省庁共通公開情報

I.実施計画に基づく事後評価

1. 地域・分野

11-1 人間の安全保障の推進

国際社会協力部政策課長 大菅岳史
平成18年4月
施策の目標
人間の安全保障の概念を普及させ、国際社会に存在する人間の生存、生活、尊厳に対する脅威となっているグローバルな問題の解決への貢献。
施策の位置付け
平成17年度重点外交政策に言及あり。
平成18年度重点外交政策に言及あり。
第159回国会施政方針演説に言及あり。
施策の概要
(10行以内)
(1)「人間の安全保障」の概念を国際社会において普及させるため、人間の安全保障ネットワーク閣僚会合への出席、APEC人間の安全保障セミナー開催、メキシコ人間の安全保障ワークショップへの協力等を実施、国連首脳会議成果文書をはじめとする国際的フォーラムの採択文書に「人間の安全保障」の文言を反映させるための各国に働きかけを実施した。
(2)「人間の安全保障」を現場において実践するため、「人間の安全保障基金」を通じた支援、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」による支援を実施した。

【施策の必要性】

 グローバル化が急進する中、国内紛争の国際化、感染症の広まり、難民問題、突然の経済危機、貧困問題の拡大、自然災害等、人々を脅かす脅威が多様化、深刻化しており、従来からの国家による庇護だけでは対応することが難しくなっている。「人間の安全保障」とは、国家の安全保障を補完するものとして、このような多様な脅威に晒されている人間一人ひとりに注目し、人々の保護と能力強化をもって人間それぞれの持つ豊かな可能性を実現し、人づくり、社会づくりを通じて、国づくりを進めようとする考え方である。
 「人間の安全保障」の視点は、我が国の主要かつ喫緊の外交課題に取り組むに当たって必要な視点として、我が国がリーダーシップを発揮して打ち出している21世紀にふさわしい理念であり、我が国の取組は、「人間の安全保障基金」や「草の根・人間の安全保障無償資金協力」の実施国、国際機関及び関係NGO等から高い評価を得ている。
 したがって、我が国政府として引き続き「人間の安全保障」分野で指導力を発揮し、「人間の安全保障」の理念に対する国際社会各層の理解を増進しつつ、「人間の安全保障」を推進していくことが必要かつ適当である。

【施策の有効性】(目標達成のための考え方)

 「人間の安全保障」の概念は、人間一人ひとりを多様な脅威から保護するとともに、こうした脅威に自ら対処できるようにするため人々の能力を強化することにより実践されることから、目に見える効果を挙げるまでには、息の長い地道な取組が必要になる。また、「人間の安全保障」について、我が国とは異なるとらえ方をする国々や、「人間の安全保障」の考え方そのものに慎重な立場を取る国々もあり、国際社会においてまだ完全に普及したとはいえない現状もある。したがって、我が国が上記の目的を達成するためには、国連をはじめとする様々な国際的なフォーラム及び現場レベルの双方において次のような施策を総合的に取っていくことが有効である。
(イ)国際会議、二国間会談等外交のあらゆる場を通じて「人間の安全保障」の理念の普及を促進すること
(ロ)シンポジウム、各種媒体等による広報を通じた「人間の安全保障」の考え方の広報をすること
(ハ)我が国のイニシアティブにより1999年に国連に設置された「人間の安全保障基金」の運営を通じ、紛争・感染症といった人間の生存、生活、尊厳に対する様々な脅威から途上国の住民や地域社会を保護し、個人・地域社会が自立するための能力向上に取り組む国際機関のプロジェクトを支援すること
(ニ)「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を通じ、紛争・感染症といった人間の生存、生活、尊厳に対する様々な脅威から途上国の住民や地域社会を保護し、個人・地域社会が自立するための能力向上に取り組むNGO等市民社会のプロジェクトを支援すること

【施策の効率性】(3行以内)

 国連をはじめとする様々な国際的なフォーラムにおいて「人間の安全保障」がとりあげられ、関心国との協力関係が強化されたこと、現場での実践として具体的なプロジェクト実施が進展し、成果を挙げていることは、取った手段が適切であったことを示している。

【投入資源】

予算(人間の安全保障基金)
平成17年度
平成18年度
27,992
26,041
単位:千円
(注1)本省分予算
(注2)この他に、人間の安全保障基金拠出金として、平成17年度2,670,000千円、平成18年度2,000,000千円。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力として、平成17年度14,000,000千円、平成18年度11,000,000千円。

人的投入資源
平成17年度
平成18年度
4
4
単位:人
(注)本省分職員数(定員ベース:国際社会協力部政策課関係分のみ)

