省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

11-2 国際的な枠組みを通じた感染症対策への取組

専門機関課長 山田洋一郎
平成18年4月
施策の目標
感染症対策への支援
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第164回施政方針演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
 低中所得国における三大感染症対策を支援する「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(以下、世界基金)の運営と資金供与に貢献。
(1)世界基金の最高意思決定機関である理事会において、我が国は理事国として世界基金の運営につき積極的に関与した。
(2)世界基金に対し、平成17年(暦年。以下同様)に1億ドルを任意拠出し、世界基金が進める低中所得国における三大感染症対策への支援に貢献した。

【施策の必要性】

(1)新たな国際秩序の構築のために、我が国は世界の平和と安定に向けた総合的な取組を行っており、その一環として「人間の安全保障」を推進することが重要である。エイズ、結核、マラリアの三大感染症は世界で毎年600万人もの生命を奪っており、特に低中所得国に多大な被害を及ぼし、脅威となっている。一方、低中所得国のみではこれら三大感染症に十分な対策を講じることは困難であることから、我が国は他の先進国とともに人道的観点からこれら三大感染症対策を支援する必要がある。また、低中所得国における三大感染症対策支援は、これら諸国の経済・社会開発の基礎をなす人的資源を保護することにつながる。
(2)特にアジアを中心とする低中所得国の三大感染症対策を支援することは、我が国国民の健康保護ともなる。
(3)三大感染症に対して包括的な対策を講じることの必要性は、国際社会のコンセンサスとなっている。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

 世界基金は、低中所得国における三大感染症対策を支援する上で世界最大の資金供与機関である。また、世界基金は感染者や患者の治療のみならず、予防、ケア等幅広い対策を支援する制度を有し、事業申請受理から承認、実施に至るまで迅速な手続きが取られている。官民パートナーシップを具現化した世界基金は、事業申請段階でも実施段階でも各国政府のみならず、国際機関、市民社会等が重要な参加主体となっており、三大感染症対策の質を高めている。また、我が国は、感染症対策支援を一層効率的かつ有効なものとするために、世界基金の運営状況を日常的に監視し、世界基金の最高意思決定機関である理事会での議論に積極的に参画しており、感染症対策への支援において有効である。

【施策の効率性】(3行以内)

 世界基金が支援する事業は、国際競争入札義務、調達単価の公開、事業の進捗に応じた資金供与等により経費の効率化が確保されている。また、世界基金の活動に関する透明性は極めて高いことから、適正な資金使用が制度的に保障されている。

【投入資源】

予算
平成17年度
平成18年度
15,937,460
100,000
単位:千円
(注1)本省分予算
(注2)米ドル換算では、         平成17年度                    平成18年度
                    148,948,228米ドル                   900,901米ドル

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
2.2
2.2
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース)

【外部要因】

(1)世界基金は低中所得国の三大感染症対策事業に資金を供与する機関であり、直接事業を実施することはしない。したがって、世界基金による支援は、低中所得国における保健衛生インフラの充実度、対策ニーズ、案件企画能力、援助吸収能力に依存する。
(2)また、世界基金が支援できる額は、世界基金に対する他のドナー側からの資金拠出額の多寡に大きく依存する。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 通常の評価を行う。

【評価の切り口】

(1)世界基金への拠出増額と「当面5億ドル」(小泉総理が表明)の拠出の遂行状況
(2)小さく、効率的な事務局の維持、支援事業・実績のモニタリング及び制度の円熟化に向けた貢献

