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外務省政策評価アドバイザリー・グループ第14回会合議事概要

1 日時

平成22年7月14日(水曜日) 16時00分~18時00分

2 出席者

(メンバー)
中西 寛・京都大学大学院教授,福田 耕治・早稲田大学政治経済学術院教授

(五十音順)

(外務省)
金杉官房総務課長,若林考査・政策評価官,三上報道課長,八重樫領事局政策課長,植野国際協力局政策課長,林広報文化交流部総合計画課長,熊谷総合外交政策局総務課首席事務官,椿政策企画室企画官,藤澤国際協力局評価・広報室上席専門官他

3 議題

  1. (1)「政策評価に関する情報の公表に関するガイドライン」への対応について
  2. (2)政策評価をめぐるその他の最近の動きについて
  3. (3)平成22年度(平成21年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書について

4 会合経過

議題1:「政策評価に関する情報の公表に関するガイドライン」への対応について

  1. (1) 若林考査・政策評価官より,5月に作成された同ガイドライン(政策評価各府省連絡会議了承)において,各府省の政策評価に係る有識者会議の原則公開等がうたわれていることを踏まえ,当省としての検討状況を説明した。
  2. (2) それに対し,委員より,一般公開をする場合は,これまでの会合について自己評価をすると同時に,会合の形式や関係資料,また評価プロセスそのものを一般傍聴者により分かりやすい形にしていく必要があるとの指摘がなされた。
  3. (3) 右を受け,若林考査・政策評価官より,政策評価は,7年前の施行以来,関連法令に基づき全省が統一された枠組みの中で実施してきた経緯があるので,会合の形式等を変える場合でもこれまでの積み重ねを踏まえる必要がある,ついては,対応につき省内で検討の上改めて委員にご相談したい旨述べた。

議題2:政策評価をめぐるその他の最近の動きについて

 若林考査・政策評価官より,総務省が4月に発表した行政評価機能の抜本的強化方策のうち,政策評価の推進に関する事項(成果志向の目標設定の推進,租税特別措置に係る政策評価の実施等)について説明した上で,当省においても,本年度は各課評価シートのとりまとめをより迅速に行い,その結果について官房各課に情報提供する等,政策評価結果を来年度の予算・定員・機構要求により一層適切に反映できるよう努めている旨述べた。

議題3:平成22年度(平成21年度に実施した施策に係る)外務省政策評価書について

(1) 若林考査・政策評価官より,評価書案全般について次のとおり説明した。

  • 7つの基本目標の下,平成21年度に実施した57の具体的施策,208の事務事業について政策評価を実施した。
  • 平成21年度に限定した「小目標」を明示し,同年度に実施した施策が具体的にどのような成果に結びついたかを記述するよう工夫した。
  • 「無駄削減(経費節約のための取組)」(施策レベル)及び「予算の効果的・効率的活用」(事務事業レベル)の記載欄を新たに設け,省員自身も外交政策の効果的・効率的な実施をより明確に意識するよう努めた。
     特に事務事業レベルで積極的な記述があり,出張経費の節約,入札の実施,IT関連技術の活用,他機関との連携,事業内容の見直し,国際場裡での取組等を通じた経費節減努力が日常的に行われていると言える。広報関連事業については,事業仕分けの対象になったこともあり,より具体的で詳細な記述がなされている。
  • 同時に,次年度要求への反映方針(施策レベル)について,無駄削減の観点から予算の減額要求をする場合の選択肢を新たに設定し,5つの施策レベル評価において,減額要求の方針が示された。
  • 外交政策の数値による効果測定は困難な面があるが,要人往来や国際会議における具体的な成果を記述したり,国民各層の外交との距離感が少なくなるような取組の成果を記述する等,具体的な事例に沿って目標の達成状況を分析する努力が見られた。

(2) 金杉官房総務課長より,今回会合では,試行的に,外務省が持つ事業についてご説明し御意見を伺いたい,また,外交政策は何をもって「進展」と言えるのか評価が難しいが,政権交代を踏まえ,我々もこのプロセスを有効に活用したいと考えており,来年度以降は外交政策についてどういう形で諮っていくのかについても議論したい旨述べた。

