
平成15年度
第1回 外務省政策評価アドバイザリー・グループ会合議事概要
1.日時
平成15年12月24日(火曜日)16時から18時
2.出席者
- (メンバー)
- 添谷芳秀、田所昌幸、廣瀬克哉、福田耕治、武藤博己(敬称略、五十音順)
- (外務省)
- 北島官房長、草賀官房総務課長、山谷考査・政策評価官他
3.次第
(1)北島官房長の挨拶及びメンバー委嘱状の手交
(2)アドバイザリー・グループの説明
(3)議事概要及び名簿のHPへの掲載について
(4)外務省における政策評価の取組
(5)フリーディスカッション及び助言の聴取
4.会合経過
(1)冒頭、北島官房長による挨拶が行われ、北島官房長よりアドバイザリー・グループの各メンバーに委嘱状が手交された。
(2)各メンバーによる自己紹介後、草賀官房総務課長より、外務省としてメンバーに対し、(イ)外務省が行う内部評価あるいは自己評価としての政策評価に対して外部有識者の立場から客観的なご意見を頂くこと、(ロ)外務省が行う政策評価の方法に関し、データの収集や評価の手順あるいは政策への反映方法等の質的改善の視点からご助言を頂くことの2点を外務省としてメンバー各位にお願いするとともに、今回の第一回会合においてはメンバー各位に、外務省の政策の特殊性とは何か、政策評価の対象とすべき外交政策とは何か、外交政策を適切に評価するための評価方法はどうあるべきかの3点につきアドバイス及びコメント等を求めたい旨発言した。なお、年数回の会議の開催を予定していること、メンバー各位には意見書等のとりまとめを要求するものではないこと、グループ全体としてよりはむしろ各個人としての立場からメンバー各位にはご意見を頂きたいことの3点が添えられた。
(3)外務省政策評価アドバイザリー・グループのメンバーリスト及び議事概要の外務省ホームページへの掲載に関しては、外務省が原案を作成し、各メンバーの了承を得た上で掲載することとした。
(4)ついで山谷考査・政策評官より外務省における政策評価に関し、これまでの外務省における政策評価導入の経緯、平成14年度の政策評価実施状況と課題及び平成15年度の取組に関し説明を行った。
(5)草賀官房総務課長より各メンバーに対しコメントを求めたところ、概要は以下の通り。
- 外交政策の特殊性は、しばしば高度に政治的な判断を伴うという点にある。このように高度な政治的判断を伴う政策について現行の政策評価法が予定しているような評価を行うことは困難であり、そのような評価はもっとダイナミックな政治のプロセスで考えていくべきことである。
- 事業レベルの評価は、比較的成果が見えやすいが、あまり小さなところに入り込むと、本来のチェックすべき政策の効果や成果が見えなくなってしまうという欠点がある。
- 外務省としては、トップレベルと事業レベルとの中間ぐらいの、目標が明確になる管理レベルにおいて評価に取り組んでいくべきというのが一つの考え方ではないか。トップ、管理、実施レベルというように評価の対象全体をマトリックスにしてみると、全て網羅的に評価する必要はないのではないか。外務省としてポイントになるところはどこにあるかを見極めながら、評価を進めていく方向が好ましいのではないか。
- 外交には相手があることだという点は理解できる。また、時間のフレームワークをどう見るかというのは難しい問題である。但し、高度の政治的判断が含まれる問題の評価は、政策評価には馴染まないと考える。政策評価として何が出来て何が出来ないかについて明確にし、外務省が評価できるものについては、きちんと評価すべきである。
- 評価シート案を見た印象だが、「どれだけのこと」を、「どれだけの人員」が行い、「どれだけの効果があったのか」についてわかるような書き方をしないといけないと思う。投入した資源についてはもう少しセンシティブになって、わかるような書き方を工夫すべきではないだろうか。
- 政策形成について、外務省としては過去の成功事例や失敗事例のケース・スタディーを行い、その評価結果として、成功の確率の高い政策立案を行うということが考えられる。ここには高度の政治的判断に属する部分もある一方で、専門的・技術的な側面も含まれるのではないかと考える。
- 一般論として高度の政治的判断というと、かなり政治レベルの決定の場合が多いだろう。それは必ずしも正面から評価の対象とする必要はないのではないだろうか。このあたりの踏みとどまり方というのはある程度明確にしてもよいのではないか。
- 効果というものは、そもそも政策の目標が何であったかということと照らし合わせないと出てくるものではないだろう。評価書においては目標の書き方次第によって効果や、結果に対しての第三者が読んだ際の印象が変わってくるのではないか。
- 外交記録公開では歴史による判断を仰ぐための材料を公表し、歴史の教訓から学んで将来の外交政策にフィードバックするということが意図されているのではないか。高度な政治的判断を含む外交政策に対する評価というのはそういう形でしかできない。このような高度な政治的判断を含む外交政策に対する評価と、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づいた、いわゆる「政策評価」とは求めるものが異なっており、前者は当然政策評価の対象から外れてくると見るべきである。