【外部要因】

(1)国内紛争の国際化、感染症の広まり、難民問題、突然の経済危機、貧困問題の拡大、自然災害等の人々を脅かす脅威は、予想を超えて、多様化、深刻化している。
(2)「人間の安全保障基金」を活用し、脅威の排除に取り組む国際機関の活動が従来の国際機関の活動のみでは対応し切れなくなっており、国際機関間や市民社会等との連携の必要性が高まっている。

施策の評価

【平成17年度に実施した施策に係る評価の考え方】

 「通常の評価」を行う。但し、国連首脳会合成果文書のフォローアップが平成18年度以降も継続される。

【評価の切り口】

(1)人間の安全保障の理念の普及
(イ)シンポジウム開催、国際会議への出席等の実施状況
(ロ)主要な国際的フォーラムの関連文書における「人間の安全保障」への言及状況
(2)グローバルな問題の解決への貢献
(イ)「人間の安全保障基金」によるプロジェクトの承認・実施状況
(ロ)「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に基づくプロジェクトの実施状況

【目標の達成状況(評価)】

(1)人間の安全保障の理念の普及
(イ)平成17年度、次のような措置を通じて、人間の安全保障の普及への取組を実施した結果、理念が普及し、他国の支持・協力を得た。
(ロ)「人間の安全保障」関心国と連携しつつ、これに反対し又は慎重な態度をとる国に対する働きかけを行う等により、以下の国際的フォーラムの関連文書において、「人間の安全保障」への言及を確保した。その結果、概念、考え方に対する理解が進んだ。

(2)グローバルな問題の解決への貢献
 以下のとおり、「人間の安全保障基金」によるプロジェクトの承認、実施及び「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に基づくプロジェクトの実施が行われ、グローバルな問題の解決に直接寄与した。
(イ)「人間の安全保障基金」を通じ、紛争・感染症といった人間の生存、生活、尊厳に対する様々な脅威から途上国の住民や地域住民を保護し、個人・地域社会が自立するための能力向上に取り組む国際機関のプロジェクトを支援した。その結果、グローバルな問題の解決に貢献した。
(参考)
 平成17年度中に支援が決定した国連機関が実施するプロジェクトの件数は計23件(アフリカ11件、東アジア4件、アフガニスタン及び中央アジア3件、南アジア2件、中南米1件、中東1件、ロシア1件。)。合計金額約47.9百万ドル。具体的な分野としてはコミュニティの農業技術の指導、子供の教育、保健衛生(HIV/エイズ含む)、人身取引等。平成16年度実績(22件、合計金額約27.7百万ドル)に比し、実施は促進されている。
(ロ)「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を通じ、紛争・感染症といった人間の生存、生活、尊厳に対する様々な脅威から途上国の住民や地域住民を保護し、個人・地域社会が自立するための能力向上に取り組むNGO等市民社会のプロジェクトを支援した。

【評価の結果(目標の達成状況)】(類型化した表現で自己評価する)

「目標の達成に向けて進展があった。」
(理由)国連の主要公式文書において初めて「人間の安全保障」を明記し、今後、そのフォローアップを通じて「人間の安全保障」の普及に取り組む確固たる基礎を形成することに成功した他、数多くの国際的フォーラムの採択文書において「人間の安全保障」への言及を確保した。現場での人間の安全保障を増進するため、「人間の安全保障基金」、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」による具体的な事業の実施も着実に進展。

【今後の課題】(評価の結果、判明した新しく取り組むべき課題等)(2行以内)

 国連首脳会合成果文書の「人間の安全保障」関連部分のフォローアップ、「人間の安全保障基金」の実施プロジェクトの事後評価制度の導入。

政策への反映

【一般的な方針】(2行以内)

 「人間の安全保障」の普及のための取組、現場での実践のための取組の双方を引き続き着実に推進する必要がある。

【事務事業の扱い】


【平成19年度予算・機構・定員要求への反映方針】

 
予算要求
機構要求
定員要求
反映方針

【第三者の所見】(施策に通じた有識者による当該評価に関する所見とする。)

 佐藤安信 東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム 教授
 「人間の安全保障」概念の普及およびそのための共通理解への努力が成果を挙げつつあることは認められる。ただし、昨年度の「第三者の意見」において課題とされた、「いかに政策の独自性をアピールしつつ、実質的な成果をあげていくかについての方向性の見極め」に関しては十分な対応がなされたようにはみえない。概念の普及ばかりでなく、概念自体の発展、具体化(世界的課題への同概念の適用による取り組み)のなかでどのようなグローバル・ガバナンスを構築していくかに関しても指導的役割を担うことが期待される。同概念を普遍化、日常化するために内外を問わずその担い手としての市民社会、大学、企業などの独自の取り組みを奨励し、その連携を強化することが考えられる。人間の安全保障基金や草の根・人間の安全保障無償資金協力等の案件数、資金額などが順調に伸びている事実は認められる。ただし、これらが具体的にどのような成果を挙げているかについてはわからず、実施プロジェクトの事後評価制度の早期導入が求められる。また人道と開発の継ぎ目のない支援と予防的支援強化のため、ODAなどの他資金によるプロジェクトとこれらのプロジェクトとの調整、連携、それらの相乗効果などの検証も今後の課題となろう。

