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外務省政策評価アドバイザリー・グループ第15回会合議事録

1 日時

平成23年7月12日(火曜日) 14時00分~15時00分

2 場所

外務省

3 出席者

(有識者)
添谷 芳秀 慶應義塾大学法学部教授
(外務省)
金杉官房総務課長,麻妻考査・政策評価官,湊官房ODA評価室長,相政策企画室長,熊谷総合外交政策局総務課首席事務官 他

4 議題

  1. (1)平成23年度(平成22年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書について
  2. (2)政策評価を巡る最近の動向(「目標管理型の政策評価」の試行的取組について等)

5 資料

議事次第(PDF)
 
資料1
平成23年度(平成22年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書(案)
資料2
目標管理型の政策評価の改善方策に係る試行的取組について(平成23年4月27日付け総務省発公信総評政第14号)(PDF)(他のサイトヘ)
資料3
平成22年度政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告(PDF)(他のサイトヘ)

6 会合経過

議題1

【外務省】

 「平成23年度外務省政策評価書」は平成22年度に外務省が行った各施策に関する政策評価のとりまとめである。57の具体的施策(施策は24)に関して関係各課で自己評価を実施した。

 評価は従前より5段階で行っている。一番下が「目標の達成に向けてほとんど進展しなかった」,最上位が「目標を達成した」であり,その中間に,下から「一定の進展があった」「普通の進展があった」「相当の進展があった」という3段階がある。前年度と比較すると「相当な進展」は6件多く,「一定の進展」は2件増えた。

 「相当な進展があった」として積極的に評価されたのは,平成22年11月のAPEC開催(II-4-6)やその成果に関する広報及び発信活動。また名古屋で行われたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)についても,日本が開催国・議長国としてきちんと取りまとめ我が国が地球規模での環境問題に積極的に貢献する場となったとして前向きに評価された(VI-2-2)。その他,核軍縮・不拡散分野(II-2)における我が国の積極的な貢献,さらに入国管理上問題のない外国人に対する査証発給要件の緩和や新たな種類のビザ発給の開始(IV-3)も従来以上の評価に結びついた。

 一方,尖閣諸島を巡る問題のあった中国,及び北方領土を巡る問題のあったロシアとの各二国間関係(I-1-4及びI-4-3)は,前年度より一段階低い「一定の進展」という評価結果になった。また,北朝鮮との関係(I-1-2)については,北朝鮮が挑発的な活動を続けており,また二国間関係も進展していないので,同様に「一定の進展」という低い評価に止めざるを得ないという結果になった。

 東日本大震災の影響も見られた。発端は大震災という未曾有の不幸な災害であったが,多くの国々からなされた支援表明,また福島第一原発の問題におけるIAEAへの対応に対する評価については一定のものがある。また義援金も含めると160を超える国々が支援してくれたが,これに関連して,我が国がこれまで進めてきた地道な国際協力が今回の大震災における国際的な支援に結びついたのではないかとした記述もある(III-1-3 文化無償)。

 今回の政策評価では事務事業評価を行わなかった。行政事業レビュー等類似の取組との役割分担を図りつつ政策評価を改善する試みが政府全体で取り組まれていることもあり,評価作業の合理化を図る観点からそのようにした。

 一方,総務省からは,全省庁統一的に「標準様式」を参考に取り組むよう指示が出ているため,同様式を参考に評価項目を追加等した。政策評価のあり方については,今後とも,総務省を中心とした政府全体の動きの中で,当省が外交政策の評価をどのようにしていくのか考えていかなければならない。

【有識者】

 外務省の仕事を定量的に評価するのはそもそも難しいので,どんなコメントをするにしてもある程度の主観が入るのは避けられない。まず今年度目立つのは,中国とロシアとの二国間関係がそれぞれ「一定の進展」となっていること。基本的に領土問題にフォーカスを当てた自己評価と言える。外交は相手があるので,日本外交のコントロールの範囲内とその外の領域とがあるが,日本のコントロールの及ばないところにある問題を自己評価の対象としてどのくらい勘案するのかが難しい。相手国に影響を及ぼすことができるはずであったという前提で議論するのか,しないのかで評価は違ってくる。恐らく,問題が起きてしまったことをネガティブにとらえる必要はなく,むしろ事後処理をどのように行い,いかに来年につなげるかというのが自己評価の対象としては重要なのではないか。その辺りをどのくらい意識された上での評価なのか,文面だけからは判断できないが,明示的に言葉で表現できないとしても,外務省内部では議論するとよいのではないか。自己評価の対象範囲とその外を明示的に区別することは現実には難しく,その点で苦悩があるのだろうというのはよくわかるし,この外務省の自己評価を読む外部の人たちがその辺のところを意識しながら見てあげなくてはいけないのではないか。