 続いて,4つの施策について,関係部局を代表して各課長より以下のとおり説明した。
(3) 報道対策,国内広報,IT広報(施策III-2)(三上報道課長)

  • 外務報道官組織は 1)国内メディアを通じた広報,2)直接日本国民に行う広報,3)ITを使った広報,4)外国メディアを通じた広報,5)諸外国の政府,国民に行う海外広報,6)広聴活動があり,異なる訴求対象に対して各課が様々な広報手段を用いている。
  • 報道・広報における主要な課題の1つは,予算削減への対応。行政事業レビューや事業仕分けでの様々な指摘を受け,各種事業の整理合理化に努めており,それなりの進展がある(外務省ホームページにおけるコンテンツ・マネジメント・システムの導入,報道関係者招へい基準の見直し,パンフレットの縮小等)。
  • もう1つの課題はIT技術の進展への対応。一般の人もブログやツィッターを通じて発信するなどメディアが多様化する中で,いかに限られた予算を用い効果的な広報を行うかが課題となっており,第三者の所見においてもそういった指摘をいただいている。
  • 政権交代後,大臣記者会見のオープン化やYou Tubeを通じた記者会見動画の配信等積極的な情報発信を行っているが,今後は,紙媒体からITへという流れの中,年間3億以上のアクセスがある当省ホームページを通じた発信を一層強化したい(動画配信,多言語化,バリアフリー化,セキュリティ強化等)。

(4) 海外広報,文化交流(施策III-1)(林広報文化交流部総合計画課長)

  • 本施策の下にある3つの具体的施策(海外広報,国際文化交流の促進,及び文化の分野における国際協力)に共通した課題は,1)民間の広報等も同じだが,国の政策は数値化しにくく効果が把握しにくい,2)また,その効果は,国の事業のみならず外部要因の影響も受ける,3)予算が大幅に削減されており,評価結果を反映するまでもなく真に必要なものしか継続できない(5年で3割減),ということ。
  • 数値化しにくいながらも効率的な評価方法を模索している。例えば,講演等各事業ごとの実施件数を細かく集計しつつ,事業がどのように受け取られているかをアンケートや世論調査結果から分析している。さらに外務省の重要政策との整合性(政策上の重点国にリソースを集中配分することで戦略性と効果を上げる)も考慮している。
  • 各具体的施策の評価結果と今後の課題は,次のとおり。
    • 海外広報(III-1-1):各事業の実施件数,世論調査結果等に鑑み,「目標の達成に向けて進展があった」とした。今後は戦略性や外交政策上の重点との整合性を高め,政策発信を強化したい。
    • 国際文化交流の促進(III-1-2):「目標の達成に向けて進展があった」と評価した。高い日本語学習熱に応え,日本語の普及を一層強化したい。
    • 文化の分野における国際協力(III-1-3):信託基金を通じて文化遺産保護のための事業を進める等,「目標の達成に向けて進展があった」と評価した。今後も国際社会の一員として,協力を継続していく。

(5) 領事政策(施策IV-1,IV-2及びIV-3)(八重樫領事局政策課長)

  • 評価においては,定量的,具体的な記述を心がけた。
  • 領事サービスの充実(施策IV-1)では,1)領事サービス・邦人支援策の向上・強化,2)領事業務実施体制の整備,3)国民の円滑な海外渡航の確保のために,日本旅券に対する国際的信頼性の確保,という目標を掲げた。邦人援護の基礎となる在留届やメルマガの件数の伸び,142公館で在留邦人を対象に行ったアンケート結果(83%が領事窓口の対応を評価),領事シニアボランティアによるサービス向上等に鑑み,「目標の達成に向けて進展があった」と評価した。課題は,領事手続きの簡素化,及び領事担当官の能力向上である。
  • 海外邦人の安全確保に向けた取組(施策IV-2)では,1)海外邦人の安全対策の強化(広報・啓発),2)海外邦人の援護体制の強化(基盤・体制)という目標を掲げた。現地当局等との協力関係を構築したこと,情報発信を強化したこと(ローミングによる海外邦人への安全情報発信,海外安全ホームページの整備,危機管理に関する講演会等),閉館時の緊急電話対応のアウトソーシングを進めたこと等から,「目標の達成に向けて進展があった」と評価した。
  • 外国人問題への対応強化(施策IV-3)では,1)人的交流の促進及び出入国管理等の厳格化への要請に応えること,2)在日外国人が抱える問題の緩和・解決に積極的に取り組むこと,を目標に掲げた。人的交流を促進しつつも,査証審査を厳格に行うことで外国人犯罪の検挙人員を減少させることができたこと,またブラジル政府との意見交換や外国人集住都市自治体との連携を強化したことから,「目標の達成に向けて進展があった」と評価した。