【目標の達成状況(評価)】

(1)世界基金への拠出増額と「当面5億ドル」(小泉総理が表明)の拠出の遂行状況
 世界基金に対する拠出は以下のとおりであり、施策の目標達成に寄与している。
 小泉総理が平成17年6月末に表明した上記誓約は、暦年の2006年以降の数年間を念頭に置いたものであるが、国際的には2か年で達成されるとの期待が極めて強い。平成18年3月15日に拠出した約1.3億ドルは、5億ドル拠出の第一歩となるもの。また、世界基金では暦年単位で統計をとっているところ、我が国の拠出額を暦年単位でまとめると次のとおり。
 平成14年   8006万ドル
 平成15年   8000万ドル
 平成16年   8613万ドル
 平成17年 1億     ドル
 平成18年 1億3015万ドル
(2)小さく、効率的な事務局の維持、支援事業・実績のモニタリング及び制度の円熟化に向けた貢献
 拠出金が有効に活用されるため、以下のとおり運営予算を必要最小限にする努力、透明性の高いモニタリング、及び戦略的な検討が行われており、目標達成に寄与している。
(イ)事務局
 世界基金事務局は、事業予算を除いた平成18年運営予算を平成17年の6310万ドルから9470万ドルに増額する案を提示したが、我が国は小さく効率的な事務局の維持に賛同する他の諸国と協力して、これを8,320万ドルにまで削減した。
(ロ)モニタリング
 世界基金は、初めて案件公募を行った平成14年4月以来これまで5回の事業案件公募・承認(ラウンド)を実施しており、平成18年3月末現在で、131か国の359件(約52億ドル相当)の事業を承認してきた。また、ドナーがこれまでに拠出誓約した資金は約88億ドルであり、うち実際に支払われた額は約50億ドルに上る。
 世界基金の支援事業・実績は、極めて高い透明性の下に、世界基金のウェブサイトに掲載されており、更新頻度も高い。
 これまでに承認された事業案件が計画通りに5年にわたって実施された場合に期待される成果は以下の通り。(括弧内は平成17年現在の成果)
 (a)HIV/エイズ
 (b)結核
 (c)マラリア
(ハ)制度
 (a)政策・戦略委員会において、昨年来、世界基金の中長期的な戦略案が練られている。我が国もそのメンバー。世界基金は国際的な三大感染症対策においてどのような地位を占めるべきなのかということについて根本的な問題提起を行うなど、積極的に議論に参加してきている。戦略文書は平成18年11月の第14回理事会において採択される見込みである。
 (b)我が国もメンバー国である財政・監査委員会においては、需要が供給を上回る資金ギャップを埋め合わせるために包括的財政原則(案件承認は当該年の拠出誓約総額の範囲内、資金供与協定の締結は現金保有総額の範囲内に収めること)がややもすると崩れかねない中で、右は世界基金の持続可能な財政を確保する重要原則であるとして堅持した。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
但し、
(1)世界基金に対する拠出金は平成17年の1億ドルから平成18年は1.3億ドルに増加しているが、政府のODA予算、外務省予算が軒並み削減されている中にあって、期待された程の伸びを示すことができず、世界基金事務局やその他一部の世界基金関係者からは失望の念や我が国政府の意向に対する疑念が表明されている。この点においては「部分的な進展」と評価する。
(2)「小さく、効率的な事務局の維持、支援事業・実績のモニタリング及び制度の円熟化に向けた貢献」については、事務局規模の拡大は必要最小限に止めることができ、事務局による透明性確保の努力もあってモニタリングは十全に行える体制にあった。また、現在進行中の戦略文書作成や包括的財政原則の堅持についても、少なくとも現時点においては我が国として満足の行くものであり、「目標の達成に向けて相当な進展があった。」と評価する。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 平成19年、平成20年の世界基金に対する拠出を一層増加することにより、【目標の達成状況(評価)】(2)(ロ)の達成に貢献する。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 世界基金が今後とも低中所得国における三大感染症対策の効果的資金供与機関として中心的な役割を果たすことを支援する。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 伊藤聡子 世界基金支援日本委員会事務局
       財団法人日本国際交流センター チーフ・プログラム・オフィサー
 ODA予算の全体的な減少傾向の中にあって、日本政府の世界基金に対する拠出はこれまで4億8千万ドルにのぼり、また、2005年6月に小泉総理は世界基金に対する拠出額増額と当面5億ドルの拠出という公約を表明された。これらは、日本政府が開発途上国における三大感染症対策を重要視していることの証左であり、また、同対策に果たしている世界基金の重要な役割を認め、高い優先度を置いていることの証左でもあろう。世界基金の2006年-2007年増資計画のなかで、比較的早い時期に日本政府が5億ドルの拠出を誓約したことは、日本からの拠出にとどまらず、他国の拠出額増額を促す上でも一定の効果があったと思われる。ただし、その後の実際の拠出遂行状況は国際社会の期待に応えるものではなく、失望の念が各国・各セクターから表明されている。基金の資金不足が受益国にもたらす深刻な影響を鑑み、日本政府として一層の努力を期待したい。
 一方、日本政府の二国間援助における感染症対策と世界基金の資金供与との間で依然として十分な連携が図られているとは言えないように見受けられる。開発途上国内に設置されている世界基金の国別調整メカニズム(世界基金への事業申請主体で、当該国政府関係機関、国際機関、外国の援助実施機関、市民社会等の合議体)に日本の援助実施機関がより実質的に関与し、日本が総体として世界の感染症対策への取組を深めることが望まれる。
 また、官民連携に関しては、世界基金の性格上および三大感染症の性格上、市民社会や経済界などの民間部門との連携が不可欠であるが、日本においても政府が世界基金をめぐって積極的に民間との対話・連携に取り組みつつあることは高く評価したい。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 目標の達成状況については、支援の資金の拠出状況より、むしろ、資金の投入結果の具体的成果についても記述に力を入れる必要がある。