 その他,個別の分野として,日韓関係(I-1-3)においては,評価の切り口でも言及された「日韓新時代共同研究プロジェクト」を始め重要な展開がかなり起きており,いわゆる未来志向の太い流れというのが両国間に着実に顕在化しつつあるという印象がある。その辺がもう少し評価の中で強調されてもいい気はした。評価が「(普通の)進展」とされたのは竹島問題が関連しているのであろうが,もう少し大きなフレームワークで日本外交が包み込むような対応が自覚的に持てれば,必ずしも大きなマイナス材料ととらえる必要もないのではないかという感じが個人的にはする。

 APEC,COP10の関係では,大きな行事を成功裏に終了させたこと自体がポジティブな自己評価の材料になっている。しかし,その年限りのイベントを成功させたことをもって「進展」とするのではなく,より広い中長期的な意味づけの中でそれを位置づけ,「進展」の意義をもっと積極的に書いてもいいのではないか。

【外務省】

 政策評価は,政策の目標に対して達成度を測ることによりランク付けをしている。したがって,外在的要因で日本のコントロールの外にあった事象についても,結果が伴っていなければ厳しい評価をせざるを得ないし,またそこで甘い評価をしていれば評価自体の信用性が損なわれる。そのような背景から,今言及された領土問題の絡む二国間関係において相対的に低い評価がなされたと思う。

 他方,外務省として反省を次のステップにどう反映させるかという具体的な視点がなければならない。仮に達成度が厳しい評価になったとしても,それが一体どのくらい政策の失敗によるものなのか,コントロールの中にあったもののうち当時知り得た情報の下で何ができたか,やるべきことを全部やった結果がこうだったのか等,仮定を含めて緻密に分析して評価をする必要があると思う。

 また,個別にどうだったかという延長線上で,日本外交におけるリソースの配分,政策の連携等,外務省全体としての反省や教訓を導き出す材料がここにあると思うが,外務省全体でそれに取り組むことが政策評価のプロセスに組み込まれていない。

【有識者】
 政策評価を省内の問題意識の中で有効に活用していくという側面をもっと意識すると,意味のあるものになる。
【外務省】
 少なくとも予算の面からは,政策評価と翌年の概算要求とを組み合わせて議論し検討するプロセスはある。特にシステム関係,事業等を行っているところについては,そういうところをきちんと考え,評価を基に予算要求をどうしていくか考えるというサイクルにより真剣に取り組み始めたところである。今後これをきちんとしていくことで,政策評価と予算面からの政策とのつながりは持たせることができると考える。
【外務省】
 本来外交は中長期的に考えるべき話である。例えば日韓関係は,この1年の動きを見ると少しでこぼこの局面はあるかもしれないが,過去20年を見ればずっと右肩上がりできており,未来志向の話も出てきている。そういうところをどう評価するかなかなか難しい。また,政策目標を定めた時点では全く想定していなかったような危機管理の話が起きることもあり,戦略・戦術と関係なく危機管理としてうまくできたのかどうかという別の側面がある。本来そういう危機管理的なものは捨象して,もっと長い目で見たことを書き込んでいかなくてはならないだろう。
【有識者】

 本来は,何か問題があったときに,コントロール外のことであればそんなにネガティブに考える必要はなく,それを踏まえてどういう新たな対応に出るのかというところの感覚を出すといいのではないか。そうすると,そこで翌年どのくらい進展が見られたかが評価の対象になるという流れも出てくる。単なる意気込みだけを書くのではなく,何を検討して今こういう方策を考えているというような具体的な記述があれば,翌年以降の評価対象として発展性がある。

 中長期的な目標は毎年変わりようがないが,評価を単年度で行う関係上,単年度の評価対象を設定した方がよいということから,「小目標」の項目が設けられた。しかし目標に対する達成度合の測定を中長期的な目標の観点からするのか,あるいは単年度的な小目標との関連でするのかというのが,今は若干わかりにくいかもしれない。単年度報告であるので,小目標をかなり達成したら「目標の達成に向けて相当進展した」という評価になってもいいのではないか。

 少し視点を変えるが,外務省はグローバルな問題ほとんど全てに関わってきたが,今の日本の財政状況でそれがいつまで続くのかという中長期的な問題意識があれば,選択と集中により真に日本外交の強みを発揮できるところに資源を集中的に投入するような方向性があってもよい。