- 歴史による評価というものは、外交記録公開という現在のシステムの中に入っており、それに委ねるものであるということを、外務省として明確に示すことは、評価に対する外務省としての見解、考え方の一つの表明であるだろう。
- 自己評価の一定の内容については、きちんと公開した上で投入リソースの配分がベストであったか、組織体制や情報収集が十分であったか等をチェックし、仮に問題があったのであればどういう点で不十分であり、どこをどう補強するか、その評価とその評価結果の反映について公表し、改善することを国民に見える形で示していくことが、法律で期待されている政策評価といえるのではないか。
- 国民の視点をどのように組み込むかという問題は、国民に説得力を持つ行政活動をしているか否かということだといえる。別の言い方ではアカウンタビリティ、すなわち説得力のある説明のためには客観的でないといけないということである。
- 自治体の評価業務に携わった経験からは、何が効果かということを探し出すことが非常に難しいことがわかった。評価を行う際には、組織内で何を政策の効果とするかについての合意が存在していないと難しいと感じた。これに対し効率性はインプットとアウトプットの比であるからすぐ割り出せるのだが、だからといって政策評価としては、これだけでは不足ということになろう。
- 評価の基準とは何かという、そのゴール、目的に対してある程度の合意がないと評価はできない。
- 基本的な外交政策に関して政治的な対立がある場合、どちらの側であるべきかを外務省が決めることは難しいのではないか。しかし、政治に与えられたマンデートの中で何を行い、いかなるイニシアティブをとってきたかということは発信していくべきだろう。
- 外務省として国民に付託された責任とは何であり、ここまでは出来るけれども、ここからは出来ないということをきちんと言っておくべきである。これは高度の政治的判断とは違う問題であり、評価の基準を誰が決めるのかという問題については抵触しないと思う。
- 評価書は誰が読む文書なのかについて意識すべきである。評価書は、外務省は何をやっているのかを知りたい人にはわかるようなものであるべきである。また評価書の概要についてもエンド・ユーザーたる国民にはっきりしたメッセージがわかるように作る努力をすべきである。
- EUにおける政策評価は総局が担当しており、達成すべき政策目的と投入した行財政資源と得られた成果のバランスを考えている。その評価に対して一般市民がどう思うか、パブリック・インボルブメントの仕組みなどを用いてアカウンタビリティへの対応を上げるため尽力している。このようなEUの評価はモデルとして使えるところがあるのではないか。
- 個別事業の評価だけではなく、各担当課の次元を越えた総論的な評価もあってもよい。例えば対北鮮政策の目的・手段の政策体系を見ると、担当課を越えた領域となっている。北朝鮮問題を総論として評価した場合、六者協議に具体的にどういうプロセスや段取りで日本が関与し、影響力を持ったか否かということになるだろう。他方、担当課の資源、労力等を使っているようなものを評価の対象とすることもあるだろう。これらは評価書の中で分けて評価するようなことができるのではないかという気がする。
- 評価は外部に対する説明であると同時に内部におけるマネジメントのツールとして有効に機能するように十分に考慮していくということをやらないと、現場にとり大きな負担感のみが残ることになる。一方では自分達の仕事を見直す機会としてどう位置づけることができるのか、他方ではこの自己評価をきっちりやることがどのように位置づけられるのかが重要である。このような考え方が組織内において浸透していかないと評価作業が余分な負担になってしまい、実際の行政活動に生きてこないということになるのではないか。
- 外交政策の特殊性は、しばしば高度に政治的な判断を伴うという点にある。このように高度な政治的判断を伴う政策について現行の政策評価法が予定しているような評価を行うことは困難であり、そのような評価はもっとダイナミックな政治のプロセスで考えていくべきことである。
- 評価シートは、基本的に縦割りで作られている。しかし、トレードオフの関係が種々の政策の目標の間にも出てくるだろうから、これをどう評価するかという視点も総論的な評価のところで必要である。ちゃんと見るべき人は見ていて評価に取り組んでいるのだということがわかるような形での総論を作っていくことが必要である。このことが、総論が総論として説得力を持つための一つの条件である。
- 各部門の評価シートを取りまとめるべき立場の人達にこの評価シートはどういう意図で作っているのかというメッセージを着実に伝達するための研修が必要である。これができる体制をとることが、外務省という省がいかに有効な評価体制を持ちうるかということの重要なポイントである。
- 外務省の政策評価は、管理の改善を目指すなどの評価の目的を明確にし、選択的に評価を行っていくこともありうるのではないか。