【事務事業の評価】

事務事業名:世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)への拠出

事務事業の概要
 我が国は、九州・沖縄サミットが創設の契機となった世界基金に対し、平成17年末までに約3.5億ドルを任意拠出してきた。しかしながら、低中所得国の三大感染症対策に対する支援強化の要請に積極的に応えるべく、平成17年6月30日に小泉総理は我が国の世界基金に対する拠出を増額し、当面5億ドルの拠出を行う旨を表明した。政府としては、この総理による誓約を実施すべく、2~3年を目処に5億ドルの拠出を行う。
有効性
(具体的成果)
 平成17年に開始された第5ラウンド(第5次事業案件公募・承認)において、49か国で63件の新規事業に対し約7億ドルを上限とする資金供与が承認された。また、過去の事業で当初の2年を終了した数十件の案件につき、第2フェーズ(残り3年)への更新を承認した。これにより、【目標の達成状況】(2)(ロ)の成果の実現に寄与した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 当面5億ドルの着実な実施のみ。ただし、感染症対策に要する資金需要の大きさ、我が国及び国民を感染症から守る必要性、国際社会における日本に対する期待の大きさ、我が国として相応しい国際貢献等に鑑み、5億ドルの拠出を可能な限り早期に実現する。

事務事業名:世界基金の最高意思決定機関である理事会における積極的関与

事務事業の概要
 世界基金は過去4年間にわたり359件もの三大感染症対策事業を支援してきた。一方、三大感染症対策の状況は、「HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる」とのミレニアム開発目標6ターゲット7を実現するための道のりは未だ遠い。我が国は、低中所得国における三大感染症対策への世界基金による支援活動が効果的、効率的、そして透明性をもって実施されるよう、世界基金の最高意思決定機関たる理事会に積極的に関与する。
有効性
(具体的成果)
 理事会における我が国の積極的関与により、世界基金事務局は事業予算を除いた平成18年運営予算を当初案の9,470万ドルから8,320万ドルにまで削減した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由と今後の方針)
 我が国は世界基金設立当初から一貫して単独理事席を維持してきており(他には米及び伊のみ)、eメールや電話による緊急のものも含め理事会には欠かさず参加し、積極的に発言をしてきている。また、政策・戦略委員会及び財政・監査委員会という最も重要な2つの委員会でもメンバーとなり、現在進行中の戦略策定プロセス、包括的財政原則の堅持、事務運営費の増加抑制などの面で、主要ドナー国の1つとして相応の貢献を果たしている。
 今後は、特に仏、英等が大幅に拠出額を伸ばしつつあることから、我が国がいつまで単独理事国議席を維持できるか覚束ない。我が国としては小泉総理の誓約を早期に実現し、世界基金への拠出額を大幅に増額することにより世界基金における発言権を維持するとともに、単独理事国議席の維持を目指す。

【評価をするにあたり使用した資料】

(1)邦字紙報道多数
(2)ウェブサイト
 The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria
 世界基金支援日本委員会
 Global Health Reporting.org
 World Health Organization
 Joint United Nations Programme on HIV/AIDS
 The World Bank
 エイズ予防財団
 United Nations
 Stop TB Partnership
 結核予防会
 Roll Back Malaria
 薬事日報
 日本製薬工業協会
 日本製薬団体連合会
 USAID
 Department for International Development (UK)
 国立感染症研究所
 医薬産業政策研究所
 国連広報センター
(3)世界基金資料
 世界基金理事会資料 GF/B10、GF/B11、GF/B12
 世界基金政策・戦略委員会資料 GF/
 世界基金資料:Annual Report 2004, Brochure 2005
(4)その他資料
 UNAIDS年次報告(2004年版、英文)
 WHO, Global defence against the infectious Disease threat(2003年版、英文)
 Resource Needs for HIV/AIDS, Science Magazine, 29 June, 2001
 外務省「2005年版ODA政府開発援助白書」
 外務省「平成17年度外交青書」

関連資料(PDF)PDF

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