【評価総括組織の所見】(評価に関する技術的な所見とする。)

 「人間の安全保障の概念を普及させ、生存等の脅威となっているグローバルな問題の解決への貢献」という施策の目標に対して概念普及に努めた結果の成果、「基金」や草の根の支援により、概念を具体的に実践した成果が示されており、適切な評価となっている。

【事務事業の評価】

事務事業名:人間の安全保障基金(基金の運営、拠出、概念の普及)

事務事業の概要
 我が国のイニシアティブにより1999年に国連に設置された「人間の安全保障基金」に対し、平成17年度2,670,000千円を拠出。国連と我が国政府との間で合意された同基金のガイドラインに従い、現場における「人間の安全保障」の実践をはかるため、国際機関から申請されるプロジェクト案に対する審査を実施し、可否を決定。これを通じて「人間の安全保障」の現場での実践をはかる。
有効性
(具体的成果)
 「人間の安全保障基金」を通じ、紛争・感染症といった人間の生存、生活、尊厳に対する様々な脅威から途上国の住民や地域住民を保護し、個人・地域社会が自立するための能力向上に取り組む国際機関のプロジェクトを支援。
 平成17年度中に支援が決定した国連機関が実施するプロジェクトの件数は計23件(アフリカ11件、東アジア4件、アフガニスタン及び中央アジア3件、南アジア2件、中南米1件、中東1件、ロシア1件。)。合計金額約47.9百万ドル。具体的な分野としてはコミュニティの農業技術の指導、子供の教育、保健衛生(HIV/エイズ含む)、人身取引等。平成16年度実績(22件、合計金額約27.7百万ドル)に比し、実施は大きく促進した。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)
 基金を通じた具体的な案件の実施を通じて現場における「人間の安全保障」の増進は着実に図られている。基金に対する国際機関からの支援ニーズは引き続き大きいので、今後とも、本基金を通じた具体的な事業の実施を継続していくことが適当。
 プロジェクトの事後評価制度を導入する必要性を認識。

事務事業名:「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を通じたNGO等市民社会のプロジェクト支援

事務事業の概要
 草の根・人間の安全保障無償資金協力が支援対象としている、開発途上国における草の根レベルのニーズについては、増加・多様化しており、それに伴い年々実施案件の数も増加している。特に、2003年において、人間の安全保障分野における取組を推し進めるために、従来の草の根無償資金協力に人間の安全保障の考えをより強く反映させた「草の根・人間の安全保障無償資金協力」として15,000,000千円を計上。引き続き個人やコミュニティ等の草の根レベルの住民が裨益する案件を対象に実施する。
有効性
(具体的成果)
 草の根・人間の安全保障無償資金協力は、我が国が現地在外公館を通じて直接実施することから、迅速な執行が可能であり、原則1,000万円以下の案件を中心としながら比較的急を要する案件(例:学校・医療施設等小型社会インフラの再建等)への支援が可能である。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力は、人間の安全保障基金の供与対象ではないNGO、地方公共団体、単独の医療・教育機関等への支援が可能となった。
 平成17年度に「草の根・人間の安全保障無償資金協力」で支援した実施案件数は1,633件(約144億円)。平成17年度では、イラクやアフガニスタンなどの紛争後の地域をはじめ、各地域において「人間の安全保障」の考え方に沿い、着実に草の根レベルの個人やコミュニティが自立に資する支援実施に取り組んでいる。これらの支援は、支援対象地域である途上国において、草の根レベルに直接裨益するきめ細かい援助として高い評価を得ている。
事業の総合的評価
○内容の見直し ○拡充強化 ○今のまま継続 ○縮小 ○中止・廃止
(理由)現行の活動を通じ、現場における「人間の安全保障」の増進は着実に図られている。本スキームに対する現地草の根レベルの支援ニーズは引き続き大きいので、今後とも本スキームを通じた着実で適切な事業の運営を継続していくことが適当。

【評価をするにあたり使用した資料】


 資料をご覧になる場合は、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj)のフリーワード検索に資料名を入力し検索をしていただくか、各国・地域情勢をクリックし、当該地域→当該国と移動して資料を探してください。また、国・地域政策以外の分野・政府開発援助につきましては当該外交政策を選び、資料を探してください。
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