁判を開催するものである。国際人権・人道法の知識の普及及び理解の増進等の啓発を目的とし、中長期的に国際社会における人権保護・促進を目指しており、国際人権・人道法を周知・啓発するために必要な施策である。
有効性
(具体的成果)
 国際法模擬裁判には、我が国及びアジア諸国からの学生が参加し、人権・人道分野の国際法に関わる係争を題材とする模擬裁判において書面陳述及び弁論能力等を競うことによって、国際人権・人道法の日本国内及びアジア諸国への啓発、国際法を学ぶ学生の能力支援、国際人権・人道法に関する知識及び理解の増進等の点で大きな成果が得られた。なお、「人権教育及び人権啓発施策」についての報告書に、模擬裁判の概要を掲載し、本施策の更なる広報に努めた。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 国際法模擬裁判や人権関連分野セミナーを引き続き開催する。
 国際人権・人道法を広く国民に周知・啓発することは、人権の保護・促進のために極めて重要である。

事務事業名:国連人権関係基金等への拠出

事務事業の概要
 平成17年度は、国際連合児童基金(UNICEF)に対し2,530,095千円(23,645,748ドル)、国連婦人開発基金(UNIFEM)に対し85,250千円(796,726ドル)、国際連合人権高等弁務官事務所拠出金に対し17,804千円(166,397ドル)、国連障害者基金に対し5,489千円(51,300ドル)を拠出した。これらの拠出は、各国際機関からの要請に応え、社会的弱者の人権の保護・促進等のために使用されている。
有効性
(具体的成果)
 各国際機関からの年次報告等に記されているとおり、我が国からの拠出金は、各国際機関によるプロジェクトの実施等のため有効に使われた。
 なお、人権高等弁務官事務所の活動を支援するため、我が国は、平成16年度まで国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)が管理する複数の基金に個別に拠出してきた国連人権問題基金拠出金を統合してOHCHR拠出金として組み替えて拠出したが、これは我が国がOHCHRとの執行協議を通じて、双方が重視する分野・案件にタイミング良く効率的に、かつ柔軟に拠出金を運用できた。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
 我が国の厳しい財政事情の下、各種国連基金等への拠出金は軒並み削減された。このような減額は各国際機関の活動能力に響くものであり、我が国にとって社会的弱者の人権の保護・促進はもはや優先課題の1つではないとの誤ったメッセージを送ることにつながりかねないこと、また、国際機関ひいては国際場裡における我が国の影響力や声望にもかかわることから、各国際機関に対する我が国の拠出金を継続していく必要がある。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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