(6) 経済協力(施策VI-1)(植野国際協力局政策課長)

  • 目標は,二国間のODA(政府開発援助)を通じた支援により国際社会の平和と安定に貢献し,それにより日本の安定と繁栄を確保すること,より直接的には,被援助国(途上国)の発展に役立つこと。
  • 政権交代を受けて,1)アフガニスタン及びパキスタンに対する支援表明,2)気候変動対策支援(鳩山イニシアティブ)という2つの新しい動きがあった。その他のトピックとして,3)ハイチ大地震への対応(緊急援助・復興支援表明),4)NGOや市民社会を重視する民主党政権の下で,また,少ない予算を効果的・効率的に使うため,これまで以上にNGOとの連携強化に努めたこと,5)国際協力局の機構改革を行い,スキーム別ではなく地域毎・横断的なODA実施体制を整えたことが挙げられる。
  • 課題として,国民の一層の理解を得られるようODAの根本的なあり方を見直している旨記載した(その後,見直しの結果を大臣が6月29日に発表した)。
  • 施策の効率性については,費用対効果を上げるべくコスト削減に努めており,平成20年度~24年度で15%のコスト減を目指している。他方,その結果起きている我が国経済界のODA離れに対して,何らかの対応が必要。
  • 考慮すべき外部要因として,1)不測の事態,2)グローバル化により諸問題がさらに世界に広がり,援助のニーズが増しているということが考えられる。
  • 世論調査によれば,ODAを積極的に進めるべきとする割合が増加しているが,これをいかに実際のODA予算増や事業へのサポートにつなげるかが課題。そのため,国民に対する説明責任(ホームページの充実,テレビ広報番組の活用,ODA評価)やNGOの活動環境整備(人的交流を含む)を検証した。
  • ODA予算が過去13年間で47%も削減される中,選択と集中を進め,本施策の「目標の進展に向けて進展があった」と評価した。今後,アフガニスタン・パキスタン支援,気候変動対策支援,対アフリカODA倍増等に重点的に取り組んでいく。

(7) 以上に対する委員からの主な発言及び外務省出席者側からの主な発言は次のとおり。

(委員) 政策評価法上,各省が政策評価にふりむける予算の上限割合は決まっているか(EUでは,当該事業予算の一定の限度内とされている)。
(外務省) 法令上規定はなく,当省においては,きわめて少ない予算及び人員で対応している。

(委員) NHK国際放送は外務省と関係あるか。
(外務省) 公的な権限関係はなく財政支援も行っていないが,事実上は,外国の放送局との橋渡しを当省が支援する等協力関係にある。国際放送については当省としても問題意識を持ってきた経緯がある。

(委員) 欧州は広報でもICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)をうまく利用している。欧州委ホームページから入れる「EUサークル」(若者の交流サイト)を立ち上げ,委託によってきめ細かい更新も行いアクセス数を増やしている。
(外務省) 当省もアクセス数の解析やネット上のアンケートは行っているが,それをサイト作りに十分生かしきれていない。また,双方向のコミュニケーションについても不十分であり,SNS(Social Network Service:コミュニティ型ウェブサイト)やツィッター等の有用性を検討していきたい。

(8) 最後に,若林考査・政策評価官より,委員の先生方より貴重なご意見を頂いたことに対して謝意を表するとともに,議題1に関係する今後の会合のあり方については改めてご相談する旨述べ,会合を了した。

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