【外務省】
 それは我々もかなり意識している。全てに対応するだけの人的・予算的な手当は望めないので,優先順位を決めて優先順位の低いものは切っていかざるを得ない。例えば,広報・文化や招へい予算が減額されている中で,招へい事業では30以上のスキームが乱立していたので,4つ程度に統一してその中で優先順位をつけてやっていく形に変えた。いわゆる「周年事業」についても,その年に本当に大事な事業に集中的に資源を投入してやるというようにメリハリをつけている。さらに,欧州にある公館の人員を減らして新興国の公館に振り向ける取組もしている。
【有識者】
 本当は大戦略的な日本外交のピクチャーがまず最初にあって,そういう大きなフレームワークの中で冷静な議論を通じて優先順位がつけられていくというのが理想的である。それがないと,減らしやすいところから減らしていってしまって,後から見ると,それが本当に日本外交の戦略的観点から意味のあることだったのかという問題が出てくる可能性がある。我々の感覚からすると,本来ODAはこんなに減ってはいけないだろうし,また広報や人物招へいこそ日本はがんばってやらなければいけないのではないかという問題意識がある。それは,どのくらい大きな目標のところで一定のコンセンサスができて,みんながそれに向かって互いに調整しあうという関係が省内的にどのくらいできるかという問題かと思う。そういう方向にみんなの発想を持って行く上で,予算がないということは大きな材料になると思う。そういう問題意識を皆さんで共有して,是非日本外交の再構築をお願いしたい。
【外務省】
 ODAについては,日本はバイもマルチもかなり満遍なくやってきた。最近特にマルチでの拠出がどんどん減らされてきている状況はあるが,依然ある程度の規模を持ったドナーとして満遍なく出していくことが期待されている側面もあり,選択と集中をやる上では,どこに舵を切るのかが難しいところだろう。
【有識者】
 日本も,例えば人間の安全保障等,日本のイメージがきちんと伝わるような3本くらいの主要な柱を決めて選択と集中の時代に入っていいのではないか。

議題2

【外務省】
 総務省行政評価局は,特に政策評価を今後どのように政策の企画立案や予算要求に役立てていくかという観点から,「目標管理型政策評価」の改善を打ち出している。事前分析表を作成して事後評価に関連付けると同時に事後評価の様式を全省庁で統一するという提案がなされたが,その後の検討作業が東日本大震災の影響でストップしたため,平成23年度政策評価は試行的取組として行われることになった。事前分析表は事前に基準値や目標値を定めるもので,事後に目標値に対して何パーセント達成したかを見るという定量的な評価の考え方である。測定指標を設定するのは外交の場合は難しいところもある。
【外務省】
 イギリス,アメリカ等結果重視の政策をとる国の外交の評価を見ると,目標を設定するときにインディケーターをつけて,評価の際それがどの程度達成されたかを見ている。その場合,目標は単年度ベースとは限らない。また数値が入っているものも入っていないものもある。例えば,英国はある産業のある特定の国への輸出の割合を何パーセントに増やすという指標を作ったりしている。中にはコントロールできない要素もたくさんあるが,それでも目標の設定はできる。そのような方法は日本でも取り入れることができるか。
【有識者】
 インディケーターとして適切なものを設定できれば,非常にわかりやすいことは確かだろう。施策を行った結果翌年度はこれだけ改善しましたというのは因果関係ではなくインデックスであるが,両者の区別が明確に意識されていないと,因果関係の論理にされてしまいがちである。インデックスは,関係がどう動いたかという1つの指標である。そのようなものを工夫して数値化するというのは,確かに一つのわかりやすい方法かもしれない。
【外務省】
 ODA評価(注:政策評価法に基づく評価ではなく,ODAについて外務省が独自に行ってきた評価)の方は,極力定量的に行おうとしている。いままでは開発途上国にどういう効果があったかを評価をしていたが,今後はODAの被供与国と日本との二国間関係がどれだけ改善したかも見ることにより,日本の国益にどれだけプラスになっているかも含めて評価しようとしている。貿易,投資,留学,観光などいろいろな形や数値で二国間関係を捉えることができると考えている。指標を設定することと,それがどれだけ目標の達成に貢献しているかということとは因果関係は別ではあるが,指標は指標として測れるのではないか。さらに,言葉で書いた場合に比べると,指標を設定することにより関係者の目指すところについてコンセンサスがはっきりし,それを達成するための手段やプロセスも明確になる。そういうロジックがはっきりするのではないか。
【有識者】
 確かに工夫の余地はある。領域的にそのようなやり方がぴたりとはまる,比較的適合性のある領域と全くそうでない領域があると思うが,できるところで導入していくのは決して悪いことではない。

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